後、できれば今後もSAOの詳しいストーリーや設定を教えて下さい。
ハァイ、俺メフィスト。アルゴとわかれて早二十分たった後、今は二パーティが迷宮区の守護者を倒したけど立ち去るまで岩山で隠れている真っ最中だ。だけど、先程と違って今の俺は。
「まさか、ワタクシはともかく、アナタ方がこんな早くに迷宮区に向かうとはとは生真面目ですねぇ」
「そんな事ないだろ。迷宮区の踏破はレベル上げにもなるし重要だろ」
今俺は道中偶然出会ったキリトと話しながら共に行動している。
って、キリトだけじゃあなかったな。
「ヒヒ、それもそうですかぁ。ところで、お久しぶりですねぇ、アスナサン」
「え、ええ、数日ぶりね。メフィスト」
アスナもいるんだよね。しかし、二人仲良くコンビを組んでるのかぁ。アルゴに言えばあいつ幾らぐらいで売り捌くんだろう?それにしても、どうしたんだろうか?少しどもってるのは俺が居るのもあるんだろうけど、
「お二人共何かありましたかぁ?」
「え?」
「いえいえ、何か悩んでいるようにも見えたので」
「えっと、実は」
キリト曰く、最近になってネズハと呼ばれる鍛治師の強化詐欺が行われているらしく、アスナも危うく引っかかりかけたらしい。時系列的にも先程の二パーティの内の一つである《レジェンドブレイブス》とかいう奴らが主犯の可能性が高いらしい。話を聞いていくうちにアスナの顔が険しくなっていくのを見て本気でキレてるのを理解する。
うん、なんというか。
「ワタクシが言うのもなんですが、いい性格してますねぇ。しかし、その詐欺で得られる利益は計り知れないでしょうねぇ」
「まぁな、ウインドフルーレやアニールブレード級のしかも強化済みの剣を、一日に一、二本詐取するだけでも普通に狩りで稼げる金額の二十倍はいくな。アスナには言ったけどオルランドたちは、ステータスの低さを、武装の強化で補ってるんだ」
「武器スキルの熟練度は戦わないと上がりませんが、武器の強化は詐欺で騙しとった武器を使えば手間が省けるという寸法ですかぁ。ヒヒ、名前も相まってまさしく鍍金の勇者。どこぞのナイト様のようですなぁ。いや、ナイト様は自分なりに抗おうとしたからそれ以上か?鍍金が剥がれ落ちた時の彼等が何をするのか是非とも気になりますねぇ」
いやぁ、本当に気になるなぁ。SAOは俺を飽きさせないよなぁ本当。
そう考えていると隣から殺気に似た何かを感じる。目を向けるとそこには綺麗な顔を怒りで歪ませたアスナがいた。眼下の戦場をキッとひと睨みすると勢いよく立ち上がり岩山を下る坂道の方へ向かおうとする。
って、おいおい、行っちゃダメだろ。
「アスナサァン落ち着いてくださいよぉ。確たる証拠がない以上、今言いに行っても敵になるのはアナタですよ」
「だからって、このまま…………」
「ええ、ですので、少なくとも強化詐欺のトリックを見抜いてからでないと」
「メフィストの言う通りだ。この世界にGMがいない以上多人数に敵視されるのは危険だ。俺とメフィストは今更だけど、アスナまで悪として扱われる必要は」
キリトがそこまで言うとアスナがキリトの口許に人差し指を突きつけ、台詞を中断させた。
「それこそ今更な気遣いよ、これから一緒にダンジョンに入ろうっていうのに。でも、言いたいことはわかったわ。確かに証拠どころか仕組みも不明じゃ、ただの言いがかりね」
引き戻した右手を、自分のおとがいに持っていく。睫毛をふせ、語気を抑えて続ける。
「わたしも、何か考えてみるわ。武器のすり替えのトリックを暴くだけじゃなく、明白な証拠を抑えられるような手を」
そう言い切るメインヒロインの瞳は、先程とは別種の炎をめらめらと宿している。うん、なんていうか。メインヒロイン怖いなぁ………
◇
迷宮区の守護者であるブルバス・バウの討伐に成功した二パーティと三人が、補給とメンテのため一度引き帰っていったタイミングで、俺とキリトとアスナは岩山を降りた。
守護者を失った細い盆地を素早く駆け抜ける。本来ならば、二層南部フィールドに初の足跡をしるす権利はリンドかキバオウなのだろう。しかし、彼等の性格的にボスのLAだけでなく、どちらが先に南エリアに入るかでまたひとモメするに違いない。生憎、それを待つ程の忍耐力は持ち合わせていない。
