『じつは私、バイパーさんのデビュー当時からのファンなんですよ。』
春絵は宏斗の方へ席を近付けて、興奮のあまりか宏斗の手を取る、。
現在、宏斗と日向そして春絵は入学式帰り学校の近場にあるファーストフード店に来ていた。
『それでいつも対戦を見てて思っていたんですが、どこかに身を隠した後に突如別の場所に現れたり、対戦相手の後ろに現れたりとあれはどのような仕組みなんですか? 瞬間移動か何かですか!?』
『えっと…、それは企業秘密ということで。』
流石に隠し通せなくなってきている。 今までは《エクリプス・ベナム》を前面の押し出すことで《
でも、今気にするところはそこじゃない。 宏人は横目で日向を見ると……
『………。』
日向の瞳は閉じているものの明らかに日向のニューロリンカーカメラは、春絵が握っている宏斗の手に向いていた。
『ところで安堂さんに聞きたいんだけど、《無制限中立フィールド》って知ってる?』
宏斗は話題を変え、ひとまず握られていた手を振り解く。 《無制限中立フィールド》というのはレベル4以上のバーストリンカーのみが許可されるハイ・プレイヤー向けのフィールドであり、エリア制限と時間制限が無くなるという通常対戦とは違うブレイン・バーストのもう一つ顔だ。
姉の由貴から《無制限中立フィールド》の話を聞いた時から宏斗の最初の目標であったが、そこへ行ける為のコマンドを聞く前に姉のブレイン・バーストがアンインストールされてしまった為、実は宏斗も日向もレベル4になっているものの《無制限中立フィールド》へ行けないのだ。
『春絵でいいよ。これからクラスメイト件同じ学校のバーストリンカーになったんだし、その代り私も名前で呼んでもいいよね。宏斗さん♪』
『わ、わかった。それじゃ春絵さんと呼ばせてもらうよ。』
『ノン、ノン。“春絵”でお願い致します。呼び捨てされた方が新密度もUPですよ。』
『それより安堂さん、先程のお話を!!』
突如、日向が話の方向性を修正すべく声を上げた。
いつもおとなし目な性格なだけに大きな声を上げた日向に宏斗は少し驚く。
『すみません《無制限中立フィールド》のお話でしたよね。もちろん知ってますよ。ただ……』
『『ただ?』』
『私も先日レベル4になったばかりなので、まだ《無制限中立フィールド》って行ったことないんですよね。お二方はもう行ったことあるんですよね?どんな所なんですか?』
『『………』』
宏斗と日向は顔を見合わせた後、自分達がまだ《無制限中立フィールド》へ行ったことがないこと、何故行ったことがないのかを春絵に語った――。
『――ううぅっ、苦労したんですね~。』
『あ、安堂さん。これ、どうぞ。』
俺の話で春絵さんが共感して泣いている。 そして日向が涙を拭く為春絵にハンカチを渡した。
たしかに親が居なくていろいろ大変ではあったが泣くほど共感してもらえるとは…。
『ハンカチありがとうございます。 ……よし!わかりました。ここは私に任せてください。』
『任せてというと?』
『私の親であり師匠に掛け合ってみます。』
春絵は仮想デスクトップを開きボイスチャットコマンドを選択すると、アドレス帳の中の1つを選択する。
先程言った春絵の親という人物に連絡取るのだろう。
“『あ、もしもし、師匠今よろしいですか?』”
“『どうした春絵?これから領土戦だから手短にな。』”
直結している為、宏斗と日向にも春絵のボイスチャット通信が聞こえてくる。 声から察するにどうやら春絵の親は男性のようだ。
“『ラジャです。本日、師匠が入学祝いでご馳走して頂く予定ですけど2名追加でお願いします。』”
“『は?ちょ、ちょっとまて!?2名追加ってどういうことだ!その前にご馳走なんて約そ――』”
『私の師匠の許可を得たのでこれで問題ないです♪』
『『………。』』
はたして相手の返答を待たずに問答無用で要件だけ伝えたことを「許可を得た」というのだろうか?
