艶やかな藤の華を添えて   作:ちょっと通ります

17 / 17
お待たせしました、リアルで色々とありまして中々筆が取れなく申し訳なく思います。
分断戦は難しいですね、初めての試みに苦戦してました。

これからも楽しんで頂けたら幸いです。


第17話 御頭は音柱と共闘す

「雛鶴、まきを!ここは俺が引き受ける、須磨のやつの援護に向かってくれ!やつの居場所ならわかる筈だ!」

 

「そうはさせん、分断するのは残された奴を始末してからだ」

 

 血鬼術 蹴動車地

 

 轆轤がその脚で地面と踏み抜くと、床の一部が右に左に周り始める。

それだけでは無い、天元が空けた穴からは今までと違う部屋が顔を覗かせさらなる増援が現れる。

しかも部屋の変わる時間がバラバラで読みづらい。

 

「チッ、しつこいね!天元様、これじゃ須磨の所まで行けません!」

 

「作戦変更!お前達は堅気の人間を守れ!じっくり行くぞ!」

 

「「はい!天元様!」」

 

 せめて天元の負担を減らそうと金魚達を まきをが迎え撃つが、脇差はともかく苦無が残っていない。

 

「大丈夫よ まきを!離れて!」

 

 合図と共に離れると再び雛鶴の毒苦無が猛威を振るう。

 

(何故だ!?先程あの毒苦無は撃ち尽くした筈だ。事実、女共の攻撃はあの時確かに緩んだ。視界が悪かったとはいえ補充など出来る猶予は与えなかったのに一体どうやって?)

 

 この窮地を救ったのは爆風の影で、うち捨てられた雛鶴の得物にコッソリと毒の苦無を補充していたムキムキ鼠達の隠れた功績だった。

 

 ◆ 蒼紫side

 

 鍛え抜いた聴覚によって音のする距離、方角から宇髄の移動した先は応接間、つまり妻子のいる部屋に辿り着いたと推測できる。

ならば己のやるべきは残された須磨の救出及び護衛そう結論付けている時、振動と共に穴が消える。

 

(―部屋の回転が変わった、これでは闇雲に探し回っても須磨殿と合流するのは難しい。部屋の絡繰りを見抜き、探す為の方法は―これだ)

 

 御庭番式苦無術 貫殺飛苦無

 

 蒼紫は手持ちの苦無を天元が空けた先―壁へ2つ投擲する。

視線の先には苦無の刺さった穴開きの壁があるのみ。

 

(…4…5秒…このくらい、いやまた変わったな。一定ではなさそうだ)

 

 苦無が消えて直ぐに次の苦無を投擲する。

続けてまだ穴の開いてない面に炸裂弾を投げ込み、続けて苦無を壁に刺してゆく。

音に釣られてか足の生えた金魚達がゆっくりとこちらへ向かって来た。

 

 御庭番式小太刀二刀流 陰陽交叉

 

 流れる様な連撃でその身体を分割し、仕上げとばかりに交差させた小太刀で壺を4等分する。

さらに蒼紫は壺の欠片を別々の穴へと蹴り飛ばした。

 

(こいつらには共通点がある。いずれも壺が直ってから肉体が再生を行っていた…。ならば部屋の回転を逆手にとって散りばめるまで)

 

 千本針 魚殺

 

 近づくのは不利と見たか、今度は別の壺から小さな金魚が飛び出て扇状に針を飛ばす。

態々鬼舞辻が送り込んで来た刺客だ、ただの針とは思えない。

この手の異能は受けるよりも躱す方が都合がいいだろう。

蒼紫は弾くのではなく、緩急をつけた独特の動きでのらりくらりと避けてゆく。

 

 御庭番式苦無術 貫殺飛苦無 川蝉の嘴

 

 いつ投げたのかわからない程、洗練された投擲は魚を取る川蝉の如く小刀が金魚を捉え、床に止まる。

再生しようにも身体の大部分を貫かれたままでは完全な再生など望めるはずもない。

 

(さて準備は整った。恐らく須磨殿は走り回っているはず、合流するならこちらがいいだろう)

 

 

「嫌あああ!着いて来ないでええ!!!」

 

 泣き叫びながら右に左に走る、走る。

多少の金魚は斬り捨て乍ら僅かでも生き延びる可能性を作り出す。

大量の金魚達を背にして何とか合流出来ないかと思考を巡らせる。

自分の実力はわかっている、1人でこの数の敵を相手取るのは不可能だ。

 

「嘘でしょ!?なんでこんなおっきい化け物が塞いでいるのよ!?」

 

