原作のメインヒロインに戦い方を教えてから早一か月。約2000人と全体の五分の一もの人が死んでいるのにも関わらず未だに第一階層もクリアされないままそれ程の月日が流れていた。
この一か月、唯ひたすらに最前線で情報を集めるついでに鍛え続けた俺のレベルは今や17と現段階ではトップの強さになった。どれくらい強いのかと言うとアルゴ曰く「お前一人でボス戦の前線を張れるレベル」らしい。ああ、後、試しに細剣も使ってみたら意外と便利だった。
まぁ、敏捷特化の俺は出来てヒットアンドアウェイの戦法で撹乱することぐらいだけどね。まあ、勿論唯戦うだけじゃなくて情報を集めたりマッピングしたり、素材を集めアルゴに売り捌いて貰ったり、情報を買いに来た主人公と出くわし睨まれたりアルゴを揶揄ったり特に変わりばえのない日常を退屈しながら送っていると、アルゴからいきなり命令された。
「ナァ、明日の夕方、迷宮区最寄りの≪トールバーナ≫の町で、一回目の≪第一層フロアボス攻略会議≫があるのは知ってるナ?」
「えぇ、勿論知ってますよ、アルゴサン。それがどうしたのですか?」
「オレッちと一緒に参加シロ、コレ決定事項ナ」
はぁ?命令だなんてらしくないなぁアルゴ、何があったのかなぁ。
「何か良くない情報でもありましたかぁ?アルゴサン?」
「ん、悪りぃ言葉足らずだった。オレッちと行動してんだから知ってると思うがここ最近アインクラッドの攻略を諦めている奴等がいるの知ってるカ?」
「えぇ、知ってますよ」
そうなのだ、アルゴの言う通り今や攻略を行っているのは俺とアルゴを含めても極少数なのだ。それは、情報を集めの際色々な所で知らされている。でも、俺はこの状況好きかなぁ。え?なんでって?
形だけの平和の状態だからだ。壊れる時は一瞬だしね。
それよりもなんでアルゴがこんなこと言い出したのかだけど、
あぁ、なるほど。そういうことね。
「現状打破の為、ワタクシに一層クリアの為の手伝いをしてこいと言いたいのですね。アルゴサン」
「まぁ、そう言う事ダ。オレッちは集会には集まるガ、攻略には協力できねぇしナ。頼めるカ?」
「勿論ですとも、ワタクシもいい加減この階層に飽きてきたころですからねぇ」
そう言いながら、立ち上がり集会へ向かう為の準備を始める。
あ、そうだ。
「アルゴサァン、ワタクシ先程麻婆豆腐作ったので食べてくださいねぇ。いやぁ、料理スキルのレベルが上がったので自信作なんですよぉ」
「嫌に決まってんだろうガァァァ!!お前、以前何も知らないオレッちに食わせた麻婆の味まだ覚えてんだからナ!!辛いもの好きのキー坊が悶絶しながらのたうち回るレベルってヤバすぎんダロ!!」
今料理スキルも鍛えてんだけど本当不思議なことにどれだけ頑張ってもラー油と唐辛子を百年間くらい煮込んで合体事故の挙句、『オレ、外道マーボー今後トモヨロシク』みたいな見た目になるんだよなぁ。あの時のアルゴの涙目、可愛かったなぁ。また、見てみたいんだけどなぁ。
そんな事を考えながら気休めでしかないレベル上げをやった後に寝た。
◇
次の日の昼頃にアルゴと共に家を出て≪トールバーナ≫へと向かった。≪トールバーナ≫には何の問題も無く既にいた開催者と思われる青い髪の男を除けば一番に着くくらいには余裕だった。
それからしばらく寝ながら待っていて目を覚ますと辺りには四十人程のプレイヤー達が集まっていた。
へぇ、意外と多いなぁ。もっと少ないと思ってたんだけど。
辺りを見渡すと俺を見て顔を顰めたキリトとフードを深めに被ったアスナが居た。
コレまた意外だなぁ。あの二人は参加しないと思ってたんだけど、参加したんだ。
そんな事を思っていると、
「はーい!それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!みんな、もうちょっと前に・・・そこ、あと三歩こっちに来ようか!」
一番初めに居た青髪の男が堂々と喋っていた。お、助走抜きで噴水の縁まで飛び乗れるのかぁ。しかも、あの装備で。筋力と敏捷共に高いなぁ。つーか、あの顔もしかして、ディアベルって奴か?人集めてるって情報の。もしかしなくともこの為に集めてたのか?そんな事を考えている間に男は爽やかな笑顔を浮かべながら言った。
「今日は、オレの呼びかけに応じてくれてありがとう!知っている人も居ると思うけど、改めて自己紹介しとくな!オレは≪ディアベル≫、職業は気持ち的に≪ナイト≫やってます!」
すると、噴水近くの一団からどっと沸き、口笛や拍手に混じって「ほんとは、≪勇者≫ってーんだろ!」など言う声が飛ぶ。
うん、どこが面白いの?全く笑いどころがわかんねぇ、マジレスすると職業なんてないしな。
「・・・今日、オレたちのパーティーがあの道の最上階に続く階段を発見した。つまり、明日か明後日にはたどり着くってことだ。第一層のボス部屋に!」
どよどよ、とプレイヤー達がざわめく。はい、ダウト。アルゴのマッピングデータを高値で買い取ってた奴がディアベルのパーティーにいたからな。もしかして、知らないのか?
