適当な提督と艦娘達の日常   作:現実から乖離したい

7 / 10
遅筆すいません。


幕間2 忙しい秘書艦の日常風景。

0600。

秘書艦の朝は早い。

この鎮守府の総員起こしは他鎮守府と違い0700だ。

これは提督の独断で遅く設定されており、子供はよく寝ろ、という思想によりそうなっている。

大本営にもそれは伝えてあり、一悶着有ったが今は黙認されている。

 

そんな中秘書艦の電は通常の時間に目を覚まし、寝ている姉妹を起こさない様に着替え、身嗜みを整え部屋を出る。

向かう場所は食堂、鳳翔の手伝いも兼ねての料理の練習の為である。

鳳翔が基本的に食堂に立っており、朝昼晩と料理を準備してくれているのだ。

と言っても有事の際は他の職員が作る事もあり、毎日という訳ではなく、艦娘としての役割が優先されるのは当然である。

 

食堂に辿り着くと直ぐに炊事場へと足を運び、調理中の鳳翔に声を掛ける。

 

「おはようございます、なのです。お手伝いに来たのです」

 

「はい、おはようございます。いつも有難うね、電ちゃん。早速だけど、お味噌汁をお願い出来るかしら。私は魚焼いたりしちゃうから」

 

「はいなのです。電にお任せ、なのです!」

 

一度敬礼した後直ぐに電様にと鳳翔が準備してくれた花柄のエプロンを身につけ、手を洗い手際良く味噌汁の準備を始める。

 

今日はスタンダードな豆腐とワカメの味噌汁だ。

ここの職員は少ないが、いつも多めに作る事にしている。

大きめの鍋に水を沸かし、顆粒出汁を適量加える。

適度な大きさに切ったワカメを鍋に入れ弱火で火を通す。

その間に豆腐を数丁等間隔になる様切っておき、ワカメに火が通った頃合いを見て一度火を止め味噌をお玉でダマにならない様丁寧に溶かす。

溶け切ったらゆっくり豆腐を流し入れ弱火で沸騰直前まで温度を上げ、沸騰する前に火を消す。

 

これで味噌汁の準備は完了だ。

 

ふっと電は鳳翔を見ると電以上に手際良く焼鮭を作り上げていき、その間にサラダなんかも用意したりしている。

今日はこれ以上手伝う事はないだろうと判断し、エプロンを脱いだ。

 

「お味噌汁は出来たのです。今日はこれで終わりですよね?」

 

「ありがとう。この後当番の榛名さんが来て配膳を手伝ってくれるから大丈夫ですよ」

 

調理する手を止めず顔だけ向けて言ってくる鳳翔に対して流石だ、と思いながら一度お辞儀をして別れを告げ食堂を出る。

 

次に向かうのは提督の私室だ。

朝の弱い提督を起こすのは秘書艦としての大事な仕事だ。

でも偶に私室に居ないで執務室に既に居たりする事があるので先に私室、そのあとに執務室へ向かうのがいつもの流れだ。

私室の扉の前に立ち、ささっと髪と服装を正してノックする。

勿論ノック程度で起きないのは分かっているので声を掛ける事も忘れない。

 

「司令官さん?起きてるのです?」

 

もう一度ノックし、暫し待つ。

すると何かが動く気配を感じ、一歩下がり、待つ。

 

少しの間が空いた後、扉が開きスウェット姿の提督が現れる。

 

「おはようございます、なのです」

 

「……あぁ…おはよ…電。直ぐに…用意する」

 

未だ目が開き切らない提督に溜息を吐いて部屋に押し戻す。

 

「此処で待ってるので早く準備するのです。そしたら食堂でご飯にするのです」

 

返事とも取れない声を出し、部屋の中に消えていく提督を少し笑い、扉を閉めて後ろ手に待つ。

電はこの時間が嫌いではない。

 

ほんの数分の内に扉が開き、いつもの軍服を纏った提督が出て来た。

提督は電の頭を一度撫ですまない、行こうかと歩き出す。

電も後に続き歩き出し、ふと提督の後頭部を見ると髪の毛が少しだけ跳ねていて、少しだけクスリと笑みを浮かべる。

提督もそんな気配に気付きはしたが、何に笑っているのか首を傾げる。

 

こうして二人の朝は始まる。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

0900

 

朝礼終了後、今日中に片付けなくてはならない書類を集め二人で整理してから本格的に執務は始まる。

 