 無情な事に廊下を曲がった先には今までの物とは一線を画す巨大な金魚が立ち塞がったまま迫り来る。背中に付いた壺の数が5つもある、どうやら大きさは数に比例するらしい。

 

「忌々しい鬼狩りめ、こんな所にもいたとはな」

 

「ギャー!?頸だけオバケー!?」

 

 騒いでた分探しやすかったぞと轆轤の頭部が宙を浮き現れる。

更なる敵の増援に絶望しそうになるが、彼女は遠く離れた先にある壁の隅に苦無を見つける。

 

「天元様―!雛鶴さーん、まきをさーん!誰でもいいから助けてー!」

 

 苦無という事は少なくともこちら側の人間が残した手掛かりだ、ならば辿っていけば愛しの天元や雛鶴達と合流できるかもしれない。

 

 そう脚を動かそうとした瞬間、予期せぬ力によって姿勢を崩す。

足元へ視線を向けると床が高速で回転しているではないか、予備動作も無しに作られる円盤の前に決定的な隙を晒してしまう。

最早これまでと思われたその時

 

 御庭番式小太刀二刀流 陰陽撥止

 

「グワァアア!?」

 

 高速で飛んできた異なる軌道の小太刀二刀が金魚達を縫い止め、轆轤の顔に拳打が撃ち込まれる。

返す勢いそのまま回し蹴りで巨大金魚の頬を穿ち、直後に飛ばした苦無の雨を一身に受け

動きがとまる。

日輪小手とでも言うべきソレをまともに受けてしまった彼の頬は焼け爛れるかの如く醜く溶け出していた。

 

「うわーん!ありがとう蒼紫さん!」

 

「須磨殿、ご無事で。天元殿の所へ向かおう、恐らくそこにこれの本体がいる筈」

 

「そうだ蒼紫さん、アレを使えば天元様の所へ向かえるんじゃない!?」

 

「成程、その手があったか」

 

 ◇ 宇髄side

 

(こいつらを観察して気付いた事がある―)

 

 音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々

 

 天元がその独特な形の連刃を振り回し、同時に炸裂させながら行う突進技。

柱の中でも最速で移動が出来る彼は部屋中を縦横無尽に駆け回り、迫り来る金魚や修復を終え天元に狙いを定めた触手を次々と迎撃する。

 

「流石は柱、私の眼にも映らない程の速さだ。だが無意味だな、いくらお前でもこれだけの数だいつまでも守り切れまい?」

 

 轆轤は自身との力の差を自覚しながらも首を切られようもない状況と今だ数多い金魚達を前に余裕を見せる。

無論、本人も大人しく静観を決めていた訳では無い。見切れなくとも狙いは判っているのだ、奴等を狙うとわかっているのだから死角になる相手にだけ意識を向けて力を籠める。

 

(最大の障害は柱である天元とかいう男、コイツさえ始末できればここに居る女共なら順当に倒してゆく事であの方の命令を完遂出来る筈だ。

ヤツが金魚共に気を取られている今死角が出来る―今だ)

 

「油断していたかと思ったが…なかなかどうして慎重な男だ。それにあれだけの数をもう始末したというのか?侮れん、だが奴らも直ぐに修復して―!?」

 

(すれ違いざまに斬られた!?これだけ戦いを続けているというのに未だ動きすら捉えられんだと?)

 

「地味な称賛なんざ嬉しくもなんともないぜ。男ならド派手に頸取りといきたいねえ」

 

 轆轤とて下弦上位、柱はいなくとも屠ってきた隊士の数なら両手両足では足りない程倒して来た。眼前の柱の実力は大したものだが、彼にも怪物を産み出す壺があり爆風に隠れている間にも再生を終え連携を吊る算段であった。

 

「な、何故追撃が行われない?!一体何をしたのだ?」

 

「何言ってやがる。結局壺がなけりゃあ再生が出来ない。なら元の形を維持でき失くすりゃいいだけだろうがよぉ!」

 

 雛鶴の攻撃によって床に散らばった毒苦無を投擲し壺に差し込むことで再生を阻害していたのだ。

煙で視界の塞がった中、正確に的中させる精度と貫通して抜けきらない様絶妙な力で加減された隠れた技巧だった。

 

(こいつ、見た目や攻撃が目立つが本当に恐ろしいのはその背後に隠れた確かな技量の数々か!―仕方あるまい。あの方は目立つ事を嫌う為あまり使いたくは無かったが、放棄するのなら証拠の隠滅と住人の口封じだけでいい)

 

 轆轤が回転する床を利用し、加速しながら壁を飛び回り攪乱し始めた。それと同時に穴を空け、手を上げると数少ない残った金魚達が一斉に散ってゆく、中には邸宅の外へと続く壁の穴や窓ガラスへと向かう者までいるではないか。

 

「うおっ!?この野郎!」

 

(いきなり外の人間まで襲おうとすんじゃねぇよバカたれー!!)

