TS系魔法少女、引裂ちゃん。   作:moti-

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 一話の文字数減らしたい(死に目)
 書き溜め……ないから……
 一日一日急いで書いてるよ???

 前回の話から少しだけスタンスを変えています。


基本的に主人公の元へと厄介事は舞い込んでくるものと相場が決まっている

 ……外の世界。

 

 私は今、出られはしませんが、あなたと同じ月を見ていますように。

 

 それだけが、私の祈りです。

 

 

 

 

 

 

 変な夢を見た。やけに明瞭な夢だ。その軌跡を追って、ゾラと親友を連れてわずかな期間の旅に出た。魔法少女ルックスではなく、女子用の服だ。

 

 聞き込みを続けて、夢に見た景色を追う。けしてそれに意味があるとは、自分でも思えなかった。けれど、漠然とした予感が胸にまとわりついて離れない。

 

 意味などないが、意義ならあるような。

 

 夢の中の誰かに呼ばれているような、そんな気がした。

 

「──それで、2人は向かっているわけか。どこにあるのかもわからぬ地を求めて」

 

「変ですかね?」

 

「いいや、変ではないよ。夢に突き動かされることなんて、誰にだってある。

 流石に、嬢ちゃんのような不思議な体験ではないけども」

 

「……あなたにもあったんですか?」

 

「そうさなぁ……

 今、そのさなかだ」

 

 そう言って、顔をお面で隠した男性は言った。

 

 今、俺たちはとある村の、既に宿主のいない、寂れた神社にいた。現代日本の、辺境のほうならばあるかもしれないもの。そこで一夜を明かそうというときになって、彼はふらりと現れたのだった。雨宿りと言う名目で現れた彼は、俺たちをどことなく懐かしんでいるようでもあった。

 

 彼が人間であるか、そうではないのか。それは興味がない。けれど、夜も深くなるというのに、この場所にとどまっている時点で。

 

 只人ではないのだろうと、そう思った。

 

「……聞いてもいいですか?」

 

「聞いても楽しいものじゃないが、……宵の肴にはなるか。

 ちっと馬鹿馬鹿しい話だ。笑うなよ?」

 

 ええ、と頷いた。親友もどうやら興味があるようだ。基本的にいろんなことに興味のない親友にしては珍しい。

 

「……今も夢に見るんだよ。餓鬼の頃の話だ。

 こういっちゃあなんだが、俺は屈指の悪ガキだった。気に食わねぇやつなら年上でも泣かせたし、男女も関係なしだった。

 嫌なことは全部暴力でねじ伏せた。嫌でなくてもねじ伏せた。あの頃は、それしかやり方を知らなかった」

 

 ……意外だ。

 

 今目の前にいる人は、どことなく浮世離れした印象を覚える。話の頃の姿が想像できない。……そもそも、この人の子供時代も想像できないけど。

 

「そんないっつもだったから、爪弾き者だったよ。そのうち俺の周りには、誰も寄り付かなくなった。親父は滅多に家に帰ってこないし、お袋は俺に余所余所しい態度ばっかだった。

 そこで漸く、孤独ってもんを感じたわけでさぁ。

 だからと言って俺の日々は変わらなかった。時々出る猪と喧嘩して、森の動物と拳で語り明かした。

 ……そんな日々を、ずっと過ごしてきた。

 そんな時に、1人の女と出会ったんだ」

 

 彼はそこで、ふと目を伏せた。

 

「夜中だ。親父が帰ってきて、大喧嘩した。それで家を飛び出して、河原に行った。

 そこで石切をしていたんだ。

 それを見て、『それはなんですか』っつってよ」

 

 ……ひょっとすると、それは、俺の探しているものなのかもしれない。

 

「びっくりしたわけさ。触ると砕けそうな女だった。乱暴者だと言われた俺も、流石に丁寧に扱わねぇとと思ったわけさ。

 それで、そいつに石切を教えた。最初はヘッタクソだったが、コツを教えて回数をこなすと、どんどん上手くなった。

 それで、そいつは言ったんだ。跳ねた回数で勝負しろってよ。

 乗ってやったんだ。それで、俺の圧勝だった。

 何回も勝負した。それで、あいつがへとへとになった。

 その頃には遠慮もなくなってきて、座り込んでぽつぽつと、お互いの身の上話をした」

 

