煉獄さんが柱に上り詰めるのも、蒼紫の小太刀二刀流も独学であれだけ出来るの凄いと思う。
◆ 蝶屋敷 食後
「―カナヲ、選別を終えて疲れているのはわかっていますが、少しだけこの後時間を貰えますか?」
しのぶ様から色々と説教をされているとは思うけれど、私だって言いたい事は山ほどある。
本当ならゆっくり休ませるべきなのだろうが確認しておきたい事がある。
あの最終選別をかすり傷1つ無く帰って来た事が、口数の少ない彼女の優秀さを雄弁に語っている。
…私とて元々は鬼殺隊士として戦おうとしていた身だ、しのぶ様達の動きを見ていただけで花の呼吸の動きを再現できる天性の才と眼の良さに少しばかり嫉妬する事だってあったがそれはそれ。
「アオイ、どうしたの?心配かけた事はごめんなさい」
「そっちに関しては無事に帰って来てくれたからもういいです。…あなたの眼から見て久しぶりのしのぶ様はどう映りましたか?」
そう、確認したいのはしのぶ様の秘密だ。
柱として忙しい彼女の代わりに蝶屋敷の留守を預かっているのは間違いなく私だ。
その私にすら隠し事をしているのではないか、あの日から気になって仕方がない。
しのぶ様は聡明かつ器用な方だ、それとなく聞いてみてものらりくらりと躱されてしまうだろう。
下手をすると案じてくれた四乃森さんに迷惑がかかるかも知れません。
―ならば見るという事に関しては右に出る者はいないカナヲに聞いてみるのが適切でしょう。
「―しのぶ姉さん、見ないうちにちょっと痩せたかもしれない」
カナヲの無垢で正確な言葉が残酷な程一室に響いた。
四乃森さんの思い違いならどれ程良かった事か、私が気にしすぎているだけならうっかりで済むというのに。
最終選別の長い空白の期間が、彼女の中のしのぶ様との僅かなズレに結びついたという事でしょうか。
「アナタがそう言うのなら間違いないのでしょう。食事も完食なされましたが、だからこそ心配です」
いつも通り周りと一緒の食事をして一人だけ痩せる。
これが持つ意味は思いのほか大きい、それを鬼殺隊でもっとも医学に精通しているしのぶ様が化粧をして誤魔化している。
「―アオイ?顔色が凄く悪いけど大丈夫?」
「…しのぶ様はちょっと体調を崩したのかお疲れのようです。私達でしっかりと支えていかないといけません」
言えない、言える訳がない。
あの方をして治せない程の大病を患っているのかもしれないなんて。
カナエ様を失うだけでなくしのぶ様まで亡くしてしまったら、カナヲのヒビだらけの心が持たない。
今だってそうだ表情こそ変わっていないものの冷汗でびっしょりと濡れている。
「明日はアナタの選別突破にこじつけて栄養のある物を作ります。《らいすかれー》も牛鍋も完食していただきましょう」
だからこそ私も強くあらねばならない。
カナエ様としのぶ様に留守を任された者として、しのぶ様やカナヲ達を支えるために。
大丈夫、仲間達の為ならきっと頑張れる。
◆
「今すぐにとは言わない、じっくりと考えて欲しい!継子でも俺は構わないぞ!」
「全集中の呼吸には興味があります。任務が始まる前に日を改めてお邪魔してもよろしいでしょうか?」
「うむ!今日ぐらいはゆっくり身体を休めた方がいい。俺の家は鎹烏が知っているだろうから時間のある時に来るといいだろう!弟の千寿郎にも話を付けておくから留守の時も問題ない筈だ!」
「私の屋敷にも来て欲しいわ!巣蜜も渡したいし、今回の食事の御礼や色々と相談したい事があるの!」
「御意」
待っているぞ!と一声残して煉獄と甘露寺の2人は店を後にする。
燃え上がるような髪色の煉獄と桜餅を食べ過ぎて桃色の髪になってしまった甘露寺、力強く大きな声と恵まれた体格、さらには鬼殺隊最高戦力の柱と来ればこれ以上なく目立つものだ。
「あ、お疲れ様です」
「善逸、待っていてくれたのか。すまんな」
「いやいや選別の後であれだけ作らせといて捨て置くとか無理でしょ」
