「ーー愚かなほどに呑気なものだ」
街中で足を止めた男は周囲を見渡し、呆れたように呟く。
「貴様もそう思うだろう?」
男の声は肉声と機械音声が重なっており、誰が聞いても奇妙に聞こえた。だから、男の近くを通り過ぎる人々はチラリと訝しげに男を見る。
しかし、それだけだ。
誰も足を止めることはない。
「今から己の命が終わるなど、一片たりとも考えていない」
「誰もがこの平穏が続くと信じ切っている」
そんな人間たちから視線を外した男は右手を腰に装着したベルトの起動スイッチの上に置き、強く押し込んだ。
「──変身」
瞬間、ベルトの中心が赤く発光し、男の足元から赤黒い泥のようなものが噴出。それは生き物のような形に変化するが直ぐに崩壊し、男の体を覆い尽くそうと蠢き、
【アークライズ】
【オールゼロ】
ーー呑み込まれる寸前、男はニヤリと笑っていた。
それから周囲からは夥しい程の悲鳴が上がり、一分と経たずに凄惨な光景が出来上がった。
───────────────────────
「ーーイズ!天本さんに連絡は!?」
アークによる攻撃がまたも始まったとA.I.M.S.から連絡を受け、俺はライズホッパーに乗って現場に急行していた。また耳には特殊な改造を施したザイアスペックを装着し、イズと通信を繋いでいた。
『未だ繋がりません。既に戦闘している可能性が高いと思われます』
「ッ…俺も早く行かないと!」
イズの言葉を聞き俺は更にライズホッパーのギアを上げる。
そして、俺が現場に到着した時。そこでは既にA.I.M.S.の隊員達に加えて不破さんに刃さんが無数のマギアと戦っていた。
「! 来たか!」
「社長!遅いぞ!」
「ごめん二人とも!遅くなった!」
俺の到着に気付き声を上げた刃さんと不破さんに謝り、俺はバイクから降りフォースライザーを装着。
「ぐッ……!」
『ジャンプ!』
装着した直後の痛みを堪えながら続いてプログライズキーを取り出し、起動ボタンを押してフォースライザーに装填。
「変身!」
【フォースライズ!】
『ライジングホッパー!』
【A jump to the sky turns to a rider kick.】
【Break Down.】
勢いよくレバーを引き、マギアの一体に向け駆け出し、変身完了と同時にその体を殴り飛ばす。
「不破さん! アークは? それに滅亡迅雷の四人に天津さんは?」
「さぁな! だが、マギアはこの奥から現れた。ならアークはきっとこの先だ! 他の奴等は知らねー!」
「滅と
二人は俺の質問にそう答えた不破さんは左手に持ち替えたショットライザーに装填されたランペイジガトリングプログライズキーのマガジンを右手で回し、刃さんは右手に持ったショットライザーに装填されたプログライズキーのボタンを押す。
『パワーランペイジ!』
『スピードランペイジ!』
『エレメントランペイジ!』
『ダッシュ!』
続けて不破さんは三度回すとショットライザーを高く掲げトリガーを引き、刃さんはショットライザーのトリガーを引くとマギア達に銃口を向けて駆け出し、
「おらあああーーッ!」
「はああああーーッ!」
【ランペイジエレメントブラスト!】
【ダッシュラッシングブラスト!】
刃さんは大量のマギアの周囲を走りながら拘束効果のあるエネルギー弾を連射し、拘束されたマギア達に不破さんは左手に発生させた炎と右手に発生させた氷を球のように投げ飛ばし、続けて両手から雷の針を発生させマギアたちの真上から落下。最後に感電し動けなくなったマギア大量の目の前に残った刃さんが一か所に集めたエネルギーが爆発。二人の必殺技によりマギア達により埋められていた道が切り開かれる。
「! あれは…!」
そして、切り開かれた道の先で俺たちは見た。瓦礫の中に佇むアークの姿を。だが、その姿は俺たちが予想していた姿とは違っていた。
「アークワン、じゃない……?」
俺たちが見たアークの姿は「アークゼロ」の姿をしていた。
「……………」
こちらの存在に気付いたアークは俺たちの方を見ると一言も発することなく、挑発するように人差し指を向けクイっと動かす。
「かかって来いってか…? 上等だ」