春絵の説明だとこの後その春絵の親に≪無制限中立フィールド≫のレクチャーを受けに会うのだという。
リアル割れの心配もあるが、日向と話し合いひとまずその人物に会うことにした。
――――江東区・某ファミレス
ブレイン・バーストには複数のバーストリンカーが徒党を組む『レギオン』と呼ばれるシステムがある。
レギオンに入ると戦域を占領することが出来る領土戦ができる。 そして東京都には約60の戦域があり、その大多数を7つのレギオンが占領しているのだ。 練馬区・北中野区を占領している赤のレギオン《プロミネンス》、足立区・荒川区・台東区を占領している黄のレギオン《クリプト・コズミック・サーカス》、新宿区・文京区・南中野区を占領している青のレギオン《レオニーズ》、渋谷区・東世田谷区・目黒区・品川区を占領している緑のレギオン《グレート・ウォール》、港区を占領している白のレギオン《オシラトリ・ユニヴァース》、杉並区を占領している黒のレギオン《ネガ・ネビュラス》、中央区・そしてここ江東区を占領しているのが紫のレギオン《オーロラ・オーバル》だ。 7大勢力が占領する土地だけあって宏斗達が住んでいる江戸川区に比べて断然バーストリンカー数は多い。 そんな土地の某ファミレスに宏斗と日向、そして春絵は来ていた。
「えっと師匠は……、あ!あそこに居ました。」
春絵が向かう方へついて行くとツンツン頭の男性が座っていた。
「おぅ、遅かったな春絵。んで、その2人がさっき言ってたふた……」
男性が日向を見ると立ち上がり――
「春絵でかした!お嬢さん、ぜひうちのレギオンに入って――」
「何、初対面の女の子にナンパかましてるんですか!」
日向の手を握ろうと近寄って来た男性の溝内に、春絵の強烈な突っ込みがめり込んだ。
―――
「先程は師匠が暴走してしまって申し訳ありませんでした。」
「痛てて、女性バーストリンカーは人口少ないんだから見かけたら積極的に勧誘しとくもんだろ。
うぉほん、じゃあ改めて自己紹介しよう“ライガ”だ。」
ライガと名乗る男性が握手を求めてきたので、宏斗達は握り返す。
「師匠、それ本名じゃ…」
「馬鹿者、俺の立場上を考えろ!」
ライガさんの立場って何だろう? それより俺達も自己紹介しないと。
「俺達も本名伏せたほうがいいですかね?」
「別に伏せてもいいが、制服着てる時点であんまり意味がないな。」
確かにライガさんの場合春絵の知り合いという以外リアル情報はないが、俺達は学校帰りでもある為制服を着用している。 制服から学校を特定すればそれでいろいろな情報が分かるというものだ。
宏斗と日向は素直に本名で自己紹介し、4人で直結後何故俺達が春絵に連れられてこの場に来たかを説明した。
『くぅぅ~、泣ける話じゃねえぇか。』
ライガが右手で目を隠し、宏斗の話に悲観的になっている。 子も感情的なら親も感情的である。
『そうです師匠。こんなに苦労しているお二方に協力してあげないでどうするんですか。』
『よし、わかった。教えよう!』
『本当ですか!?』
今まで大人しかった日向が笑顔になり喜びの声をあげる。 日向ははしゃいで宏斗の手をとった。
知り合ってまだ2ヶ月くらいだけど、日向はたまに感情をダイレクトに伝えてくるのでドキッとする。
『ただし、条件がある。』
『『………』』
『…条件とか非道です。師匠。』
え?この人なんて言った?と宏斗と日向は唖然となり、春絵は頼んだオレンジジュースを飲みながら、ライガを横目で非難した。
『馬鹿たれ。その条件ってのはお前も含めてだ。』
『へ?』
『まず、《無制限中立フィールド》っていうのが、どういうところなのか分かるか?』
宏斗は姉から聞いている《無制限中立フィールド》について思い出し話す。
『姉からレベル4以上で入れるようになる、時間と戦域が無制限の広大なフィールドと聞いていますが。』
『それは大まかな説明だ。もっと細かく言うと《無制限中立フィールド》全地球上にあるソーシャルカメラが写している全ての場所が範囲だ。そしてそれゆえに時間さえ合えば《無制限中立フィールド》に入っている者なら誰にでも攻撃でき、誰にでも攻撃を受ける。これがどういう意味だか分かるか。』
誰にでも攻撃でき、誰にでも攻撃を受けるか…。宏斗はライガの質問に顎に手をあてに考える。
あれ?時間さえ合えばってことは…。
『そうか! 唐突に乱入されたり、一対多の戦いになるかもしれないのか。』