今日の電の仕事は艦娘問わず働く職員達の必要とされる物品の要望整理だ。

いる物要らない物と仕分け最終的に提督にチェックしてもらう。

電は執務の中でこの作業がお気に入りで誰が何を必要とし何故必要なのか考えるのが楽しみになっている。

偶にとんでもない物の要望が入っていたりして面白いのだ。

 

「…備品棚の追加、なのですか。こっちは貯蔵庫の…。整理関係が多いのです」

 

「あぁ…、確かに少し無理して積んでるって感じだったな。ウチもゆっくりとではあるが資源の貯蔵は出来てるからな。追加許可出しといてくれ。電も資源管理し易いだろうし」

 

「了解なのです。次は…」

 

なんでもない執務の間に、親しみが込められた会話をする事が電の大好きな時間で、偶にしゃかりきにならなければ終わらない事もあるが、終わったら終わったで休憩と称してまた会話を挟む。

そんな大切な時間。

 

「あぁ、そう言えばお前達の布団が古くなってきたと言っていたな。この際だ、注文してしまおう」

 

「良いのですか?まだ使えるのです」

 

「構わないよ。良い睡眠は良い仕事に繋がるしな。後で鳳翔達にも聞いておいてくれ。必要であれば人数分頼むから」

 

「…ふふっ、やった、なのです」

 

まだ使える、と言うのは本当だが最近干してもごわごわとした感触があったりするから単純に嬉しかった。

提督は必要であれば資金を使う事を躊躇わないタイプの人間だ。

主に健康面、生活面を重視する傾向にある。

まず自分達が生活する上で基本水準を高くし、士気を高める。

これもまた過去に色々不便な事があったからだろうが、皆それには同意しているのだ。

 

「さて、さっさと書類片してのんびりするぞ」

 

「なのです!」

 

その後も会話は途切れる事なく執務は続いたのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

1700

 

一足先に執務室を出る電が向かう場所はこれまた食堂である。

夕飯作りに参加するべく厨房に入ると、鳳翔ではなく榛名がエプロン姿で立っていた。

今はまだ野菜の皮を剥いている最中らしい。

 

「榛名さん、お疲れ様なのです。お手伝いします」

 

「電ちゃん、お疲れ様!じゃあお野菜の皮むきを一緒にしましょう!」

 

二人並んで食材の皮を剥いていき、女子らしい会話に興じる。

食材から見て今日の夕飯はカレーだ。

電が当初唯一作れた料理でありカレーのみで生活をしていた時期があった事でカレーのレパートリーが豊富である。

因みに最近覚えたレパートリーはキーマカレー。

作るにあたってスパイスの使い方まで独学で学んだ今ではカレーであればなんでも作れるレベル。

 

「電ちゃんは頑張り屋さんですね」

 

「そんな事ないのです。足りない事だらけだから、頑張るしかないのです」

 

そう言う電の表情は穏やかで心からの本心なのだ。

誰よりも優しいから誰かの為に努力する、それこそ電が電である由縁であるのだろう。

自分は努力しなければいけないのである、なんて強迫観念染みた物ではなく、好きな人達、ひいては自分の為に努力し、助けになりたいという綺麗な思い。

 

榛名はそれが眩しく見え、自分も頑張ろうと思う。

 

秘書艦筆頭の名前は伊達ではないのだ。

 

会話をしながら料理をしていたら、いつの間にか時は経ち食堂にはカレーのいい香りが漂っていた。

段々と集まる職員達は飯はまだかまだかと待ち侘びる。

 

それに気付いた二人は会話を一旦止めてカレー以外のサイドメニューを手早く作り上げ、1900、盛大な職員達の頂きますの合唱が食堂に響き渡った。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

2100

 

食堂を片付け、食事を済まし、お風呂で一日の疲れを取った後、電は自室に戻る。

 

「ただいまなのです」

 

部屋に入ってきた電に姉妹達が一斉にお帰りと声を掛ける。

 

「今日も遅かったわね、無理してない?」

「なんか辛かったら司令官に言ってあげるからね!」

「電も分かってるさ。ゆっくり休むと良いよ」

 

三者三様の労いに大丈夫と声を掛けて三人の輪に加わる。

ここから一時間は姉妹で過ごす大事な時間だ。

偶に夜更かしするのは秘密だけれど。

 

電の大切な時間はこの鎮守府に沢山あり、2200.、電はまた明日も頑張ろうと目を閉じたのだった。

 

 

 

 

 




幕間って言っていますが本編なんて有って無いような物です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。