適当な提督と艦娘達の日常   作:現実から乖離したい

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読まれてると思うと緊張もしますが嬉しいですね。
頑張って上達したいです。




寄る辺ない者は家族を作った。

「はぁ。今日も茶が美味いな」

 

Да(ダー)。今日は執務が少なかったね。電が頑張ったのかな」

 

「俺が頑張った可能性を先に潰さないでくれる?」

 

昼食を済まし、一通りの執務を終わらせた後、長い銀髪にセーラー服を着た少女、駆逐艦の艦娘響とお茶を飲みダラダラとしていた。

備え付けてあるソファーに二人並んで座り会話を楽しむ。

 

「司令官が頑張る、ね。あまりイメージつかないな」

 

「やる時はやってんだけどなぁ」

 

「良いじゃないか。司令官は真剣になると目付きが悪くなって怖いと暁が言っていたよ?」

 

「よし、暁の前では頑張らない。今決めた」

 

「…電の苦労を増やしてしまった気がするよ。Извините(イズヴィニーチェ)、妹よ」

 

取り留めのない会話は続く。

 

「そういえば雷が司令官が最近頼ってくれないと嘆いていたよ。何か理由でもあるのかい?」

 

「いいや、特に頼る事がなかったし、十分執務手伝ってくれてるし…十分助かってんだけど」

 

「…司令官は妙な所で自分に厳しいからね。私達にも執務は最低限しか振らないし」

 

「あー…まぁ給料分は働いとかないとな。俺自身も最低限だ、最低限」

 

提督はそう言い茶を一口啜り一息つく。

 

「…司令官がそう言うなら、それで良いよ」

 

そう溢し、響はコロンとソファーに横になり頭を提督の膝に乗せる。

くあ、なんて欠伸をして被っていた帽子で目元を隠す。

 

「なんだ、響が甘えて来るなんて珍しいな」

 

「…………偶には甘えたくもなるさ」

 

「そうか。まぁ、昼寝には良い天気だしな」

 

日差しは暖かく、少し開いた窓からは心地良い風が優しく吹き抜ける。

昼寝をするにはもってこいだろう。

 

「司令官は雨が降ってても雨音が心地良いとか言って昼寝するじゃないか」

 

「……何のことかさっぱりですね、はい」

 

時間が緩やかに過ぎて行く。

暫くすると小さな寝息が聞こえてきた。

規則正しく刻まれるその音に、自分の上着を脱ぎ響に掛ける。

傍らに置いていた読み掛けの本を手に取り響を膝に寝かせたまま読書を始める。

 

執務はなく、トラブルもなく、心地良い空間に少しずつ読み進めるお気に入りの本。

膝には時に守られ、時に守る子が気持ち良さそうに寝ていて、右手は彼女の腹部に彼女の手で固定されている。

たまにぽんぽんと動かすとんむぅとか呻いて少し面白い。

可哀想だから頻度は少ないが、たまに動かし反応を楽しむ。

 

そんな午後を過ごす。

 

小一時間した辺りだろうか、響がもぞもぞと動いたかと思えばガバッと起き上がりボーッとし、辺りを見回す。

 

「おはよ、響。昼寝は堪能出来たか?」

 

「…司令官に悪戯されてた気がする」

 

「何を言うか。お腹さわさわしてただけだ」

 

「…嫌ではないけど、流石に恥ずかしいな」

 

自分のお腹を摩りながら頬を赤らめる。

 

「その動作は何故か道徳的にヤバいものを感じるからやめて欲しいな」

 

起きた拍子に落ちた帽子を響に被して立ち上がり、大きく伸びをする。

 

「響、間宮行くぞ。小腹が空いた」

 

「…私は起きたばかりだけど」

 

「良いじゃないか。食いたくなきゃ茶でも啜ってろ」

 

スタスタ歩き出し執務室を出る。

少し逡巡した後、響もトテトテ付いてくる。

なんだかんだ付き合いが良い響に笑みが溢れ、連れ立って間宮へ向かった。

 

ーーーーーーーーー

 

「間宮ー来たぞー」

 

暖簾を潜り提督は店の奥に声を掛ける。

はーいなんて明るい声が聞こえ、その人は現れる。

割烹着を着て髪をリボンで纏めた女性、給糧艦の艦娘、間宮。

 

間宮は各鎮守府を一ヶ月から二ヶ月のスパンで滞在し、料理、甘味等を提供してくれる貴重な存在だ。

彼女が来たのは半月程前で、この鎮守府には何回か訪れてくれている。

と言っても此処はそこまで重要視される様な鎮守府ではない。

故に間宮には他の鎮守府へ行く様命令が下されているがそれに対し間宮の言い分はこうだ。

 

『給糧艦として、全ての鎮守府を回ります。戦えない私に出来る事はそれだけですから』

 

確固たる意思の下に宣言されたそれは全艦娘から尊重され、各鎮守府を回る事を許可されている。

この鎮守府にも分け隔てなく訪れてくれ有難い存在だ。

 

「あら、提督さん。間宮へようこそ!響ちゃんもいらっしゃい!」

 

Здравствуйте(ズドラーストヴィチェ)、間宮さん。この前は姉妹共々ありがとう」

 

「あら、いいのよ?嬉しそうに食べてくれて嬉しかったわ!」

 

「うん。美味しかった。暁が凄くキラキラしてたよ」

 

「うふふ、さぁこちらへどうぞ!」

 

