適当な提督と艦娘達の日常   作:現実から乖離したい

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設定感。
よろしくお願いします。

暁をレディー扱いしながらいじめたい。
「一人前のレディーなんだから出来るよね?ね?(下衆顔」
とかしたい。


時は巡りて物語は続いていく。

深夜02:00。

 

提督は執務室を離れ資料室に居た。

資料を開き黙考し情報を整理する。

 

二十年前、初めて深海棲艦の被害が観測、感知された。

物資輸送船が襲撃され沈められたのだ。

死亡者数百、行方不明者数十人。

その年最大の事件となった。

深海棲艦に対し攻撃をするも通じず、対処不可能とされていた。

だが一つの光明が差す。

深海棲艦を監視していた海軍兵は深海棲艦に対し攻撃を行い、見事沈めて見せた者を見た。

その者は何処からともなく現れ、砲撃を行い、深海棲艦を沈めた。

 

"原初の艦娘"と呼ばれる救世主。

 

海軍はその艦娘に交渉、そして艦娘はそれに応じた。

そこからは突拍子のない話の連続だ。

 

自分は昔の艦船の生まれ変わり。

年頃の少女に宿る事でその艦船の力が振える。

沈めば魂は巡り、また誰かに宿り現世に戻る。

その際は、前回の記憶は引き継げない。

 

調べた限りの艦娘への転生のルールはこの辺りだろうか。

 

軍は血眼になり艦船の魂を持ち得る人材を探し回り、原初の艦娘の手助けもありそれに成功する。

 

その辺りからだろうか。

妖精が見えると言う発言をする人間が増えたのは。

最初はただの噂程度ではあったが、海軍にとある男がやってきた。

 

男はこう言い放った。

 

「妖精が俺に艦娘を守り、世界を守れと言ってきた。ここに艦娘って奴が居るなら会わせて貰おう」

 

海軍は当然そんな与太話は信じなかったが、艦娘はそうではなかった。

 

会わせて欲しいと、その時集まっていた艦娘全てがそう懇願したのだ。

それから話はトントンと進んだ。

男は海軍に所属し艦娘を束ねる提督となった。

各海域に進み深海棲艦を撃破していく。

同時に研究も進められ、妖精の見える人間が集い"建造システム"と"修復ドック"が完成された。

建造システムは未だ漂う艦船の魂を収集し、"妖精が見える少女"へと付与し、定着させるものだ。

これにはわざわざランダムに艦船の魂が定着した少女を探す手間を省くのと、"少女さえ用意してしまえば艦娘を生み出せる"という利点があった。

だがそれはデメリットでもある。

 

"少女を用意する" "魂を定着"

 

これは、少女の人権を踏み躙る事になる。

世論はこれを悪と断じるだろう。

この事柄には緘口令が敷かれた事は言うまでもない。

 

故に艦娘への転生は極秘裏に実行された。

試験、適正、面接、何重にも幾重にも渡り審議し、審査し、厳正が過ぎる程に行われ転生が成される。

 

故に生産性が酷く悪い。

 

そして原初の艦娘を発見した五年後、深海棲艦による本土襲撃が行われた。

後手に回った日本は酷い惨状となった。

火の海となり至る所で悲鳴が聞こえ泣き声が響き渡った。

その地獄は今尚傷跡を色濃く残し…

 

 

「…司令官?何しているの?」

 

「っ…!」

 

不意に声を掛けられ咄嗟に読んでいた資料を閉じる。

別に疚しい事も何もないのだが、なんだかそんな反応になってしまった。

多分、思った以上に深く思考してしまったのだろう。

条件反射としての反応に声を掛けてきた長い黒髪、今はパジャマ姿の駆逐艦の艦娘、暁に向き直る。

 

「…驚かすなんてレディーにあるまじき行為だな。いつからお子様になったんだ、暁」

 

「お、驚いたのは司令官の勝手でしょ!?私は普通に呼んだだけなんだから!」

 

わたわた弁解する暁、その手を見ると枕が抱かれておりさっきまで寝ていたのが伺える。

 

「どうした?寝れないのか?」

 

資料を机に置いて暁に近づく。

と、人の気配がもう一つあるのに気付く。

開いた扉の横の壁辺り。

それに少し笑って声を掛ける。

 

「護衛御苦労。いつもありがとう。君の様な憲兵が見回りをしてくれるから安心して執務を行える。暁、案内して貰ったなら礼を言いなさい。レディーとかではなく、人としてな」

 

「わ、わかってるわ!…あ、ありがと」

 

提督の裾をきゅっと指で掴みながら礼を言う暁の様子に、壁の向こうから少しだけ吹き出すような笑い声が聞こえた後、「程々に」なんて言葉を残し気配は遠ざかっていく。

 

「…さて、暁。あんまり夜更かしは良くないよ。電も大分前に帰した筈だけど?」

 

「…電はちゃんと帰ってきて布団で寝てるわ。…ちょっと夜の散歩がしたかっただけだし」

 

「そんな不良は一人前のレディーになれな…っと…」

 

言葉を最後まで聞かず、暁が抱き付いて来たので優しく抱き返す。

子供ながらに艶やかな髪を撫で付けそのまま抱き上げ椅子に座り、暁を膝に乗せて髪を撫でる事を続行する。

 

