最近、VRMMOが流行っているらしい。
それに便乗してみようと思ったんだけど、なんとくっそ高い。
俺は頑張って高校生の夏休みを、自給の高いくら寿司のバイトを週休1日8時間で全力で働いた。
そのかいあって、手取りが十万を超えることができた。
身体はもうボドボドだぁ。
始業式が始まってしまって、やる時間がないじゃんなんてなってしまった。
しかしこのVRMMOというか、このVRソケットは思考加速もできるらしい。
っつーわけで、俺は毎日寝る前の3時間をゲームに費やすことにした。
目を閉じて寝るっつっても、頭を休めることなんてできていないから、ちゃんとゲーム時間を決めて行っている。
この県もネット・ゲーム規制条例が公布されちまったかんなぁ。
容易にゲームもおちおちやってらんねぇんだ。
お医者さんが、VRゲーをやっても体は休まるが脳は休まないので、
しかりと5時間以上の休眠を挟むようにと警告している。
それでも行ったものは、脳細胞が死んでしまい寿命が短くなったり記憶障害等が頻繁に発生してしまい、社会問題になりかけたりした。
まあ不幸になる自由というのもあるので、そこまで言及されないんだけど。一部では暴走しているが、健全な人たちはちゃんと時間を決定してVRを楽しくプレイしているぞ。
“Free Active Odyssey”
説教臭くなってしまったから気を取り直して、ゲームをやっていこうと思う。このゲームは題名の通り、自由な旅行としていろんなところに行けるんだ。どういうところって?まあ、本当にいろんなところさ。
サービスが開始してすぐに、有名な浮遊城とのコラボがあってそこにいけるんだ。コラボは一定期間で終了してしまうんだけど、その浮遊城は、内容を刷新してうまくそのゲームに合うようになっている。
著作権もあるので、外見も全く違うやつになるが雰囲気は味わえるんだ。
現在そのコラボは終わっていて、べつのコラボがあるんだ。
まあそっちにはまだいけない。なにせ、チュートリアルすら終わっていないからな。
まずはゲームをする前に、時間帯を確認しよう!
寝る前の3時間前、通学準備よし、整理整頓清潔よし、尿意と水分摂取よし!
緊急停止ボタン作動確認よし、緊急切断システム正常、事前のWiki確認よし。
ではでは、いざ参ろうではないか!
俺はVR用の通信ルーターに電源が入っているのを確認して、VRソケットをかぶる。
「ようこそ、“Free Active Odyssey”へ!」
「ここは?」
目が覚め意識を覚醒させると、そこは機械仕掛けの部屋。
意識は視覚を認識するが、自身の四肢を確認できずにいる。
「ここは原始の間です。今からゲーム内設定を詰めていきます。
すでに思考加速が実行されておりますので、ごゆるりと焦らず
決定していってください」
「はーい」
「はい。いいお返事です。最初にお名前からどうぞ」
すでにやろうとしている職業は決まっているべ。だから名前も即決!
「ヤミです」
「ヤミさんですね。では、性別や姿かたちを決めてください。
ですが、顔だけは現実準拠になっておりますので、ご了承ください」
精神的な影響だって聞いた。
また男性であっても女性を選べるのは、肉体的特徴だけで他の部分の再現をしていないからという理由のほか、男女差別やら障碍者への人権侵害になるからだという。
というわけで、俺は男性にした。別に異性にする理由もないし。
身体的特徴や顔の変更率100%を超えなければ、自由に変更できる。
比較的左右対称で、発達障害な口やあごのゆがみ、歯並びや眉毛の調整。
肌の整理・鼻の調整等等。
完成した俺は、単なる健康的な男子になることができた。
このコンプレックスが仮想空間といえども克服することができるのは、非常に愉快なもんだ。現実だと金と感染症のリスクの兼ね合いがあるので、容易に変更不可能なんだよ。
俺は眼前にある鏡に移る自身の顔に満足した。
勿論肉体の方もだ。電子世界なので、アレルギーや蕁麻疹・アトピーもない。
乾燥肌による痒さもないし、本当に快適だ。
ふけとかそんな処理があったら嫌すぎるけどさ。
「次に職業とステータスをお願いします」
「おう!」
空中に浮かぶ球体は、俺に数字や文字列の羅列を見せつけてきた。
このボードとにらめっこするのだ!
職業はいろいろある。
何個でもできるが、いろんな職業と兼ね合いを持たせると、上級職に向かわせる経験値が膨大になるんだそうだ。
だから最初は一つの職業だけを重点的に育て、最上級職か上級職になったら別の職業をやればいいようだ。
ただし金と免許がいるのは、どこの世界でも同じらしい。
そこで、攻略サイトではやるのはともかく、免許や資質等ステータスだったりなんなりが必要なもの、最初でなければなりにくいものを紹介していた。
一つ目は、なんといっても勇者。
最初は勇者見習いで、つぎに勇者になるんだそうだ。
そこら辺の調整はよくわからないけれど、カルマ値が微動する今作では勇者見習いにすら非常に困難らしい。
わずかな言動で、善悪が変化する。
基本的にカルマ値は性悪説で変動するので、悪になりやすいので勇者になるには圧倒的性悪説をねじ伏せる善性が必要になるらしい。
現段階では0なので、勇者見習いになれるんだとか。
これになれば、カルマ値は0で固定され勇者になるための試練で善を1000貯めないといけなくなる。
そういう苦行を行った先に、勇者という特別席に座れるのだ。
ちなみにカルマ値は、100以上の善性になると性善説を取るようになるので、容易なことで悪性に戻ることはかなわなくなる。
こういうのは職業による働きが、世間に浸透してしまうため逆性のカルマになれないのだという。
つまりあくどいことをしていても、世間的には善性であるという質の悪いものだ。
「えーと職業はっと」
そんなこんなで俺が選んだのは、死霊術師だ。
ネクロマンサーともいう。
なぜこの職業を選んだのかというと、やっていることが悪なのに善性にならないと取得できない矛盾した条件をもつ職業だからだ。
善悪を行き来する面白い職業で、悪霊の対峙や土地の浄化・狂人への鎮静化等人の慰霊に大きく携わるものなんだ。
俺は顔が醜かったから、慈善事業やらヴォランティアをしても化け物扱いされた。だからこの仮想世界だけでも、誰かの幸せのために戦いたいんだ。
まあ醜いのに偽善活動するのかって言われても、震災時に助け合いというのがいかに大切か学んだからだよ。だからといって押し付けるものでもないけどね。相手の取捨選択を優先するよ。
「ステータスは?」
いろんなステータスがあるけれど、どれに振り分けるかって言われるとその他に属するものだよな。
俺はこの顔で分かったことがある。
まずは容姿が10割。次に清潔感という雰囲気、活動による信用、時流の運、個人個人のカリスマ、度胸で人生が決定する。
そんなわけで、その他に属するステータスの魅力と運に分けることにした。
「決定だ!」
「はい、ありがとう! じゃあ、簡単にこの世界の事説明しようか?」
「いや、結構。すでに情報は集めてるから」
「そう?じゃあ、行ってらっしゃい!」
そういうわけで、俺はこの世界に飛び出したんだ。