艶やかな藤の華を添えて   作:ちょっと通ります

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お待たせしました、楽しんでいただけると幸いです。


第6話 御頭は候補生をまとめ上げる

 あまりの出来事に皆こちらに視線を向ける。

試験官の少年少女すらも表情は変えていないが、困惑しているようだ。

 

「最終選別の合格条件は生き残る事だ、鬼を数多く倒す事では無い。ならば徒党を組んで戦う方が建設的だろう。現場に赴いた経験から言わせてもらうと、藤襲山のような山や森での任務は正規の隊士が何人か送り込まれる」

 

 最初こそ、その奇行と言っていい行動に度肝を抜かれたが、簡潔に事実を述べる内容は合理的かつ己の命が懸かっている為に皆耳を傾ける。

それに加えて彼が隠として現場に赴いていたという事実が、より説得力を齎していた。

 

「試験には複数の鬼が出る事まではっきりしている。この点も考えると似たような任務に1人で立ち向かう事はまず起きない」

 

 この言葉にハッとした表情を浮かべる少年達。

ここに集まった者の殆どが鬼殺隊士として鬼を狩る事を目標としている。

だからこそ、実際の鬼退治に即した形で臨まなければ意味がない。

 

「提案がある、ここに笛が4つある。団体を4つ作って行動するのはどうか。不測の事態や手に負えない相手が出た時吹いて知らせて欲しい。近くにいる団体が助けに向かえる」

 

 彼らの人数はおよそ20人、一団に付き凡そ5人といったところか。

隊士候補生がこれだけ固まって行動すれば、弱い鬼に後れを取る事は無いだろう。

 

  蒼紫様はね、戦いの際にみんなを鼓舞する以外は無口な人だけど優しい人なの

 

(操は大丈夫だろうか…翁が止めるとは思うが、俺がいなくなったと知って一人で捜索の旅に出ていきそうだ)

 

「―この最終選別を乗り越えて終わりじゃない!皆が隊士として人を守れる様になる為、力を貸して欲しい!」

 

 ◆

 

 蒼紫を含めた受験者たちは、それぞれ団体を作り行動をする事にした。

選別が始まるのを待ちきれずに先に向かった例外もいたようだが、殆どの者が賛成してくれたのだ。

 

「蒼紫さん!…本当に申し訳ないけど!俺弱いから!きっと役に立てないから助けてええ!」

 

 蒼紫の一団にはこう汚い高音で喚き散らす、黄色の髪をした少年が付いてきた。

強い人に守ってもらいたいと真っ先に飛び込んで来た彼は善逸というらしい。

鼻水を垂らし蒼紫に泣きついている。

そのあまりにも正直に情けなく縋りつく様に、他にも一緒に行動している少年達も呆れているようだ。

 

「善逸といったか、大丈夫だ。お前は強い。後はその実力に心を追いつかせるだけだ」

 

「いや嘘言ってないのはわかってるけどさぁ!?駄目なんだよ俺!どれだけ頑張っても全然うまくいかなくて、いざ敵を前にすると硬さが抜けないの!それでみんなを危険に晒したくないから最初から戦力に数えないで!」

 

 開き直りと言ってもいいその言葉を撤回する素振りも全くなく喚き立てる。

そんな彼を引き連れ乍ら藤の峰に沿って進んでいく。

 

 

「久しぶりの肉だァアアア!…―ギャアア!」

 

「それでいい、何も一人で鬼を倒さないといけない理由など無いぞ」

 

「はい!」

 

「肝に銘じておきます!」

 

 とびかかって来る鬼を1人が受け止め、残りの者が斬り倒していく。

5人がそれぞれの方向を監視し且つ藤の花の壁で襲い来る範囲を絞られては奇襲など成立するはずもない。

どうしても間に合わない時には蒼紫が間に入って攻撃を止め、斬り飛ばす。

彼らに必要なのは鬼を倒すという経験だ、鬼殺隊士の殆どが鬼によって大切なものを奪われている。

強くなったとはいえ、刻み込まれている恐怖を前にその力を存分に発揮できる者ばかりでは無いだろう。

 

 そうやって何日も鬼を狩り続け順調に慣れて来た頃である。

 

「―笛が聞こえた…!」

 

 善逸がその異常聴力で笛の音を捉えたのだ。

蒼紫も御庭番衆として聴力強化の訓練を積んで来た為、常人と比べれば耳はいい方ではあるが、心の声まで聞こえる彼の異常聴覚の方が優れているだろう。

 

「善逸、案内を頼む。すぐに向かうぞ」

 

「ええっ、行くの!?嘘でしょ!?ヤダヤダヤダ!絶対に不味い鬼いるって!」

 

「俺が敵わない鬼がいた時は他の者達と共に逃げろ。俺が許す。最終選別には一般人はいない、逃げる事だって決して悪い事では無い」

 

「絶対ですよ!?俺は戦いませんからね!?―こっちです!」

 

