一番星の日常を観測する   作:谷川涼

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チーム一番星の皆が恋バナで盛り上がっている……?


バレンタインデーの残り香

 バレンタイン。

 アイドルの皆にとっては大忙しのイベントだ。

 どのユニットも、それぞれが受けた仕事を精一杯こなし、着実に人気を高めている。それは、ネット上のファンの反応を見ても間違いない。

 中でもアンティーカの演技は評判が良い。

 忙しい中、練習に協力した甲斐があったものだ。最も、霧子に食べられる練習ならいくらでも時間は割けるだろう。

 

 

 そんな慌ただしかったバレンタインデーが過ぎ、ようやく平常業務に落ち着いた事務所。

 書類仕事やPCだけで片付く仕事。中途半端に紙とデータが混ざった時代。

 雑多な事後処理に追われる中、今日も事務所には甘奈・果穂・灯織のチーム一番星が待機(?)している。

(果穂……というか、放クラの合同レッスン以外はオフだったはずだが)

 甜花なんかはバレンタインイベントが終わると同時に、お休み要求メールを連打してきた。まあ、これはすぐに誤送信だと分かったから、休みは一週間だけにしておいた。

 テンションが下がる音がした。

 甘奈も家で甜花が休んでいるだろうに、ここで果穂の相手をしてくれている。頼んだわけじゃないが、助かるから何も言わない。今は、はづきさんもデスクワークで手が離せないし。

 それに、ユニット外のメンバーと仲が深まるのは良い事だ。他の事務所と比べて何となく気にはなっていたからな。

 こうして仕事をしている最中にも、果穂たちの楽しそうな話し声がラジオのように流れている。

 たいして聞き取れはしないが、学校での話だろう。ああいう風に皆が楽しそうにしてくれていると、仕事の手も進む。

 

「えーっ☆ 果穂ちゃんって恋バナとかするんだー」

 

  ( ゚д゚) ガタッ

 

 思わず席を立った。

 声を出さなかった自分を褒めたい。

「あっつ――」

 コーヒーをこぼしていた。

 声を抑えて気付かれないようにした自分を褒めたい。

 コーヒーがPCに届く前に慌ててティッシュで壁を作ると、ふきんの増援が現れた。どうやら灯織には気付かれたらしい。

「プロデューサー? 大丈夫ですか?」

「あ、ああ」

「やっぱり、疲れてますよね? 睡眠時間は取れてますか?」

 灯織は、寝ぼけてコーヒーをこぼしたと思っているらしい。そう誤魔化したいところだが、それでは灯織の小言が増えるだろうから……。

「ちゃんと寝てるぞ。灯織の『事務的に羊を数えてみた』動画でぐっすりだ」

「は、はぁ……。それは、どうも……」

 灯織が何とも言えない表情をした。よし、何とか躱せたな。

「ほらこっちはいいから、灯織もあの二人と学校の話に花を咲かせてきたらどうだ?」

「そうですね。仕事の邪魔がしたい訳じゃ、ないですから」

 そう言った灯織はソファの方に行こうとしたが、立ち止まって振り向いた。

「あの、仕事以外の用事があったら言って下さいね。私、今日は予定ありませんから」

「ああ、助かる」

 というか、担当アイドルのスケジュールは把握している。オフなのに何で来たんだ? という言葉を投げかける前に、灯織は戻っていった。

 コーヒー入れの練習でもしているのかもしれない。この前は果穂の紅茶いれの特訓に付き合ったしな。

 ……そうだ果穂だ。

 さっき恋バナをしているとか何とか言ってたか……?

