艶やかな藤の華を添えて   作:ちょっと通ります

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UA26000、お気に入り450、総合評価650達成ありがとうございます!
大まかな展開以外は未だ白紙なのでどうしていくか推敲するべきですかね…?


第11話 御頭は恋の依頼を受け入れる

 ◆

 

「1997!1998!1999!2000!」

 

 あれからしばらくの間、蒼紫は煉獄家で杏寿郎から呼吸について学び千寿郎に剣術を教える日々を送っていた。

杏寿郎曰く、剣腕については申し分は無い。

しかしながら鬼の中には血鬼術という異能を使う種族もいるという、努々油断する事の無いようにとの事だ。

…もしかしたらその異能によって迷い込んでしまったのかもしれない。

 

 千寿郎に関しては元より剣術は長い年月をかけて成熟するものだし、呼吸にしても蒼紫が要求する基準にまで到達しようと思えば並大抵の事では無い。

更に言えば呼吸を修めるには適正とでもいうべき才能が必要になって来る。

時間がかかるのは勿論、それで求めた実力が手に入るかは保証されない。

 

「千寿郎殿、しっかりとした剣筋だ。剣術もしっかりと修めていたか」

 

 煉獄家の歴史は長い、杏寿郎が言うにはどれだけ浅く見積もっても戦国時代には既に存在していたとの事。

呼吸法が確立されるまではその剣腕で鬼狩りをしていたらしい。

しかしながら千寿郎の剣は普通の域を出ない、彼に合う剣術を模索する必要もあるかもしれない。

 

「そこまでにしよう、千寿郎!四乃森君!腹ごなしに薩摩芋を焼いておいたから皆で食べよう!」

 

「はい兄上!」

 

 薩摩芋と聞いて千寿郎も杏寿郎のような明るい笑みを浮かべる。

どうやら2人の好物のようで次々と腹の中へと消えてゆく、弟の千寿郎も子供ながらよく食べており煉獄家の血が強い可能性もある。

 

 それとは反対に表情こそ崩れてはいなかったが蒼紫の内心は複雑である。

自分が率いていた御庭番衆は徳川幕府の預かる所だ。

国内の疲弊を避ける為の高度な政治的判断とは言え幕府は戦わずして降伏を選択した。

結果として討幕をした同盟の一角、薩摩の名を冠したコレは中々に辛い。

 

「わっしょい!わっしょい!む?四乃森君、遠慮などしなくていいぞ!まだまだ沢山あるからな!」

 

「ええ、頂いております」

 

 出来立てでホクホクとした食感に食欲をそそる豊かな香り、口に広がる甘みは絶品である。

山の様にあった薩摩芋は見る見るうちに減ってゆく、改めて見ても凄まじい食べっぷりだ。

 

「そう言えば今日はこの後、甘露寺君の所へ行くらしいな!」

 

「ええ、巣蜜を分けて頂く約束をしているのでなるべく早い内に向かいたいと考えています」

 

 蒼紫にも新しい日輪刀と呼んでいいかは大いに疑問は残るが、小手や仕込み靴といった装備が出来上がる頃合だ。

任務が始まってしまえば時間を合わせる事も難しくなるだろう。

勿論、鎹烏を通して承諾は頂いている。

 

「うむ、彼女の屋敷はここから近い!せっかくなのでこれも持っていくといい、出来立てが一番美味いからな!よろしく伝えてくれ!」

 

 杏寿郎が焼き芋を包んでくれる。

…少々量が多くないだろうか、これは煉獄兄弟二人分はあるのだが。

 

「かしこまりました。それでは失礼します」

 

 ◆ 甘露寺亭

 

「四乃森さんいらっしゃい!歓迎するわ!」

 

「甘露寺殿、お邪魔します。これは煉獄殿からの差し入れです」

 

「わぁ、美味しそう!ありがとう!早速お茶を用意するわね!」

 

 天真爛漫な笑顔で礼を述べた後、一度奥へと引っ込む。

直ぐに2人分の茶を用意し戻ってきた。

 

「甘露寺殿、かたじけない。茶まで用意してくださるなど…」

 

「いいのいいの!食事はみんなで食べるのが美味しいし、冷めちゃったら煉獄さんにも悪いわ。頂きましょう」

 

 杏寿郎にも負けない速さで次々と口に運んでゆく。

本当に美味しそうに食べるものだ、見ているこちらも微笑ましくなる。

その規格外な食欲と奇抜な髪色に目を奪われやすいが、その所作は不思議と気品もある。

もしかしたらどこかの御令嬢なのかも知れない。

 

「―いい茶葉を使っていますね」

 

「わかる!?料亭の店主をしていただけあって舌がいいのね」

 

「茶の湯が趣味なので。それで甘露寺殿、お願いしたい事とは一体?」

 

「そうね、頼み事なんだけど…」

 

 ―

 

「なるほど、確かにこれは他の人に頼めるものではありませんね」

 

 甘露寺殿の頼み事は意外なものだった。

表向きの仕事には確かにこういった依頼が来る事もあるが、鬼殺隊に所属する様になってからもあるとは思わなかった。

 

