だあー!LAはキリトだったか。まあ、取れればラッキーくらいにしか思ってなかったし、いいか。それより、大丈夫だよね?いきなり、
「ココマデ、オレヲコケニシタオバカサンハ、オマエタチガハジメテダ。フフハハハハハハ、ユ、ユルサン!ユルサンゾ!キサマラ!ジワジワト、ナブリゴロシニシテクレルワー!!」
とか言いながら、復活して新しい形態になって襲い掛かってこないね?
そう思いながら立ち上がろうとすると、目の前に【Congratulation!!】という紫色のシステムメッセージが音もなく瞬いた。
は?俺、LA取ってたの?いや、文字が違うし、もしかして、バグなのか?でも、アイテムストレージには見たことない武器が入ってるし、取り敢えず出してみるか。うん、少しだけ、重いな。えーっと何々、≪イビル・ダガー≫?うわあ、形状が禍々しいなぁ。って、総合値がフル強化済みの≪アニール・ダガー≫よりも高い!え!嘘!どゆこと!?
まあ、何にせよこれは、ラッキーで取れたってわけじゃないなぁ。
このドロップアイテム?に関して、思考を巡らせていると聞き慣れた声をかけられた。
「お疲れ様」
声がした方向を見ると、フードをとったアスナが立っていた。
「おやおや、珍しいですねぇ。アナタが顔を隠していないなんて」
「まあね、少しだけ息苦しかったから」
珍しく、微笑みを見せながらそう言ってきた。あー、なるほどね。さっき、頭に描いた展開は流石に起こらないか。つまり、終わったってことか。まるで、実感したことがきっかけの様に視界に新たなメッセージが流れた。獲得経験値や分配されたコルの額だった。
同じものを見たのか、後ろから大きな歓声が弾けた。
後ろを見てみると、両手を突き上げ叫ぶ者、仲間と抱き合う者、声を出さずに泣く者などが喜びを分かち合っていた。アスナが来た方向から、足音が二つ聞こえた。そっちを見てみると、そこにはキリトとエギルがいた。
「まあ、その、なんだ、おめでとさん」
「あんたのお陰で前線を立て直すことができた。そしてそれ以上にキリト同様見事な剣技だった。congratulation、この勝利を作り上げられたのはあんた達だ」
キリトは少し言葉に迷いながら、エギルは口元に笑みを見せながら途中の英単語を見習いたくなる程の発音で俺を称賛した。
その時だった。
「なんでだよ‼︎」
突然、半ば裏返った叫び声が後ろから弾けた。ほぼ、泣き叫ぶような響きに、歓声が一瞬で静まりかえる。
声のした方を見ると、軽鎧姿のシミター使いの男が立っていた。
え?誰?
誰なのか疑問に思っているとその答えはすぐに出た。
「なんで、ディアベルさんを見殺しにしたんだ‼︎」
あー、なるほどね。こいつ、ディアベルとはじめっからパーティ組んでた奴か。後ろにも、泣いてる連中がいるし間違いないな。でも、どういうことだ?
「見殺し、とは?」
「そうだろ‼︎だってアンタ達は、ボスの使う技を知ってたじゃないか‼︎アンタ達が最初から情報を伝えてれば、ディアベルさんは死なずに済んだんだ‼︎」
血を吐くような叫びに、残りのレイドメンバー達がざわめく。「そういえばそうだよな」「なんで?攻略本にも書いてなかったのに」などという声が生まれ、徐々に広がっていく。
その疑問に答えたのは、キバオウではなかった。むしろ、「ち、違うそいつらは」と言いながら放心していた。いやぁ、意外だなぁ。追撃かけるのアンタだと思ってだんだけどなぁ。
しかし、彼の指揮するE隊の一人が走り出し、近くまでやって来ると、右手の人差し指を突きつけて、叫ぶ。
「オレ知ってる‼︎こいつら、元βテスターだ‼︎だから、ボスの攻撃パターンとか、うまいクエとか狩場とか、全部知ってんだ‼︎知ってて隠してんだ‼︎」
この言葉を聞いた周りの連中の顔に驚きはなかった。流石に、カタナスキルを見切った時点で確信していたのだろう。
かわりに、ディアベルの仲間達はいっそう目に憎しみを滾らせ叫ぼうとした。
それを遮ったのは、エギルと最後まで共に壁役を務めていたメイス使いだった。律儀に手を挙げるところを見た時、「類は友を呼ぶ」という諺が浮かんだ。そんな考えをしていると、冷静な声で言った。
