メンタルアップグレードに関する各種記録   作:由祐

6 / 6
404小隊の日常及び補給についてのオリジナル設定有り。
サブタイトルの「404」は「Not Found」と読みます。


UMP45:Answer is 404.

私は、一体どこで道を踏み外してしまったのか。

 

もしかすれば普通に親友と平穏な日常を過ごす未来も、きっと有ったのかもしれない。

 

けれど、そうはならなかった。

 

 

グリフィンの闇の中にいる秘匿部隊とはいえ、最低限の補給は受けている。

 

そんな中で、垣間見てしまうのだ。

 

私ではない「私」が、そこの指揮官と積み上げた絆を。

 

ダミーの内の一体と偽装し、躯体の不調を解消する。

 

私達が404で有る事を知られてはならない。

 

それを守るためだとは分かっているが、毎度毎度こうして潜り込まなければならないのはどうにかならない物か。

 

他の3人は戦闘中にダミーの内一体として破壊されたように偽装することで離脱しているし、

私だってそうしようと努めている。

 

……そう、努めてはいるのだ。

 

だと言うのに、なんで、私は……

 

毎回のように、必死で戦う「私」を助けずにはいられないのだろうか。

 

 

この私が今戦えているのは、あの子の遺したデータのおかげだ。

 

電子戦専用人形だった私を、適当に使い潰すだけの為に宛がわれた銃、UMP45。

 

正直、私はこの銃の事を好きになれない。

 

生きていくために必要だから、握っている。

 

それだけなんだ。

 

だというのに、後発の私は平然と涼しい顔で戦っている。

 

……そもそも、戦術人形として銃に合わせて製造されたからかもしれないが。

 

ああ、なんて羨ましい。

 

あの子との一件が無かったとして、それだけで私はあんなふうに笑えるのだろうか。

 

……嫌になる。

 

こんなところまで、404(Not Found)で無くて良いのに。

 

 

()に振り回されながら、親友(40)と笑い合う「(45)」を見る。

 

幸せそうに、笑っている。

 

環境がどう違った所で、「私」と9は姉妹となるし、「私」とあの子は親友になるのだろうか。

 

……ああ、なんでそんな風に、悩みなく笑えるのだか。

 

いやまぁ、私のような経験はそもそもしないのが一番なのは自分でもわかっているけれど。

 

此処の指揮官は、甘い所は有るが人形に対する差別意識は無いしかなりの優良物件だ。

 

あの子たちが私たちの人間に対する忌避感まで、引き継いでないのは良い事なのだろう。

 

羨ましい。

 

あの子と、並び立って戦うことが叶う「私」の事が。

 

なのに、どうして。

 

私は、「私」のことを微笑ましいものだと受け入れているの?

 

私の中にその答えは見つからない。

 

なんでだろうか。

 

記憶の中を探せば、見つかるのだろうか……。

 

 

「……416」

 

心配そうな顔をして、こちらの顔を覗き込んでくる。

 

「……貴女、あの基地で何か有ったの?」

 

こいつ自分の事は地雷な癖に、他人の事になったら割と乱雑に踏み込んできやがる。

 

「まぁ、色々とね」

つーか前屈みになってんじゃねぇよ胸のデカさを強調しやがって

私が薄いからって煽ってんのかああむかつくめっちゃむかつく

いっそその無駄にデカい胸を引きちぎってやろうかてめぇこんちくせう

「……そう。隠すのは良いけど、もっと上手くやりなさい」

 

……

……ついさっきまであんなことを考えていた私にそんな風に優しくしないで……

……違うんです隠したいのはそっちじゃないんです……

……やめてよ惨めになるから……

 

「……ありがと」

 

……無理矢理に嫉妬や羨望を心の奥底に押し込めて捻り出す。

 

「別に。何も解決していないでしょうが」

 

全く……

 

感謝くらい素直に受け取れば良いのに……

 

私はこいつのこういう所が嫌いなのだ。

 

いや、胸がでかいのは好きではないけど羨ましいだけだし……、うん。

 

「それもそっか」

 

あんたは私の母親か何かなのと思ってしまうから。

 

「そうよ、隊長」

 

そして、毎回冷や汗と共に気づくのだ。

 

これ、反抗期の娘って奴なのではないか?と。

 

 

 

「……G11?」

 

珍しい。

 

こいつが自分から布団の外に這い出して来るなんて。

 

「……45。無理してるでしょ」

 

……

 

「あんたにまで言われるなんて……」

 