席に案内されテーブル席に向かい合って座り、響はメニューを開く。

なんだかんだ来たら来たで食べたくなったらしい。

提督も一緒に食べようと考えて居たので特に何も言わなかった。

 

「間宮、間宮羊羹に茶をくれ。茶は熱めで」

 

「…私は間宮アイスを。飲み物は…いいかな」

 

二人の注文を聞きテキパキ動き目の前にはあっという間に羊羹、茶、アイスが用意される。

一口大に切った羊羹を口に運び咀嚼すると、程良い食感と餡の優しい甘味が広がる。

茶を一口啜り、もう一口と食べてしまう。

 

「うん。やっぱ間宮と言ったら羊羹だな」

 

目の前の響は表情こそ変わらないものの瞳はアイスに夢中で、所作も綺麗に口に運ぶ。

これが暁とかであれば一口毎に騒いでいそうだ。

 

「ん。こいつは力を感じる」

 

二人の器は直ぐに空になり、器を下げに来た間宮に質問を投げ掛ける。

 

「美味かったよ、間宮。所で今回はいつ迄此処に居られるのかな?」

 

「あと一週間位でしょうか。一つの場所に留まるのはやはり難しくて…」

 

表情を少し暗くしながら言う間宮に提督は気にするなと声を掛ける。

 

「しかしまた暫く寂しくなるな。間宮の料理や甘味が食えないとなると皆残念がるよ。勿論それを抜きにしてもな」

 

「それは嬉しいですね。なら、この戦いが終結したら此処に滞在しようかしら」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべそう言う間宮にそれは良いと笑い掛ける。

それに響も続きそうしようと頷く。

 

「俺は天涯孤独の身だからな。此処に居る奴等が家族で、家族が増えるのは大歓迎だ」

 

屈託なく笑いながらそう言う提督に間宮もまた笑い掛ける。

が、聞き逃せない言葉に首を傾げた。

 

「提督?天涯孤独って…ご家族は…?」

 

「ん?十五年前の深海棲艦による本土強襲で死んだよ」

 

お茶を啜りながら何でもない様に言う提督は至って平常であった。

逆にそれを聞かされた間宮と響はどういう表情をすれば分からないようだった。

提督もそれに気付き手をひらひら振って気にするなとポーズを取る。

提督自身、もう割り切っている事であり、それが戦争という物と理解している。

家族の供養も出来たし、何より歩みを止めている余裕もなかった。

祖父祖母は既に他界していたし、親類も居なかった提督は死に物狂いで生きなくてはならなかった。

まだ幼かったから、その道はどこまでも険しかった。

 

「まぁ餓鬼の頃から妖精さんが見えてたからな。寂しくなかったし、寂しく感じる前に生きて食う事に必死だったしなぁ。悲しむのはいつでも出来る。だからその前に生きなきゃなーって」

 

引き取り手が居なかった提督は孤児となり、一時期はホームレスの様な生活だった。

 

その提督にも転機が訪れる事になるが、今は別の話だ。

 

「…提督も深海棲艦の被害者だったんですね」

 

「一緒に居てそこそこになるけど、初耳だよ」

 

各々がそう言うが、提督は話す機会も無かったからな、なんて素知らぬ顔である。

 

「あ、だが電は知ってるぞ。初対面の時話した気がする」

 

「そう。きっと電は悲しい顔をしただろうね」

 

他でもない妹の事だ、性格は知っているのだから反応も予想が出来るのだろう。

事実、電は終始涙目になっていたものだ。

 

「まぁそんな事があったから此処がもう俺の家みたいな感じなんだよな。一応この鎮守府の最高責任者だし」

 

「…司令官らしいね。嫌いじゃない」

 

「そうね。じゃあ私達が提督の家族なのね」

 

指を鳴らしそう言う事、と提督が笑う。

 

「…さぁ司令官。そろそろ護衛任務から皆が帰ってくるよ。執務室に戻ろう」

 

時計をチラ見し、響が椅子から立ち上がり袖を引く。

確かにそろそろ任務完了時刻だ。

報告もあるだろうし執務室に居なくては皆も困るだろう。

 

「じゃあ戻るか。ではな間宮、また来る」

 

立ち上がりお代を支払い出口へ向かう。

背後からは間宮の例の声と小さく手を振る雰囲気が伝わった。

間宮を出て暫くした後、提督は言う。

 

「あ、俺の奢りで間宮行ったのは秘密だぞ。文句言われそうだ」

 

そんな一言に響はジト目で提督を見る。

 

「家族に秘密を作るのかい?」

 

「それはそれ、これはこれ」

 

提督の言葉にやれやれなんて言いそうなジェスチャーをすると、響は仕方ないと言った風に答える。

 

「司令官はそんな調子で他の皆とも秘密を作ってそうだね。…構わないけれど」

 

痛い所を突いてくる響に苦笑を漏らし、帽子の上から頭をぐりぐりと撫でる。

誤魔化したな、と響は感じたが特に追求はせず頭を撫でる手を捕まえ手を繋いで歩く。

 

「これも、秘密だからね」

 

「…はいはい」

 

二人ゆっくり執務室に戻る様子は、間違え様もなく家族の姿だった。

 

 




響はいい子だけど甘え下手なイメージ。

投稿速度上がらず申し訳ないです。
皆様コロナに気を付けて。

批評感想等ありましたら宜しくお願いします。
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