風は吹かず 作:空気風船
夜、寝るぞと思って瞼を閉じた後、ぼんやりと考え事をしてしまう。
今日はこんなことがあったとか。
明日はあんなことをやろうとか。
そういやぁ昔そんなバカやらかしたなぁとか。
一通りぐるっと一周した後、必ず辿り着く場所がある。
『寝るときって、どんな感じなんだろう』と。
ふわっと昇っていく感じなんだろうか?
すとっと落ちていく感じなんだろうか?
眠りに
気になる。
色々予想をしてみて、やっぱり気になる。
そうだ寝る瞬間を見てやろう、と意気込む。
暫くそうしていると、意識を保とうとして絶対眠れない事を理解する。
正しく、『気になって夜も眠れない』。
しかし違うのだ。
気になるのは、知りたいのは、好奇心からではない。
怖いのだ。
得体の知れない、理解の外にある『寝ている自分』が。
未知とは好奇心の種であるからして、起源は同じもの。
分からないから、知りたい。
しかし生物にとって、未知とは恐怖である。
分からないから、怖い。
違いは、その未知に近づくか、遠ざかるか。
分からないから怖い。
ならば怖さを克服する為には?
簡単。
未知を既知にしてしまえばよい。
分からないから怖いなら、分かれば怖くないのだ。
分かろうとして、奮起しだす。
恐怖が好奇心に反転した、とはちょっと違う気がする。
『恐怖
そうやって生物は成長していく。
そうして人間は技術を発展させてきた。
未知を既知へ。
既知を支配へ。
脳は人類最後のフロンティアなどと呼ばれているらしいが。
もし人間が睡眠を
寝る時間と起きる時間を正確にコントロールできるようになるのか。
もしくは寝ていながら別な作業をできるようになるのか。
はたまた睡眠自体が必要なくなる生物になるのか。
いづれにせよ、こうして睡眠に
夜も眠れない日から、夜は眠れる日へ。
しかしそれは遠い空想の世界の話で。
結局今現在の恐怖には全く影響しない。
ならばいっそ寝ないでやろうと意気込んで。
気付いたら朝を迎えているのだから始末に負えない。
寝ようとしたら寝れず。
寝まいとすれば眠る。
まるで駄々をこねる子供のよう。
案外、そういった明朗簡潔な事柄で、未知とは説明がつくのかも知れない。
そんな事をぐるぐる考えながら。
早く朝にならないかなぁという
『睡眠』はそれだけを叶えてくれる。
理性と衝動
御者と馬
親と子供