 少し三人の会話に耳を傾けてみるか。

 

 いやいや、仕事だ仕事。椅子に座れ。

 

「きゃー☆ 本命チョコレート!?」

 

 

ε=ヾ(⌒(_´-ω・)_ズコー

 

 今、ありのままに起こったことを話そう。

 椅子に座ろうとしたら、なぜか床に尻餅をついていた。自分でも何が起きたか分からない。

 少し動けずにいると、再び灯織が来て手を差し伸べてくれた。

「……すまない」

「……いえ」

 妙な沈黙が流れた。

「……プロデューサーは、果穂の話が気になってるんですね?」

 灯織が、ほんの少し不満そうな顔をしている。

 悪戯がバレた子供のような気分だが、素直に白状しよう。

「果穂にはまだ早すぎる」

「あれぐらいの女の子は、ませてますから」

「しかしアイドルとしての立場がだな」

 しかも放クラだぞ? そういうのとは縁遠い元気ユニットのリーダーが恋バナ……。

「果穂のご両親にも申し訳が立たない」

「あの、プロデューサーは勘違いしてると思います」

 なに?

「あれは果穂の友達の話です」

「い、いや、友達の話に見せかけた自分の事を相談とか」

「違います。果穂はそんな事をする子ですか?」

 ……そう、だな。

「余計な勘ぐりをした、すまない」

「いえ、別に……でも、そんなに気になるなら――」

 灯織が言いよどんだ。

 何か後ろめたいことでもあるような表情だ。

「なるなら、なんだ?」

「……私が今から聞いてきて、後で報告しても……」

 仕事が手に付かないようなので。と、言い訳がましく言う灯織は、自分のスパイみたいな発想に嫌気がさしているようだった。

 だが、スパイやクラッカーに義賊など、見方によっては正義側になることもあるわけで。

 そうだ、クールなスパイ役の灯織なんて、実に絵になる女主人公で格好いい。

「うん……、灯織はいい女が似合う」

「……。

 …………。

 とにかく。私が話を聞いて来ますから、大人しく仕事を進めてて下さい」

 灯織はそう言って、再びソファに戻っていく。

 視線を移すと、果穂と甘奈の話は盛り上がっていた。

「あ、果穂ちゃんもプロデューサーさんにバレンタイン渡したんだ」

「はい! 写真も撮ってあります!」

「見せて見せて~」

 果穂が「どうぞ!」と言って甘奈にスマホを見せている。

 あのチョコスコーン、本当に美味しかった。いつものコーヒーが王族御用達のコーヒーにでもなったような気がした。暖かな幸せの味とでも言うんだろうか。わざわざ作ってくれたというのがまた……。

 甘奈が果穂のスマホを見て「すごーい」やら「作ったの?」とか反応している。そうだろうそうだろう、果穂はしっかりしてるからな。

 

「もしかして、果穂ちゃんも本命チョコだったり~?」

(!?)

 何てことを聞くんだ甘奈、それはパンドラの箱だぞ。

 果穂の返事は……?

「もちろん! 義理っ義理の義理! です!」

 ……当たり前だろう。

 ……果穂は、しっかりしてるからな。

 果穂の返事を深く受け止めていると、何だか灯織から冷たい目で見られているような気がした。

 暖かかった気持ちが、再び固まる。体が、チョコレートに……なりはしない。

 しがない事を考えている間にも、甘奈たちの話は進んでいる。

「義理っ義理の義理? 何それ~?」

「これはですねぇ……。

 夏葉さんがプロデューサーさんに義理チョコは寂しいと言ったので、樹里ちゃんが新しく命名してくれた必殺技です!」

 確かに必殺だ。そんなに義理だと強調されると、さすがに堪える。

「へー、夏葉ちゃんが義理じゃ寂しいかぁ……」

 ……この話は、もう終りにしてくれないものだろうか。

 うろんな目で眩しい子達を見ていると、颯爽と灯織が会話に割って入った。

「果穂、友達の恋バナはもういいの?」

「はっ、そうでした……!」

 果穂の気がそれた。甘奈が少し残念そうな雰囲気だが、いい判断だ灯織。

「あの、クラスの子に恋愛相談されたんですけど、あたしには難しくって……。

 きっと放クラの皆さんに聞いても……」

 果穂が困った顔をするが、灯織は動じない。ずいぶん頼もしいな。

「言ってみて果穂。

 甘奈ならそういうの慣れてるから」

 何? 甘奈は恋のlesson初級編をクリアしていた……?