盆地の奥は曲がりくねった細い谷になっていた。左右の断崖はほとんど垂直で、滑らかな岩肌も相まってよじ登るのは不可能だろう。
mobの出ない谷底を一息に走破した俺とキリトとアスナは、出口の手前で足を止めて目の前に広がる光景を眺めていた。
二段三段のテーブルマウンテンが連なる地形こそ変わらないものの、のんびりとした牧草地だった北部のフィールドと違い、平地が密林で覆われている。山肌にはツル性の植物が這い、濃霧の塊があちこちに存在するため見通しが悪い。
しかし、その奥に屹立するシルエットはしっかりと視認できた。
上空百メートルに広がる次層のそこまで垂直に伸びる、第二層迷宮区タワー。一層のよりも少し細いが、それでも直径二百メートル以上はある。
ん?なんだあれ?なんだあの湾曲突起。なんつーか、牛のツノみたいだな。俺と同じ疑問を抱いたのかアスナが不意に呟いた。
「あれ、何?」
その疑問にキリトが答える。
「牛のツノ」
おお、やっぱそうだったか。
「え、えっと、牛?」
「近くまでいくと、あそこででっかい牛のレリーフが見えるぞ。二層のメインテーマだしね」
「おやおや、まだ続くのですか?」
「わたし、さっき討伐されたので打ち止めだと思ってたわ」
「甘い甘い、二層のモーモー天国はここからが本番だ。と言っても、今後出てくる奴らはウマそうじゃないけどな」
「ウシだけに?」
俺がそう言うとキリトは咳払いで誤魔化した後、ぽんと両手で叩いた。
「さて、そろそろ行こうぜ。南東に一キロちょいのとこに最後の村があって、その先が迷宮区だ。村のクエを一通り受けても、昼前には塔に着けるよ。正面から森に入るより、左側から迂回していったほうが安全だし早い」
キリト、マジで詳しいな。β時代の情報か?こういう時は本当に頼もしいな。
そう思っていると隣のアスナが微妙な顔つきでキリトを見ている。そのことに気づいたキリトは首を傾ける。
「どうした?」
「…………いえ」
アスナはこほんと咳払いすると、真面目な表情になって続けた。
「これは決して皮肉とか当てこすりじゃなくて、素直な感想なんだけど」
「う、うん」
「あなた、色々知ってて便利ね。一家に一台欲しい感じ」
おやおや、
「皮肉でないなら一体全体なんでしょうねぇ?アスナサン」
「さ、そろそろ行きましょう。リンドさん達に追いつかれる前にタワーに入りたいわ」
まるで俺の質問を誤魔化すように早口で言葉を紡ぎながら迷宮区へと向かった。
◇
「嫌っ……来ないで……!近づかないで!」
両目を恐怖で見開き、震え声を漏らす少女に、のしのしと迫る逞しいシルエット。側から見たら通報案件の事態だが、ここから先の展開からは予想を裏切るものになる。
「来ないでって……言ってるでしょ!」
少女は怒りの滲む声で叫ぶや否や、後ろではなく前に猛然とダッシュする。大柄な襲撃者がその動きに反応して両手用のハンマーを振りかぶるが、起動が頂点に達するよりも早く、少女の右手が流星のように閃く。無音の気合いと共に放たれた突き技が、襲撃者の胸板を直撃。純白の光芒が炸裂し、ハンマーの速度が鈍る。普通ならばここで一度飛び退いて攻撃を避けるが、少女は更に深く踏み込むと、右手のレイピアを引き戻すと追い打ちを敢行。今度は二連撃が分厚い胸板の上下に決まり、襲撃者が半裸の肉体をぐらりと揺らす。
「ブモオオオオオオオオオッ!!」
短いツノと金属の鼻輪を備えた頭がのけぞり、断末魔の悲鳴を撒き散らす。ゆっくりと後退していく巨体が停止すると同時に滑らかな筋肉が青い光を放ちながら爆散した。
最初に放たれたソードスキル《リニアー》とその後放たれた二連撃技《パラレル・スティング》によって牛頭人身のモンスターを屠ったレイピア使いはしばらくその場で息を荒げていたが、やがてキッと顔を上げると、こちらを睨みながら叫んだ。
「牛じゃないでしょ、あんなの!」
俺たち三人が、アインクラッドの第二層迷宮区に、恐らく全プレイヤー中最も早く足を踏み入れてから早二時間。
今頃、キバオウやリンドの部隊が一階で既に開けられている宝箱を見つけて苛立っているはずだろう。
え?譲らないのかって?
