メッフィー(偽)in SAO   作:アーロニーロ

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29話です。


29話

 第二層での出来事が失敗した後、多少不機嫌になりながらも俺はすぐさまいつものように第三層へと向かった。いや、いつも通りではなかった。え?何故かって?

 

「はぁ」

 

「なあ、どうしたんだよ旦那〜。そんなに不機嫌そうな顔してよ」

 

「第二層での出来事はPoHから聞いているでしょう」

 

「なんだその事かよ!大丈夫だって旦那!次に生かしていこうぜ!」

 

「勿論そのつもりですとも。ところで何故アナタはワタクシのことを『旦那』と呼んでいるのですかァ?ジョニーサン」

 

 ギルメンのジョニーブラックと一緒だからだよ。

 あの後、PoHと別れたのだがすぐさま呼び戻された。これには流石に苛立ちを覚えたので少々喧嘩腰で何故呼び戻したのか問い詰めると。

 

「お前は一人での行動が多いから、メンバーのことをよく知らないだろうから知っておく為にも今回はパーティを組んでもらうことにする」

 

 とのことだった。俺はすぐに反論しようとしたがアルゴのことがバレると面倒くさそうだと思い反論しようとするのをやめて、その案を受け入れた。流石にパーティを組む相手は選ばせてもらい。ギルメンの中でもPoHを除いてまともに会話をしたジョニーブラックを選んだ。そして、現在にいたる。

 

「そりゃあ勿論俺なりの敬称だとも!どう?中々似合ってると思わねぇか?旦那!」

 

 人懐っこいなぁ、コイツは。なんつーか、アルゴが小型犬だとするならコイツに関しては大型犬を相手にしてる気分だ。すげぇ目がキラキラしてるもん。前世と今世を合わせてもここまで敬われたことはないよ。

 

「理解に苦しみますねェ。ワタクシがアナタにそこまで影響を与えるようなことをしましたかァ?」

 

「おいおい、旦那〜忘れちまったのかよ!あの日、俺に魅せてくれたあの出来事を!」

 

 ……まさか、あれのことか?あの忍者擬きを殺したことを言ってるのか?

 

「俺さ!あの出来事以来おかげでインスピレーションの幅が広がったんだぁ!今度旦那にも魅せてあげるよ!」

 

「いえ、結構です」

 

 何が悲しくてお前の趣味に付き合わねばならないのだろうか。面倒くさい上に非常につまらないだろうよ。そう言うと、少ししょんぼりとしながら。「そっかー」と言った。なんだこのあからさまな落ち込んでるアピールは男の凹む姿を見ても何も思わないし寧ろ気持ち悪いぞ。どうせならザザを選ぶんだったと本気で後悔していると。

 

「そーいえばさぁ、旦那」

 

「ハイ、なんでしょう?」

 

「旦那はなんで、あの土下座してた奴を殺さなかったんだ?」

 

 と、問いかけてきた。あー、なるほどね。ジョニーブラックからしてみたらあの時俺が殺してないのは不思議なことこの上ないのか。まあ、理由を話すくらいならいいか。

 

「ああ、それなら単純ですよ。ワタクシが見たかったのは発狂し、絶望に浸った末の醜い破滅なのですよォ。ただの暴力で殺したところで……何が面白いというのですかァァ⁉︎」

 

 おっと、最後は昂ってしまった。まあ、結局はそんなところだ。だから、俺はジョニーブラックが嫌いだ。ただひたすらに人を殺すだけで非生産的すぎる。合わなさすぎる。多分というか殺しだけが好きなだんかで確実にザザやPoHのことも苦手だし嫌いだ。しかし、ジョニーブラックは違ったようでキョトンとした顔をしたかと思うとすぐに笑い出した。

 

「ハハハハ!!旦那って性格が屈折しすぎだろ〜!」

 

 そう言いながら腹を抱えて大笑いした。うわぁ、ウゼェ。なんつーか黙ってくんねぇかなぁ?ジョニーブラックを殺すことを視野に入れながらふと気になったことを尋ねる。

 

「ジョニーサン、アナタのレベルはお幾つで?」

 

「んーと、大体14かなぁ」

 

 うーん、何て言うか。低すぎないけどさぁ。えー、どうしよう今すぐにパーティを解約したい。

 

「因みに旦那は?」

 

「23ですよォ」

 

「レベル高っ!!」

 

 第二層で情報収集の為に一体目と二体目のボスを単独で倒して第二層のボス攻略の際、最後に三体目のボスを倒したからなぁ。まぁ、それでも個人的にはもっと上がって欲しかったなぁ。

 

「個人的にはひとりで動いていた方が楽なのですよォ」

 

「ま、まあ、そんだけ強けりゃそうなるよなあ。うわ、俺足手まといにならねぇ様に頑張るよ、旦那!」

 

 前向きだなぁ。まあ、快楽主義者という面では俺と似てるしうまく連携できるか?道中で何回か戦ってるところを見る限り戦い方は俺と同じでジョニーブラックは強いか弱いかで言ったら強いがキリトやアスナと比べると少し弱いくらいの強さは持っているように見えたし。上から目線になるが多少は期待してもよさそうだな。連携が良くなってくる程度には戦っていると。遠くからキンッという音が聞こえた。ん?この音は。

 

「旦那〜」

 

「ええ、言わずとも分かりますよ、ジョニーサン。今のは剣の音ですねェ」

 

 耳をすまさないでも聞こえるってことは結構近いな。PVPか?

