艶やかな藤の華を添えて   作:ちょっと通ります

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お待たせしました、遅くなってしまい申し訳ありません!
映画見応えがあって良かった…

あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いいたします。


第14話 御頭は日輪の影で動く

 御庭番式小太刀二刀流 呉鉤十字

 

 蒼紫は炭治郎に頼み、遠くにいる鬼の居場所を探して貰いあっさりと狩って珠世達の下へと戻ってきた。

手の平に何かあったのかもしれないが何かされる前に首を飛ばしたのだ。

正体不明の血鬼術は使わせない方が良い。

 

「何があった」

 

 そこに広がるは夥しい量の血と肉片、地面に転がる小さな毬。

おかしい、炭治郎が首を刎ねたのならばこのような惨状にはならない。

その上首を斬られた鬼特有の塵となって消える現象も見当たらない。

 

「―これが鬼舞辻の呪いです。残念ですがもう間もなく死にます…。通常鬼は陽光と鬼殺の剣士の刀以外では死にません…ただ、鬼舞辻の名や情報を口にした場合、体内に残留する臆病者の細胞に肉体が破壊される」

 

「名前を出した途端、口から腹から巨大な手が飛び出して彼女を…。自身を慕うものにさえこの仕打ちだなんて…。酷過ぎる…あの男こそ本物の鬼だ…」

 

 炭治郎にとって衝撃的だったのだろう。

苦しそうにそう零す。

 

「―そうか」

 

「この鬼達は十二鬼月ではありません…。十二鬼月は眼球に数字が刻まれていますがそれが見当たらない…。恐らくもう一方も十二鬼月ではないでしょう。―弱すぎる…」

 

 御庭番式小太刀二刀流 回天剣舞六連

 

 蒼紫の中で最大の奥義、超高速の六連撃で地面を抉る。全力で放った訳では無いが一人分の窪みがそこに出来ていた。

 

 幕末、彼らの戦いは徳川幕府の無血開城を持って終了した。

それは高度な政治的判断ではあるが主君の醜い裏切りでもある。

 

「墓前に華は添えられん、だが墓を作って弔うぐらいは良いだろう」

 

「蒼紫さん…」

 

「…ま…り……毬…」

 

 かすかに聞こえる毬の鬼の声、小さな手が遊び相手を求めるように動く。

蒼紫が炭治郎が転がっている毬を左右の手に添えると掠れるような小さく掠れた声であそぼと呟いた後、力を使い果たしたのかボロボロと崩れ去り消えていった。

 

「埋葬、出来なかったな」

 

 ◆ 珠世の屋敷 地下

 

 鬼である珠世達は陽光を避けるため地下へと集まっていた。

これからの身の振り方や情報を整理する為に。

禰豆子が珠世へと抱き着くと愈史郎が青筋を立てて離れる様促すが、彼女には通じない。

珠世としても満更でも無い様だ。

 

「先程から禰豆子さんがこのような状態なのですが、大丈夫でしょうか?」

 

「心配いりません、大丈夫です。家族の誰かと思っているんです」

 

「家族、ですがそう見えるのは人だけでは?私達は鬼ですよ?」

 

 珠世が尋ねると炭治郎は珠世さん達を人だと判断している、だから守ろうとしたと言い切った。

堰を切ったように涙を流し抱きしめ返す。

 

 ありがとう…禰豆子さん…ありがとう…

 

「―炭治郎、愈史郎殿、奥へ行こう。紅茶の茶葉があるから少しどうだ?」

 

「…ついて来い、湯を沸かす」

 

 

「愈史郎殿、やはり珠世殿は鬼舞辻を抹殺することのみを追い求めているのか?」

 

「ああ、だからこそあのような御姿は初めて見た」

 

 珠世殿は数百年生きている、積もる感情も一塩だろう。

奥ゆかしい女性であるが、そのたおやかな立ち振る舞いの裏に鬼舞辻を抹殺したいと断じるほどに激しい感情を燻らせている。

自分のいた時代に帰りたいと話した時に一瞬変わった空気、あれは無理矢理に押し込めた彼女の澱の様なものだろう。

 

 あれと似たような激情を持ち合わせる者がいる。こちらへ来てから世話になった蝶の少女だ。

珠世殿との相性は悪くない、むしろかなり良いといえる。能力でも心情でも。

―同じ徳川の影役として闇乃武の者を見て来た経験上、あの手の人間は悲願の為なら己の命すら躊躇いも無く投げ出せてしまう。

そういった意味では組ませたくはない、悪い意味でも噛み合ってしまうからだ。

 

「俺達はこれから行方をくらます。鬼舞辻に近づきすぎた分、いつ刺客を送り込まれてもおかしくないからな」

 

「2人に提案がある。恐らくは鬼舞辻に足取りを掴まれにくく出来る。さらに言えば禰豆子を人間に戻す手掛かりにもなるかもしれない」

 

