アクセル・ワールド/フォーゲット・ジュエル   作:こぶ茶

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第01話「awakening;覚醒」

 

 

 「ただいま~。」

 

 「お帰り姉さん。早速ブレイン・バーストの対戦に行こうよ。」

 

 「ん?ブレイン・バースト?新しいゲームでも買ったの?」

 「悪いけど、宏のやるゲームは姉さん苦手分野だから遠慮するよ。」

 

そう言って姉さんは自分部屋へ行ってしまった。

 

 「え!?なんで!?このゲームは姉さんが教えてくれたのに!まるで――――」

 

そう、姉さんが僕にブレイン・バーストを説明してくれた中に『バースト・ポイントを全損するとブレイン・バーストが強制アンインストールされる。また、強制された者はブレイン・バーストの記憶は一切なくなる。』という説明と全く同じじゃないか。

それならば、もう姉は――――

 

 「バースト・リンク!!」

 

僕宏斗はグロバールネットに接続しマッチメイキング画面を急いで開いて驚愕なことを認識していた。昨日まで表示されていたはずの姉のアバター《ルベライトハンター》の名前がなかった。

この瞬間僕は認めたくない事実を宏斗は認識してしまった。

 

『姉がもうバーストリンカーではないのだと。』

 

 「どういうことなのこれは!?昨日ポイント消費の説明の際にも、

  姉さんのポイントは全然余裕があると言って――――」

 

バシィィィ!!と音と共に次の瞬間、世界が暗転し目の前に一度見たことがある文字が目の前に広がった。

 

【HERE COMES A NEW CHALLENGER!!】

 

【FIGHT!!】

 

それは姉が説明の際に宏斗に対戦を申し込んだ時と同じ文字。

そして次の文字で、《オブシディアン・バイパー》のデビュー戦を開始された。

 

 

あたりを見渡すと空には灰色の雲。轟く雷鳴。建物は鋭利な鋼鉄板に変わり、一言で言うなら「暗い」。そして自分がディエルアバターに変わっていたことに気付いた。

 

 「しまった。グローバル接続していまったから対戦挑まれてしまったのか。」

 「落ちつけ僕。姉さんは挑まれたらどうしろと言ってた。」

 

”いきなり事に対して人は慌ててしまうのが普通だけど、ブレイン・バーストの場合はまず落ちついて冷静になることが先決。”

 

 「そうだ。まずは落ちつくんだ。」

 

 スー、ハー、。宏斗は何度か深呼吸をして再度姉の今教えを思い返す。

 

”落ちついたのならばガイドカーソルを見なさい。矢印が向いている方向に宏の対戦相手がいるから。”カーソルは西の方角を指している。挑まれたなら仕方がない。僕は不安な気持ちを抑えつつカーソルの向く方向へ駈け出した。

 

 「相手の名前は《ネイビー・ゲーター》直訳すると”藍色の鰐”・・・」

 「藍色は青系統だから確か近接系だったよね?」

 

走り出してからしばらくすると大きな十字路に辺りを確認している藍色の鰐がいた。いや正確にいうならば鰐ではない、まず鰐は2足歩行ではないし何より目の前の鰐は僕の姿に気がつくと人の言葉で僕に話しかけてきたからだ。

 

 「お!どんな仕様だが知らんが()()()()()()()()()()

  必殺技ゲージが溜まってないところを見ると道にでも迷ったか?ニュービー」

 「ったく『世紀末』ステージか。お互い暗い色だからギャラリーからは見せにくいぜ。」

 

と言っても江戸川区にはバーストリンカーは少ないらしくギャラリー数は2、3人しかいない。

ニュービーとは初心者を表す単語。ということはこのバースト・リンカーはそれなりに対戦経験があるのだろうか?そうなれば姉のことも知っているかもしれない。姉は自分のことをこの地区では凄腕のバーストリンカーと言っていたので知名度もある。ならばポイントを全損したということはなんらかの方法で対戦相手に奪われた可能性がある、その対戦を見た人がいれば真相が・・・・

 

 「あのぉ、すみませんがこのゲーム初めてどのくらいですか?