「ちょっと灯織ちゃ~ん?

 甘奈は、相談されることが多いってだけだからね」

「え、うん。だから慣れてるんじゃ……?」

「~っ……そうなんだけどっ、恋愛慣れしてるみたいに聞こえるのはダメだよ?

 甘奈たち、アイドルなんだから」

 いやアイドルだからダメって訳はないんだが……。まあ、アルストは他より大事にした方がいいかもな。ファン層的に。

 ふと、甘奈と目が合った。甘奈も年頃の女の子だっていうのに申し訳ない。と、目で謝っておいた。

 あわてて目をそらされた。悲しい。

「そ、それで果穂ちゃん。何が難しいのかな?」

「えっと、その子はバレンタインデーに本命チョコだけじゃダメだって言って、ネクタイもプレゼントしたんですけど」

「ネ、ネクタイ?」

 甘奈が「小学生で……」と驚いている。

 そういえば、クリスマスに甘奈からネクタイもらったな。咲耶もだし、めぐるはネクタイピン。

 ……はやってるのか? ネクタイ。

「それでですね、その子がネクタイをプレゼントしたところまでは良かったんですけど」

「け、けど……?」

 甘奈が恐る恐る聞いた。

「相手の子が、まだそのネクタイをしてるところを見たことがないって」

 そりゃ、小学生で付ける機会はそう無いだろう。

「それは、小学生だから」

 灯織もそう言っている。

「はい、あたしもそう思ったんですけど……。

 その子はあの場でネクタイを結んであげられなかったから、今も付けてきてくれないんだって悩んでて……」

 小学生でそんな悩み方するか?

 それ本当に小学生か?

 いや、果穂の友達ならあり得るのか?

「それで、お二人にも聞きたいんですけど」と、果穂が甘奈と灯織を見た。

「な、何かな?」

「聞くだけなら……」

 二人とも及び腰になっていた。

「男の人って、本当に、自分の着るものを女の人に手伝ってもらって嬉しいんでしょうか」

「……」

「……」

 二人とも黙ってしまった。

 甘奈も灯織も、視線で互いを牽制している。

 ちなみに、経験談としては小恥ずかしいな。

 そう果穂に伝えてもいいが、人は悩んで成長するものだろう。乙女よ、悩んで育て。

「あの、どうかしましたか……?」

 果穂が困っている。やっぱり言いに行った方がいいか?

「甘奈さんは、分かりますか?」

「ぅえっ!? 甘奈?」

「はい!」

「え、えーっと……う、嬉しいはずだよ!?

 ちゃんとプロ――知り合いのプレゼントは上手くいってるみたいだし!」

 甘奈がチラリとこちらを見た。そういえば今日は、落ち着いた赤色のネクタイだったか。

「そうですか……灯織さんは?」

「い、いや私は、ネクタイは結んだことないからちょっと」

 逃げたな灯織。こっちはあの時の羞恥を、マフラーを見る度に思い出すというのに。

 しかし、果穂探偵の耳は誤魔化せなかったようだ。

「ネクタイ『は』?

