適当な提督と艦娘達の日常   作:現実から乖離したい

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榛名過去編?
榛名には困難に打ち勝って貰いたい。

遅筆すんませんorz


恐怖の最中に見える底

私金剛型三番艦榛名は欠陥を抱えている。

最前線で戦い、尊敬し敬愛してやまない姉と妹と勝利を何度も重ねてきた。

どれだけ苦しい戦いも、なんとか乗り越えてきた。

 

そう。

 

今の私達は戦う事(そうすること)しか出来ないのだ。

 

戦い、勝利し、人々を守る。

あぁ、なんと誇らしい事だろうか。

 

だけどいつしか私の心は摩耗していた。

負ける事は許されず、勝てば賞賛され、負ければ罵声を受ける。

 

「あんたが負けなければ夫は死ななかったのに!!」「母さんを返せ!!」「役立たず!!」「お前らがいたってこれじゃ意味がねぇじゃねぇか!!」

 

 

『アンタ達なんか深海棲艦(やつら)と一緒じゃないか!!』

 

 

心に罅が入っていくのを感じた。

感じてしまったのだ。

そこから調子を崩して行くのは明白で、いつの間にか私は海の上に立てなくなっていた。

ひたすらに怖かった。

戦うのが怖かった。拒絶されるのが怖かった。勝てないのが怖かった。仲間が沈むのが怖かった。ミスをするのが怖かった。否定されるのが怖かった。

 

最早、人が怖くて仕方なかった。

 

どれだけ海に繰り出そうとしても恐怖は消えず、浮かぶだけでも一杯一杯であった。

暫くして食事も摂れなくなり、最終的には戦力外通告。

艦娘としての意義を失いあまつさえ解体指示(人生の否定)を受けてしまった。

 

当然だと思った。

 

私は軍人だ。

正しく言えば、兵器だ。

その兵器(わたし)が使えないのなら…当たり前の措置だろう。

 

姉妹は庇ってくれた。

今は調子が優れないだけでまた直ぐに立ち上がれるからと。

だけど、全てに否定された私がまた立ち上がる事なんて、私にはどうしても思えなかった。

だから私は庇ってくれた姉達にこう言った。

 

「榛名はもう頑張れません。…次の私を、宜しくお願いします」と。

 

あの時の姉妹の表情が、忘れられない。

 

私は指定された解体日まで塞ぎ込んだ。

深海棲艦()から与えられる死の恐怖。

人間(味方)から与えられる侮蔑と嘲笑。

姉妹(家族)に与えてしまった悲しみと絶望。

 

自己嫌悪に狂いそうだった。

いっそ狂えたら楽だったのだろう。

 

「時間だ。部屋から出ろ」

 

扉越しに呼ばれ、ふらつく身体で扉を開いた。

 

そこには見知らぬ軍服を纏った青年が立っていた。

この人が私を解体するのだろうか。

伏目がちにお辞儀をし、恐る恐る青年の様子を探る。

青年は目を逸らさず、私を見つめており、私は少し居心地が悪く感じていた。

 

「…君が榛名か。私はとある鎮守府で提督をやっている者だ。今から君は私の鎮守府に所属してもらう」

 

私は耳を疑った。

役立たずである、私を?

何故?

海に浮かぶ事さえ出来なくなった私をどうして…。

 

「…ん?どうかしたか?」

 

青年は首を傾げて訊ねてくるが、私は返答出来なかった。

 

「…まぁ、行くか。外に私の秘書艦が居る。付いてきなさい」

 

返答を待たずに歩き出す青年に、精一杯の勇気で質問を投げ掛けた。

どうして私なんですか、と。

青年は歩を止め、振り返ってニッと笑いこう答えた。

 

「どうでも良いじゃねぇかそんな事。適当にいこーぜ、榛名」

 

なんて非常識なんだろうと、素直に思った。

でも、何故だか心惹かれた。

誰の目も声も気にしない様なそのスタンス。

それは、きっと今の私にはないもので。

 

「秘書艦に聞かれたら怒られるけど、俺、多分軍属してる中で一番怠けてるしな。だから気負うなよ。とりあえず、さっさと家に帰ろうぜ」

 

家に帰ろう。

家に帰ろう。

家に帰ろう。

 

その言葉が、頭の中に響き渡る。

帰りたい。

お父さんに会いたい。

お母さんに甘えたい。

お姉ちゃんと遊びたい。

妹と遊んであげたい。

 

