「い・・・今、なんて言ったんや自分?」
「?ええ、ですから元βテスターの皆様の身包みを剥いだ後皆殺しにしましょうといったのですが。聞こえませんでしたかぁ?」
んー、わかんないなぁ。周りは兎も角、なんでキバオウまで絶句してんだ?お前が望んでいる事だと言うのに。
「どうかなさいましたか?キバオウサン。鳩が豆鉄砲くらった様な顔して。中々、笑えますよ」
「じ・・・自分、それ本気で言っとんのか?」
「?また奇異な事仰る方ダァ。アナタの望んでいる事でしょう?」
「ッ!ンな訳あるかぁ!死んで欲しいなんて誰も言っとらんやろ!」
「いえいえ、ワタクシが賛同し、尚且つアナタが望んでいる事はβテスターを断罪すべきだということですよ」
ああ、なるほどね。確かにそれだったらそんな事望んでないって否定するは。俺もするもの。
だけど、
「アナタの目には元βテスターが人を見捨てるクズに映っているのでしょう?」
そう、確かにキバオウは皆の前でそう言っていた。元βテスターが見捨てなければ死なずに済んだ。と、
「ならばこそ死んで逝った二千人の同胞達への手向として見捨てたクズ共を捧げるのです!!」
「そこまでする必要ないやろ!!」
はぁ?何言ってんだこいつ?
「当然の報いでは?何せ、救いを求めるビギナー達を見捨てて自分達は保身の為に情報を独占する。その様な事をすれば被害者が出るというのに何もせずただのうのうと暮らしているのですよぉ〜?」
ならば、
「そんな、卑劣で愚劣な卑怯者は消すに限るに決まってるではありませんかぁ」
「ンな事、誰も望んでおらへん!」
「ならば、身包みを剥ぐことは皆が望むことなのですかぁ?」
「なっ!?ち、違うワイが言いたいのはそうゆうことやない!」
「救いをせずに周りを惑わす者には死を与えるべきなのです!」
キバオウの訂正を無視してこう締めくくる。
「だって、元βテスター達は二千人もの人々を見殺しにした大量殺人鬼なのだから!」
大仰な身振り手振りでそう言うと、今度こそキバオウは口をパクパクと開けながら完全に黙った。
「例え、三百人ものβテスターが亡くなっていようとも!
例え、元βテスターの死亡率が40%を越えようとも!
例え、自らの保有する情報に過信したβテスターがすぐ隣にいた仲間の死に耐えきれず心が壊れた者がいたとしても!
断罪せねばならない!
だってそうでしょう、彼らは二千人ものビギナー達を皆殺しにしたのだから!!」
そう言い切った後、完全に死に絶えた空気の中キバオウを見ると沈痛そうな顔を下に向けているのがわかる。なので、さらに追撃をかけるべく言葉を重ねようとすると、
「そこまでにしてやれ」
ガングロボブさんに止められた。
「あんたが、βテスター達のことをなじられて苛立っているのはわかったが少しやり過ぎだ。辞めてやんな」
やだ、何このボブ。イケメンすぎでしょ。ボブのイケメン振りに驚嘆していると。キバオウのほうへ向き、
「なあ、キバオウさん。金やアイテムは兎も角情報はあったと思うぜ」
レザーアーマーの腰につけた大型ポーチから、羊皮紙を綴じた簡易な本を取り出しながら優しく諭す様にそう告げた。
って、それ。俺とアルゴが作った攻略本じゃないの。守銭奴なアイツが無料配布するって言って驚かされたから良く覚えてる。
「このガイドブック、あんただって貰っただろう。ホルンカやメダイの道具屋で無料配布されてるからな」」
「貰たで。それが何や?」
苛立ってるのか刺々しい声で答える。
・・・・野郎、ボブさんになんて口の聞き方してんだ。もう一度言葉の暴力で泣かしてやろうか。
それでも、怒らないエギルは腕組みしながら言った。
「このガイドブックは、オレが行く先々の道具屋に置いてあった。あんたもそうだったろ。情報が早すぎる、とは思わなかったのかい?」
「せやから、早かったから何やっちゅうんや!」
「このガイドブックのデータを情報屋に提出したのはβテスター以外有り得ないってことだ」
周りで聴いてたプレイヤー達が一斉にざわめいた。キバオウがぐっと口を閉じ、その後ろで職業ナイトのディアベルが頷く。
エギルが視線を集団に向けると、よく通るバリトンを振り上げた。
「いいか、情報はあったんだ。なのに、たくさんのプレイヤーが死んだ。その理由は、彼らがベテランのMMOプレイヤーだったからだと考えている。このゲームを他のゲームと同じ物差しで計り、引くべきポイントを見誤った。だが、今はその責任を追及してる場合じゃあない。そうだろ?オレたち自身がそうなるかどうか、この会議で左右されると、オレは思ってるんだかな」
エギルさん、マジカッケェェ!!!!うわあ、マジですごいなあ、周りの雰囲気を崩さず味方をつけながら堂々とした態度でキバオウを論破した。
一応キバオウの方向を確認してみると憎々しげにエギルと俺を見ていた。
うん、別に「そんなこと言うお前らこそ元βテスターなんだろ」的なこと言ってきたら自殺に追い込むレベルで罵倒しよう。
無言で対峙する三人の後ろで、噴水の縁に立ったままのディアベルが、夕陽を背に受けた影響で紫色に染まりつつある長髪を揺らし頷く。
「キバオウさん、君の言うことも理解できるよ。オレだって右も左もわからないフィールドを、何度も死にそうになりながらここまで辿り着いた訳だしさ。でも、今はいや今だからこそ元βテスター達の戦力がいるんじゃないか。彼らを排除して攻略が失敗したら元も子もないじゃないか」
おい、ナイト(笑)対応遅いぞ。まあ、だけどナイトを自称しるだけあって爽やかで如何にもって感じの弁舌だな。聴衆の中にも頷いている人いるし。そしてナイト(爆)は言葉を続ける。
「みんな、それぞれ思うところはあるだろうけど、今だけはこの一層を突破する為に力を合わせてくれ。チームワークが何より大事だからさ」
ぐるりて一同を見渡したナイト様は、最後にキバオウを真顔で見つめた。笑える髪型の持ち主はしばらく受け止めていたが、盛大に鼻を鳴らすと押し殺す様な声で言った。
「・・・ええわ、ここはあんさんに従うといたる。でもな、ボス戦が終わったら、キッチリ白黒つけさしてもらうで」
振り向き、スケイルメイルを鳴らしながら列に戻った。俺も戻ろうとすると、エギルが
「なぁ、あんた。メフィストだったか?今後は言葉のほう気遣った方が良いぞ。後から恨みを買って後ろから刺されたら笑えないからな」
「ヒヒ、御忠告ありがとうございます。エギルサン」
いやぁ、さっきあんなことやらかした俺に忠告とか優しすぎだろエギルさん。女だったら危なかったよほんと。
んー、でもあの時のナイト様の顔色がわるくて目線がぶれまくってたなぁ。何か動揺してたのか?
まさか、元βテスターか?帰ったら調べてみるか。
そう思いながらアルゴがちょこんと座っている場所へ戻ろうとするといなくなっていた。
・・・・あの女帰ったら覚えとけよ。麻婆を口に無理矢理突っ込んでやるからな。
その日の夜、はじまりの街で涙に濡れた女の絶叫が響き渡った。