「待て不破、アークが何の策もなしにあの姿で現れるとは考えられない」
アークの挑発に真っ向から乗ろうとする不破の肩を掴みそう口にする刃さん。その意見には俺も同意見だった。アークワンに変身していないという点があまりに気掛かりだ。ポジティブに考えればアークが弱体化した可能性も考えられるが……俺たちは未だに衛星アーク本体に決定打を与えられていないのだ。それは考えられない。つまりアークがアークゼロに変身しているのは何らかの策があるから、と考えるのが妥当だろう。しかし、
「でも、策があろうとなかろうと…アークを放置することなんてできない。戦うしかない」
俺たちにできることは一つ。アークと戦うしかない。
「イズ、引き続き天本さんへの連絡を頼む!」
『了解しました』
「刃さんとA.I.M.S.の隊員さん達は逃げ遅れた人たちの避難を優先してくれ!」
「あぁ、任せろ! だがアークはーー」
「ーーアークは…不破さん、一緒に戦ってもらってもいい?」
「はっ、望むところだぜ! 社長!」
俺はイズに通信で指示し、刃さんとA.I.M.S.の隊員達、不破さんにも続けて提案した。アークに何らかの策があるなら俺たちだけじゃ倒せない可能性が濃厚。なら無理に倒すことを優先せず人命を優先するべきという考えによる提案を刃さんは即了承し、不破さんも俺と同じくアークと対峙する。
「行くぞ、アーク!」
それから刃さん達が散開して人々の救助に向かったのを確認し、俺と不破さんはアークへと攻撃を仕掛けた。
───────────────────────
一方その頃。
「ーーどうもお久しぶりです。天津垓です」
「ーーはいそうですね。それじゃあ」
垓は天本太陽の自宅を訪問し、訪問早々に太陽の妹である美月の塩対応により即効追い返されそうになっていた。
「ま、待って下さい! 今日は早急に確認したいことがあってお伺いした次第でして!」
「こっちだって今急いでるんです! さっさと手離してください!」
「えぇ! 確認を終えたらすぐにでも離しますとも!」
「今離しなさいよ! このマシュマロ不審者!」
「ま、マシュマロ不審者!?」
閉められそうになったドアを手で抑え垓は強引にも美月に話を聞こうとする。そんな垓に対抗して美月は両手でドアを閉めようとするがそこは流石仮面ライダー。45歳とは思えぬパワーでドアを抑える。
「はぁ……わかりました。聞いてあげますよ。確認したいことって何なんですか?」
それに美月は罵声を飛ばしつつ嫌々と垓の話を聞くことにし、
「! ありがとうございます! 私が今日お伺いしたのはーー」
「ーー太陽くんの安否についてです。昨夜から彼と連絡が繋がらず……太陽くんは今在宅していますか?」
垓はそう美月に聞いた。
───────────────────────
「おらあっ!」
アークへと最初に攻撃を仕掛けたのはバルカン。左手に持ったショットライザーを連射しながらアーク目掛けて一直線に駆け出し、そのまま右拳で殴り掛かる。
「………」
「ぐうぅ!?」
その攻撃に対しアークは直前まで微動だにせず、バルカンの拳が顔面に迫った瞬間に首だけを横に動かし避けると左手でバルカンの胴体を殴りつけ、
「がはっ…!」
続けて右手でボディブローを噛まし、大きく怯んだバルカンを右の横蹴りで蹴り飛ばす。そして、地面に手をつき立ち上がろうとするバルカンにアークはゆっくりと歩み寄り、サッカーボールを蹴るかのように倒れるバルカンの体を蹴り上げた。
「はああっ!」
そんなアークの背に001は殴り掛かった。
「! くっ!」
アークはそれを振り返ることなく後ろ手に回した右手で掴むと後ろ蹴りで001の腹部を蹴りつけ、001の方を振り返るのと同時に左拳を打ち込む。001はそれを間一髪で防御する。
「ッ、ぐっ…!」
しかし、そんな001の防御もなんのその。アークは構わず続けて右、左と拳での連続攻撃を行いーー真っ向から押し切って001の防御を崩し、
「ごはッ!かはッ!」
瞬間、001の両肩を掴むと腹部に二度膝蹴りを入れて体勢が崩れたところにラリアット。001を地面に叩きつけ、バルカンを蹴り上げたのと同じように001を蹴った。
(今までのアークと違うッ……!)
