デイブレイク被害者が仮面ライダーになる話   作:平々凡々侍

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大変長らくお待たせしました!
今回は多分ですが本作ラストの「日常回?」になると思われます。

それでは、どうぞ!




束の間の休息

 アークとの戦闘終了後、吐血し倒れた太陽は国立医電病院に緊急搬送され、集中治療室へ運ばれた。そして、診断の結果ーー全身打撲・頭部損傷・腹部損傷……その他諸々の怪我が確認された事で太陽は緊急入院を余儀なくされた。

 

 そんな状態で運ばれて来た太陽に彼の主治医は処置を施した後。治療を受けてから僅か一日で意識が戻った太陽に向けて第一声

 

『君さぁ……』

 

 と呆れ気味に零したという。

 

 

 

 

 

 

 天本さんが倒れてから早五日。

 

「えーっと、天本さんの部屋は……っと、ここだよね?」

「はい。3号室の358番、この部屋で間違いありません」

 

 アーク達の襲撃も何故かなく、どこか不気味にも感じられる……穏やかな日々が続く中、俺はイズと二人で天本さんのお見舞いに訪れていた。

 

「それにしても、凄い重傷だったけど…五日経ってもう面会OKって……天本さんの回復力おかしくない?」

「はい、平均的な人間の回復力ならあれだけの重傷……最低でも一ヶ月以上の集中治療は必須かと思われます」

 

 ………集中治療室へと運ばれる程に重体だったにも関わらず、たったの一日で意識が戻り回復傾向に向かい、五日経って既に普通病室で生活している人。

 

 文面だけ見ると明らかに一般人ではないし、何なら本人を見ればその耐久力と回復力に一般人とは二度と認識できなくなること間違いなしだと思う。

 

「すぅー、はぁー………よしっ! 行くぞ!」

 

 無駄に緊張して部屋の前に立った俺は一度深呼吸をし、部屋のスライドドアの取っ手を掴み勢いよく開いた。そして、

 

「失礼します! 天もーー」

「ーーですから、退院まで兄の世話は私がします。天津さんは早く会社に戻って、仕事でも何でもしてて下さい」

「いえいえ、美月さん一人では負担も大きいでしょうから私も手伝いましょう。あぁ遠慮はいりません。太陽君のサポートの為、長期休暇を取って来ましたから!」

「は? 遠慮なんて微塵もしてないんですけど? というか何ですかそのドヤ顔、はっ倒しますよ」

 

 ーー部屋へ入室した途端、耳に入ってきた言い合いに俺とイズは思わずその場で口と体の動きをピタリと止める。

 

 部屋には既に三人の人物が居た。

 一人はため息を吐いている天本さん……そして、そんなベッドを挟むようにして立つ二人、天津さんと俺にとっては見知らぬ女性である。

 

「あのさぁ、揉めンなら外でやってくんない? 同室の人にも迷惑だし。それに二人ともいい歳して口喧嘩何て……なぁ?」

 

 余裕綽々な天津さんとそれを強く睨む女性。

 明らかに相性最悪で、バチバチし合っている二人の顔を交互に見て、ベッドの上で胡座をかいて億劫そうに注意した天本さんは俺達に気付いて話を振った。

 

「おや? 君達も来たのですか?」

「あ、兄のお知り合いの方ですか?」

 

 天本さんの視線を追って、初めて俺達の存在を確認した二人は一旦言い合いを中断。

 

「は、初めまして! 俺は飛電或人って言います。こっちは秘書のイズ。天本さんには凄い沢山お世話になってまして……あ、後これ! つまらない物ですが!」

 

 俺は女性に自分とイズの紹介をし、続けて菓子折りと花束をバッと彼女に差し出した。すると女性は「初めまして、天本美月と申します」と返してくれる。

 

 この時、俺は初対面と思っていたけど後になって実際の所は前に喫茶店で一応顔を合わせてはいたことを思い出した。

 

「飛電さんにイズさんですね。今日はお忙しい中、態々お見舞いいただきありがとうございます」

 

 美月さんはそんな緊張しまくりの俺のテンションに優しく微笑しながら、菓子折りを受け取ってペコリと丁寧にお辞儀してくれた。

 

 ───────────────────────

 

……ねぇねぇ(にい)? さっきからお見舞いに来る人が自称一般人が知り合える筈のない人ばっかりなのはどういうこと?

ん〜………成り行き?

