評価つくの早すぎてハーメルンほんと人口増えたなって思う。
斬撃が虚空を裂いた。かろうじて回避ができた。けれど、今後回避できる保証はない──意識を集中する。実戦経験などないに等しい。けれど、この1週間、なにもせず寝てたわけじゃない。
魔力を探知する──意識を、それに向ける。髪の毛にかかっている防御術式を解いた。魔力が余計に削られる要因になるから、そのわずかな差が命取りだと理解しているから。
魔力が
技巧派かよお前。ゾラが展開した術式を、魔力で発動する。
この間の隕石だって対応できるほどの障壁。
──それを、勇者の剣があっさりと引き裂いた。
「ふッ──!」
斬られる。そう覚悟をした瞬間、
「……ここ、空中だぞ……」
『彼も一応、術式使いだからねぇ……空気を固めたり、浮いたり程度は簡単なはずさ。……それより、早く地上戦に持ち込まないと救援は期待できないよ』
「わかってるよ……!」
空の上での戦闘など、練習したこともない。それに相手がどの角度から来るのかを限定できない以上、地上戦に持ち込んだほうが有利なのは間違いがない。
けれど勇者からすれば、地上よりも空中のほうが有利だ。だからこそこちらを地上に落とさせない。
……やりづらい。そもそも、相手の攻撃が苛烈すぎる。このままじゃいずれ負けるだろう。そしてそのいずれはそう遠くない。
「雷光よ」
剣に雷が纏われる。それを、横薙ぎにして──拡散させた。高度を上げ回避を──
「遅い」
『まずい、防御を──』
──当たった。振り下ろした剣に、肩を引き裂かれる。それは身に纏っている防御を容易く引き裂き、その下にあった肉までたどり着き、幼き少女の姿を2つに両断した。
「……やるじゃないか、魔法少女……!」
「集中しろ──」
だが、それは幻影。魔力で作った囮であり、それによりわずかな時間が稼げた。そしてその間に、
「ゾラぁ! 術式出せ!」
『フィールド展開──!』
魔力で足場を作り出す。魔力こそかなり持っていかれたが、かなりの広さで展開できた。そして足場を作れば、頼れる親友が戦闘に参戦できる。俺の隣に降り立った親友は、仮面に隠されわからない。けれどその雰囲気は。
刺すような雰囲気は──彼の闘志を、はっきりと俺に伝えてきた。
「ふ──はは、ははははははは! 良いな、いいな、楽しいなぁ! 計りにきただけだったが──心地良い殺気だ! 堪らぬ戦意だ! ──だから俺も、貴様らに応えようじゃないか!」
勇者は笑う。その体に魔力が吸い寄せられるのを見て──嫌な予感がした。
「──術式展開」
けれど、遅い。既に術式は完成しているのだから。
そして、フィールドが塗りつぶされた。
新しい法則が生まれた。絶対の法則が。それこそが、勇者の持つ、シンプルにして最強の術式。
『……神代回帰……!』
「そういえば……バルガ・ゾラ。お前と戦うのもこれで三度目か。こうなると、何か因縁めいたものを感じるな」
『二度と戦いたくなかったけどねぇ……!』
これが発動されると、絶対に勇者は
なんでこんなのと戦ってんだろ、俺……。
1週間前の出来事を恨む。というかこっちは一般人だ。そんな相手に本気出すってこの勇者、頭がおかしいんじゃないのか?
「サキ」
「なんだよ親友!」
「勝つぞ」
「……おう」
……ちょっと、立て直した。
そうか。勝てないって思ってると、絶対勝てないから。だから、
「勝とう」
「ああ。俺と、お前ならできる。そうだろ?」
「……いっつもいっつも、どっからその自信が出てくるんやら!」
──意識を切り替えた。
視点を変えろ。絶対に勝てない──それは何故だ?
相手の術式のせいだ。
『……君、ひょっとして』
……ならば。
相手の術式を壊すか、乗っ取るかすれば──!
『……今まで、この術式を解析できた者はいない。それでも……君なら、ひょっとして……賭ける価値はあるか』
「なにか思いついたのか」
『でもこれは──』
「バルガ・ゾラ。可能性はあるんだな?」
『……とても、薄い頼みだけどね』
「なら教えてくれ。俺は何をすればいい?」
『…………』
だが。俺は術式の解析なんかしたことがない。やり方を知らない。そして、できる保証もない。
つまるところぶっつけ本番だ。だから、2人に大部分を頼ることになる。
「……時間を稼いでくれ」
「任せろ」
親友には、それだけで十分だった。だから、俺は俺のことに集中しろ。
ゾラ。俺は、どうすればいい?
