ドラゴンボール超~あいつは摩訶不思議な転生者~ 作:ネコガミ
「今日は大漁ですね、ヤムチャ様!」
「あぁ、そうだな。よし、今日の晩飯は少し豪勢にいくか。」
「やったぁ!僕、楽しみです!」
相棒のプーアルが喜ぶ姿に俺も自然と笑顔になる。
思えばプーアルとの付き合いも、もう数年経つんだな。
ふと昔の事を思い返す。
数年前まで俺はとある流派で武道に励んでいた。
自画自賛になるが筋は悪くなかった。
流派の先輩達にもあっという間に勝てる様になったからな。
だが、そんな俺にも一つだけ弱点があった。
それは…女が苦手なんだ。
別に女が嫌いなわけじゃない。
むしろ好きだ。
しかし女を前にしたら極度に上がってしまう体質なんだ。
その体質のせいで当時の師匠の娘さんに手も足も出ずに負けた。
先輩達に勝って鼻が延びていた俺は、彼女に負けた事でその延びた鼻と共に心もポッキリと折れてしまった。
気が付けば俺は道場を飛び出していた。
その後はあてもなく彷徨っていた俺だが、3日程経ったところで空腹に気が付き正気を取り戻した。
なにか食うものをと探していると、見世物小屋に売られそうになっていたプーアルと偶然出会う。
俺はプーアルを助けていた。
何故助けたのかはよく覚えていない。
もしかしたら師匠の娘さんに負けた鬱憤を晴らしたかったのかもしれないし、なにか義心に駆られたのかもしれない。
まぁ、そんなことはどうでもいいだろう。
助けられた事を恩に感じたのか、プーアルは俺と一緒に行くと言った。
だがそこで困ったことに気付く。
金が無いんだ。
いや、金が無いのは当たり前だ。
身一つで道場を飛び出したんだからな。
そんな状態でどうやって生きていく気だったのかと、今思い返しても震えがくる。
勢いというのは怖いぜ…。
食っていく為には金を稼がないといけない。
だが、プーアルを助けた戦いで、俺の中にあった武道家としての魂に火が付いてしまった。
修行をしたいが金も稼がなければならない。
いっそのこと道場に帰ろうかとも思ったが、今の俺ではまた師匠の娘さんに負けるのは目に見えている。
いや、別に師匠の娘さんに負けるのは構わないんだ。
体質の事もあるが、それを含めて俺が未熟なせいだからな。
だが、それを先輩達にバカにされるのは我慢出来ないだろう。
そんな予感があった。
一時とはいえ世話になった師匠に迷惑は掛けたくないという思いから、俺は道場に帰る選択肢を消した。
まぁ、落ち着いたら師匠に手紙の一つも出さないとな。
困った俺はプーアルと相談した。
金を稼ぎながら修行にもなる方法はないかと。
そこで思い至ったのが追い剥ぎだった。
相手が抵抗すれば実戦経験を積めるし、奪った物を金にすれば食っていける。
正に一石二鳥だった。
だが女子供にまで手を出す様な外道になるつもりはなかった。
追い剥ぎをするのはあくまでも大人の男だけ。
そして奪うのは相手が食うに困らない程度だ。
そうルールを決めて俺とプーアルは追い剥ぎを始めた。
食うに困らない程度には稼げたし、なにより求めていた実戦経験を積んでいくことが出来た。
特に女子供にまで手を出す外道な同業者との戦いは緊張感があり、武道家として貴重な経験を積めただろう。
代わりにといってはなんだが、追い剥ぎを仕掛けた相手が女だった時は体質の関係から極度に上がってしまい、真面に受け答えも出来ずに逃げ帰っていたけどな。
その度にプーアルに心配を掛けてしまい、俺としても心苦しいばかりだ。
どうにかこの体質を改善する方法はないものだろうか?
昔を思い返しながらそんな事を考えていると、不意にエンジン音が耳に届く。
「聞こえたか、プーアル?」
「はい!僕にも聞こえました!」
何がと言わずとも通じ合える。
そんなプーアルは今では掛け替えのない相棒だ。
「よし、行くぞ!掴まれプーアル!」
「はい!ヤムチャ様!」
プーアルが背中に掴まったのを確認し、俺はバイクで荒野を駆け出す。
頼むから男であってくれよ?
相手が女で逃げ帰ることになったら、またプーアルに小言を言われちまうかもしれないからな。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。