「本当ですか!?お願いします蒼紫さん!教えて下さい!」

 

「そこまで都合のいい方法があるのか?とりあえず内容を訊いてみないと何とも言えないが」

 

 炭治郎が勢いよく立ち上がり、愈史郎も怪訝ながらも耳を傾ける。

どちらにとっても明確な利だ。一考の余地はあるだろう。

 

「では説明に入る、具体的には―」

 

 話を終えた後、愈史郎が顎に手を置き熟考する。

炭治郎に至っては禰豆子の為ならと説明に入る前に即断する、判断が早すぎてもう少し内容を吟味して欲しいのだが。

 

「―成程な、そういう考え方もありかも知れない。俺としては珠世様の望みが近づき、危害が及ばなくなるのなら文句など無い。俺の独断で動く事は出来んが珠世様にもお伝えしよう」

 

 愈史郎がそう返答する辺りで廊下の方から足音が響く。

音の主はその勢いのまま炭治郎に抱き着く。

 

「禰豆子!心配させちゃったか?」

 

「蒼紫さん、炭治郎さん。お恥ずかしい所を見せてしまい申し訳ありません。もう大丈夫です。愈史郎も気を遣ってくれてありがとう」

 

「はい!珠世様!(珠世様に褒められた!今日は格別な日だ!)」

 

 愈史郎から珠世へこれから場所を変える事、蒼紫からの提案内容を報告する。

予想外且つまさかの鬼狩り側からの提案だったためか少々面喰ってしまう彼女だったが、受け入れたようで今はせっせと道具を用意している。

 

 

 

「それで何の用だ、先程の話ならしっかりと伝えただろう。珠世様の頼みだから来てやったがあんまりふざけた内容だと許さんからな」

 

 蒼紫とかいう男に話があると言われ、別室で向かい合う。

どうやら他の奴には聴かれたくないらしいな。何が狙いだ?

俺としては珠世様が仲良くして欲しいと願わなかったらこんな不愛想な奴と話などしたくはないのだが。

 

「愈史郎殿、珠世殿に何か生きがいを作っては貰えないだろうか」

 

 何を考えているのかわからない表情で、どうしてそのような内容が出てくるのか理解不能な話題を口にする。

先程の提案を聞く限り頭は悪くない、だが変わってはいるとはいえこの男だって鬼狩りなのだ。

いつこちらを裏切るかはわからないし、俺だけなら何の問題は無いが珠世様の頸を刎ねられる事だけは絶対にあってはならない。

 

「随分と漠然とした話だな。何が狙いだ?くだらない理由だったら叩き出すぞ」

 

「珠世殿は鬼舞辻抹殺のみを追い求めていると言ったな。願いが叶った後はどうするつもりだ?」

 

「それは―」

 

 答えられなかった。鬼舞辻を抹殺する方法こそ俺に伝えもするし、その為の製薬の手伝いといった重要な事にも携わっている。

それだけに信頼もされているという自負ぐらい持ち合わせてもいいだろう。

だが常に珠世様の傍にいる俺にさえその先を話すことは一度としてなかった。

 

「受け売りではあるが忠告だ。何もかも、それこそ先を生きる事すら投げ捨ててでも成し遂げようとする事はかつての俺と同じく凶刃の様だ。彼女自身もその周りも不幸にしてしまうぞ」

 

「余計なお世話だが珠世様の為だ、頭の片隅にぐらいは置いておこう」

 

 珠世様のいない世界など俺は辛い、耐えられない。

それどころか不幸になる?冗談じゃない、そんな未来こっちから願い下げだ。

珠世様の生きがいになるもの言い変えるのなら新たな目標といったところか。

…さて、何がいいだろうか。

 

 

 珠世殿の屋敷を出ると同時に炭治郎の鎹烏が次の指令を通達する。

その指示を受け2人は新たな任務へと赴くようだ。どうやら我々の頭領に当たる人物は彼らの存在を黙認しているとみてほぼ間違いないらしい。

 

「蒼紫さん、ありがとうございました!お互い頑張っていきましょう!」

 

「ムー!」

 

「ああ、2人とも達者でな」

 

 疲労も怪我も何のそのと炭治郎は元気よく別れの挨拶を交わし浅草を離れてゆく。

禰豆子の事で光明が見えたのがとにかく大きいだろう。

彼らを見送り視界から消えた後、鎹鴉を呼び寄せる。

組織に属する以上、報・連・相は古今東西重要なことだ。

これ程重要な任務を新人が独断で動く訳にはいかない。

 

「火急の用だ、柱に連絡を取ってくれ。合流次第、鬼舞辻が使っていた住処を洗う。炭治郎が言うには家族はただの人間の様だ、口封じされる前に頼む」

 




オリジナルルートですが月彦邸調べるのはそんなに変な事じゃないよね…?
毎回冷や冷やしながら書いています
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