いやいや、御生憎と悪のPKプレイヤー、ジョーカーにせっかくの宝箱を譲り渡すという考えはありません。そもそも、アルゴからアイテムを持ってきてもらってるとはいえ街に入れない以上こういうところでアイテムをゲットしないとマジで死にかねない。アルゴから迷宮区に行くならばと、前もって渡されたβ時代のアルゴ直筆のマップ(少し分かりづらい)を読み、更にキリトの道案内のおかげで戦闘をこなしながら宝箱を次々に開けていく。順調に二階まで到達したところで、ついに聞いていたこの塔の主たる住人であるトーラス族と初遭遇したのだが。
「確かに牛か人かと問われれば答えにくいですがぁ………」
ウマくないと言われた段階で現れるモンスターの容姿を予想していた俺としてはアスナの怒りっぷりに見当がつかない。実際、キリトも隣で頭をかきながら困り顔だ。
「だけど、ネトゲのミノタウロスってだいたいこんな感じだし、ミノタウロス系のmobを牛って呼ぶのもお約束っていうか……」
「ミノタウロス?それって、ギリシャ神話の?」
キリトの言葉にアスナの剣呑な眼光が少し和らぐ。おおっと、アスナさんこういうのに興味があるのかな?仕方ない説明してあげよう。普段は余りというか全く役に立たない知識を明かそうと俺は割とノリノリで話し始めた。
「ええ、勇者テセウスに討伐される神話のミノタウロスは《ラビリントス》と呼ばれる地下の迷宮に閉じ込められた怪物です。キャラやストーリー的にもゲームといい感じは合いますからねぇ。昔から小説やゲームなどの定番モンスターなのですよぉ。因みに何故トーラス族と呼ばれているかというとミノを取った上で英語読みをしているからなのです」
「取ったのは妥当ね。だってミノタウロスのミノはミノス王のミノでしょ?」
「ええ、その通りですよぉ」
なんだ、詳しいじゃないの。アスナの博識ぶりに驚いていると、
「え?ミノタウロスをミノって略すのは不適当なのか?」
キリトがそう尋ねてきた。
「ハイ、ミノス王は死後に冥界の裁判官になりましたからねぇ、ミノ呼ばわりすれば怒るのでは?まぁ、ワタクシ的には物語の中で一番悲劇的なのはミノタウロスだと思いますがねぇ」
そう言うと、キリトとアスナは驚いたような目でこちらを見てきた。
「え?嘘でしょ?なんで、怪物のミノタウロスが悲劇的なの?」
「何故って、単純ですよぉ。生まれた瞬間から親であるミノス王に怪物であると断じられ疎まれ《ラビリントス》に幽閉され供物である人間を食わねば生きていけない状態に追い詰められますよねぇ。そして、最後には怪物としての通称『ミノタウロス』ではない、ちゃんとした人間としての名前で呼ばれず悪であると判断されて殺されたのですよぉ。これを悲劇と呼ばずしてなんと呼ぶのでしょう?」
「それは………」
「お二人共、良いですかぁ?これはワタクシの自論なのですが、人間が善であれるのは周りの取り巻く環境が良いからなのです。常識やモラルとは冗談のようなものです。そんなものはトラブルが起きればすぐに放棄してしまう。周りの状況が常識やモラルを持たせているだけなのですよぉ」
「………」
「まあ、簡潔に言ってしまえば周りの状況こそが、その人達の信念や決定に影響を与えるのです」
