デイブレイク被害者が仮面ライダーになる話   作:平々凡々侍

5 / 49
今回はオリ主「俺一般人何だよなぁ」って話。
では、どうぞ!


ある男と天津社長《1000%》

【ーー市街地の道が黒く焦げ、大きな焼け跡ができているのが分かります。原因は不明で、現在警察は昨夜ここで何があったのか。目撃者がいないかーー】

「…………」

 

 あまりにいい天気な今日。

 朝から昨夜の出来事を嫌でも思い出すーー忘れるつもりはないけれどーーニュースを伝えるテレビを見て俺は食パンを口に咥えたまま静止した。おぉう! 危ない危ない…危うく食パン落とすとこだった。改めて食パンにぱくつきながら思う。

 

 いや、がっつりニュースなってるやん!

 よくよく考えればあんな戦って必殺技も撃って、化け物も派手に爆発したのだ。証拠隠滅なんてできるわけないし、昨夜の俺はそんなことにまで頭が回っていなかったからしょうがないんだが…。唯一の救いは彼処の周囲には監視カメラが一つも無かったということだろうか。

 

(…これ大丈夫か? 俺捕まん……いやいや、俺悪いことしてないし? むしろ昨日のあれは善行だし?)

「大丈夫だろう、うん」

 

 そうして俺は考えるのをやめた(カーズ)

 まぁ捕まりはしないだろ…多分きっと。

 

 ……これで逮捕とかされたら笑えねーな。

 

「それより、これからどうするか…」

 

 なんて既に俺以外誰も居ないリビングでぼそりと呟く。

 これからどうするか、なんて口にしつつ「どうするか」なんてとっくに分かりきっている。

 

 ショットライザーにプログライズキー。

 お詫びとして貰ったハイテクノロジーの塊。

 それが有ろうが無かろうが俺が今すべき事はただ一つ。

 

 この天本太陽には『夢』がある!(ジョルノ)

 

(就職して、父さんと母さんに親孝行する…そんで普通に幸せに生きる)

 

 なんの面白味もないありふれたものだが。

 これが俺、天本太陽の…言うなれば夢だった。

 ギャングスターになりたいとかカッコいい夢じゃなくて悪かったな! ……冷静に考えてギャングスターになるのが夢ってヤベーやつだなおい。

 

「…とりま、これ返さなきゃな」

 

 俺は足元に置かれていたアタッシュケースに視線を落とす。

 中に入っているのは昨夜使用したショットライザー、プログライズキー、バックルとベルトにマニュアル。元から中に入っていた全てである。そう、俺はお詫びとして貰ったこれら全てを渡してきた本人の天津さんに返すつもりだった。理由は単純明快。

 

 まず第一に、これは俺のような一般人が持っていていい代物ではないと昨夜の戦闘で身を以て体感したから。

 

 次にこれをもっと上手く使える人がいると思ったから。

 俺とは違い人一倍正義感が強いような……絵に描いたような正義の味方(ヒーロー)に相応しい存在は探せば他にきっといる。

 

 昨日は何だかんだ化け物と戦ってこれらを使ったが、正直俺は怖かった。確かに今までに感じたことのないような全能感を抱き、戦闘している時はかなりハイテンションになっていた事は認める。だけれども、

 

「やっぱ違うよなぁ」

 

 ーーやっぱりそれは俺の柄じゃないと思う。

 昨夜、見知らぬ女性に助けを求められた時。結果的に俺は彼女を助けるような行動をとったが…あの時抱いた気持ちは嘘偽りない俺の本心だった。赤の他人に助けを求められて最悪な気分になり、我が身可愛さに見捨てて逃げ出そうとした…コレはそんな人間が持ってていい代物ではない筈だろ?

 

 昨夜の時点では「コレ使って人助けとかやってみるか?」なんて案外本気で考えていたりしたが、冷静になって考えてみたらありえないという結論に至った。そもそも仕事と人助けを両立できるほどの器用さが俺にあるか?と考えたらもちろん否だ。

 

「よし、電話するか」

 

 天津さんから貰った名刺を見ながら俺は電話番号を打とうとした、その時。ーー俺のスマホが鳴る。

 

(電話? 一体誰から……この電話番号…)

 

 スマホに映る電話番号と天津さんの名刺を交互に見て気付く。名刺に書いてある電話番号と同じ電話番号からの電話だという事に。

 

「…はい、もしもし」

『やぁ太陽君。昨日は本当に素晴らしい戦闘を見せてもらいました。心から賞賛させてもらいますよ』

 

 電話越しのその発言を聞いた瞬間、俺はニュースを見た時と同じ…いやそれ以上の衝撃を受けた。

 

 なんであんたがそれを知っている?