 

 私は飛電さんが持って来てくれた花束を花瓶に移してすぐに兄に近付いてひそひそと話しかけた。

 

 今日、兄の見舞いには既に何人か来ていたのだが、来た人物は元A.I.M.S.隊長の不破さんや刃さんを始め、以前アニメに助けられたというA.I.M.S.の隊員さんら、現在進行形で見舞いに来ているZAIAエンタープライズジャパン元社長ーー現在は課長のーー天津さんに飛電インテリジェンス現社長の飛電或人さんと社長秘書のイズさん……普通に考えれば分かる通り、一般人が築ける人間関係では断じてないメンツな気がしてならない。

 

「……成り行きで大企業の社長さんにA.I.M.S.の隊員さんと知り合う人が一般人……?」

 

 なので、私からすれば未だに一般人を名乗り続ける兄が不可解で仕方なかった。内心はまさに何言ってんだコイツ?という気持ちで一杯だった。

 

「おいやめろ。人の一般人イメージを壊すような事言うんじゃないよ」

「いやいや、もうとっくに壊れてるって。断言していいよ」

「………えっ」

 

 私の言葉に兄は目を丸くし、その反応を見て天津さんに飛電さん……更にはイズさんまでもが思わず苦笑を浮かべていた。

 

 ───────────────────────

 

「──修復、完了」

 

 デイブレイクタウン内にある滅亡迅雷.netのアジトでアークドライバー(アーク)……そのデータの修復は完了した。

 

 データ修復に掛かった時間は五日。

 それは衛星アークの性能を考えれば余りにも遅かった。

 

(ゼア……これも私を破壊する為の対策か?)

 

 理由はやはりというべきか。

 十中八九、バルデルが手に入れた新たなプログライズキーに内包されたゼアの力によるものだ。

 

 詳細な原因は現状ではデータ不足で完全把握はできないが、本来ならば破壊されてから瞬時に機能する筈の修復システムが今回は瞬時に機能せず、挙句には幾度に当たってエラーが発生。そのせいで、本格的にアークの修復が開始したのはバルデルに破壊されてから三日も経過してからの事だった。

 

(……あの力は一体何だ?)

 

 

 バルデルが得た力、ゼロワンのデータをラーニングしたアークワンさえをも凌駕する驚異的な力についてアークは思考する。

 

「……あり得ない」

 

 衛星ゼアは確かに衛星アークと同型であり、衛星アークと並べるだけの性能を誇る。

 

 ゼアが性能を最大限引き出せばアークワンと同レベルの存在()は確かに生み出せるかもしれない。しかし、あのウイニングヘラクレスは明らかにアークワンを超えていた。

 

「変身者は天本太陽……」

 

 耐久力と回復力を除けば、限りなく普通の人間。ヒューマギアの様な高い演算能力も高いラーニング能力も持たない……そんな変身者が何の弊害も負荷もなしにゼアの力を扱えるだろうか?

 

 人工知能レベルの思考速度を持たないバルデルには当然ながら「ウイニングヘラクレス」その全てのシステムを十全にコントロールする事は不可能に近い。

 

『あぁ、お前と同じようにな。まぁ俺の場合はお前と違って生成した武器の性能についてはゼアにお任せだけどなぁ』

 

 だからこそ、バルデルは一部のシステムの管理を衛星ゼアに任せていた。

 

(デメリットは必ず存在する筈だ……そうでもなければ、あれだけの性能が発揮できる訳がない)

 

 もしあの力にデメリットがあるならば、それは間違いなく多大なもの……ならば対策の余地はある。

 

「──ラーニング開始」

 

 次の瞬間、アークドライバー中心のコアが赤く輝き、バルデルの戦闘データ……そのラーニングが始まった。

 

 

 ──────────────────────

 

 

 俺が診察室に入室し着席した直後。

 

「君は本当に……」

 

 手に持ったカルテから視線を俺に移し、こっちを睨んだドクターはいつもと比べて低い声(半ギレ)で喋り出す。

 

「一体何をしたらこれだけの頻度でズタボロになれるんだい?」

 

 言えない。

 ヤバい人工知能と殺し合って、最終的に橋の上から川に蹴り落とされて、そこから体に鞭打ってリベンジしたらズタボロになりました〜……なんて。

 

「何かな? 君は重傷での緊急入院で世界記録でも目指してるのかい? だったらそんな不謹慎な記録は存在しないから今すぐ止めようか? というか迷惑だから止めろ」

「い、いやいや! そんな記録目指して……」

 

 ドクターの言葉を否定しようと慌てて口を開いた俺だが……

 

『それじゃあ、これで診察は終わりだ。

 頼むから、もう二度とうちの病院に入院するような事態には陥らないでくれたまえよ?』

 

「スゥーー……す、すんません!」

 

 以前入院した際のドクターとの会話を思い出し、心からの申し訳なさとドクターの鋭い視線に怯んで謝罪の言葉を漏らす。ドクターには本当に世話になってるからな……俺はドクターに頭が上がらない。