 善逸と蒼紫の2人が駆け抜けていき、その後を少年達が距離を空けられながらも何とか追いかける。

善逸の素早くも軽やかな動きに彼らも驚きを隠せない。

彼は弱いとか言っているが、何だかんだ身体能力は折り紙付きの様だ。

 

「―見つけた、あそこか」

 

 蒼紫が見つけた先では、狐の面を身に付けた少年が岩のように大きな異形の怪物と対峙していた。

この最終選別に用意されている他のモノとは明らかに一線を画す存在だ。

あれは並みの候補生には手に余る。

監視する隊士がいないとアオイ殿に言われた時、こういった存在の可能性を捨てず笛を渡しておいて良かったと蒼紫は思った。

他の隊士達は負傷し、木の陰でへたり込んでいる。

 

「お前達は負傷した者の治療を頼む」

 

 ◆

 

「また来たな、俺の可愛い狐がぁ…」

 

 目の前に立ち塞がる鬼は今までの相手とは違い人の形を成してはいなかった。

それだけ人を喰らい、力をつけて来た異形の存在どうしてこんなところに?

 

「狐小僧、今は明治何年だ?」

 

「今は大正時代だ」

 

 仲間達は負傷してしまった、今は俺が時間を稼がないと。

 

「大正…?…-ピャャァアア!また年号がぁ!年号が変わっているゥ!」

 

 両脚で地団太を踏みながら、身体に沢山生えている腕を掻き毟る。

腕からは血が滴るほどに深い傷だというのにあっという間にそれが塞がっていった。

直りが早い、その間に叫んでいた言葉の中でに気になる名前が出て来た。

 

「お前、鱗滝さんを知っているのか?」

 

「あいつが現役の頃、江戸時代にこの場所へ閉じ込められたのさ…。11…12…13…お前で13人目だぁ…」

 

 この場所でずっと生き残って来たという事か。

沢山ある指をおり、人数を数え始めた。

何を数えている?

 

「何の話だ!?」

 

「俺が喰った鱗滝の弟子だよ…あいつの弟子はみんな殺してやるって決めたんだ。その面、目印なんだよ。その彫り方を俺はよぉく覚えている」

 

 中でも頬に傷のあるやつと花柄の着物を着た女は特に強かった、鱗滝の名前を聞いたとたん怒り狂って動きがガタガタになったがなぁ…。

 

 その時俺は我を忘れ、気が付いたら突っ込んでいた。

 

―許せなかった。

鱗滝さんは身寄りを無くした俺を鍛え上げ、鬼になってしまった禰豆子を家に迎え入れてくれてた。

それがどれだけ勇気がいる事で、有り難かった事か。

 

 そんな鱗滝さんの想いを踏みにじり、彼を慕っている錆兎や真菰を殺した。

兄弟子達の無事を願って作られた厄除の面が災いを呼び寄せると嘲笑った。

 

 待ち構えていたように夥しい数の腕を伸ばして来る鬼。

躱しながら切り捨てていくも4本ほど切り捨てた辺りで激痛が走る。

側面に回り込んだ腕に殴打され、その隙を突かれて頭を攻撃されたのだ。

激痛と共に面が壊れ、吹き飛ばされた。転がり木の幹に激突する―かと思われたその時、何者かに受け止められた。

 

「何だぁ…?お前は…?」

 

「あ、蒼紫さん!?」

 

 最終選別に参加していた中で一際大人で、強い匂いをしていた人だ。

作戦の立案と言い、経験の豊かで頼もしさを覚えたものである。

 

「炭治郎遅くなった、後は任せておけ」

 

「いえ、俺にやらせてください!あいつは俺がやらないといけないんです!」

 

「承知した。腕の方は任せておけ、首の方は任せた」

 

 それだけ言うと目にも止まらぬ速さで鬼に突っ込んでいく。

迎撃の為に伸ばされた腕はいつの間にか飛び散る血しぶきと共に吹き飛んでいた。

 

「な、なんだとぉ!?」

 

「今だやれ、炭治郎!」

 

「イェエリャアアア!!!」

 

 距離を詰めた所で危機を予知する臭いがきつくなった。

―足元からだ!

 

 俺は力いっぱい踏み込み跳びあがる。

空中で強引に体をひねって地中から伸びて来た手を躱しきった。

そのままの勢いで首を狙う!

 

「な、なんなんだコイツは!?当たらないだとぉ!?」

 

 先程までの迅速な動きとは打って変わって緩慢な動きで翻弄しながら斬りつけている。

まるで流水のような華麗な動きで、舞っているようだ。

父さんがヒノカミ様になり切る為の動きにもどこか似ている…。

 

   水の呼吸 壱ノ型 水面切り

 

 守る腕を失った首はあっさりと刎ね飛ばされ、ドサリと音を立てて地に落ちた。

 

るろうに剣心の技やアイテムを取り入れるのはあり?

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