 まるで夢見たいな話だろ? と彼は言った。俺は、頷いて、続きを待った。

 

「あいつは、お嬢様ってやつだったらしい。親が厳しくて、家の外に出してもらえなかった。だから抜け出してきたんだーって、威張ることじゃねぇのに言った。

 俺は、話を聞くのが楽しかった。まともな口をきいたのが久しぶりだった。だから、今思えばあいつのヘッタクソな語りに心を踊らせたものだった。

 ……そして、雪が降ってきた。夜中で雪にまみれて、凍てつくようだった。俺らは身をより合わせて、それで、温かいだなんて言ったもんだ。

 一緒に月を見た。それで、約束した。

 また会おうって。また、こんなふうに会って、それぞれの話をして盛り上がろうって。そんな約束をした。

 それ以来、あいつとは会ってない。俺の夢だったんじゃねぇかって思うほど、何の音沙汰もない」

 

「…………」

 

「そして、今も未だ待っている。こんなふうに月の綺麗な雨夜は、期待する。また会えるんじゃねぇかって。

 そんで、今日もまた駄目だった」

 

「……何年待ってるんですか」

 

「数えちゃいねぇが、チビな悪ガキがこんなになっちまうまでだ」

 

 親友の言葉への返答に、彼の言葉の重みに気づく。

 

 きっと、何十年も待っているのだ。たった一晩の約束のために。

 

 俺は、きっと彼のように待つことはできない。それだけの間待ち続けることができるほど、強い思いを俺は持っちゃいない。

 

「馬鹿な男の昔話だ。話半分に聞いてくれたら、それでいい」

 

「……あなたは。いつまで待つんですか?」

 

「さてな。死ぬまで待つかもしれんし、今日で最後になるかもしれん。

 死ぬまで続けるつもりだが、明日死ぬならそれが最後だ。

 ……そもそも、これは俺のただの自己満足だよ。俺はただ、あの月光が見たいだけなんだ。

 初めて美しいと思った、水面に映る淡い月を」

 

 そう言って、男は雨を見やる。

 

 まだまだ止みそうにない雨を。

 

「さてと……この調子じゃ、今晩はここで夜を明かすことになりそうだ。おふたりさん、邪魔するがいいかな」

 

「「はい」」

 

 親友と声が重なった。男は、それに軽く笑う。

 

「ほんとに仲が良いことだ。……さて、何か寝られるものがないか探してこよう。2人は、自分の分は持っているか?」

 

「はい。寝袋を持ってます」

 

「ならば俺のものだけでいいな。

 神社のものを漁るとは、罰当たりだが。こう寂れていると既に神も社から発っているだろうしな」

 

 そう言って、彼は奥に消えていった。

 

『……ふぅ。中々珍しいタイプの人間だね』

 

 と、そこでリュックにしまっていたゾラが顔を出した。そして、『あれは珍しいくらい善性に寄った人間だよ』と続ける。

 

『所謂人徳者とか、聖人とか呼ばれる類の人間だ。それに、仙人になりかけているな。一体どれだけの期間ああしてきたのか……いずれにせよ、信じられないくらいの精神力だ』

 

 やはり、そういう類の人間か。

 

 ゾラがここまで褒めるのも珍しい気がする。だが冷静に考えると、魔法だとか、そういうものが関係ない世界で自然に仙人に成りかけるなど、とんでもないことだ。

 

『……ぉん』

 

「メルも結構気に入ってるんだな」

 

 そういえば、我が家のメルゴノアークの呼び方はメルに決定した。候補としてノアもあったが、メルのほうがしっくりきたのだ。

 

 にしても、メルは人懐っこいタイプではあるが、それにしても高評価である。

 

 やはりあの話は本当なのだろう。彼にとっては、それは今も忘れることのできないほどの出会いなのだ。

 

「……サキ。お前の見た夢は、月を眺める夢だったんだよな?」

 

「おう。どこかで、誰かが月を眺めていた。それは水面に反射して、世界がまるで月光に染められたみたいで……」

 

「ひょっとすると、それは……あの人の探しているものなのかもしれない。できるなら、明日ついていこう」

 

「……そうだな」

 

 俺は、言った。

 

 正直なところ、彼の邪魔はしたくはない。けれど、自分が夢に見た場所がきっとそこなら──

 