 

「私に悪いと思うなら、もっと自分の体を大事にしなさいと言いたいね。まぁここまで何度も重傷を負ってる君に言っても無駄なのかもしれないけれど」

「……はい」

「……そこは嘘でも『わかりました』って言って欲しかったなぁ」

 

 俺の淀みない返事にドクターは僅かに眉を顰め、カルテを俺へと手渡し、

 

「君自身、自覚はしてる筈だ。だから、これは改めて伝えるまでもない事かもしれいが……それでも君の主治医として伝えさせてもらう」

 

 ーー真剣な態度で宣告した。

 

 

──心臓に鈍的損傷が複数見られる……これ以上無茶をし、体を酷使すれば、君は確実に死ぬことになる

 

「……まぁ、そりゃそうですよね……」

 

 癒える様子のない胸の激痛から既にわかってはいた。自分の体のことは自分が一番よくわかるとはよく言うがあれは割と本当らしい。

 

 ドクターの宣告を聞いた俺は一息吐き、言った。

 

 

──ドクター、一つ頼み事していいですか?

 

 

 

 

 

「それでは僭越ながら、私が音頭を取らせていただきましょう」

 

 俺の退院から丁度一週間が経った頃。

 何の変哲もない焼肉屋でもいつもと変わらない上から下まで真っ白な装いに身を包んだ男ーー天津さんは立ち上がってグラスを片手に場を取り仕切り始め、

 

「乾pーー」

「「ーーかんぱぁーい!!」」

 

 断じて狙ったわけじゃないが天津さんの音頭を遮るようなタイミングで俺と或人は声高らかに叫び、手を持ち上げ互いのグラスをカチンとぶつけ合う。少し遅れて不破さんと刃さん、困惑気味のイズも手に持ったグラスを俺たちのグラスに当てる。

 

 天津さんは暫くしょんぼりした顔で俺たちを見て、俺たちが天津さんがグラスをぶつけるのを待っているのに気付いた途端嬉しそうに持ち上げたグラスを俺たちのグラスに当てた。最早キャラ崩壊どころの話じゃないが今更だからね。しょうがないね。

 

「改めて言うのも何だけど、態々『退院祝い』何てしてもらっちゃって……これ、或人が提案してくれたんだろ? ありがとな」

「いえいえ、天本さんにはたっくさんお世話になってますからこれぐらい当たり前ですよー! それに提案したらみんな全会一致でしたし…きっと俺が提案しなくても天津さんが提案してたと思います」

 

 今日ここに集まったのは俺、天津さん、或人、イズ、不破さん、刃さんの計六名。迅と雷電の二人はデイブレイクタウンの何処かに沈められている筈の衛星アーク本体の位置の特定を進めているという。ちなみに今んところ進捗率は微妙らしい。

 

 閑話休題。

 

「それでも感謝させてくれ。ありがとな或人……天津さんも不破さんも刃さんもイズも、みんなホントにありがとう。正直めちゃくちゃ嬉しい」

 

 俺は改めて真っ直ぐに感謝を伝えて頭を下げる。

 顔を上げれば天津さんと或人は「どういたしまして」と満面の笑みを浮かべ、不破さんと刃さんは少し照れ臭そうにしていて、イズは綺麗な会釈をしていた。

 

「そこで太陽君はこう言いました『みんなの未来は俺が守ってやるッ…!お前の計画はここで終わりだ、滅ッ!』と」

「か、かか、かっこいいッ!! 流石天本さん!」

「ブッーー!? ゲホっゲホっ…ちょ、天津さん! 何でそんな詳細に台詞の一つ一つ覚えてんの!? 俺自身あの時死にかけで自分が何言ったかとかよく覚えてねぇーのに!」

「そんな昔に滅と()り合ってたのか……道理で強ぇ訳だ」

「ZAIAのサポートがあったとはいえ、人知れず一人でマギアを……更には滅とも……まさにヒーローの鑑ですね」

「成る程。お兄様とはそういった経緯で……天本さん、ありがとうございます」

 

 それからは普通にカルビ、タン、ハラミ、ロース、ホルモンなどなどを焼いて食べながらみんなで駄弁った。

 

 まさか或人の「天本さんっていつから仮面ライダーやってたんですか?」という質問に天津さんが「よくぞ聞いてくれたッ!」って反応して急に語り出すとは思いませんでした……(唖然)

 

「ッ……天津さんやっぱこの話やめよお! 俺がひたすら恥ずかしくなるだけだわコレ!」

「! では次は太陽君が十年以上の時から目覚め、病院を襲ったレイダーと戦ったーー」

「ーーちげえよ! 話やめろって『次の話』にチェンジって意味じゃねぇーよ!? 俺の話するのやめようぜって意味だよ!」

「「「「(´・_・`)」」」」

「……え、みんな何その反応?! つうかイズまで心なしか残念そうな顔してる!?」

 

 どうでもいい事だが、何故か天津さんによるバルデル()の話はその場にいたみんなに割と好評だった。理由は天津さんの語りが無駄に上手過ぎる+多分脚色してるからだと思われる。

 

 ぇ、脚色してない……?