『──僕と、同調する。僕の持つ術式の知識を君に転送する』
了解。
──気づけば、なにもない真っ暗な空間だった。
これは、たぶん、ゾラと同調した、ということなのだろうか? 意識に潜っているのかもしれない。
「──やぁ」
声が、聞こえた。知らない声だ。
その方向を振り向けば、そこには男が立っていた。知らない男だ。知らない。知らないはずだが──その正体にすぐに気づいた。
「……ゾラか」
「正解。この姿は初めてかな。一応、これが僕の本来の姿ではある」
あー、とか、なにか言葉を呟いて。
「話している暇もないね。君に、僕の知識を授けよう」
「……ああ。了解」
ゾラの手が俺に触れる。
「……呑まれないでね?」
「……は?」
──そして、頭の中に知識が流れ込んできた。
それは膨大な数の術式。
尋常でない数の、感情。それはすべて術式に込められているものだ。頭の中を感情が奔る。だれかの喜びを。だれかの悲しみを。だれかの呪いを。
──感情に、塗りつぶされた。けれどそれは、その先にはなにもなかった。奥へと進む。それごとに、どんどん感情は希薄になる。
代わりにあったのが、
虚無。
何もないがあった。それはだれかが、全くの感情をこめずに術式を作った証左だった。周囲にはすでにそれだらけだった。
──ぉん……
ふと、音が聞こえた。
そして、何かに体が引き上げられた。
それは猫のようだった。それは祈りのようだった。それは救いのようだった。それは願望のようだった。それは絶望のようだった。それは怨嗟のようだった。それはなにでもなかった。なにもないそれは水のようだった。同時に星のようだった。
「おぉぉぉん」
それは、俺を見て、確かに言った。
──やっと──。
それは俺の胸へと頭を擦り付けて──
──そのまま、俺の中に溶けた。
「──術式展開」
理解した。それはあの猫がもたらしたものなのか、なんだったのかわからない。
けれども、俺は
──だから、術式を返せる。
「【神代回帰】──!」
「おいおいおいおい、冗談だろ!」
世界の法則を書き換える。勇者に作用している効果が、俺にもたらされる。
「俺の術式を盗みやがった! 良いな! 最高だ! 貴様らは最高の好敵手だ──!」
「……やったのか、サキ」
「おうよ、親友」
これで──形成は逆転する。
「──故に、俺も本気を出そう。なぁ、【エクスカリバー】」
──その瞬間。
腹に穴が、空いた。
「──あ、ぐ……」
腹に穴が空いた。相手の剣が突き刺さっていた。
それに、全く気づけなかった。
そのまま、横薙ぎに払われる。剣は抜けて、俺は吹き飛んだ。
術式を頭の中から引っ張り出す。回復術式。傷を力任せに塞ぎ、そして勇者の足止めをする親友を見た。
親友は、勇者の攻撃をさばき続ける。俺は早々に食らったというのに。
勇者の姿はあたかも分身しているかのように複数見える。そのどれもが、見えないほどの速度で剣を振るっている。
それをさばけるのは、おそらく能力を小刻みに使っているからだろう。しかし……動きが鈍くなってきたようにも思える。
疲弊しているのだろう。
次の手段を考えなければならない。
『神代回帰は展開されている……のに、何故だ』
「バルガ・ゾラ。お前は阿呆か。俺の術式を盗むのはいい。だが、俺が俺の術式の効果を最大限発揮できるのは──」
そして。
勇者の剣が、親友の足を裂いた。
「──俺が強いからだ」
『出鱈目野郎が……!』
直感に任せて体を半歩逸らした。そこを、勇者の剣が通り去った。魔力察知……は、あの剣がまとう魔力が周囲に満ちていてよく読めない。動きの揺らぎすら感じ取れない。
対策された。
「どうした、魔法少女。もう手札は底ついたか? 次の1手はないのか? もう戦意は失せたか?」
「うるせぇよ……!」
こちらで術式を展開する……それと同時に、ゾラに術式を展開させる。
炎の魔法に、氷の魔法。そのどちらもを完成させ、
──放った。
空から放った。それは勇者を仕留めるために、彼を追尾して放射され続ける。それに対して、勇者は剣を振った。そこから放たれた雷の波動が衝突し、押し負ける。こちらにまで飛んできた雷を回避する。そして、今度は小規模の隕石を落とす。それをも勇者は──今度は、剣すら使わずに。