 俺に夢を見せた存在が、そこにいるのかもしれない。

 

「……にゃおん」

 

「ん?」

 

 振り向くと、猫がいた。メルではない。少ししっとりしているから、この雨で濡れたのだろう。かなり弱っているのか、もしくは人懐っこいのか、俺が触れても逃げ出さなかった。

 

 軽く撫でていた手を離すが、手で押さえられた。肌寒さから、体温をほしがっているのかもしれない。

 

「おお、いつの間にか1人増えているじゃあないか」

 

 と、ぼろぼろの布団を引きずって彼が帰ってきた。猫が、俺の手から彼のほうへと移る。足にまとわりついた猫に、彼は少し驚きつつ座った。そしてこちらを見る。

 

「悪い、とっちまった」

 

「あ、いえ。野良にしては人懐っこいですね、この子」

 

「昔飼い猫だったのかもしんねぇなぁ」

 

「ですね。……あの、そういえば名前は何ていうんですか?」

 

「うん? 名前か。

 和邇(わに)煉瓦(れんが)というんだけど。2人は?」

 

「あ、俺は村崎引裂です。こっちは時峰零時」

 

「ほーん。じゃ、引裂と零時でいいか?」

 

「あ、自由にどうぞ」

 

 彼は、持ってきた布団を敷き、そしてそこに猫を置いた。その背を撫でながら、煉瓦さんは、こちらを見ながら、

 

「恋人同士だったり?」

 

「違う」

 

 これは親友が否定した。まぁ、元の俺を知ってる以上、そういう気分にはなれないだろう。

 

 ──雨は、少し強さを増した。この調子だと明日も降り続けるかもしれない。

 

「……煉瓦さん。俺が見た夢、話しましたよね」

 

「おう。中々珍しい夢だ、どこの誰とも知らぬ輩の夢を見るなんてな」

 

「ひょっとすると、煉瓦さんの言ってた場所が……俺の探してた場所かもしれません。ですから、明日……もしよければ、その場所に一緒に向かってもいいですか?」

 

「別にいいが、引裂の嬢ちゃんの言ってた場所とは違うと思うぞ? なんたって、あそこ自体は只の川にすぎない。それこそどこにだってあるだろうし」

 

「誰かの祈りが俺に夢を見せたんなら、誰かが心から大切に思った場所だと思うんです。ひょっとしたら、煉瓦さんの言ってた女性が俺を呼んだのかもしれない。

 その人、親が厳しいって言ってましたよね。それだったら……たぶん、あなたと見た景色が、すごく思い出に残っていたのかもしれない。そんなふうに思うんです」

 

「……わかったよ。嬢ちゃんの夢に、俺も乗ろうじゃないか」

 

 猫が鳴く。そして、布団を抜け出して、煉瓦さんの膝で丸くなった。

 

「──」

 

 それで、煉瓦さんは不思議なくらいに目を見開いていた。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「……いや」

 

 彼は笑った。

 

「ちっと、昔のことを思い出しただけでさぁ」

 

 穏やかで、どこか嬉しそうな笑みだった。

 

 

 

 

 そして、翌日になった。煉瓦さんに案内される道をついていく。

 

 普段は夜に行っていたらしいが、今は朝だ。俺たちを案内するのは、早い方がいいと言っていた。別にそんなに気にしないが、ここは彼の優しさに甘えることにする。

 

「こんな明るいうちにこの道を通るのも、久しぶりだな」

 

「結構、険しい道なんですね」

 

「歩き慣れてない現代っ子には厳しいかもしれんなぁ。零時は何か、運動かなにかやってるか?」

 

「ああ、はい。格闘技やってます。齧る程度ですが」

 

「なるほどなぁ、それで体幹がしっかりしてるわけだ。だいぶ強いだろ」

 

「えっと、多少は覚えがあります。わかるんですか?」

 

「餓鬼の頃、強いやつの動き方はさんざん見たからな。……逆に、引裂の嬢ちゃんはあんまり外にも出てないっぽいが」

 

「うっ……家で引きこもってますよ俺は……」

 

「鍛えるのは大事だぞ。次また夢を見た、ってなったときに備えておいたほうがいい」

 

「俺、今回が初めてだったんで……こんなこと、そんなに起こらないと思いますけど」

 

