ギュイィィーーーーーン!!
オークル・ギターがエレキギター型の強化外装を弾くとそれに繋がっている浮遊型のアンプから、呼応するかのようにとてつもなく大きな“音”という名の衝撃波がオブシディアン・バイパーへと襲う。
「どうだぁ!いい音だろRO。避けなければ真の意味で直接心に響くZE。」
「んなことするかぁぁぁ!!」
宏斗は器用に障害物を使いつつ、衝撃波を躱すと放たれた場所は吹っ飛んだような跡が残っていた。
本来、“音”と言う名の衝撃波は弾がない。 さらに射撃技な為避けるのが困難なはずなのだが、ギターの大げさな攻撃モーションとアンプの向き、更に《妖精郷》特有の舞う花弁の動きが衝撃波の姿を晒していた。
ギュイィィーーーーーン!!
宏斗の隠れている障害物元へ衝撃波の第2撃が放たれる。
今度は花弁だけではなく地面の砂埃までその衝撃で宙へ舞い、辺り一面の視界を悪くする。
今だ!
宏斗はここぞとばかりアビリティを発動しその場から姿を消す。 砂埃に紛れバイパーの必殺ゲージを消費させつつも別の障害物に移動開始した。
ギュイィィーーーーーン!!
別の障害物への移動が終わったころにギターの第3撃が先程まで隠れていた場所に放たれていた。
障害物は粉々に砕けたが、残念ながらそこにバイパーの姿はない。
「WHAT!?どこへ消えた!?」
「こっちだよ。」
ッガキン!
「くっ!ちょ、ちょっとタンマ!」
宏斗は
大抵、遠距離技を得意とする相手は懐に入れば脆いものである。更にあの攻撃技だ。
インファイトに持ち込めば技を出そうにも、相手と一緒に自分ごとふっ飛ばしかねない。
これはすでに詰んだも同然。いつもはステージで泣かされた宏斗だったが今回はステージに救われた感じだ。
初撃のダメージに加え、防戦しているとはいえ少しずつHPが削れ、ギターのHPは6割ぐらいになっていた。
一方で宏斗のHPはまだMAXと言っていい。 勝利を確信した宏斗に笑みがこぼれる。
「これギター詰んだんじゃね?」
「いやいや、一試合につき1回は
ギャラリーの声に応えるかのように、次の瞬間ギターに変化が訪れた。
「YAーーーー!やっとゲージ溜まったZE。《マッドネス・サウンド・キャノン》!!」
ギターのMAXまで溜まっていた必殺ゲージが50%消費すると、個々に宏斗を狙っていた2つのアンプが一列に直結する。そして当然のごとくその矛先をこちらに向けて。
「ま、まさか!自分ごと撃つつもりなのか!」
「言っただRO。
ギターは何の迷いもなく手に持つエレキギターの弦を弾いた。
その直後、直結したアンプから先程から放たれていた衝撃波なんて比べ物にならない程の、特大の衝撃波と大音量がギターとバイパーに向けて放たれた。
ギュイィィーーーーーーーーーーン!!
ッドッゴォーーーーーン!!
「「っっぐぁ!!」」
2人とも衝撃波をまともに喰らい別々の方向に吹き飛ぶ。
バイパーのHPが40%削れ残り60%。 ギターのHPが30%削れ残り30%くらいになる。
「っく・・・、こんな事まともな奴がやることじゃないぞ。」
「HA・・HAHA、当たり前だRO。ROCKなんざまともにやっても面白くもないZE。」
「くそっ、だけど距離が離れたとはいえ、このHP差なら巻き返させず倒してみせる。」
「甘いZE。もう逆転なんだYO。」
ギターがそう言いながらある方向を指さすと、そこにあったはずの壁が撃ち抜かれ崩れていた。
ッダン!!