打ち砕いた。
「次だ!」
勇者の声が響く。
親友が、飛びかかった。それは、神速のキック。それまで何人もの敵を打倒してきただろう、必殺の蹴り。体が赤熱するほどの加速を経て放たれた蹴りが、
勇者に当たり、
「──温い」
勇者を数メートル吹き飛ばし、
叩き潰された。
──魔力の床が、崩壊した。これまでの攻防に耐えたフィールドは今の一撃で完全に崩壊した。
「──が──」
そして、マトモに攻撃を食らった親友の変身が解除され、落ちる。
「──零時ぃ──!」
まずい。
まずいまずいまずい! 彼は飛べない。だから、フィールドを作ったのに。
魔力を放出する。落下する彼に手を伸ばし──触れた。それに、安堵した。そのまま、地上を目指して、落ちていく。
そこで、背後からの衝撃。防御を超え、体に響く攻撃。
それに押されるように、地面へと落ちる。親友をかばうため、自分を下にする。防御を親友にかけ、そして、激突した。
「──っつぅ……ぐ、げほっ……」
喉からなにかせり上がってきた。飲み下せない。吐き出した。それは血だった。体の中が傷ついたんだろうか? 回復術式を使う。
そして、親友にも使う。抱きとめている親友の体は、腹の中身がこぼれかけていた。……修復し、元の状態に戻す。
「……っ」
『……残り魔力、あとちょっとだ。回復しきれてなかったんだろうね』
「……まじか」
……まずい。これ、詰んだかもしれない。
頭はもう覚束ない。目玉が圧迫されてるみたいに痛い。それに付随して頭も痛い。まるで徹夜したときみたいだ。
親友の意識は戻っていない。どころか、未だに口から血が溢れている。喉を詰まらせるといけないから、吐き出させる。
……そして、勇者が地面に降り立った。
「舐めプしやがって」
「何。これだけ面白い戦いを直ぐに終わらせるほうが無粋というものだろう? それに、お前らは逆転の可能性を残している。……これで、期待せぬ方がおかしくはないか?」
『……君、そんな性格だったかい?』
「人も変われば変わるものだろうよ。ここ数十年、まともな戦闘をしていない。どいつも本気を出す前に負けていった。時々本気を出せば、どいつも戦意を喪失する。……退屈なのだよ。戦闘の愉快を感じたのは、久しぶりだ。だから、少し楽しんだっていいだろう」
「……戦闘狂ってやつか?」
「まぁ、そんなところか? ……それで。お前は思いついたか? 俺を打倒しうる、逆転の1手を」
「わっかんねぇよ……!」
なにせ、魔力がない。それに親友もいない。この状況で、どうやって勝てば良いのだ。
『……ちっ』
「……お前は気づいたようだな。そうだ。そうすれば、可能性はあるだろう」
「な、なんだ?」
「……そしてお前は……いや、そもそもこちらに足を踏み入れてばかりか。ならば仕方ないか。なぁ、
……あっ。
「気づいたか。そうだ、お前は血族の血を引いている。当然その性質を受け継いでいるだろう」
血族は、たしか……主従契約を交わすんだったか? 下僕となり、主に仕えるときに能力が向上するだとか。それは主人を持つという誓約を背負うことによる、条件的な出力の向上。
「血族の長は、契約により一介の魔法使いから魔神と呼ばれる域まで上り詰めた。どれだけ重い契約をしたのかは知らんが……しかし、契約すればもしかすると、俺を超える領域まで覚醒するかもしれん」
……けれど。
血族が契約をするのは、主からのリターンが大きいからだ。
死後の魂を貰い受ける。
寿命を貰い受ける。
そういう、悪魔的な契約こそが血族の契約。そしてその出力は誓約──取り結ぶ契約が、ハイリスクであるほどに増していく。
だから、それは──
「わかった、やろう」
──なんて。
親友が起き上がりながら、そう言った。
「──いいのか、お前。焚き付けた俺が言うのもなんだが……血族の契約はそう軽いものではないぞ」
「……じゃあ話題に出すなよ」
「試しただけだ。ここでお前が相手の意思を無視して契約するようなら殺していた」
俺の言葉に、勇者がそう返した。一体どこまでがほんとなのかわからない。
「……正気か?」
