「わぁ~♪ 綺麗な場所ですね。」
「多分、《妖精郷》ってステージなのかな。」
「名前も素敵ですね。」
「おっと、それじゃ大まかだけど作戦を説明するよ。作戦は必殺技ゲージを溜めつつ、
ガイドカーソルとは逆の方向へ逃げて。」
「??? え?逃げるんですか?」
「逃げるって言っても、戦わないわけじゃないよ。そこから――」
宏斗が立てた作戦はこうだ。
オブシディアン・バイパーは
対戦相手のガイドカーソルには敵の方向を示す矢印がフローライト・モルフォしか映っていないと考えられた。
それゆえに、敵はモルフォを最初の標的として定め、モルフォがいる方向に揃って向かってくるはずだが、それは青や緑、一部の黄色や金属系統などの大体のプレーヤーの場合。 宏斗が赤系統、狙撃手がいるタッグを対戦相手に選んだ理由は長距離攻撃を得意とするうえで、モルフォに向かうというよりモルフォが見える位置に陣取って射ってくる可能性が高いからだ。 それは即ち対戦相手は別々に行動するということ。
それだけでも分かれば、モルフォはダメージを受けないように囮として逃げてもらって、対戦相手の一人をある地点まで誘導、そしてモルフォの必殺技を使って対戦相手を分断しようと思う。
――――それはほんの数分前
「はぁ・・・、はぁ・・・、い、如何ですか?」
「う~ん、残念だけどモルフォ自体の身体能力は低いみたい。」
今俺たちがいるのは壁や床が全てリベット打ちの鉄板に変化した《鋼鉄》ステージだ。
歩くたび足音が響くので隠密系のアビリティを持つバイパーにとっては非常にやりにくい。 この対戦がフローライト・モルフォの検証対戦でなかったら宏斗は泣いていたかもしれない。
そしてモルフォのアバター性能だが唯一の通常攻撃技の体当たりで攻撃させてみたり、一発攻撃して防御率を図ったりしてみたのだが、攻撃はあんまし痛くなく、軽く殴った程度でも結構HPが減って痛がっていた。
そして今は全力で走らせて機動力を見ていたのだが、正直言って遅い。
でも走らせた時に足音が聞こえなかったので、不思議に思い足元をよく見たら数センチ程浮いていた。
足音、足跡がつかない点について、宏斗は正直羨ましく思っていた。
「それならば、このアバターは何ができるのでしょうか・・・」
やばい。 日向さんが本気で凹んでいる。
ここはなんて言うべきか・・・。 そうだ、デュエルアバターのポテンシャルは皆平等と宏斗の姉・由貴は言っていたはずだ。 そしてモルフォのような黄系統のカラー特徴は間接技を得意とすると。 それならば断じて体当たりのような物理攻撃手段ではないはずだ。 そして宏斗はその間接技を一度見たことがある。
目玉模様の青い蝶を召喚する技《オブサベイション・フェアリー》。
翅先がギザギザした赤い蝶を召喚する技《フレア・フェアリー》。
この2種類の蝶こそがフローライト・モルフォのポテンシャルの大部分と見て間違いない。
「だ、大丈夫だよ。黄系統のアバターの特徴は間接技だから。」
「間接技?」
「最初に出会った時に見せてくれた蝶を出す技があったでしょ。
それこそがモルフォのポテンシャルの大部分なんだよ(多分)。
ちょうどゲージも溜まっているから技を使って確認してみようよ。」
「・・・はい、わかりました! 《フレア・フェアリー》!!」
よかった。なんとか元気を取り戻してくれたみたいだ。
日向が技を使用すると50%程溜まっていたゲージが40%ぐらいまで減り、振り袖部分の内側から3匹の赤い蝶が出現する。
「あれ?その技って前見た時、9匹出ていなかった?」
「この技、任意で思った数だけの蝶々を出せるんですよ。」
「お、まだ効果は分からないけど。それはすごいな。」
「でも、出した蝶々の数だけゲージも比例して減りますし、
もう一つの技合わせても最大10匹までしか出せません。」
日向はそう言いながら召喚した蝶の1匹を指先に止まらせる。
振り袖姿のアバターに蝶っていうのはなんとも絵になる風景だ。 これが《鋼鉄》ステージじゃなくてもっと綺麗なステージなら尚更絵になるのだけど。 そう思いつつ宏斗もなんとなくその辺で飛んでいた蝶々を獲ってみようと手を伸ばす。 しかし蝶々に手が触れた瞬間、簡単に蝶々が砕けてしまった。
あ、やばい。せっかく出して貰ったのにと宏斗が考えた次の瞬間、砕けた蝶が収縮すると直径50㎝程の光の球体となってバイパーのHPをガリガリと削った。
「熱っ!!」