  ルベライト・ハンターって名を知っていますか?」

 

 「ん?まぁ俺もLv1だからそんなに時間はたってねーよ。5日程ってとこか。」

 「そのアバター名も悪いが知らんな。俺の親なら知ってるかも知れんが。」

 

どうやらネイビー・ゲーターも僕と同じまだ初心者のようだ。

 

 「それよりそろそろ始めようぜ。時間が結構経っちまった。」

 

残り時間を確認すると1500カウント。それを確認し視線を相手に戻すとネイビー・ゲーターは大口を開けて猛突進してきた。

 

 「仕方ない。応戦するしかないか!」

 

ネイビー・ゲーターが噛みつき的な攻撃を繰り出してきたので左に回避すると、宏斗の後ろにあった元はビルらしき建物の鉄板壁をネイビー・ゲーターはその顎で砕いた。

 

 「―――っなんて破壊力だよ。」

 

 「ちっ、外したか。ならばこれはどうだ!」

 

 「ック!!」

 

今度は人にはあるはずのない太い尾を大ぶりに振り上げてきた。

宏斗はそれも避けたが一瞬反応が遅れたのか脇腹に軽く当たってしまいHPを10%程減少させてしまった。オブシディアン・バイパーの防御力が低いのもあるがそれでも、軽く当たった程度でもこの攻撃力。まともに攻撃が当たれば終わってしまうのではないのか?そんな思考をめぐらせつつも宏斗の目は相手のパターンを次第に掴みはじめ、右手の篭手から刃を出して相手に攻撃が通していく。機動型ならではのヒット&ウェイ戦法である。残り時間も800を切ったころ僕らのHPは、

 

オブシディアン・バイパーHP60% ネイビー・ゲーターHP40%

 

このままいけば勝てると思ったその時、突如ネイビー・ゲーターの牙が光始めた。

 

 「調子に乗るなよ!!《フィジカル・クラァァァァァァァァァァァァッシュ》!!」

 

ネイビー・ゲーターが必殺技ゲージを消費し、その太い足で勢いよく飛び跳ね僕の左手に噛みついてきた。今まで初動が突進攻撃だった為、反応が遅れてしまい僕の左腕をそのまま食い千切られた。

 

 「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」

 

痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!HPゲージが一気に30%も減少する。

痛覚が少々緩和されているとはいえ、左腕が無くなったのだ。左肩部分から壮絶な痛みを感じた。

ネイビー・ゲーターは勢いのあまりビルに突っ込んだらしく、そのビルに大穴を空け土煙が上がっていた。このままだとまた食われるんじゃないのか。宏斗はその恐怖と痛さからその場から逃げ出した。

 

ネイビー・ゲーターは自分が空けた大穴からゆっくりと這い出てきた。《フィジカル・クラッシュ》は勢いよく相手に飛びつくため初動が早く命中率は高いものの、その勢いのあまりか狙いがうまく付けないという欠点があった。今回は更に勢い余ってビルまで激突してしまったのだが、オブジェクト破壊で必殺技ゲージがあと少し溜めればもう一度《フィジカル・クラッシュ》が打てる程溜まってる。

 

 「腕一本か。あそこで胴を噛めれば勝ち確定だったんだが・・・」

 「次に当てれば勝ちは変わらないか。」

 「ん、あの蛇野郎がいね~・・・。ってことは()()()()()()()()()()()()()

 「オイ! オブシディアンバイパーどこに隠れていやがんだぁぁぁぁ」

 

 

僕はどこまで逃げたのだろうか?ネイビー・ゲーターの姿が見えない地点まで走りその場に座り込んだ。

 

 「ハァハァ・・僕はいったい何をしてるんだろう。」

 

対戦ゲームで逃げるなんてもってのほかなのに。逃げてしまった理由にはネイビー・ゲーターの強力な技に対する恐怖心もあったが、一番のところは相手との体格差が決定的な要因だった。

宏斗の心的外傷(トラウマ)は『8歳~12歳に掛けて父親からの言葉の虐待』だった。

父は姉・由貴と僕・宏斗を比較し、何に対しても劣っていた宏斗はいつも父から罵倒を浴びせられていた。

 

 ”お前はなぜそこまで出来んのだ。お前のような奴は私の子には()()()。」

 

そんな言葉を受け続け宏斗が13歳の時、そんな正確の父と剃り合わなくなってたのか父と母は離婚したのだが、それ以来宏斗は宏斗より大きい男性を父の面影と重ね畏怖感を頂くようになってしまった。その為2mもあるネイビー・ゲーターにも畏怖してしまい、気持ちが鬱になっていた。

 

「僕はこの世界でも居場所はないのかな・・・姉さん。」

 

”―――じゃ、宏がその弱さを克服できちゃう秘密の世界を教えてあげよう。”

”なにその怪しげなフレーズは。ものすごく不安しか伝わらないんだけど。”

”失敬な。このお姉様に騙されたと思ってこのゲームをインストールしてみないさい。”

”それは宏がその世界に居てもいいと思える世界だから。”

”そしてその世界で戦い続ける限り、宏はその弱さを捨てられる世界。”

 

―――そうだ、僕はまだこの世界を知らない。

―――僕はまだこの世界で何もしていない。

―――僕は・・・

―――俺はこの世界に居ていいと、まだあがき戦っていない!!