「でもさ、昨日配布された攻略本に、ボスの攻撃パターンはβ時代の情報だ、って書いてあっただろ?彼が、本当に元テスターなら、むしろ知識はあの攻略本と同じなんじゃないのか?」
「そ、それは」
E隊の一人が押し黙る。普段であれば「エギルさんのお仲間、まじカッケェェ!」くらいは思うところだが、今はそれどころじゃない。
必死に衝動を抑えていると、シミター使いが憎悪に溢れる一言を口にした。
「あの攻略本が、嘘だったんだ。アルゴって情報屋が嘘を売りつけたんだ。あいつだって元βテスターなんだ、無料で本当のことを教える訳なかったんだ」
もう、限界だった。
「クヒ、」
「ん?どうした?メフィスト?」
ああ、おかしい。
「ヒヒャハハハ」
「お、おい?」
おかしくてしょうがない。
「アハハハハハハハハ‼︎アハハ‼︎アハ、ウホヘ、グハァ‼︎クヒャハハハハハ‼︎アハハハハ‼︎グフォヘ‼︎」
たった一人の一つの言葉で空気をかえる皆がおかしくてしょうがない。自らが当たり散らす為に無理矢理、理由を作るシミター使いが面白くてしょうがない。腹を抱えて、笑う。むせながら、笑う。バランスをとりきれず倒れながら、のたうち回る様に嗤い続ける。全ての目線が俺に移る。絶句した様な目線を大量に浴びる。でも、気にならない。ああ、本当にこの攻略に参加してよかった。
「何が、おかしいんだ‼︎」
怒りに塗れた声に少しだけ嗤いが止まる。
「クヒヒヒw、あーw、ハイ?なんで……ヒヒャハハハw……フゥ。なんでしょうか?なんで、アナタはそんなにお怒りなので?」
嗤いを必死に抑えながら問いかけると、相手は顔を真っ赤にしながら答えた。
「ふざけるな!人が、ディアベルさんが死んだんだぞ!なんで、お前はそんなに笑えるんだ!」
「笑える要素しかないではありませんかぁ。一瞬で雰囲気を変える彼等も、当てどころのない苛立ちを当たり散らす為に無理矢理、理由を作るアナタも、全てがおかしいじゃあありませんかぁ」
「理由ならある!」
んー、理由って
「ワタクシ達が元βテスターだからですか?」
「っ!やっぱりお前ら元βテスターだったんだな!」
耐えろ、俺。いくら、期待通りの答えを相手が出すからって嗤ってはいけない。さてと、
「キバオウサァン」
「逃げるな!卑怯者!」
「逃げやしませんよぉ。少しだけ、余興を」
そう言いながらキバオウに近づき、逃げないよう馴れ馴れしく肩を組みながら問いかける。
「キバオウサァン、アナタがキリトサンからアニールブレード+6を四万で買い取るよう命じたの、ディアベルサンですよねぇ」
周りがざわついた。「え?」「いやぁ、嘘だろ」「は?どうして?」という声が響く。少しするとキバオウが答えた。
「あ、ああ、そうや………」
周りがさらにざわめく。流石に元βテスターアンチのキバオウがそうだと答えればざわつくか。
「そ、それがどうしたんだよ」
「まあだ、わかんないのですかぁ?」
そう言いながら、大袈裟な身振りで問いかける。
「皆サンは疑問に思いませんか?四万も有れば、アニールブレードを新調してさらに+6まで強化したとしてもお釣りが出るくらいなのに何故、そこまでの大金を払ったのか?と、答えは単純ですよぉ。元βテスター時代のLAをよく取っていたキリトサンの力を削ぎ自らがLAを取る為ですよぉ」
周りが騒然とする。
「そ、そんな訳ない!ディアベルさんがそんなことする訳ない!」
「おやおや、先程の言葉は信じるのに今、ワタクシが口にした言葉は信じないのですかぁ?」
そう言うと、一瞬シミター使いは口を紡ぎすぐに反論する。
「そ、それはお前が元βテスターだからだ!」
「違うでしょう。それはアナタにとって不都合だからでしょう。人は不都合な物事を見ると自らを肯定する為に別の物事を探す癖がありますからねぇ。ああ、後、何故ディアベルサンはキリトサンがよくLAを取っていたのを知っているのかというと、ディアベルサンは元βテスターだからですよぉ。それに、ディアベルサンがこのような行動を取った理由はアナタ方にあるというのに」