 灯織さん、つまり……?」

「あっ」

 灯織も自分の迂闊さに気付いたらしい。

 その灯織に、甘奈が過剰な反応をした。

「えええぇっ!? 灯織ちゃんも何か身に付けるものをプロデューサーさんにあげたの!?」

「えぇ!? あ、あげてないって。

 ……というか甘奈、もしかしてネクタイ付けてあげた? プロデューサーに?」

 相変わらずいい勘をしている。果穂と灯織で探偵もの、いけるな。

 甘奈が、トリックを見破られた犯人のように口をあんぐり開けている。

 灯織探偵が、勝ち誇った顔で甘奈に優しく話しかけた。チェックメイトだ。

「ダメだよ甘奈。私達、アイドルなんだから」

 前に自分が言った言葉を突き返された甘奈は、顔を赤くして、言葉にならない声をあげた。

「~~~~っ!!」

 いい薬だろう。最近の甘奈は、外でも誤解されかねない事をやってくる。

 これで少しでも大人しくなれば……。と思っていたら、甘奈はまだ折れていなかった。灯織に向かって指を指し、異議ありとでも言いたげな顔をした。

「灯織ちゃん! 話をそらそうたって、そうはいかないんだから!」

「そうです! 灯織さん!」

 果穂も甘奈側に立っていた。

 灯織が狼狽えた顔をするが、逃げ道はない。

「灯織ちゃん! ネクタイじゃないなら何をあげたの!?」

 正直に言えば痛み分け。甘奈の視線はそう言っていた。

 対して、目を泳がせた灯織が答える。

「わ、私がプレゼントしたのはCDだから。べ、別に……」

 その灯織の発言に反応したのは、果穂が以前に買ったヒーローの変身ガジェットだった。

 ビープ音を鳴らすそれに気付いた果穂は、灯織を見て悲しそうな顔をした。

「灯織さん」

「な、なに?」

「ウソを、つきましたね?」

「えっ?」

 灯織のために言っておくが、一応嘘ではない。クリスマスにもらったのはヒーリングCDだからだ。

 だが、今話してるのはそういう事じゃないからな。それを見分けられる最近のおもちゃ、ずいぶん高性能な嘘発見器を搭載しているらしい。

「ヒーローに、ウソは通用しません」

「そうだよ灯織ちゃん! 観念して!」

 甘奈が、ヒーロー然とした果穂のノリに乗っかるように小芝居を始めた。

「甘奈たち、かけがえのない仲間だと思ってたのに……」

「あ、甘奈……」

 灯織の顔が、結構な罪悪感に苛まれている。

 そんな灯織に、果穂が畳みかけるように迫る。

「灯織さん! 今ならまだ、ウソツキ完全体にはなりません! 正直に白状して下さい!」

「くっ……」

 灯織が、心を蝕むウソツキウィルスに抵抗している。

 がんばれ灯織! 負けるな灯織!

 一番星の煌めきで、立ち向かえ灯織!

 