 見せてもらった…?

 彼処には監視カメラなんてない。

 …何故だ?

 

「……何の話ですか?」

『隠す必要はありませんよ。私は昨夜の君の行動を口外するつもりはありませんから。仮に私が口外したとしても君の行動は何もやましいことは無いのですから、痛くも痒くも無いでしょう』

「…病室でも聞きましたけど、大企業の天津社長さんが俺みたいな一般人に何用ですかね?」

 

 天津さんがどんな性格か、一度会った時しかない俺にはさっぱり分からない。だから天津さんの言葉を簡単に信用することはできない。

 とりあえず用件を聞こう。

 話はそれからだ。

 

『一般人…? 仮面ライダーに変身しマギアを倒しておきながら? ふふ、面白い冗談ですね』

「マギア……?」

『あぁそういえば君はまだ知りませんでしたね。私の用件は…マギアの説明も含めて、会社の方で話させていただきたいのですが……どうでしょう?』

「……」

 

 怪しい。

 怪し過ぎる。

 電話で話せない用件って何だ?

 どう考えても普通の用ではなさそうだ。

 どうする?

 

「えっと…会社っていうのは……」

『ZAIAエンタープライズジャパンですよ』

「ぁ、デスヨネー」

 

 天津さんの名刺を見ながら俺は言う。

 会社に来てくださいって…何だ? 俺何かした? 気付いてないけど俺なんかやっちまったのか? 俺また何かやっちゃいました? ……またってなんだよ!

 

 …十中八九用件は昨夜の件関連か?

 

 あ、俺そもそもZAIA社の場所知らなかったわ。

 

「分かりました。早速伺わせてもらいます。…あー、服装とかは……?」

『私服で構いませんよ。それと、用件があるのは私の方ですから態々君にご足労いただく訳にはいきません。送迎車をこちらで手配しますので、太陽君は自宅で待機していてください。それでは失礼』

「…あ、はい」

 

 伝えることは伝えた。

 そう言わんばかりの勢いで電話を切った天津さん。

 いや怪しいとか思ってすいませんねホントに!

 家に送迎車手配してくれるとか普通に助かっ……ちょっと待てよ?

 

「天津さんなんで俺ん家の場所知ってんの…?」

 

 やばい。

 触れてはならない事実に触れたかもしれん。

 すいません。やっぱり今からお断りしてもいいっすか?

 

 それから30分後。

 自宅前に如何にも高そうな白いリムジンが来た時は流石にビビったよね。人生でリムジン乗る機会なんて滅多にないよなぁー……あとで美月に自慢してやるか。

 

「…………」

(天津さんの用件が何かは知らないけど、手間が省けたのはよかったな)

 

 後部座席に座りながら、足元に置いたアタッシュケースに目を落とす。中身は言うまでもない。

 

(早速今日、全部返そう)

 

 車の中でそんな事を思う俺は当然まだ知る由もなかった。

 

 今返そうとしている「ショットライザー」と「プログライズキー」。そして、これから二度目の出会いを果たす「天津垓」という人物。

 

 それら全てと俺が今後、随分長い付き合いになるということを。




仮面ライダーやヒーローもののアニメとかの主人公が変身アイテム的なものを第二話で「手放そう(返そう)」とする作品滅多になさそう笑

最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想や批評などありましたら遠慮なくお願いします!
また、出来る限り無いように書いていますがもし原作ゼロワンと矛盾する部分がありましたら教えてもらえると助かります。

補足?説明
・実はオリ主がショットライザーなどを返そうとしている事を現段階で天津社長は把握していません。

序章のストーリーについて

  • エンディングまでダイジェストで突っ走る
  • 出来る限り丁寧にエンディングまで歩く
  • 作者の好きなようにどうぞー

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。