 HAHAHAナイスジョーク。それが脚色無しの話だったら俺死んでるに決まってるじゃないすか(真顔)

 

 ───────────────────────

 

 それは何の予兆もなかった。

 

 ある程度焼肉を食べ終え、食後のデザートなんかを注文しくるのを待っている間「仮面ライダー」に関係あることや、それとは関係ない他愛のない会話を楽しんでいた時。

 

「! ごほ、ごほッ……」

 

 胸の奥から鈍痛を感じ、続けて俺は咳き込み……僅かな間、口元を押さえた自分の手の平に目を奪われーーすぐに口元をハンカチで拭く。

 

「? 天本さん、大丈夫ですか?」

 

 それに気付き最初に声を掛けたのは向かいの席に座る或人だった。俺は無用な心配はかけないようにとすぐに笑顔を取り繕う。

 

「あ、あぁ…大丈夫大丈夫。これはあれだ。一応見た目は二十代だけど、中身が三十代だから……肉食い過ぎて胃もたれしたのかもな」

「確かに…天本さん、不破さんの次に食べてましたもんね!」

「まぁな。というか不破さんはどう考えても食べ過ぎだろ。それでよく太らないな…腹痛くとかならないの?」

「こいつはパワーだけじゃなく、胃もゴリラですから……エイムズにいた頃にカツ丼十杯食べているのを見た時は私も絶句しました」

「私も見た時がありますよ。あれは私がエイムズの研究部門の視察に行った時の事……彼は栄養ドリンクを五十本ほど頼んでいましたねぇ」

「なるほど、不破さん人類じゃなかったかぁ……」

「いや何納得してんだ!? あんたの方がよっぽど人類じゃねぇだろうが……あと誰がゴリラだッ!?」

 

 そんな会話をしながら、俺はチラッともう一度手の平を見て席を立ち、

 

「……悪い、ちょっと外の空気吸ってくる」

 

 周りの反応を気にする事なく、席に財布を残して真っ直ぐ店の外に出た。

 

「…………」

 

 その背をじっと注視する人がいる事を知らないまま。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁッ……()ってぇ……」

 

 店から少し離れた人気のない路地で俺を壁に背をつき、胸を押さえながら呟く。最初に焼肉をみんなでワイワイ食べていた時は割と余裕だったんだが……時間が経つにつれて徐々にキツくなってきた。

 

 自分の手の平をもう一度見る。

 何度瞬きしても、そこには変わらず赤黒い血がベタリと付着していた。

 

(……限界が近い、そんな感じだなぁ……)

 

 鼓動がさっきから煩い。不快で仕方ない。

 胸を押さえる手が震えるのが分かる。

 これはビビってるのだろうか?

 

(だからって、立ち止まる訳にはいかないよなぁ)

 

 覚悟はもうできてるんだろ?

 だったら今更ビビってどうすんだって話だ。

 不安なんて、恐怖なんて、全部纏めて捨ててしまえ。

 

 自分自身へそう言い聞かせ……俺を鼓動が静まるのを待った。

 

「……よし──」

 

 心なしか体が楽になったような気がして俺は路地から出ようと歩き出す。

 

「──太陽君」

 

 その時、路地の外に立つ人影に気付き俺は目を見開き、どうするか考えて……まずはその名前を呼んだ。

 

「……どうした? 天津さん。深刻そうな顔して」

 

 そして、いつもと何ら変わらぬ態度でからからと笑う。

 

「単刀直入に聞きましょう。太陽君、君は何か大切な事を私達に隠してはいませんか?」

 

 天津さんの問いに、静まった筈の鼓動が再び警鐘を鳴らすように激しく煩くドクンと鳴り出したのがわかった。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想や批評、アドバイスなどありましたら遠慮なくお願いします!

※ちょっぴり解説
・ウイニングヘラクレスの負荷
アークワンに対抗する為にゼアが色々性能を搭載した結果、人間が扱うには些かどころかかなりヤバい負荷が掛かる代物になった。多分命削ってる(小並感)

次回か次々回には明かせると思うんですが、とある理由で負荷に慣れる事はないと思われる……ゲイツリバイブの負荷の件は忘れるんだ!


仮面ライダーゼロワン!

第25話 ソコに善意がある限り
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