資料室に付けられた時計の時を刻む音だけが部屋に静かに木霊する。

ちくたくちくたく。

その間、提督は口も開かず、髪を撫で続けた。

暫くして暁がチラリと提督を見ているのに気付いた。

 

「…ん?」

 

「…怒らないの?お仕事の邪魔してるのに」

 

しゅんとした様に訊いてくる暁を少しだけ抱き寄せる。

 

「仕事なんか良いんだよ。適当にやってりゃ何とかなるし、後で秘書艦電(おめつけやく)に泣きつきゃどうにかしてくれるしな」

 

「…電の苦労する姿が見えるわ」

 

そこまで言って二人してクスクス笑い合う。

先程より雰囲気が少しだけ緩み、暁はポツリと呟く。

 

「…夢見が、悪かったの」

 

「……また見たのか?船としての最期を」

 

コクリと頷く暁を強く抱き締める。

第三次ソロモン海戦。

探照灯を照射し、敵艦を発見し報告するも集中砲火を浴びて沈んだ。

乗組員も殆ど助からなかったと聞く。

 

「…聞こえるの。あの頃の暁の声が。守れなかった。助けたかったって、そう言って泣くの…泣かないでって"私"も一緒に、なって…痛くなって…かな、し…く…うぅ〜……」

 

泣き出す暁をの頭をそうか、そうかと撫で話を聞く。

やはり"船としての魂"と"少女としての魂"は交わらず、二つ寄り添う様に揺蕩い均衡を保っているのか。

そして船の悲しみの声、仲間の死を嘆く声を聞き、それに少女が寄り添っている状態。

今暁は正式には暁としてではなく素体となった少女として船の痛みを感じている。

 

「…暁。そう泣くな。痛いのも悲しいのも今君が此処に在る証明に他ならない。…だから、君の中で泣いている暁に伝えてくれるか?君は今此処に居て、君と共に()る少女が居る、と。出来るかな?泣き虫レディー?」

 

優しく言うと暁はガバッと顔を上げて「泣き虫なんかじゃないし!」と怒る。

その様子につい笑い声が出てしまい、釣られた様に暁も笑う。

一頻り笑い合った後、暁は不思議そうに訊いてくる。

 

「ねぇ司令官。どうして私の中にもう一人居るって知ってるの?」

 

その問いに少し難しい顔をする提督は、ゆっくりと語る。

 

「難しい話になる。暁は艦娘が艦船の魂を宿した少女、というのは分かっているな?」

 

「も、勿論!じょーしきよ!」

 

「うん。だが俺は少しだけ違うんじゃないかと思っている」

 

「…違うの?」

 

暁に頷き、自身が考えた事をポツリポツリと溢していく。

 

「艦娘は少女に艦船の魂が宿って生まれる。それは間違いじゃないんだろうけど、あくまで魂が寄り添い合っているだけであって、魂の同一化ではないんだ。だから、君は暁であって暁ではない。暁という魂も宿しているけれど、同時に元々自分自身の魂も持っているんだ」

 

「…??暁は暁じゃないの??」

 

その問いに首を振り否定する。

 

「いいや、暁は暁さ。ただそれが表層に出ているか、深く眠っているか…その違いでしかないんだ」

 

「…よく分からないわ」

 

だろうな、なんて呟き暁を撫で回しお茶を濁す。

暁は暁でふにゃあぁなんて悲鳴は上げるが逃げようとはしない。

ある程度楽しんだ後、ゆっくりと暁を膝から下ろし目線を合わせる様に屈み暁の瞳を覗き込み。

 

「暁、戦っている時、もうダメだと思った時、さっき泣いていた子を頼りなさい。その子はきっと君の力になってくれる。だから、その子が泣いていたら励まして、大丈夫だよと。私が居るよと寄り添ってあげなさい。そうすれば、いつか笑い合える時が必ず来るから」

 

いつになく真剣に話す提督に、暁は真っ直ぐとした視線を向けていた。

それは本当に"暁"なのか。それとも"少女"なのか。

提督には分からない、それでも一つだけ分かっている事がある。

それは…

 

「俺はお前を、お前達を信じているぞ。この身は既に、お前達艦娘の物なんだからな」

 

「…うん。分かったわ!」

 

いつものように笑う暁の頭をぐりぐりと撫で回し暁に怒られ、暫くして暁は扉の前に行きもう寝るわと扉を開いた。

 

「おやすみなさい司令官。…また明日、です」

 

そんな一言だけ残して扉を閉めて執務室を出て行った。

 

ふぅ、と一息つき椅子に深く座る。

さっき暁に話したのはただの仮説で、他にも何かあるのかもしれない。

自分が語ったのはあくまで理想論で、現実的な話ではなかった。検証した訳でもないし眉唾物だ。

それでも。それでもだ。

 

「そうであれば、なんというか、なんとかなりそうな気がするんだよなぁ」

 

一人呟き立ち上がり資料室の明かりを消す。

扉を開けた際チラリと見た窓の外は暗く、また一つ溜息を残して資料室の扉を閉めた。

 

暁、真っ暗なのにちゃんと一人で戻れたかなーなんて思いながら部屋へと戻って行ったのだった。

 




嘘です。
めっちゃ甘やかしたいです。
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