『そういうことだ。 だからいざという時に対処できるよう、ある程度の強さがなければ俺は教えん。』
『その強さはレベル4になった私達なら問題ないんじゃないですか?』
オレンジジュースを飲み終えた春絵がライガの答えに質問で返した。
たしかに、《無制限中立フィールド》の条件はレベル4以上だからこそ十分な強さだとライガ以外の3人は思っていた。
『確かにそうだが、俺はそれを最低条件だと思っている。 実は《無制限中立フィールド》にはバーストリンカー以外にも気を付けなきゃいけないものがある。そいつらを倒すにはもっと力を付けなきゃいけないんだ。その相手の名称がエネミー。』
エネミー・・・、あれ?どこかで聞いたことあるような。
『エネミーは《無制限中立フィールド》を闊歩する仮想生命体で、その強さは小さいものから
宏斗達はライガの言葉に息をのんだ。 高ぶる≪無制限中立フィールド≫への気持ちが叩き付けられた話の厳しさによって一気に宏斗を現実へ引き戻す。 日向も春絵も視線がうつむいている。 表情からして宏斗と同じ心境なのだろう。
『何そんな残念な顔してんだよ、おまえら。さっき言った条件の“ある程度の強さ”の強さってのは、別にレベルの話ってわけじゃないぜ。』
再び投げかけられたライガの言葉に厳しい現実に打ちのめされた3人は顔を上げた。
そしてその投げかけに日向は驚いた顔で質問を返した。
『あの~、それ以外に強さが測れるものなのでしょうか?』
『ん~、それは少し言葉では説明しづらいな。実際に見たほうが早いな。よしお前ら加速だ。』
『は?』『え?』『へ?』
ライガの行き成りの加速宣言に宏斗、日向、春絵は素っ頓狂な声を上げる。
『ほら、行くぞ3、2、1、『『『バースト・リンク!!』』』』
世界が青く塗り替わる、ファミレス店員の歩みも止まったかのように遅くなり、奥の厨房ではチャーハンを作っていたのだろうか、炒ったお米が宙で浮かんでいる。
宏斗が鎧姿の黒騎士に変わり、横では日向が司書風の格好で座っている。最近はデュエルアバターに合わせて同じ色の髪止めのリボンと胸と腰の位置に同色の紐止めを結んでいる。
そして目の前には、宏斗と同じような全身フル鎧姿の重装戦士と、原寸大のミケ猫座っている。
あれ?でもこれは席の位置的に……。
「いぁ~、師匠のアバターはいつ見ても心癒されますね。えへへへ」
「あっ、こらっ、頬ずるな。お前の鎧の棘が刺さるだろうが!」
重装戦士がミケ猫を抱き抱え、猫に顔面まで覆われた鎧兜で頬づいている。
間違いない。 この重装戦士が春絵さんで、このかわいいミケ猫がライガさんだ。
ライガがもがいて春絵の腕からするりと抜けるとテーブルの上にあぐらをかく。
「ったく、春絵は俺がこの姿になると直ぐこれだ。さて、加速したということは何するかわかるな。」
「対戦ですね、師匠。」
重装戦士の春絵が敬礼しながら答える。 ただ春絵の声のトーンは女性特有の高さなので物凄く違和感を感じた。
「そう、言葉を交わすより、拳を交わす方が一番実力が分かりやいだろ。さて組み合わせだが俺が1対1で3人の面倒をみるかな。」
「師匠、提案です。4人いるんだから2試合でいいんじゃないですか?」
「そうだな。じゃ、それでいこう。」
春絵の提案にライガはあっさりと考えを変えた。
そして春絵は兜の向きを宏斗との方へと向ける。 これはどう見ても宏斗をご使命である。
「じゃ、私は宏「あの、安堂さん。私と対戦しませんか。」」
日向が大きな声を出して春絵に勝負を挑んだ。 現実では開かれることのない仮想の瞳の影響で真剣な表情に見える。
そして勝負を挑まれるんだろうなと身構えてた宏斗は、日向の申し出に驚いた。
なぜなら、日向は普段の性格から極力自分から誰かに対戦を挑むということはしない。
だからこんなにも闘争心をあらわににしていること日向は珍しかった。
「う~ん、いいですよ。それでは1つよろしくお願いします。」
春絵が承諾したことで対戦組みお合わせは決まった。 日向が仮想デスクトップを開いて春絵に対戦を申し込む。
こうして《フローライト・モルフォ》VS《アンバー・メモリー》、太陽の橙と太古の橙の戦いが始まった。
ここまで読んで頂きありがとうございます(`・ω・)ゝ
ちょいと身内の不幸やら、仕事の忙しさやらで更新が遅れてしまいました。
今回は括弧の使い方に気をつけて書かせて頂きました。
誤字脱字報告その他、ご意見や質問、感想等あればよろしくお願い致します^^
さぁ、次回は戦闘パートだ(ノ〃∀〃)ノ