「ア――カ、身体が――動かない―――。」
バイパーの身体が自分の意志とは関係なくその場で崩れる。
この感じ、以前にも体験したことがある。そうそれは以前カーマイン・コーンシェルと戦った時の・・・
バイパーが動けないと知ると、ギターが満面の笑みでバイパーの傍まで近づいてきた。
「作戦大成功~♪わざわざ必殺ゲージ溜まるまで我慢して、自分のSOUND喰らったかいあるZE。
そいや、YOU前に撃たれたんだったNA。優しい俺が撃ったシェルっちの代わりに説明してやるZE。
この技の名前は《パララサス・ワン・ショット》。
アバターの動きを封じる麻痺性の水を高速で撃ちだすとかなんとか・・・って言ってたZE。」
「作戦って――最初からこの閉鎖空間を――壊す為に動いて――いたっていうのか。」
「当ったり前だRO。タッグ戦なんだから協力し合わないと意味ないZE。
俺達の戦い方はシェルっちが狙撃で相手の動きを止めて、俺が狙撃しやすいステージを作ってやる。
これが俺達の本来の戦闘スタイルSA。さて、そろそろ・・・・」
ギターが後ろを振り向くと先程まで沈黙していたアンプがゆっくりとギターのすぐ後ろ、
バイパーの直ぐ近くまで迫っていた。
「ここまで近ければ、《マッドネス・サウンド・キャノン》後一発でENDだRO。それじゃ、
せっかくシェルっちが
《マッドネス・サウンド・キャノン》!!」
ギターの残りの必殺ゲージが消費され、2つのアンプが再度一列に直結された。
ギャラリーに派手な演出を見せる為かギターがアンプの上に立ち、手に持つエレキギター弾き始める。
その時、痺れがまだ取れないバイパーは見た。3匹の赤い蝶がスピーカー部分に止まるのを――
“爆ぜて!!”
次の瞬間、衝撃波を出す筈のアンプが2つまとめて炎をあげて吹き飛んだ。
もちろん、上に乗っていたギターも派手に吹っ飛び、ギャラリーが一斉に騒ぎ立つ。
“宏斗さん!大丈夫ですか!”
その声は先程まで一緒に話していた相手、日向の声だった。
やっと痺れが取れ始めた宏斗が声の方を振り向くと、そこに居たのはあの青い蝶だった。
「――日向さんなの?その蝶は・・」
“はい!やっとこの子《オブサベイション・フェアリー》の力が分かりました。この子の力は『私の代わりに物を視て、音を聴いたことを私に教えてくれる』みたいなんです。
それよりもオークル・ギターを倒すなら今です。”
宏斗は再度ギターが飛んで行った方向へ顔を向けると、先程まで宙に浮いていた2つアンプは壊れポリゴンと化し、
当のギターは犬○家のごとく頭から瓦礫に突っ込み這い出ようとしている。
これならば―――
「痛ててて、一体何があったんだ?」
「一つ質問だけど、お前パンクバンドみたくエレキギター打武器にしないの?」
ギターがゆっくり後ろを振り向くとバイパーの手甲の刃が、ギターの首真横にあった。
「い、いや~~、それは次回のLvUPの時にでも考えておくZE・・・・」
オークル・ギター HP 00%
「――ふ~、とりあえず一人撃破ってとこかな。そうだ!カーマイン・コーンシェルは!」
宏斗は慌てて物陰に隠れ、コーンシェルから狙撃を警戒したが・・、1つおかしな点に気付いた。
そもそも、狙撃してくるのであればギターを助ける為、ギターを倒す前に撃ってくるはずだ。
それが必殺技を撃って以来まったく撃ってこないのだ。
しかし、その答えは意外なとこから帰って来た。
“カーマイン・コーンシェルさんなら今私が追っています。”
「え!?」
――――宏斗が戦っていた場所から少し離れた場所
ゴォッ!