「…帰りたいよ…。帰りたいよぉ…!!」

 

今まで一度も流さなかった涙を流した。

堪えきれなかった。

今まで塞ぎ込み、溜め込んだ物が吹き出る様に、泣き喚いた。

青年はそんな私を見て驚き、少ししてから頭を撫でて泣き止むのをずっと待ってくれていた。

青年は泣き噦る私に何度も「我慢して、堪えて、頑張ったな。吐き出せるなら吐き出してしまえ。…よしよし」なんて声を掛けてくれた。

 

泣き止んだ頃には日が沈みかけ、空が茜色に染まっていた。

私は少しだけ、泣き疲れて眠ってしまったらしい。

恥ずかしさから顔を真っ赤にして飛び起きた私に、青年は笑いながらこう言う。

 

「ん。良い顔になったな。んじゃま、帰るか」

 

榛名としての魂。

人間としての魂。

 

二つの魂は適正があろうが基本的には矛盾するものだ。

だけど、私がこの時思った事は、きっと一致している。

 

 

 

私には、帰るべき場所がある。

ならば、戦うんだ。

自分と。

あなたと一緒に。

 

 

 

 

ーー

 

「榛名?どうした、呆けて」

 

茜色に染まる空を眺めてぼーっとしていた私に彼は訊ねる。

執務は終わり、二人でお茶を飲んでいて、なんだか急に遠くない昔の事を思い出していた。

 

「いえ…榛名は大丈夫です」

 

「…まぁ大丈夫なら良いけど。無理はいかんぞ」

 

「提督は優しいのですね。榛名にまで気を遣ってくれて…」

 

「そりゃ遣うさ。家族みたいなもんなんだから」

 

当然とばかりに言う提督に笑みが溢れる。

この際だ、何故私を引き取ってくれたか訊いてみよう。

 

「提督、あの時、なんで私を引き取ってくれたのですか?…海に浮かべない私なんか…」

 

その問いに提督はうーんと腕を組み、何か思案する素振りを見せる。

この様子だとちゃんと理由はあるみたいだ。

言えない様な事情があるのだろうか。

 

そもそもがおかしいのだ。

私は最前線組に居たのに私が解体される事を何処で知ったのか。

他の鎮守府に所属していた私をどうやってあんな短期間で引き取れたのか。

 

提督は一言、まぁいいか、なんて言い私に向き直る。

 

「んじゃ、疑問だろうから最初から話すか」

 

そこで残ったお茶を一息で飲み干し、提督は話し出す。

 

「榛名が解体されると知れたのは榛名の姉、金剛から連絡を受けたからだよ。何度か会った事があってな。連絡を受けた時は驚いたよ。『一生の御願いデス!私の妹を…榛名を助けて下さい!』ってな」

 

「お、お姉様が…」

 

「あぁ。きっと必死で不安で悲しかったんだろうな。泣きながらだ」

 

私が諦め、艦娘としての死を選んだ瞬間のお姉様の表情を思い出す。

悲しみ、唇を噛んで俯いたお姉様。

私がさせてしまった表情。

 

「詳しく聞く時間もなさそうだったからな。端的にかいつまんだ説明を受けて直ぐに海に出た。あの時はこっちも近海制圧で余裕はなかったから電一人護衛に連れてたが、中々スリリングだったよ」

 

それは当然だろう。あの頃の最後の戦いを知っているからこそ、なんて無茶をと思う。

 

「まぁウチの秘書艦様は優秀だからな。戦域を綺麗に掻い潜って戦闘を避けてくれた。それも最短でだ。おかげでギリギリ間に合った。んで、金剛型の姉妹達に出迎えられそこで詳しい話を聞いたんだ。兎に角、解体処分をなんとか回避する事を重視して動いた」

 

私の解体の回避…。

それはかなり難しい。

使えない兵器は兵器ではない。

簡単に認められるものではない。

 

「…はっきり言うが、俺の身元引き受け人、佐久間元帥なんだよ。だから助けを求めた。」

 

佐久間元帥。

二度目の本土強襲を防いだ英雄。女傑だ。

彼女の功績は後を立たず、常に注目される英雄だ。

そんな人物が身元引き受け人…提督に、どんな関わりがあったんだろうか。

 

