艶やかな藤の華を添えて   作:ちょっと通ります

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色々と手探り状態ですが、楽しんでいただけると幸いです。


第5話 御頭は青空で斬る

 こうして蒼紫は昼は鍛錬、夜は隠の任務に打ち込む日常を続けていた。

後は一通り必要と思われる道具を購入しておく。

実戦において準備はいくらしておいても足りないからだ。

特に後藤を始めとした隠と信頼を築けたのが大きく、鬼や鬼殺隊についての書物を借りることが出来たのがありがたい。

元々情報を仕入れる事を生業とした忍びの御頭をしていた彼だ、知識として蓄える事は得意分野と言っていい。

最終選別に向けた準備を続け、日輪刀の完成を待つ、そしてー

 

 彼らから借りた書物を読んでいるとひょっとこの面を付けた男が蒼紫の下へ訪れた。

どうやら彼が刀鍛冶らしい。

 

「初めまして私、刀を打たせてもらいました鉄穴森鋼蔵と申します」

 

「四乃森蒼紫だ、よろしく頼む」

 

「こちらが頼まれていた日輪刀になります。まさか長刀に見せかけて小太刀を2つ収納するとは思いませんでしたよ。面白い仕組みですね」

 

 基本的には日輪刀は素材が違うだけの日本刀だ。

奇をてらった刀を要望するものは少ない。

風変わりな拵えの物は大抵柱が注文する。

 

「やはり慣れ親しんだ形が一番なのでな。難しい注文だっただろう」

 

「いえいえ、こうもはっきりとした要望をされることは早々ないので作り甲斐がありましたよ。それにどんな色に変わるのか、楽しみですね」

 

 

 いよいよ自分の打った刀が持ち主の手に渡る。

この瞬間はいつになっても緊張するものだ、どんな色に染まるのか楽しみで仕方がない。

ゆっくりと鞘から引き抜かれるその動きは焦らされるようで何とももどかしいものだ。

 

「-これは」

 

 沢山の鬼殺隊士を見て来たが、この出来事を忘れる事は無いだろう。

日輪刀がうっすらとした黒と白に変わるなんて初めてだ。

1つの刀身が紫のような色の混ざり方をする事はある、だが左右で全く違う事などあり得るのだろうか。

その色合いは刃の輝きを更に強調する黒の峰と刃を逆さにしたかのような白の峰。

左右に握られた小太刀の対比がなんとも美しい。

 

「…黒と白か、こんな事もあるのだな」

 

「いえ、私が知る限りこんな事は初めてです。2刀流は珍しいとはいってもこんな変わり方は聞いた事すらありません。白だけなら霞柱様の扱う霞の呼吸が該当しますが…黒に関しては適正のあるものは判明していないんです。そもそもこの場合はそれすら当て嵌まるか怪しいですが…」

 

「試し斬りをしても構わないか」

 

「勿論です、細かい調整はこれからですので」

 

 氷のような視線は真剣そのもの、そうかと一言だけ言うと彼は瓢箪の木へと足を運ぶ。

試し斬りをするのは大切だ、瓢箪を使って確かめるのだろう。

 

 軽く一振り、簡単に両断してみせる。

ポトリと落ちた実をなぜか拾い上げた、一体どうして?

拾った瓢箪の片割れを断面に持っていくが落ちてゆく、何がしたかったのか。

 

「最終選別の後、改めて打ち直しては貰えないだろうか」

 

 どうやら彼にとっては満足のいく代物では無かったようだ、まだまだ精進が必要らしい。

彼の刀への情熱は相当なものだ、長い付き合いになりそうだ。

 

 

 鉄穴森と名乗る男から刀を受け取り、鞘から抜き取る。

抜き取った小太刀はそれぞれ異なる色に染まった、こんな事は初めてらしい。

俺自身がこの世界の者では無いからなのかも知れん。

しかしこの輝き…、緋村の逆刃刀を思い出す。

息災だろうか。

 

 呼吸法が有用なものだとは理解している。

日輪刀が通常とは異なる色に変わった事もある以上、実際に使えるかはさて置き一度試す必要はあるだろう。

この後やるべき事は1つだけだ。

 

「試し斬りをしても構わないだろうか」

 

 刀は剣客にとって命だ、これだけは決して妥協してはならない。

これを軽んじる事は生を投げ捨てる事と同義、ましてや相手は日光と日輪刀でしか狩れない鬼だ。

毒は柱であるしのぶ殿しか扱っていない事を考えると手軽に手に入る代物ではないだろう。

 