 

「旦那、旦那!行ってみない!?」

 

「ええ、そうですねェ。ワタクシも気になりますしィ、行ってみますかァ」

 

「そうこなくっちゃ!!」

 

 そう言うと俺とジョニーブラックは音のした方へと向かった。すると、そこには激しく戦う三つのシルエットがあった。

 

 一方は(二人は)、きらびやかな金色と緑色の軽装鎧に固めた長身の男。右手のロングソードや左手のバックラーも一見してハイレベル品だとわかる。後頭部で結われた髪は見事なプラチナブランド、ハリウッド俳優を連想させる北欧系のイケメンだ。

 

 もう一人は、対照的に黒と紫の軽装鎧を纏っている。緩く弧を描くサーベルと、小型のカイトシールドも黒色だが、装備のランクは同じく高い。スモールパープルの髪は短めで、やや浅黒い肌の横顔はSAO内で出会ったどのプレイヤー達よりも美しい顔立ち。艶やかに赤い唇と、わずかに隆起したブレストプレートが、黒い剣士が女性であることを示している。

 

「ハアッ!」

 

「シッ!」

 

 金髪の男達が、猛々しい気合いとともに剣を振り下ろした。

 

「シャッ!」

 

 それを、紫髪の女がサーベルで迎撃する。キイィィン!と澄んだ金属音が響き、発生したライトエフェクトが深い森を一瞬明るく照らし出す。

 

「うっわ、メッチャ綺麗だなぁ。もしかして、三人ともNPCなのかなぁ旦那」

 

「恐らくそうでしょうねェ。ですがァ、あそこまで全身の動きや表情を再現できるとはこの世界はワタクシを驚かせてばかりですねェ」

 

「確かにびっくりだ。三人の頭の上のクエマークを見えるし、もしかしてさぁ、片方側にしか加勢出来ない感じかなぁ」

 

「十中八九そうでしょうねェ。因みにジョニーサンでしたらどちらを選びます?もっとも、大体予想つきますけどねェ」

 

「へぇ、じゃあ言ってみてよ旦那」

 

「黒髪の女エルフを助ける」

 

「その心は?」

 

「金髪のほうも黒髪のほうも質は変わりませんし、後は量ではないかと思いましてねェ」

 

「大当たり!!流石だよ!旦那ぁ!」

 

 そう言うと同時に俺たちは空き地に飛び込んだ。戦うエルフたちが同時にこちらを見るや、大きく後ろに飛んで距離をとると、三人の頭上のマークが変化する。

 

「人族がこの森で何をしている!」と金髪エルフの男達。

 

「邪魔だて無用!今すぐに立たされ!」と黒髪エルフの美女。

 

 いつもならここで小言を挟みながら煽るのだが今はそれどころじゃなかった。なんでって?目の前にキリトとアスナのペアがいるからだよ。案の定二人も驚いているのか目を見開きながらこちらを見ている。何にせよこれは好都合。

 

「キリトサァン!」

 

 俺は叫びながらキリトに向けてパーティの要請をした。すると、キリトは少し苦虫を噛み潰したような顔をした後。

 

「言いたいことは山ほどあるが、了解した!因みに助けるのは!?」

 

「黒髪ィ!!」

 

 そう言うとキリトはパーティの申請を受託した。確認のため自分のHPバーを確認する。そこには、ジョニーブラック以外にキリトとアスナの名前があった。確認した後四人揃って剣を抜き金髪エルフの胸甲へと向けた。

 

 すると、整った顔立ちがみるみる険しくなる。mobのカラーカーソルに、敵対したことへの移行を警告する赤い枠が点滅する。

 

「愚かな……ダークエルフ如きに加勢して、我が正義の前に露と消えるか」

 

「そ……」

 

「ハッ、正義とおっしゃいましたかァ!女相手に二人がかりで剣を振るうことを正義と言うとは、なwるwほwどw、最近のエルフの正義とは一風変わってますなァァ!!」

 

 キリトが何か言おうとしたので全力で遮りながら煽ると、険しい顔をさらに歪ませた。おーおー、怖い怖い。そんなことを思っていると金髪エルフ達は歪んだ顔のまま笑みを浮かべる。

 

「よかろう、ならば貴様から始末してやろう、道化風情が!」

 

 構えられたロングソードに意識を集中させていると。

 

「いいな、ガード専念だぞ!」

 

 え?何故?もしかして此奴等強いの?まあ、それはそれで。

 

「楽しくなってきたァァァァ!!では、行きますよォォ、ジョニーサァン!アベンジャーズ!!」

 

「アッセンブr「言わせねぇよ!?」」

 

「男三人!ふざけてないで集中して!」

 

 三人仲良くアスナに怒られながら、戦いが始まった。

 

 

 十分後。

 

「ば…馬鹿な……」

 

 そんなありきたりなセリフを吐きながら金髪エルフ達は倒れた。あれ?なんか弱くね?一応キリトのほうを見ると。

 

「ば…バカな……」

 

 金髪エルフ達と同じセリフを吐きながら呆然と立ち尽くしていた。ふむ、反応から察するに前はこうはいかなかったのか?まあ、それはさて置き。俺は視線をダークエルフの美女に向ける。そこには黒いサーベルを片手に、無言で敵の骸を見下ろす姿があった。

 

「大丈夫ですかァ?」

 

「あ、ああ、ありがとう、助かった」

 

 俺が声をかけるとダークエルフの美女はオニキスのような瞳に戸惑いや驚きをまぜながら礼を言った。


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