「!?」
日向も宏斗が触れた蝶が突然の爆発したのを見て、驚きの表情を浮かべ宏斗のもとへ駆け寄ってた。
いきなりなことに宏斗もびっくりしたが、これは間違いないと確信した。
「・・・・」
「だ、大丈夫ですか!!宏斗さん。 宏斗さん?」
宏斗は部屋を見渡し一つの鉄廃材を見つけて手にすると、その廃材をまだ残っている蝶に狙いを定めて投げた。
蝶に廃材がぶつかると先程と同じように直径50㎝程の光の球体となって爆発する。 日向が先程指先に止まらせていた蝶も近くで飛んでいたので巻き込まれて連鎖で爆破した。
廃材が壊れた為でモルフォの必殺ゲージが45%くらいに少し回復していた。
「お~連鎖爆破もできるのか。起爆の条件は接触かな、それとも衝撃かもしれないな。
技の属性は炎熱と爆発か・・・いや発光したから光かも。」
「あの~?」
「あ、ごめん。 でも日向さん、おめでとう! 《フレア・フェアリー》は攻撃技だよ。」
あの後、日向の話を聞くと見えている蝶ならば強く念じれば操作が可能らしい。
また任意での爆破も可能か試したところ案外あっさりと出来てしまった。
それならもう一つの《オブサベイション・フェアリー》は青いから氷雪属性の技かなと思い、同じように衝撃を与えてみたのだが蝶が砕けただけだった。 以上がモルフォを検証した結果だ。
今回モルフォには囮として逃げながらこの先にある四方が壁に囲まれている広場まで、狙撃タイプじゃないオークル・ギターという相手を誘導してもらい相手が広場に来た時点で俺が攻撃を仕掛け、モルフォが蝶で出入り口を塞ぎ1対1に持ち込むという作戦だ。
「バイパーがオークル・ギターという方と戦っている間、私はどうしましょう?」
「それじゃ、もう一方のカーマイン・コーンシェルの注意を逸らしててよ。
こっちが片付いたら直ぐにそっちに向かうよ。
可能だったら
「くすっ、わかりました早くしないと私が先に倒しちゃいますよ。」
――――日向は作戦通り、矢印とは別方向にある走り目的の広場にたどり着いた。
必殺技ゲージは半分ほど溜まっていて、モルフォの周りには4匹の赤い蝶と1匹の青い蝶を出している。
《フレア・フェアリー》は一番の利点は何と言っても消費ゲージの低さだ。 そのおかげでモルフォはゲージを溜める為に一度体当たりでオブジェクトを壊すだけで技を使用できるだけのゲージが溜まり、あとはその蝶使用してオブジェクト破壊を繰り返せば必殺ゲージは溜まる一方なのだ。
それゆえゲージに余裕ができていた。 そして何かのきっかけで《オブサベイション・フェアリー》について判明するかもしれないと思い、こうして召喚しておいている。
「えっと、この広場でいいのかな・・・」
「HAY!俺に会いに来てくれないから、こっちから来てやったぜZE。」
突如後ろから聞こえた声に、日向は振り向いた。
そこに居たのは1.5c㎥の正方形型の浮遊しているアンプに座っている、少し黄色みがかった橙色のアバターがいた。 サイクロプスアイ型のバイザーとヘッドホンを装着し、手には名前通りエレキギターを持っている。
彼の後ろには彼が座っているアンプと同型のアンプが浮遊していた。 彼がおそらくオークル・ギターなのだろう。
「俺的には、追いかけっこなら浜辺のほうが好みだZE。」
「な、なんですかそれは!? 別にあなたとそのような事をするつもりはありません!!」
「SHOCK~。 振られちまったZE。」
そう言いながら、ギターが壁の上を振りむくとそこには複数の色とりどりのアバター達がいた。
「ひゃひゃ、ダッセ~。 ってか、もうちょい真面目に立ち振舞えよ。」
「なんなら私がじっくり追いかけっこしてあげようか。もちろん私が狩る目的で追うけど。」
「対戦相手は新顔だな。相方も最近出てきた奴だし、どこ繋がり子だ?」
この広場の壁上部をギャラリーと呼ばれる何名かの対戦観戦者が観戦していた。 どうやらギャラリーの発言からギター側の観戦者のようだ。 そして日向もその中にある者をみつけた。
「さぁ、モルフォっち。俺のライブを聴いてけYO。」
「初対面なのにいきなりあだ名ですか・・。残念ながら私は遠慮しておきます。代わりに彼が聴いてくれますよ。」
「WHAT?」
日向が笑顔でギターの後ろを指さすと、そこには先程までギャラリーに紛れ込んでいたオブシディアン・バイパーがオラクル・ギター目掛けて一撃を仕掛けるべく跳躍していた。
ッガキン!!