「1回あったことはまたあると見たほうがいいぜ。俺も何回か覚えがある」

 

 ……確かに。

 

 魔法少女になってから、変な事態に巻き込まれること3回目だ。それも1月の間にそれが起こっている。今後も起こりうることだと考えておくべきだろう。

 

「そうですねぇ……」

 

 ふと声が聞こえて、後ろを振り向いた。

 

「どうした?」

 

「いや、猫の声が……気のせいかな」

 

「ひょっとすると、ついてきてるかもしれんな。

 ……もうすぐ着くぞ」

 

 そして、そこについた。

 

 水が太陽の光を反射して、輝いている。

 

 月の光ではないが、それでも──

 

「ここです」

 

「は?」

 

 煉瓦さんの間の抜けた声が聞こえた。

 

 俺は、念を押すように、言った。

 

「ここが、夢で見たところです」

 

「間違いとかじゃなくてか?」

 

「いえ、ここです。たぶん……間違ってない、はず」

 

「……嘘だろ」

 

 彼は、昨日の俺の仮説を思い返しているのかもしれない。

 

 俺は、川へと近づいた。ここは──間違いない。俺が見た場所だ。

 

 夢で見たような、綺麗な場所ではない。けれど、これは……間違いなく、夢に見た場所。

 

「──サキ!」

 

 親友の声が聞こえた。そして、気づけば俺は親友に抱きかかえられていた。何かと思い、顔を上げる。

 

 ──そこには、巨大な鶴がいた。それが何かは、自分の中に類似したものがいるため、すぐに気付けた。

 

「──術式か!」

 

 意思を持った術式。

 

 それが、実体を伴ってあった。

 

 術式は煉瓦さんを見て──

 

 ──そして、煉瓦さんへと向かっていく。

 

「な、なんだ、これは……! ぐ……引っ張られる……!」

 

「ゾラ!」

 

『了解!』

 

 ゾラを手に取り、そして魔法少女に変身する。そしてメルに呼びかけた。

 

 メルの特性の一端に、『秘匿』がある。だから、こちらへの認識をぼかすようにお願いする。

 

『──ぉん』

 

 そして、親友が術式を煉瓦さんから引き剥がした。離れたところに、雷の術式を呼び出して攻撃する。一瞬怯んだが、けれど向こうはまだまだやる気のようだ。

 

「親友! 煉瓦さんを任せる!」

 

「了解だ」

 

 だから俺は──あの術式を、沈静化する。

 

 ゾラからもらった記憶から、そしてメルが体の中にいたことから、俺は術式の持つ感情と、術式に込められた感情を理解できるようになっていた。

 

 だからこそ、わかる。

 

 誰かへの祈りで作られた術式が、誰かへの呪いに転じてしまっていることが。

 

「──そんなの、悲しいじゃないか」

 

 俺はわかる。()()()()()、俺がやる。

 

 魔法少女なんてクソだと思っていた。俺がやる必要なんてないと、そんなふうに思っていた。

 

 けれど。

 

 今ここで、術式について理解があるのは俺だけだ。

 

 意思を持つほど強い、誰かの祈りによって作られた術式だ。それが望まぬ在り方になってるなんて、

 

 誰かの強い祈りが──悪として踏み潰すしかないなんて。

 

 そんなの、悲しいじゃないか。

 

 だから。

 

「だから……お前を、正しい在り方に戻してやる」

 

 これが、俺の魔法少女としての役目だ。




 今後、今回みたいに他人の物語に関わって、少しづつ成長する主人公を描く構成にしていこうと思っています。
 それに伴い主人公視点以外から描くことも増えると思います。すみません。

 意思を持った術式

 実は作成者の想いや技量によりできることもある。
 だがその術式は、意思を持つが故にその在り方を変質させることも多い。
 彼らは長い時の中で、始まりの想いを喪失する。そして負の方面へと変化していくのだ。
 この変化が特に大きく、世界に多大な影響を与える可能性を持つ術式は、一般に『禁術』と言われる。
 メルゴノアークもこの禁術に指定されている。



 ここからは蛇足
 本編未登場の主人公の母親の絵をついつい描いてしまったので掲載しておきます。雑ですが。たぶんあんまりイメージはないはずだけど、イメージを壊したくない方は閲覧非推奨です。



【挿絵表示】


 17歳だからね。
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