「ああ。お前に命を預けるくらいできなくて、何が親友だよ」
『……あーもう。わかったよ、存分に契約すればいいよ! 僕としては不本意だけど!』
……ああ。
そういえば、血族の術式の成り立ちは強欲だ。こいつが毛嫌いする理由もわかる。
だけど──
「……い、いいんだな。ほんとにやっちゃうぞ、親友」
「ああ」
そして、親友は指を噛み切った。術式を展開する。
──血を摂取すれば、それで契約が完了する。
……だから。
俺は、親友の口から溢れた血を舐め取った。
「……んあ!?」
「うるせぇ、こっちのほうがなんかそれっぽいだろ」
というか、なんとなく──こっちのほうが、良い気がした。術式の成り立ちを理解したからか。こっちのほうが、儀式として……俺が求める関係として、適切だと思った。
俺が望むのは、対等だから。
「……これで、契約完了……か?」
『契約の条件を決めないとね。それを彼が了承すれば契約完了だ』
……条件。条件、かぁ。
だったら、こうしよう。
「……条件は。親友が、絶対死なないこと」
『ちょ──』
「わかった」
『──馬鹿!? なんで君もこれで了承するのさ!?』
……なにか、やらかしたのだろうか。
『君ら、自分がした契約の意味がわかってるのか!? 今のは──』
「絶対に死なない、か。なかなか酷い条件を取り付けたものだ。それは、その男を永遠にこの世に縛る楔だと言うのに」
「別にいいさ。友に一生を捧げる覚悟は、とっくの昔にできている」
その言葉で、契約の完了となったのか。
膨大な魔力が流れ込んできた。
体にかかっていた重りが、全部取り払われるような気がした。全身が光に包まれた。そして、衣服が変化する。
新しいコスチュームに、変わっていく。
今までのものと違い、シンプルになった。動きを阻害しない程度のものになった。ひらひらとしているのはスカートと、腕の装飾だけだ。そして、胸元には無色のクリスタルが追加された。
──それを見て、直感的に喚んだ。
「──来い」
それだけで十分だった。俺の中から、何かが飛び出した。
「──ぉん」
それは、小さく鳴いた。そして──こちらを見た。
「────おん」
そいつは、ずっと俺と一緒にあったのだ。術式の記憶を見ることで、力を取り戻したそれは──
「──始まりの術式か……! 魔神も自らの子に、とんでもないものを宿したものだ──!」
『──始まりの術式……魔神……! なら、こいつは──』
「レイズ」
術式を、昇華させる。それは、契約によって増幅された膨大な魔力によって強引に成された。
放出する。
「リミットオーバー」
そして、呼んだ。俺の中にあった、最古の術式を。
契約によって封印を解かれた、あまりの危険度に禁術に指定された、世界最古の術式を。
「──メルゴノアーク!!」
──ぉん。
俺の呼びかけに応え──世界のすべてが水に沈んだ。
この作品がっちがちのライブ感でやってるからストーリーが決まってない問題
始まりの術式:メルゴノアーク
名前の由来はわかりやすいかも。
主人公の膨大な魔力の元になっている。魔神によって赤子の頃に主人公の中に封印された禁術。術式自体が意思を持ち、主人公が裏の世界の情報に気づかないように秘匿し続けていた。
そしてその封印が契約により解かれ、主人公の中から出ることが可能になる。
主人公のことが好き。
血族の契約
基本的に血族側から一方的に契約することが可能。その条件も血族側で勝手に決めれるからこその強欲が生んだ術式。
主人公と零時の契約は、『零時が絶対に死なないようになる』という契約。
これは主人公の両親が結んだのと同じ契約である。
この契約によって主人公の母親は17歳から成長しなくなった。でも17歳の魔法少女は無理があると思うよ。
エクスカリバー
勇者が愛剣にかっこいい名前をつけただけ。実際は銘などない。
ただ重く、頑丈で折れずよく切れるだけの剣。シンプルであるが、勇者がどれだけ雑に扱おうと折れることがないうえ、重量があるため馬鹿みたいな筋力の勇者からすればこれ以上ないものである。
ただの剣だったが幾つもの死闘を経て魔剣へと進化している。
序盤に詰め込みすぎたかなーって思う