突如、壁の一部が光の爆発を起こし消失する。そこは先程までカーマイン・コーンシェルが立っていた場所だ。
「糞っ!なんなんだこの蝶は!!」
コーンシェルは最初に居た狙撃地点から離れ、全速力で逃げていた。
先程、必殺技《パララサス・ワン・ショット》をバイパーに撃った後、再度バイパーを仕留めるべく狙いを付けていた。 近くにオークル・ギターが居たが止めを譲る気はない。 むしろ自分がそのまま止めを射す気でいた。
あの蝶が目の前に現れるまでは・・・・
「ハァ・・ハァ・・、この袋小路ならば入口は一つ。何が来ようと撃ち抜いて見せる。」
コーンシェルは壁に背を向け姿勢を低くすると、ご自慢の狙撃銃
「くっ!これはさっきのF型の攻撃か!?俺が一瞬目を離した瞬間に何をした!」
コーンシェルは混乱していた。 なぜならモルフォは噴水の影に隠れており、互いにその死角のせいで見えない
はずなのにモルフォは正確にコーンシェルへ攻撃を仕掛けてきたのだ。 そして攻撃は今もなお続けられている。だがやはりカーソル方向を見てもモルフォの姿見えない。 相手の距離、高低差も分からず方向だけでこうも正確な攻撃が繰り返されているコーンシェルは驚きを隠せなかった。
ッダン!!
コーンシェルはまた通路向こうから飛び出てくる蝶を撃ち抜く。
気付けば相方のオークル・ギターはすでにHPが全損している。このまま時間切れになればHP差でコーンシェル達の負けは確定である。
「ちっ!時間切れを狙うつもりか!!」
“い、いえ。そんなつもりはありません。”
始めて対戦相手フローライトモルフォの声を聞いたコーンシェルは、条件反射で銃口を声の方へ向け引き金を引いた。 だがコーンシェルは気付くべきであった。 声がした方向は空間なんて存在しない壁しかないことを。 銃口から放たれた弾丸は声の主モルフォではなく、1匹の青い蝶に当たり蝶が拡散する。
「居ないだと!?どこから声が!?」
“今です!!”
その時、コーンシェルのもとに1つの影が射した。
それは逆の壁からコーンシェルへ飛び掛かるオブシディアン・バイパーの姿であった。
カーマイン・コーンシェル HP 00%
【KO!! YOU WIN!!】
――――寧々森邸・日向の部屋
「っぷはぁ~、何とか勝った~。」
「これが対戦なんですね!私、まだドキドキしています。」
そう言いながら日向は自分の手を胸に手を当て興奮しているようだった。
確かに、宏斗にも初めてバーストリンカーになった時と同じような、興奮を感じていた。
そんな興奮が少し静まったのか日向がこちらへ姿勢を改めて話し掛けてきた。
「宏斗さん、今までありがとうございました。おかげで私のモルフォの力を知ることができました。」
あぁ、そうか。 日向は『戦い方を教えてほしい』と最初に言っていた。モルフォの能力が分かった今、
すでにその頼みは達成されている。 ただ宏斗は出来ればこんな対戦をもう一度をしたいと、自分を鍛えるのとは別の思いがあったからこそ、これから言うことも自然と口から出ていた。
「日向さん!あの・・・その・・1つ頼みがあるんだ。
助けるつもりが助けられちゃうような弱っちい俺だけど、これからも俺とタッグを組んでほしい!
もちろん、今度はちゃんと守れるよう、もっと強くなるよ!」
その言葉に日向は少し嬉しそうな顔した後、1つ条件を付きけて返してきた。
「では、お互い名前に “さん”を付けるのは禁止です。これからパートナーになるなら他人行儀じゃ変ですよ。」
「・・・ははっ、それもそうだな。よし、これからもよろしくな
「はい、よろしくです。
「って“君”はOKなのかよ。」
「“さん”がダメと言いましたが、“君”はダメとは言っていませんから!」
そして部屋の中では2人の笑い声が響いた。
ここまで読んで頂きありがとうございます(`・ω・)ゝ
まさか1試合文の話がここまで長くなるなんて想定外でした^^;
でも何とか1か月以内に書き上がってなんとかホッとしています。
ちなみに今回のタイトルは当て字です。あと「ぶんしん」ではなく「わけみ」とお読み下さい。
それではご意見や質問、感想等もどしどしよろしくお願い致します^^