「流石に、ね。様子がおかしいのが見え見えすぎるよ……」

 

そこまで、様子がおかしかったのだろうか。

 

「……そうかしら?」

 

「うん。いつもはすぐ拠点からいなくなっちゃうのに、ここ最近ずーっと何か考え事してる」

 

……基本怠惰なこいつが言及してくるのだ。

 

きっとあからさまなまでに異常だったのだろう。

 

「まぁ、ちょっとね」

 

……どうせおかしくなっているのだ。

 

もう少し位おかしな言動をしても良いだろう。

 

「……もしかしたら、私が404の隊長になっていない可能性も有ったのかもって」

 

「うん、やっぱり珍しい。45が弱音を吐くなんて」

 

……そんなこと、十分自覚している。

 

「うっさい。アンタだって考えた事くらいは有るでしょ」

 

「まぁ、ね」

 

苦し紛れに吐き捨てる。

 

「でも、さ。どうせ今よりは良くならないよ」

 

「……どうして、そう言い切れるのよ」

 

諦観と共に、G11が告げる。

 

「だってほら、今の私がここにいるのはそもそも私が欠陥品だったからだし」

 

「……それも、そうね」

 

きっと、こいつの出した答えは私が欲しい答えでは無い。

 

「だからさ、ここにいない私は今の私になれる訳がないんだ」

 

でも、答えの一つには変わりない。

 

「そう、なのかしら」

 

……

 

「……でもさ45。そもそもの話だけど私はそんなに悩まなくても良いと思う」

 

「それって、どういう……?」

 

「案外そういう答えってさ、自分で気づいてるものでしょ」

 

「……そういう、モノなのかしら」

 

「ま、思う存分悩みなよ。それをおかずにご飯でも食べるから、さ」

 

「あんた……、偶にすごく性格悪くなるわよね」

 

「そりゃあもう、隊長の性格が悪いからね」

 

「こいつ……」

 

 

 

……結局、G11は思わせぶりなことを言うだけ言ったうえで嗜好品をかっぱらっていった。

 

あいつ、絶対後で〆てやる。

 

「よーんごーねー!」

 

「ぐえっ」

 

後ろから飛びつかれ、バランスを崩す。

 

びたんと、床に倒れた。

 

痛い。

 

「な~い~ん~……っ!」

 

今日という今日はその胸をもいでエアバッグのようにクッションになるか試してやろうか。

 

「……覚悟は良いかしら、9」

 

「何の覚悟かわからないから教えてほしいかな、45姉!」

 

ちょこまかと……っ!

 

「教えてあげるからさっさと捕まりなさいっ!」

 

「嫌だよだって45姉の目がすごい怖いから……っ!あっぶなぁ?!」

 

細かく切り返すせいで……っ!

 

「止まりなさいっ!」

 

「嫌ですっ!」

 

くそ、くそぅ!畜生……っ!

 

「嫌味か畜生揺らしやがってぇぇぇっ!!!」

 

「ちょっ、助けて416?!45姉が壊れたぁぁぁっ?!」

 

「……ちょ、バカ9っ!?私を巻き込まないでよっ!」

 

ムネ、モグ……千切ル……()()KILL(ぎる)……

 

「Grrrrrrrrrrrッ!!!」

 

「「いやぁぁぁっ!?」」

 

「……ほんと、馬鹿ばっか」

 

 

 

 

……ああ、全く。

 

碌な思い出が無い。

 

404小隊は、コント集団か何かだったのだろうか?

 

いや、そんな訳は無い。

 

……

 

……無い、よね?

 

無いと良いなぁ……

 

また私はどこかで選択を間違えてしまったのだろうか。

 

……ふふっ。

 

きっと、私は私の事すら全然理解できていないのだろう。

 

今はそれで良い。

 

それが良いのだ。

 

私の悩みなんて、そんなに大したことでもないのだろう。

 

きっと、誰だって抱くような事なのだ。

 

もしも私が、最初から「UMP45」だったなら。

 

もしも私が、落ちこぼれたりしなかったら。

 

もしも私が、さっさと捨てられていたら。

 

もしも私が、UMP40に出会わなかったら。

 

もしも私が、UMP40と仲良くならなかったら。

 

もしも私が、UMP40を撃てなかったら。

 

もしも私が、404小隊にならなかったら。

 

もしも私が、アイツらを集めなかったら。

 

もしも、もしも、もしも。

 

「If」(もしも)にはキリがない。

 

 

「でも、それでも生きていくしかない」

 

「ええ、だからこそ生きているのよ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。