「一ヵ月。ここまで、1ヶ月もかかったけど・・・それでもオレたちは示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリアできるんだってことを、はじまりの街で待っているみんなに伝えなきゃならない。それが、今この場所にいるオレ達トッププレイヤーの義務なんだ!そうだろ、皆んな!」
再びの喝采。今度はディアベルの仲間以外も手を叩いている者が多い様だ。
え?なにこれ、アイツ主人公?SAOの主人公ってディアベルだったか?バラバラだった最前線の住人達を纏める姿は最早主人公のそれなんだけど。
そんな事を考えていると
「ちょお待ってんか、ナイトはん」
そんな声が低く流れた。歓声がピタリと止まり、前方の人垣が二つに割れる。そして、その中央には小柄だがガッチリとした体格の男がいた。しかし、俺が今一番気になっているのはなんで盛り上がりを沈めたのでは無く。サボテンの様な髪型に興味をしめしていた。
え?どうなってんの?アレ。まさか現実世界でもああなの?いや、仮にそうだとしたらどんな風にセットしてんの?そんな考えで頭の中がいっぱいになっていると。男は名乗った。
「ワイは≪キバオウ≫っていうもんや」
キバオウ?ああ、思い出した。キリトの≪アニール・ブレード≫欲しがってる原作で噛ませ犬のあの人か。
「こん中に、五人か十人、ワビィ入れなあかん奴らがおるはずや」
はぁー、始まった始まった。そーだった、あの人アンチだったよ。どーせ、βテスター達に対する愚痴だろ?聞き飽きてんだよコッチは。
そこからは予想通り、キバオウがβテスター達に対する文句を言い始めた。
曰く、βテスター達は情報を独占めしている。
曰く、そいつらは土下座させなければならない。
曰く、貯め込んだ金やアイテムを負担しろ。
っといった感じだ。いやぁ、驚きましたねぇ。まさか最後は金寄越せとはいやぁ、キバオウさん流石っす!
まぁ、下らない話を聞いて割と本気でイライラしてきたので、
「あのぉ、よろしいでしょうかぁ」
「発言、いいか?」
言いたい事を言おうとしたら他にも誰か同時に手を挙げたん?誰だ?そう思いながら目を向けるとそこには両手用戦斧を持った身長が百九十ほどありそうな筋骨隆々のスキンヘッドの男がいた。
まぁ、それはともかく。
「先、よろしいですか?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございす。ボブサン」
「はは、俺はボブじゃなくてエギルだ」
うむ、快活な人だボブサン。好きになりそうだぜ。
それはさて置き、
「ワタクシの名前はメフィスト、以後お見知りおきを。さて、キバオウさん、アナタの話をまとめると元βテスターが面倒を見なかったからビギナー達がたくさん死んだので謝罪と賠償しろ、ということですね?」
「そ・・・そうや」
聞き返されるのは想定外だったのか、少し吃った様に答えるキバオウ。しかし、すぐに前傾姿勢を取り戻すと、ギラついた小さな目で此方を睨め付け、叫んだ。
「アイツらが見捨てへんかったら、死なずに済んだ二千人や!しかもただの二千ちゃうでほとんど全部が、他のMMOじゃトップ張ってたベテランやったんやぞ!アホテスター連中が、ちゃんと情報やらアイテムやら金やら分け合うとったら、今頃ここにはこの十倍の人数が・・・・ちゃう、今頃は二層やら三層まで突破できとったn「スバラシイィィ!!ワタクシ、アナタの意見に大変心突き動かされましよぉ〜。キバオウサァン!」・・・へ?」
ん?なんだ?意見に同調したのになんだ?その間抜け面?
ああ、もしかして。
「ワタクシが否定するとでも?」
「あ・・・当たり前やろ。その為に意見したんやろ?」
「ハァイ、確かにそのつもりでした。しかし、アナタの言葉や考えを聞き意見を考えざるを得なくなった。ただそれだけですよ」
そう言うとキバオウは気分良さそうにしていた。
「ああ、そうやろ。だかr「ええ!!ですのでβテスターの皆様の身包みを剥いだあと皆殺しにしましょう!!」・・は?」
快活な笑顔と共に提案すると同時に周りの空気が凍りつく。驚愕を含めた視線を浴びながら俺は、自ら考えたアイデアを自画自賛する。
ん?ちょっと待て、なんでキバオウまで絶句してんだ?
読んで頂きありがとうございました。
因みに主人公とアルゴは同棲しています。