「で、佐久間元帥が言ったのは一言だ。『本気なら守ってやれ。ケツは私が拭いてやる』だ。男前というか何というか…。だから俺は位は違えど同じ艦娘を指揮する提督にはっきり言ったんだ。家族に迎えたいって」

 

私の知らない所でそんなやり取りがあった事に素直に驚き、また申し訳なさを感じた。

 

「んで、論争になる前に佐久間元帥の名前を出した。それが一番手っ取り早く解決してくれるからな。それからはとんとん拍子だったな。まったく、元帥様々だよ」

 

「そんな、事が…あったのですね…」

 

「あぁ。榛名を引き取る直前、金剛に妹をお願いしますと頭を下げられた。

その時の表情は真剣ではあったが、穏やかなものだったよ」

 

きっと、提督に無事に預けられたからだろう。

でも私はこんなに良くしてもらう権利なんてあるのだろうか。

あんな酷いこと…悲しい顔をさせてしまったのに。

 

「考えている事はなんとなくわかる。だけどそれは逆だぞ。榛名に助けられる権利があるとかないとかじゃなく、金剛が権利を行使したんだ。」

 

「お姉様の、権利…?」

 

頷く提督は私を指でさしこう言った。

 

「姉である金剛が妹である榛名を守る権利だ。それは何かに侵される事のない、姉妹家族であれば誰でも持っている権利だ。金剛は、それを真っ当にこなしただけなんだよ」

 

そう言って提督は笑った。

 

「俺にはもう家族は居ないけど、きっと、同じ立場になったらどんな事をしても守ろうとするだろうな。世の中の家族がどうとかは知らないけど、俺の信じる家族像ってのはそういうものだって、信じてる」

 

だから俺は、今を生きてて、お前は今此処にいるんだ。

 

そう言葉を締めた提督の表情は穏やかながらも真剣な表情だった。

提督の過去は聞いている。

だからこそ、自分が信じたものが曲げられないのだろう。

 

私には、そんなものがなかった。

だから色々な悪意に害意に屈し、心を折ってしまった。

 

どうしたらこんなにも強くなれるのだろうか。

どうしたらこんなにも自分を信じられるのだろうか。

 

だから、訊ねた。

 

「私は自分が決して強いとは思えません。提督は、どうしてそんなにも…」

 

言葉に詰まる。

情けない。

 

そんな私に、立ち上がった提督が私に近付き、ポンと私の頭に手を置いた。

 

「ばーか。お前が強くなきゃいけない理由が何処にある。弱くて良いんだよ。それを支えるのが俺たち家族だよ。誰一人としてこの鎮守府に強い奴なんて居ない。だからこそ俺たちは俺たちが揃って初めて強くなれるんだよ」

 

「………。」

 

「海に立てないなら陸で立ってろ。俺たちが守る。怖かったら怖いと言え。俺たちが励ましてやる。戦いたくないなら戦うな。代わりに、俺たちがお前の分まで戦ってやる。…まぁ俺としては、お前らを戦場に連れてくのは嫌なんだけどな」

 

困った様な笑顔でそう言う提督を見上げる。

提督は優しく、強いと感じた。

自分の無力を知っている。

自分が敵に敵わないのを知っている。

自分の非力さを悲しんでる。

 

それでも、立ち向かう事をやめないのだ。

歩みを止めず、家族を信じ、己の信念を託して送り出す。

 

「…榛名は、あなたに…あなたたちに、追いつけるのでしょうか」

 

ポツリと呟いた言葉に提督は私の頭に置いた手で頭を撫で「追い付けなかったら迎えに行くから、安心しろ」なんて言ってくれた。

 

あぁ…私は、私は…。

 

「…追いつきます。追い付いて見せます。頑張って、頑張って、あなたたちに…」

 

それは、小さいけれど私の決意。

応えたい。彼等の思いに、願いに。

 

「んじゃま期待しとくか。適当に追いついてこいよ」

 

そんな朗らかに笑い頭を撫でる提督に抱きつく。

柔らかく受け止めてくれる提督の温もりに静かに誓う。

 

いつか笑って、追い付いてまた抱きしめて貰うんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご飯の準備が出来……はわっ!?お取り込み真っ最中なのです!?ダメなのですそういうのはプライベートで…」

 

我等が秘書艦の夕飯の知らせに、私と提督の笑い声が木霊したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




うまくかけないなぁ…

頑張ります。

因みに艦娘では時雨が好きです。
汚しそうなのて自分じゃ書けないキャラです、はい。
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