 

 

次の瞬間自分の身体の内から熱い感覚と違和感を感じた。ふと自分の足元を見ると両足が忽然と消えている。

 

 「え?何だこれ!?攻撃を受けた?いつ?」

 

消えた足がどうなったのか確認しようと残った右手を前に出したが、その手もが消えていた。

いや、胴体さえも消失していた。これはヤバイ。自分が消えていく感覚に恐怖感がますます積っていく。宏斗はその現実を拒否するかのように目を閉じた。

 

しかし、消えている感覚はあるもののそれ以外の変化は感じられなかった。

むしろ座っているといういる感触がある。右手を強く握ろうと思えば握った感触がある。

そして目を開けHPゲージを見たがHPは30%から変化はなく代わりに必殺技ゲージが少しずつ減っていく。必殺技は持っていないので必殺技ゲージ減らないはずなのに・・・

そういえば攻撃技じゃないスキルがあったはず。それが発動しているのか?宏斗は確認の為自分の名前をクリックして技一覧画面を表示させると、そこには昨日は無かった新しい能力が記載されていた。

 

 「―――≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)。新しい能力なのか?」

 「ステルスってよくゲームで出てくる周囲に溶け込んだり透明になったりと・・・」

 

その時、目の間にあった窓ガラスを見た。ガラスは鏡と同じでうっすらだが自分の姿を映すはずなのだが、ガラスには本来映るはずのオブシディアンバイパーの姿が映っていなかった。

 

 「ほ、本当に消えてる。この力が俺を今消している原因なのか。」

 「これなら気付かれず相手に攻撃が・・・」

 「いや、姿が消えたところでガイドカーソルで俺の方向位置はわかって―――」

 

ふと、ガイドカーソルを見て違和感を感じた。

 

 「あれ?そいうえばネイビー・ゲーターは?」

 

対戦の初めはガイドーカーソルが示す方向を目指し、それを元に相手の場所まで移動するもの。

宏斗が戦っていた場所から逃げて300カウントは経ったいた。ネイビー・ゲーターは機動性は高くないものの300カウントもあれば十分追いつける時間だ。なのになぜネイビーゲーターは追ってこないんだ?何か理由があるのか?相手の能力上の問題か?あるいはこちら側の要因か・・・

そこで気がつく。この身体が消えてる能力は≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)と言うアビリティ。

そして宏斗にはもう一つアビリティが存在する。―――≪索敵妨害≫(サーチジャミング)

そこで一つの仮説を思いつく。宏斗はその仮説を確認する為まだ心に残っている勇気を絞り再び戦場へ駈け出した。

 

 

≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)は強く念じれば解除できたので今は解除している。今度は身を隠しながらネイビー・ゲーターへ近付き、遠く方でネイビー・ゲーターの姿を先に発見した宏斗は相手が見下ろせる程の高いビルがあったのでその屋上に上りすこし観察してみた。

 

 「くそ~、どこに居・や・が・ん・だぁぁぁ!」

 「タイムアップで勝利とか物足りないぜぇぇぇ。」

 

オブシディアン・バイパーを探しているらしく隠れられそうな辺りを豪快に壊しながら俺を探しまわっていた。しかも全然見当違いなな方向側を。これで≪索敵妨害≫(サーチジャミング)というアビリティが『相手のガイドカーソルを使用不能とさせる』という能力であることが理解した。

これならば身を隠せば相手に気付かれることはない。≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)を再び使用すれば近付ける。だけど、攻撃をすれば確実に気付かれるし一撃ではネイビーゲーターは倒せないだろう。しかも奴の《フィジカル・クラッシュ》を使用を許してしまえばその時点で試合終了だ。後もう一押し何かないか。その時ネイビー・ゲーターが壊した辺りに毛布があったらしく、毛布は宙を舞いたまたまネイビー・ゲーターの背中に被さった。

 

 「ああああl邪魔くせ~~!」

 

ネイビー・ゲーターは手を使い取ろうとするが届かないらしく手は宙をかいている。

今度は身体を揺さぶりようやく布が地面に落ちた。

これだ!宏斗はこの試合に勝つべく≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)を起動させた。

ネイビー・ゲーター付近に転がっている奴が壊した残骸まで走り≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)を解除し身を隠す。

あとは待つだけだ。奴がこちらに背中を見せた瞬間を。

そしてその瞬間はが来た。奴が背中をこちらに向けた!!