地面に倒れたバルカンと001、二者は短時間の戦闘とはいえ目の前のアークが今までと違うことに気付く。まずはその戦い方。今までのアークであれば予測からのカウンターや武器生成を駆使していた筈だが、今のアークは前まではなかった明らかに攻撃的で強引な部分があった。
例えば倒れた相手を勢いよく蹴り飛ばしたり、防御を無視して攻撃を続けたり、ラリアットをしたり、良くいえば力強く悪くいえば無駄のある動きをしているのだ。
「っ、不破さん…まだ戦えるよね?」
「くっ…当然だ!」
001とバルカンはふらつきながらも立ち上がり、次は左右から同時にアークに攻撃を仕掛けようとする。
「飛電或人! 不破諌!」
その時、二人の名を呼ぶ声が響いた。
「! 天津さん!」
「サウザー課長! 遅いぞ!」
「遅れて申し訳ありません。少し諸事情ありまして」
それは唯阿の連絡を受けて現場にやってきた垓のものだった。
「? アーク…その姿は…」
「それに関しての考察は後にしましょう。今はーー」
「ーー今はあいつをどうにかすんのが先だ!」
「確かに、その通りですね……」
【サウザンドライバー!】
垓は二人の言葉に納得してドライバーを装着。ゼツメライズキーを取り出して装填。続いて取り出したプログライズキーのボタンを押し自動展開。
【ゼツメツ! Evolution!】
『ブレイクホーン!』
「変身!」
【パーフェクトライズ!】
『When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born』
【Presented by ZAIA.】
流れるような動きでプログライズキーを装填し変身。
「アーク、何故アークゼロの姿をしているかは知らないが…お前は私たちが倒す!」
そして、001とバルカンにサウザーを加えた三人はアークへと同時攻撃を仕掛ける。001とバルカンは左右から殴り掛かろうとし、サウザーはアークの後ろに回り込みサウザンドジャッカーを突き出そうとした。
「ーー!!」
しかし、その攻撃が届くより先にアークは動く。
「「っ!」」
まず最初にアークに対処されたのは001とバルカン。接近する二人にアークは生成したアタッシュショットガン二挺を両手に持ち、同時にトリガーを引き連射し、
【チャージライズ!】
【フルチャージ!】
【カバンショット!】
「ぐうううッ!!」
「うおおおッ!!」
アークの隻眼が赤く発光するとその手にある二挺のアタッシュショットガンが自動変形し牽制、というにはあまりに強力な銃撃が二人を襲う。
「ふんっ!!」
その隙にサウザーがサウザンドジャッカーを背後から突き出そうとした直前。両手に持ったアタッシュショットガンを同時に放り捨て、サウザーに振り返ったアークはサウザンドジャッカーの切っ先を左手で掴む。
「くっ! ならば!」
【ジャックライズ!】
それに対してサウザーはサウザンドジャッカーのグリップエンドを自ら引いてジャッキングブレイクを放とうとする。だが、アークはそれを許さなかった。
「うぐっ!?」
アークは左手でサウザンドジャッカーを掴み抑えたまま、右拳でサウザーの顔面を連続で殴り、怯んだ瞬間を見逃さずサウザンドジャッカーを強引に奪い取り、
「! があっ!?」
サウザンドジャッカーを叩きつけるように力任せに振り下ろしサウザーを吹き飛ばす。
【ジャッキングブレイク!】
「ぐはあッ!!」
最後にはトリガーを引き、炎を纏わせたサウザンドジャッカーをサウザーに向けて乱暴に投擲。それを避けられずサウザーを腕で防ごうとしたが防ぎ切れずにアーマーから火花が散る。
「くッ、なんて力任せな戦い方だ……!」
アークの今までからは考えられないパワープレイに衝撃を受けながら何とか身を起こそうとし、
(だが、この戦い方はまるでーー)
「ーーいいや、ありえない」
ふと、そのアークの戦い方が
「……………」
そんなサウザーの心を知ってか知らずか、次にとったアークの行動はサウザーに更なる衝撃を与えるとともに最悪な考えを再びサウザーの脳裏に浮かばせた。
【ショットライザー!】
アークは自身の右手にどこからともなく取り出したショットライザーを持った。そう、
『ストロング!』
「! 何ッ……!?」
アークは装填されたプログライズキーのボタンを押すとエネルギーが銃口に収束される中、大きく構えをとった。
「アーク、貴様まさか…!? いや、そんな馬鹿なことーー」
その構えをサウザーは、天津垓は誰よりもよく見ていた。知っていた。
【アメイジングブラスト!】
動揺するサウザーに構うことなく、アークはエネルギーが完璧に収束した銃口を真っ直ぐとサウザーに向けるとショットライザーを持った右手を左手で抑えるーー