「私、素敵な殿方と添い遂げたいって夢があってね。でも私、食べる量も多い上に直ぐ空腹になっちゃうの…。普通はそんな人に向けたものは想定されてないから…」

 

 先程までの明るい笑顔とは一転して、少し陰のある表情が顔をのぞかせる。

藤の家紋を掲げた家といった一般人から推測するに、髪色や食事に関してはそこまで大きく変わっていない。

見合いが難航するのは想像に難くないだろう。

彼女の奇抜な髪の色と凄まじい程の食欲は普通に生きていく上では相当に深刻なものだ。

 

「甘露寺殿」

 

「―やっぱり変よね。運命の相手すら見つかっていないのにこんなお願い…」

 

「…委細承知いたしました」

 

 甘露寺殿の頼みを受けると信じられないと言った表情を見せる。

 

「物事は事前準備が肝要と考えております。鬼殺隊士として所属する事になった以上、任務の傍らという形になるでしょう。ともすれば時間も相当に取られます。むしろ今の内から準備が出来るほうが有り難い」

 

「ホ、ホントにいいの!?任務とは別の物よ?鬼殺隊は命懸けの仕事だし私の頼みは辞めたって良いんだから」

 

「勿論です、依頼(任務)は絶対に完遂する。そう決めていますので」

 

「ありがとう四乃森さん!今日はゆっくりしていって!美味しい紅茶とぱんけえき御馳走するわ!」

 

 よほど嬉しかったのか思いっきり甘露寺殿が抱き着いてきた。

この人懐っこい姿、どことなく操にも似ている気がする。

帰ることが出来る日はいつになるかはわからないが、それまで彼女は大丈夫だろうか。

それまで翁たちには迷惑をかける。

 

 甘露寺殿に奥へと案内され、《ぱんけえき》と紅茶を御馳走になる。

ふわふわの焼き加減に甘い香り、ばたーに絡む巣蜜が程よく混ざり合う。

絶品な味にも負けていない見事な拵えの食器を使っている辺り、細かい気遣いの出来る人なのだろう。

先程の茶を頂いた分、量は控えめにしてもらったが成程、確かに食事を摂る間隔が短い。

この分だと頼まれた方も色々と考えて置かねばなるまい。

 

 ◆ 数刻後 甘露寺亭前

 

「はい、これ頼まれた巣蜜ね。今日はとても楽しかったわ!」

 

 頼んでいた巣蜜を受け取る蒼紫。

御庭番衆の筋力増強の秘薬は散と呼ばれる粉を蜂蜜で固めた丸薬である為、手に入れることが出来たのは僥倖であった。

 

「ありがとうございます。依頼の件、こちらも色々と試行錯誤をしてみたいと考えております」

 

「ありがとう!お願いするわね!」

 

「…おや?四乃森さんじゃないですか。ちょうど良かった、これからあなたの所に行くつもりだったんですよ」

 

 声をかけられ振り返った先には、刀鍛冶の鉄穴森が風呂敷を背に担ぎながら歩いていた。

 

「鉄穴森殿、その包みもしや頼まれた物が出来たのですか」

 

「えぇ、長にも知恵を借りましてなんとか。正直に申しますとこの形は初めて作るのでどれだけ効果が期待できるかはわかりません」

 

 渡されるのは手の甲などを守る小手や支給品の靴と見た目は変わらない代物であった。

勿論これらの品は通常のものでは無い、猩々緋鉱石で作られた特製のものだ。

 

「ええと…四乃森さん、コレ本当に日輪刀なの…?」

 

 刀とはいったい何なのか問いたくなるようなその拵えに流石の甘露寺も疑問を呈する。

自分も薄く伸ばしたしなやかな太刀をリボンの様に使いはするが、ギリギリで刀と言い張れるような代物だ。鬼殺隊の制服に合わせてどちらも黒色に染めてある。

これで本当に鬼の頸を飛ばせるのだろうか。

 

 …万が一にでも鬼の頸に効果が無かったらそれは決定的な隙を晒す羽目になる。

小太刀があるのだから出来ればそちらに専念して欲しいと切に願う甘露寺であった。

 

「はい、間違いありませんよ。まったく彼には何から何まで本当に驚かされます。蒼紫さん、小太刀の打ち直しはしばらく待って貰ってもいいですか?まだ刀を持っていない新人隊士の方に日輪刀を打つ方が優先されるので、ご迷惑をおかけします」

 

 そう礼を言うが早いかという時に蒼紫の鎹烏が飛んでくる。

 

「シノモリアオシ、シレイヲツタエル!ナンセイノムラニムカエ!オニトオモワレルヒガイガタハツシテイル!」

 

「遂に初めての任務ね!絶対に生きてまた会いましょう」

 

 ついにやってきた任務の指令。

これから先彼に待ち受けるはどんなものになるのか。




文通相手のとある蛇が殺意を持ちました、一体何柱なんだ…?

次回は少しだけ話が飛びます。

蒼紫の年齢は26ぐらいなので現役隊士の中では最年長の新人です。
色々と異質な組織だと感じます。
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