そう締めくくるとアスナは考え込んだ後、俺に尋ねてきた。
「ねぇ、メフィスト。ミノタウロスの名前ってなんて言うの?」
「《雷光(アステリオス)》ですよぉ、アスナサン」
「そう………」
再び、空気が重く淀む。なんか、自分で言っといてなんだけど雰囲気が暗くなったなぁ。うーん、少しやだなぁこの状態。よし、
「ところで、話は変わりますがぁ。アスナサァン先程の悲鳴は可愛いらしかったですよぉ。ワタクシ、ハァハァしてしまいましたぁ」
「な!仕方ないでしょう!だってあいつ、その……ほとんど着てないじゃないの!腰のところにちょっと布を巻いてるだけなんて、セクハラもいいところだわ。ハラスメントコードで黒鉄宮送りにしてやりたいくらいよ。今のあなたもよ、メフィスト」
そう言いながら、アスナは普段よりも三倍は冷え込んだ目でこちらを見てくる。
「おやおや、手厳しいですねぇ!そうは思いませんかぁ?キリトサァン」
「いや、お前、アスナ居るんだからその装備はやめとけよ」
まあ、なんだってこんな指摘を受けているのかというと。今の俺はトーラス族よりも少しだけ肌を晒していないという状態だ。何故こんな奇行に走ったかというと先程宝箱を開けた際手に入れた《マイティ・ストラップ・オブ・レザー》という防具を手に入れたからだ。この防具は防御力もそこそこある上にかなり嬉しい筋力ボーナスつきなのだが、装備すると上半身が《革帯を各所に巻いただけの半裸》に固定される。それ以外の胴衣や鎧の重ね着も出来ない。
しかし、アスナでこの反応か、アルゴだとどんな反応をするんだろう?気になるなぁ。
それはさて置き。
「どうです?我ながら似合ってると思うのですがぁ?」
「ええ、腹立たしいことにね」
そうなのである今の俺の格好、無駄に似合ってるのである。これのお陰で今のところは黒鉄宮にぶち込まれずに済んでいると言っても過言ではない。後は「装備品の性能が良くないと街に入れない俺にとってはキツイ」的なことを言ったこともあるのだろう。
「お前以外にも、似合いそうなのがいるよなぁ、例えばエギルとか」
「メフィストは意外だったけど。確かに、彼なら様になりそうね。ああ、昨日の偵察であったわよ」
え、まじで?
「ほお!しかし、ワタクシの記憶が正しければ本番には参加していなかったはずでは?」
「あの人もやっぱり、リンドさんやキバオウさんと気が合わないみたい。それでもフロアボス攻略には参加するって言ってたから、メフィストは無理でもキリト君もそこで会えるでしょ。その時に譲ってあげたら?」
「そ、そうだな。で、ミノ……じゃないトーラスの《ナミング・インパクト》は対処できそうか?」
「ミノでいいわよ、もう。あと、二、三回見ればなんとかなると思う」
「ああ、ワタクシは完全に見切れますよぉ」
「そっか。ボスの《ナミング》は範囲が桁違いだけど、タイミングは雑魚ミノと一緒だからな。っつーことで、次のブロック、行ってみますか」
キリトの言葉に、俺とアスナは疲労の気配を見せずに頷くと、部屋の出口へと向かった。
今のメフィストの見た目はケープを付けていない色合いが地味な再臨初期段階の腕の袖部分がない状態です。