善逸は食堂で茶を啜っていた、本来ならばあまり好まれる注文の仕方ではないが今回のような戦場の如き忙しさではむしろ助かる。
店の状況を鑑みてそう言う形にしたのだろう。
「良かったのか、兄弟子に報告と息災か確かめる事も頼まれていたのだろう」
「せめて団子くらいは包んで持ってくつもりだったんですけど、これだけ忙しかったらちょっと無理そうだし別の店探しますよ」
作らなくていいですからね?と念を押す善逸。
普段の彼は自己評価の低さと女性好きな所が前面に出ているが、こういう面では気の使える男なのかも知れない。
「そうか」
「蒼紫さん、煉獄さんの誘い引き受けた方がいいですよ。柱から指導を受けられる機会なんて滅多にないって獪岳…兄弟子も言ってましたし」
「―そうだな、全集中の呼吸を知っておく必要がありそうだ」
「普通は順番逆なんですからね?なんでそれで最終選別乗り越えられるの?―あ、やっぱりいいです」
「そう言えば善逸はどんな呼吸が使える」
「俺は雷の呼吸です。とは言っても使えるのは抜刀術の壱の型だけなんですけどね。だからこれを突き詰める事にしようと思ってます」
「抜刀術か…俺が一度も勝てなかった男もそれが得意だったな」
思い出すは最強の維新志士と言われた緋村剣心との激戦。
緋村抜刀斎とすら呼ばれた生きた伝説の超神速の抜刀術。
回天剣舞六連を首筋に捉えた後に撃たれたというのに天翔龍閃の前に敗れてしまった。
「え?あれだけ強いのにそれ以上に強い抜刀術の使い手がいたんですか?」
「―身体もしっかりと鍛えておけ。技の威力に耐えられるようにな」
しかしあの絶技は反って来る負担も凄まじいものがあった。
奥義を会得した時から緋村はそのあまりの威力に身体がついてこれず、いずれ刀を振れなくなっていくという。
優れた技を身に付けた時に体格が追い付いていなければ取り返しがつかない。
「…そろそろ失礼しますね。最終選別も食事の用意も本当にお疲れ様でした」
「ああ」
◆ 数日後 煉獄家
「ここが煉獄殿の屋敷か」
煉獄家で呼吸について学ぶことにした蒼紫。
やはり技術的なものは詳しいものの傍がいい。
門の前では煉獄を小さくしたような少年が箒で掃いていた。
「貴方が四乃森様ですね。私は弟の千寿郎です。話は兄上から聞いております、それではどうぞ」
千寿郎に案内され辿り着いた鍛錬場では既に杏寿郎が素振りをしていた。
全身から滴る汗の量からして相当振り込んでいるのだろう。
燃え上がるような彼がさらに熱く見える。
「兄上、四乃森様がお見えになりました」
「ご苦労だった千寿郎、せっかくだから見ていけ!四乃森君よく来たな!歓迎するぞ!」
「本日はお誘い頂きありがとうございます」
「まず簡単な説明だが、呼吸法は簡単に言うと息の仕方で身体能力を上げる技術だ!そしてその呼吸に合った技の型があると思ってくれればいい!簡単に手本を見せるから深呼吸だけでも真似してみるといいだろう!」
杏寿郎はまず技を使わずにそのまま呼吸法で深呼吸を見せる。
呼吸というだけあって肺活量が重要なのだそうだ。
そのまま型を使った動きを披露していく。
(―これは…焔霊?)
全集中の呼吸の型には炎や水といった現象が見て取れる。
それは使い手の才能の有り無しによってはっきり表れる、柱ともなればそれは見事なほどにハッキリと見て取れるのだ。
蒼紫からすれば火と剣の合わせ技と言えば比叡山を根城にしていた志々雄真実だろう。
似たような芸当が出来る者が他にもいるとは思ってもみなかった為、内心でそうつぶやいた。
「―こんな感じだ!…どうした?気になる事でもあったか!?」
「いえ、どことなく見た事のある技に似ていたので…」
「そうなのか!せっかくだから打ちあいの稽古で体験してみないか?」
話の展開の速さはどれがいい? 締め切りは20日0時
-
今ぐらいがいい
-
飛ばしていいから速い方がいい
-
色々みたいから遅くてもいい