 

 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

その瞬間を待っていたと言わんばかり、オブシディアン・バイパーは駈け出した。

ネイビー・ゲーターは突如背後に現れたオブシディアン・バイパーに慌てて振り向くがすでにオブシディアン・バイパーは背中に取り付き、右手に装着している強化外装≪孤独な牙≫(サリテュードバイト)の刃を背中目掛けて突き刺した。

 

 「グハァァァァァァ!!」

 

一瞬の奇襲劇にギャラリーがざわつく。今まで特に派手な戦闘もなく、両者の色も暗めで見づらてく、更にオブシディアン・バイパーが逃げだしたので面白みがなくなったはずの試合だった。それが最後の最後で思いがけない逆転劇。しかも今までどこに隠れてたのかもわからなかったのに、気付けばネイビー・ゲーターのすぐ背後を獲っていたのだからなおさらだ。残りカウントは50。

 

 「糞!背中から離れろぉぉ!」

 

 「悪いがそれは無理だ!」

 

 「ゴオァァァァァァ!」

 

ネイビー・ゲーターは激しく暴れるが、オブシディアン・バイパーは背中にしがみ付き刃をしっかり背中に刺し込む。先ほど気付いたネビーゲーター弱点。それは大きな巨躯の割に身近な四肢にある。それゆえネイビー・ゲーターの背中は死角となっていたのだ。ネイビー・ゲーターは咆哮をあげ更に暴れるが残り時間は後数秒。ネイビー・ゲーターはHPゲージが、

35%、33%、31%と減りそして残りカウントが0になったその瞬間。

 

【TIME UP YOU WIN!!】

 

オブシディアン・バイパーHP30% ネイビー・ゲーターHP29%

オブシディアン・バイパーは初めての対戦を勝利で飾った。

宏斗は試合終了に安堵してネイビー・ゲーターの背中から落ちて尻餅をついた。

そんな勝者を見てネイビー・ゲーターが、

 

 「勝者が尻餅とか情けね~な(笑)。あ~ぁ~勝てると思ったんだがな。」

 「さっき逃げたのも俺のカーソルが表示されてないことからの一時退却だったってわけか。」

 「なかなか、トリッキーな戦い方じゃね~か。まぁ個人的にはガチバトルのほうが好みなんだがな(笑)。」

 「次、戦うことがあったら今度は俺が勝つぜ。じゃあな」

 

ネイビー・ゲーターがその場からバーストアウトする。

つ、疲れた。時間でたった1800カウントなのにもう何日分も身体と頭を働かせた感じだ。

その場でへたばっていると。ギャラリーから歓声が聞こえた。

 

 「NICE FIGHT!! いい試合だったぜ。」

 

 「本当いい試合だったよ。次も観戦させてもらうね。」

 

 「早くレベルあげて。今度は俺と戦おうぜ。」

 

数こそ少ないものの、その歓声は俺がこの世界に居てもいいと言われているような気持ちになれた。

 

 

 「姉さん・・・ 俺、強くなって姉さんの仇。いつか獲るから。」

 

 

 

こうして宏斗こと《オブシディアン・バイパー》のバーストリンカーとしての戦いが始まった。

 

 




ようやく第1話本編完成しました>ワ<

今回はアクセル・ワールドの華。対戦のお話です。
ド派手な技でないにしろついに主人公の能力解禁させました。
正直なところ、トラウマ思い返してげんなりした以降の話が全然うまく書けてないような感じがしてます。普通、鬱状態になって自力で立ち直るのって無理じゃね?
そしてやっぱ、シリアスだけじゃ僕のモチベが持たないです。
ちょいちょいギャグとかおんにゃのことかのお話を書かないとモチベ上がらんわ!
ってなわけで次回はついにヒロインを登場させたいと思います。
いあ、上記理由でって訳じゃないよ。最初から考えてたよ。

それでは感想・ご質問等あれば幸いですのでお願いいたします。

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