「ぐわあああああーーッ!!」
瞬間、ライトグリーンの巨大で鋭いヘラクレスの角のような形状をした一撃がサウザーの胴体を貫き、サウザーのアーマーから火花が散り爆発。必殺技を受けたサウザーは変身解除する。
そして、変身解除し生身に戻った垓へとアークはショットライザーを片手に持ちながら歩み寄り、
【ライジングユートピア!】
【ランペイジブラストフィーバー!】
「「はあああああーーッ!!」」
その背に001とバルカンは同時に高く跳躍しライダーキックの構えをとる。
「…………」
だが、アークはそれを防御する素振りも回避する素振りも見せず、装着したドライバーに触れる。それを見た垓は必殺技を発動しようとしているのかと考えーーその考えは裏切られた。
アークは必殺技を発動させたのではなく変身を解除した。
「!? よせッ!!」
「「ッ!?」」
その姿を目にした垓は咄嗟に二人に叫び、垓の叫びに二人は空中でライダーキックの構えを解いて着地する。
「! ……ヒューマギア、じゃない?」
変身解除し乗っ取ったボディを晒したアークが二人の位置からだと後ろ姿しか見えなかった。しかし、ヒューマギアなら耳に付いている筈のデバイスがないことは後ろ姿からだけでも分かる。またその後ろ姿に不思議と二人は見覚えがあった。
「……こんな、ことが……」
そして、変身解除したアークの姿を正面から視認した垓は唖然としながら呟く。そんな垓の姿に疑問を覚えた二人だが、
「う、嘘だろ……?」
「あ、ありえねぇ……!」
その疑問はアークが二人に振り返った瞬間に納得に変わり、とてつもない衝撃が二人を襲った。
「ーー驚いたか?」
そんな三者を嘲笑うかのように
「アーク、貴様ーー」
「ーー私の友に、一体何をしたァ!?」
アークが乗っ取ったボディーーその姿は紛れもない「天本太陽」のものだった。
「見ての通り、この男の体は私のものとなった。それだけのことだ」
垓の叫びに事も無げにそう返した
「本来の予定であればこの男の体を乗っ取るまでもなく、アークワンの力によって人類滅亡は完了する筈だった。だが、天本太陽とゼアは私の予測を超えた」
「だから、私は自らの予測を超えるもの、その力を奪う策を取った」
その策が天本太陽の体を乗っ取ること。
「しかし、私にも誤算はあった。それはこの男の体だ」
「この男の体はゼアが託した力により壊滅的な状態だった。それこそアークワンの変身には耐え切れない程度にな。だからこそ、私はアークゼロに変身するしかなかった」
「しかし、その問題も今解決した。お前たちがウォーミングアップに付き合ってくれたお陰でな」
感謝するぞ、と告げてアークは右手に持ったショットライザーを捨てると懐から緑色のプログライズキー、ウイニングヘラクレスプログライズキーを取り出す。
「一体何をする気だ…!?」
「お前たちのお陰で今のこの男の体がどれだけの負荷に耐え切れるのか。どれだけの負荷に耐え切れないのか。その正確なラインが把握できた」
アークが口にした瞬間、腰に装着したドライバーの中央が怪しく発光し、それに呼応する様にウイニングヘラクレスプログライズキーも発光を始めーー悪意のエネルギーが赤黒い泥のようにアークの手から溢れ出しプログライズキーに影響を及ぼす。
「そのプログライズキーは……!」
結果、ウイニングヘラクレスプログライズキーは形状も色もまるでアークワンプログライズキーのようなものへと変貌を果たす。
「ゼア、貴様が託した力は私が貰う」
『アークバルデル!』
そして、アークは変貌したプログライズキーを起動し自動展開させてドライバーへと装填した。
「変身」
【シンギュライズ】
【恐怖 憤怒 闘争 絶滅せよ!】
【コンクルージョン・コンプリート】
ーー瞬間、最強の味方だった力は最強の敵の力に変身。
ーー最後の絶望が仮面ライダー達の前に降臨した。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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仮面ライダーアークバルデル
【挿絵表示】
SPEC
■身長:200.0cm
■体重:100.5kg
■パンチ力:120.0t
■キック力:114.4t
■ジャンプ力:100.0m(ひと跳び)
■走力:0.3秒(100m)
★必殺技:ファイナルコンクルージョン
<Point>
天本太陽の体を乗っ取ったアークがアークドライバーワンとアークバルデルプログライズキーを使って変身した姿。
仮面ライダーゼロワン!
第29話 タイムリミット