 初めて鬼を斬ったあの手応えからも確信できる。

生身の人間と比べて非常に頑強な肉体に再生力、鈍では折れてしまうだろう。

更に俺が扱うのは守りに重きを置いた小太刀だ、鬼の攻撃をしっかりと受け止める事も想定しなければならない。

 

 斬れ味と頑丈さ、この両立が前提となる。

頑丈さはこの場で試すことは難しいが、斬れ味を確認するために落とした瓢箪を再び近づける。

 

  切り戻し

 

 組織を潰さずに切り分け、再び繋げる事で吸い付く様に元に戻す技法だ。

これを成し得るには使い手の技量と刀の質の両立が必要不可欠。

 

 しかし、瓢箪は切断面でくっつく事は叶わず、切り戻しが出来る質では無かったようだ。

刀の需要が無くなって何十年も経つ大正と、刀によって生き抜き、切り開いてきた幕末とでは比べること自体烏滸がましいのかもしれない。

 

 とは言え、文明は自分のいた時代よりも何十年も進んでいる。

他の分野ではこちらの方が発展したものが多いだろう。

これ自体は時代の流れというものだ。

 

 ともかく刀による討伐こそが鬼殺隊士の主となるのも事実だ。

これは裏を返せば日輪刀の質を向上できるという事だ。

迷い込む前、葵屋運営の為に仕入れたコレが役に立つかもしれない。

 

「鉄穴森殿、もう1つ頼んでもいいだろうか。この包丁を預かってほしい」

 

 阿の処で瞑想する前に、彼の所で購入した代物。

緋村の使う逆刃刀・真打を打った刀匠が全ての技術を叩き込んだ一人息子。

青空の銘を持つこの包丁にはその技術が詰まっているのだから。

 

「それは構いませんが、研ぐのではなくてですか?」

 

「これを打ったのはとあるの刀鍛冶の息子だ。匠の技全てが込められている。役に立つ部分もあるだろう」

 

 包丁で戻し切りをやってみせる。

切り分けられた瓢箪が今度は吸い付くようにくっつき元に戻った。

その妙技に鉄穴森の眼の色が変わる。

包丁でやってのけたのだ、日輪刀で出来ない筈がない。

職人特有のいい眼だ。彼だからこそいい刀を打ってくれるだろう。

 

「最終選別の後、改めて刀を打ち直しては貰えないだろうか」

 

 打ち直すには時間が無い、今回はこの小太刀で行く事になるだろう。

後は最終選別を乗り越えるだけだ。

 

 ◆ 最終選別 当日

 

 狂い咲く藤の花による囲い潜り抜けて蒼紫は立つ。

藤襲山にはすでに少年少女達が集まっている。

およそ20人といったところか、若い者ばかりだ。大凡が15,16といったところだろう。

正規の鬼殺隊士と比べても、かなりの年配の分類になる蒼紫が一番齢が上なのは間違いなさそうだ。

 

 鬼殺隊の試験官と思われる2人の童が交互に説明を始める。

白と黒の髪色を除けば殆ど瓜二つの容姿、どちらも藤色の着物を身に纏っているが恐らく黒髪の方は男性だろう。

左右に並びたつその姿はまさに鏡合わせ、藤の髪飾りの位置まで対照的という徹底ぶりだ。

 

「「皆様。今宵は鬼殺隊最終選別にお集まりくださってありがとうございます。」」

 

「この藤襲山には鬼殺の剣士様方が生け捕りにした鬼が閉じ込められており外へ出る事は出来ません」

 

「山の麓から中腹にかけて鬼共の嫌う藤の花が一年中狂い咲いているからでございます」

 

「しかしここから先には、藤の花は咲いておりませんから、鬼共がおります」

 

「この中で7日間生き抜く、それが最終選別の合格条件でございます」

 

「「では、行ってらっしゃいませ」」

 

 いよいよ始まる最終選別、一人、また一人と山の中へ足を踏み入れようとした時だ。

蒼紫は懐からあるものを取り出し…

 

  ピィー!!!

 

 音が響き渡る、彼の手に握られていたのは笛である。

咄嗟の出来事に何事かと皆が蒼紫の方を振り向き、凝視する。

 

「四乃森蒼紫という、先日まで隠として現場にも赴いていた。その経験から提案する。団体を組んでみないか」

 




日輪刀はどう染めるか迷いましたが、小太刀2刀流という事でそれぞれ違う色にする事で謎要素を入れて

蒼紫は陰陽系の技が多く、逆刃刀にも見えるよう白と黒にしてみました。
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