「な、なんだと?」
「気になるのであれば口を閉じてくださいよぉ」
今度こそシミター使いは口を閉じた。よし、続けるか。
「ディアベルサンはねぇ苦痛だったのですよ。アナタ方からの期待が。だって、そうでしょう?周りが元βテスターを否定する中、自らの過去を隠しながら生きてきた彼は、アナタ方という仲間ができてしまった。自らが元βテスターだと隠さなければならないということと、アナタ方を騙しているという罪悪感に押し潰されそうな毎日を送っていた。
さぞ、辛かったのでしょう。それ故に、彼は毒してしまった。顔は違えどキリトサンがキリトサンだとわかってしまった彼は、β時代の様にLAをとられるのでは?と思ったのです」
一拍置いた後、言葉を続ける。
「皆さんもご存知の通りフロアボスのドロップアイテムは高性能。それゆえ、手に入れれば戦闘力をアップできる。このゲームがデスゲームとなってから、戦闘力は生存力と同義になってしまった。今後とも先頭に立ち、皆の期待に応える為に、彼はあらゆる手段を講じてボスのドロップアイテムを手に入れようとした。実際、あと少しで彼の計画は成功するところだった。だが、皆を前線から下げたことが仇となった。その後は、皆さんが目撃した通りβ時代のボスと動きが違っていました。それが理由で彼の計画は破綻し、その代償として命を失ってしまった」
言い切った後、周りを見渡す。すると、俺のパーティを除いた皆が鎮痛そうな顔をしながら「そんな…」「う、嘘だろ……」などという絶望したような声がボス部屋に充満する。恐らく普段であれば「そんなの、お前の憶測だろ!」という言葉が浮かぶ筈だが、疲れもあってか、そんな疑問が浮かぶ様子もない。
すると、シミター使いが、
「な、なんで、ディアベルさんは俺達に自分が元βテスターだと、教えてくれなかったんだ」
「そんなの簡単なことですよぉ。アナタ方のことが何一つとして信用出来なかった、ただ、それだけですよぉ」
そう言うと、拳を強く握りしめ呻き声を挙げる。それを眺めながら俺は言った。
「本当に救いようがありませんねぇ〜、彼は。身の丈に合わぬ願いを抱き、身の丈に合わぬ行動をした挙句。その願いを抱きながら溺死したのですからねぇ。ほんと、嗤えますねぇ」
「ッ!ふざけるなぁ‼︎お前が、お前みたいな奴がディアベルさんを嗤うなぁ‼︎」
「アハハ、こんなお遊びで本気にして貰っちゃ困りますねぇ!所詮、紛い物ですよ。ああ、いや。実のところ、限りなく本物に近い紛い物ですけど。そもそも、この世界の物事全てが紛い物ならば、アナタが得たものも抱いたものも全て紛い物なのでは?」
その言葉が引き金となり、シミター使いは声にならない叫び声と共にソードスキルを発動させながら突貫してきた。俺はそれを回避しながら、すれ違いざまに≪アーマーピアース≫を繰り出す。俺のソードスキルは寸分違わず、シミター使いの鎧の隙間に滑り込み、直撃したと同時に、シミター使いのアバターが爆散した。
一瞬、辺りが静まり返った。そして、数秒後、絶叫がボス部屋に響き渡った。
「うわぁぁぁ‼︎」「こ、殺した!人を殺しやがった!」
そんな声が辺りに響き渡る。それを聞きながら俺は、
「アハハハハハハ‼︎クヒヒヒヒヒ、ハハハハハハハハ‼︎」
嗤っていた。ああ、楽しいなぁ。このゲームをやって本当に良かった。
「わ、笑ってる。アイツ、人を殺して笑ってやがる‼︎」
「ア、アイツ、本当に狂ってやがる‼︎」
誰かがそう言うのを聞いた。前を見るとエギルもアスナも皆が怯えている。いや、キリトだけは憐みを込めた目でこちらを見てくる。それを見た後、自らのカーソルがオレンジ色に染まっているのを確認すると嗤う。
「ヒハハハハ!これをもって、ワタクシのSAOは今、始まった‼︎さあ、皆さんご唱和ください‼︎
イッツ・ショウ・タァァァァァァイム‼︎」
親指と中指の先をくっつけた手を天に高く掲げ、指を鳴らす。音はボス部屋に高く、高く響き渡った。
この日、SAO史上最悪のプレイヤー。後の≪ジョーカー≫が生まれた。
ハイ、終わりました。文やキャラに違和感がある場合は教えて下さい。