「ぬわぁ!」
「モルフォ、早く広場から離れて。離れたら作戦通りに!」
「わ、わかりました。」
バイパーはギターを斬りつけアンプの上からギターが転げ落ちた。 奇襲成功と高所からの攻撃と相成ってギターのHPが10%程削れた。 ギターは体制を立て直すべく立ち上がり、バイパーは敵を逃さぬよう立ちはだかる。
そしてモルフォは広場から出て、作戦通りこの広場を封鎖すべく蝶たちへ指示を出した。
「爆ぜて!!」
出入り口2か所へ飛んで行った4匹の赤い蝶達は、日向の命令通り壁を爆発すると破片が出入り口を塞いだ。
これでこの広場は誰にも邪魔されず、逃げ場のない戦場と化したはずだ。 しかしそれはバイパーも同様の条件である。
「ちっ、まさかギャラリー内に紛れ込んでいたとは普通は思いつかなかったZE。
後、俺的にはお前とガチンコするより、さっきのかわいいGIRLとガチンコを希望するZE」
「残念ながらそれは却下だ。俺の相手をしてもらうぞ。」
「仕方ね~な。それじゃお前に今の俺の気持ちをSOUNDで
それが戦いの火ぶたを切った合図だった。 ギターは手に持ったエレキギターを構え直すと、それに連動して2つのアンプが更に浮上し、バイパーはギター目掛けて疾走した。
――――残り1100カウント
日向は先程の広場から少し離れた場所まで移動していた。
ガイドカーソルには2つの矢印が表示されている。 1つは先程までいた広場のオラクル・ギター。
そしてもう一つはまだ見ぬカーマイン・コーンシェル。
「この後はこの矢印にいる相手の注意を引けばいいんだよね?」
その時矢印方向にある遠くの壁上からキラリと光る物が見えた。 次の瞬間、日向目掛けて高速で飛来する何かが飛んで来る。 日向はそれに気付くと反射的に近くにあった噴水の影に隠れ避けた。
「な、なんか飛んできた!!」
ッビシュー!ッビシュー!ッビシュー!・・・
モルフォが回避した後もその何かは止めどなくモルフォに向けて撃ち込まれていた。 飛来してきたものの正体は“水”。 コーンシェルは圧縮した水を高速に撃ち出すことで狙撃していたのだった。
「これは注意が私の方へ向いているということなんだと思うけど、ここからどうしよう・・・。」
宏斗は可能だったら倒して構わないと言っていたが、先程の回避さえ奇跡的だった為この狙撃攻撃を潜り抜けることはモルフォには不可能に近い。
ここは宏斗がオラクル・ギターを倒すのまで隠れ耐えるべきと感じた、その時――
ッドッゴォーーーーーン!!
「!! 今の音は広場の方!? もしかして宏斗さんの身に何か・・・。」
それはバイパーとギターが戦っている広場の方から聞こえてきた。
この戦いはいろいろと宏斗が作戦を立て日向はその作戦をこなしていたが、結局のところ宏斗頼りなことを日向は感じ取っていた。そして助けにも行けない自分と何も出来ない自分とに苦虫を噛み締めながら、日向は目を瞑り宏斗の無事を祈るしかなかった。
「お願い無事でいて・・・。 え!?」
“お願い無事でいて・・・。”
目を閉じた瞬間、そこに見え聴こえたのは目を瞑り祈るモルフォの姿と自分の声だった。
「これはもしかして――」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
そしてごめんなさい。2話でまとめるつもりがいろいろ詰め込んだらまた次回に持ち越しちゃいました><
おそらく次回でなんとかこのバトルは完結させる予定です。
今回時間軸を戻したり進めたりするのに「――」をいっぱい使ったり、名前の記述を意図的に場面で変えてみたのですが如何でしょうか? 見にくいや文章的に変と感じた方はご指摘お願い致します(`・ω・)ゝ
その他、ご意見や質問、感想等もどしどしよろしくお願い致します^^
《PS.》あれ?AWのサイドストーリー系の小説1つ減りました?