 

 これによって天元の負担がさらに上がる、轆轤本人に加え一般人の護衛に、幾らか負傷している嫁達の補助、さらにはほぼ全ての金魚達に意識を向けないといけないからだ。

 

(まさかこれでも対処されてしまう程、力の差があるとは…!これが柱か。真正面からぶつかっていては絶対に勝てなかったな。だが一人ではどうにもなるまい。いくら私でも柱でもない女には遅れは取らん、それに鬼ではない以上いつかは体力が尽きる)

 

「雛鶴!そっちから夫人を狙われてるよ!」

 

「わかってる!でももう毒苦無が無いわ!まきを危ない!後ろから蛸足が迫ってる!」

 

(ヤベえぞ!俺はともかく嫁達がそろそろ限界だ。こんな地味な奴らでもこれだけの数で分散されると抑え込むだけで精一杯だってのに…!―ん、まてよ?音から察するにこの位置は…)

 

 

 轆轤は同好の志である鬼から大量の壺を譲り受けている。

無惨様の警備には万全を喫したいという願いを聞き届けて下さったあの方には頭が下がるばかりだ。

自分の力でとは胸を張って言えないが、それでも柱を相手に1人でも戦えている。

それだけの効果はあったと言えるだろう。

 

(欠片を蹴り飛ばそうが無駄だ。頸が無ければ斬れない、離れれば尚更だ。よしんば頸があったとしても私だって十二鬼月、柱でもない限り斬れるものか)

 

 それは柱達が見回り制を採用している為、手練れの隊士は分散して活動するという至極真っ当な考えであり、そして致命的な偏見だった。

 

 音の呼吸 伍ノ型 響斬無間

 

 その恵まれた体格からさらに呼吸による速さと大量の爆薬で威力が上乗せされた衝撃で轆轤の身体を吹き飛ばす。

辺り一面ド派手に炸裂しつつもしっかりと嫁達や母子を避けている辺り器用なものだ。

 

「血迷ったか?態々私を遠くに飛ばすとは」

 

「テメエこそ派手に忘れてねえか?俺が何を冠する柱かをよ」

 

 どういうことだ?確かにこの攻撃には違和感が残る。

泥仕合とはいえ向こうからすれば頸を斬るか、陽光に晒すかの二つ。

まだまだ日の昇る時間では無い以上、離れるのは下策な筈…。

何故その刃を寝かせてまで押し込めたのか。まるで私を意図的に動かした様な―

 

 彼の疑問に対する答えは壁に打ち付けられる寸前、空けられた穴から現れた。

その場所―屋敷の外から蒼紫が姿を見せ、左手で轆轤の頭部を掴み胴へ繋げる。

 

(速い!まさか柱以外にもこんな手練れがいたなんて完全に想定外だ!ぬ、抜けない…!手の平に()()()()()()()()のか!?)

 

そして残された右手、逆手に持ち替えてある小太刀によって江戸城にて数多の下手人を葬ってきた得意技が振り下ろされる。

 

 御庭番式小太刀 回天剣舞

 

 轆轤の敗因は3つ、1つは天元が音に精通しており空間、位置の把握に優れていた事。

2つ目は譜面という解析能力を持つ彼を相手に長期戦を挑み、部屋の動きを読み切られ、斬られやすい位置へと誘導されてしまった事。

そして3つ目は柱にも劣らない戦力の四乃森蒼紫がいたという事だった。

 

 惨めなものだ、陶芸の美しさに憧れ 何十年と打ち込んで来たというのに

需要があったのは他人が作った芸術品の修繕のみ 精魂込めて作った陶磁器は一山いくらでとても生計を立てる事など出来はしない

それならばと日用品に絞り込んで作っていたら 今度は文明開化のあおりを受け需要は激減 とうとう廃業せざるを得なかった

 

 鬼となり力を蓄え、十二鬼月に選ばれるようになったというのに、こちらでも下弦どまり

玉壺様にお力添えを頂いたというのに 無惨様の御望みにはとても届かなかった…

 

人間でも鬼でも 家業でも趣味でも能力でも半端者、己の矜持すら質に出しせめて主様の御用命には応えたかったのにそれすらも叶わない

嗚呼 全く以て厳しい世の中だ




いきなり寒くなりましたね、季節の変わり目は体調を崩しやすいので体調には気をつけてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。