「さあ灯織さん! 悔い改めて下さい!」

 その一言が決定打だったようだ。

 ヒーロー果穂の前で、苦しそうだった灯織の表情が晴れていく。

「灯織さん。あなたは、プロデューサーさんに何をしたんですか?」

「……私は」

 その光景は、まるで太陽に照らされる月。

 神秘的とも言える雰囲気は、周りの全てを浄化しそうだった。

「私は、待ち合わせに遅れて走ってきた、プロデューサーのマフラーが乱れていたから、巻き直しました」

 正直に言った灯織に、果穂も甘奈もうんうんと頷いている。

 チーム一番星の仲はさらに深まっただろう。

「って、それ甘奈がネクタイ結んだのと変わらなくない!?」

 全くその通りだった。灯織もたまに驚くようなことを唐突にしてくるからな……。

「灯織ちゃん!? どういうつもり!? しかもそれ外だよね!?」

「い、いや、あの時は、つい手が勝手に……」

 灯織が甘奈の追求にしどろもどろになっている。そんな灯織に、果穂が言った。

「灯織さん。『つい』という言葉は正義ではありません……!」

「ご、ごめん……」

「いったい何度、ちょこ先輩がその言葉で体重を増やしたと思ってるんですか」

 アイドルの敵とも言える言葉だった。後で夏葉にトレーニングの見直しを相談しよう。

「チョコちゃんの体重はどうでもいいの!」

 良くないぞ甘奈。

「灯織ちゃん! そんなところ写真でも撮られたらどうするの!?」

 至極全うな注意だが、自身にもして欲しいところだ。

 呆れていると後ろから、くいくいとスーツの裾が引っ張られている事に気付いた。

 振り返ると、凛世がいた。向こうの三人と違い静かに佇む様は、実に雅だ。

「おはよう、ございます。プロデューサーさま……」

「ああ、おはよう凛世。もうそんな時間か」

「はい。果穂さんを、お迎えに……」

 凛世は一番星の三人を見ると、柔らかく微笑んだ。

「ふふ。今日も、賑やかな事務所のようで」

「ん……まあ、そうだな」

 仕事を進める環境ではなくなっているが。

 改めて三人を見ると、甘奈と灯織は言い合いを続けていた。しかし、それを見る果穂は再び不思議そうな顔をしている。

 やがて、こちらの視線に気付いたのか、二人を置いてトテトテとやって来た。

「凛世さん、おはようございます」

「はい、おはようございます」

 果穂に元気がない、由々しき自体だ。

「果穂、どうかしたか?」

「あの、プロデューサーさんにネクタイとかマフラーをプレゼントするのって、いったい何がいけないんでしょうか……」

 何もいけなくはないんだ果穂……。しかし、あの残念に言い争う甘奈と灯織をどう説明すればいいものか。

 いや、説明するのは簡単だ。

 ただ、果穂にはまだ早い。早いはずだ。

「プロデューサーさま」

「うん? 何だ凛世?」

「ここは……凛世に、お任せを」

 いいのか? という視線に、頷く凛世。

 そうか……では、お手並み拝見といこうじゃないか。正直、助かった。

「果穂さん」

「はい?」

 果穂を見る凛世の目は優しく、これこそが283プロのあるべき姿だと胸が温かくなる。

「これは、想いの問題なのでしょう……」

「おもい……?」

「ヒーローは……どうして、人助けをするのでしょうか」

「それは、優しくて困った人を放っておけないから……?」

「……では、悪の幹部が、人助けをしているのを見たことは……?」

「……あります」

 たまにあるな。策士系の悪人が一般人を騙したり。

「その悪人は……優しくて、人助けを?」

「い、いえっ。あれは下心です! 助けた人を操るための!」

「ふふ。そういう事……で、ございます」

「えっ?」

 つまり?

「果穂さんは、プロデューサーさまへの贈り物……どんなお気持ちで?」

「……喜んでほしくて、です」

 喜んだぞ。果穂がナンバーワンだ。

「見返りを、求めない。

 果穂さんのそれは……無償の愛に、ございます」

「むしょーの愛……?」

「『愛』の字にある、真ん中の心……真心とも、呼べるもの。

 この気持ちは……プロデューサーさまへ贈っても、問題ありません」

「えっ? 喜んで欲しい以外にどんな気持ちが……」

 なるほど、凛世もよく勉強したな。

 しかし凛世が言う前に、果穂も気付いたようだ。

「あっ! 下心! ですか!?」

「はい。

 下心……またの名を『恋』と言います」

「で、でも凛世さん。恋は素敵なものなんじゃ……?」

「はい、それはもう。

 ですが……こと贈り物に関しては、様々な思惑が飛び交うようで」

「おもわく……?」

「マメ丸さんは……まぁきんぐ等、するのでしょうか?」

「え? はい! 家の中でもして大変でした……!」

 また凛世も随分アレなものに例えたな。

 確か、縄張りを守るのと、自分の存在を他の犬に誇示する行動。だったか?

「つまり……プロデューサーさまが身に付けるものを贈る、という事は――」

「プロデューサーさんに、マーキングしようとしてます!」

「そして、まぁきんぐが重なると……?」

「縄張り争いが始まります!」

「争いが起きてしまうのは、283プロにとって良くないこと……」

「たしかに……!」

 その通りだ。

 果穂の答えに満足した凛世は、ふわりと微笑みながら、未だに言い合う甘奈と灯織を見た。

 

「あのお二人が、どう想っているかは……凛世には分かりませぬが」

 

 

 バレンタインデーが過ぎたばかりの事務所。

 恋愛という甘い残り香を皆と味わう。

 

 そんな中、はづきさんは耳栓をして、一人もくもくと仕事を進め続けていた。

 

 すみません、後でおごります。

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