決着はすぐについた。
武器のリーチの短い俺は一対一を二度繰り返すことで無傷で勝利し、
逆にキリトは片手剣のリーチの広さを利用して二対一の状況で勝利した。後ろから聞こえる戦闘音からコペルがまだ戦い終わってないことを察する。援護する為に振り返ると、コペルと目が合った。その目には疑心、哀れみなど様々な感情が渦巻いていた。主人公も気づいたのかその目を見て体を硬直させている。そんな俺たちを見ながら短く言った。
「ごめん、二人共」
そして視線をモンスターに戻すと、右手の剣を大きく頭上に振りかぶった。刀身が薄青く輝くきソードスキルが発動する。あのモーションは道中、主人公からこのソードスキルだけは使わないと実演してみせた単発垂直斬りソードスキルその名も、≪バーチカル≫。
「いや・・・ダメだろ、それは・・・」
直ぐ近くから主人公の咎める声が聞こえてくる、しかしその注意は届かずソードスキルは発動し、≪実≫へと直撃した。
パアァァン!
という、凄まじいボリュームの炸裂音が森中に響き渡った。そして、モンスターは呆気なく爆散。それと同時に空気中に鼻につくような薄緑色の瘴気が俺たちを覆った。これを起こしたコペルは煙を避けて森へ向けて大きく飛び退いた。
って、やっぱこうなったか。薄々勘付いていたけど実際に起こすとは。
「な・・・なんで・・・・」
「そ・れ・は、単純ですよぉ。キリトサァン。コペルサンはわざと≪実≫に向けて剣を叩きつけた。ただそれだけですよぉ」
「そ・・・そんなことわかってる。だけど、このままじゃあ」
「ええ、このままではワタクシ達は匂いを感じてやって来た≪リトルネペント≫達に数の暴力で殴殺されますねぇ」
そう、このクエストのモンスターは≪実≫が爆散すると同時にその匂いを辿り大量にその場所に集まるという性質がある。このクエを知ってる段階でコペルがβテスターであることは逆説的にわかる。ならば、このクエでやってはいけないことも知ってるはずだ。つまり、彼は自分の意思でモンスター・プレイヤー・キル通称MPKを実行したと考えられる。いやぁ、(予想通りすぎて)驚きましたねぇ。
そんな事を考えている内に周りに二十、三十とモンスターが集まってくるのを≪索敵≫で感じる。いやぁ、まいったなぁ。モンスターとのレベル差が三倍以上あるとは言えこの数は流石にまずい。
抜け出す方法は一つだけある。それは、一点に向かって主人公と俺とで連携しながらモンスターを倒し抜け出すという脳筋戦法くらいだ。
しかし、コペルのやつどうやってこの状況から抜け出すつもりだ?確か≪隠蔽≫効きにくいだろこのモンスター。なら転移でもするか?
いや、アルゴは転移系のアイテムは下の階層にあるって言ってた。それに仮にあったとしても相当高価だと言っていた。もしかして、知らないのか?・・・・確かめてみるか。
「あのぉ、コペルサァン!聞こえてますかぁ。聞こえるなら物音を立ててくださぁい」
返答無し、か。ならば
「では、これは独り言になりますが、≪リトルネペント≫に≪隠蔽≫が効きにくいことくらい知ってますよねぇ」
すると、すぐに森の茂みの方からガサッという音が聞こえた。マジか、知らなかったのか。どうしよう嗤えてきた。まぁ、このまま見捨てるのもありだか、いいこと思い付いてるんだよねぇ。よし、やってみるか。
「コペルサァン、今アナタが≪隠蔽≫を解除して出てくるのであればワタクシとキリトサンが協力してアナタをその状況から早くカイホウして差し上げると誓いましょう。ワタクシこんなんでも地元では義理人情に厚いことで有名ですから。ああ、別に信じなくてもよろしいのですよ。ただそうするとアナタはそのまま死を待つだけなのですから。何せそちらにもかなりの数のモンスターがいますからなぁ」
そう言って相手の反応を待つと直ぐに気配がした。そして、
「頼む!助けてくれ!」
うわぁ、一瞬で出てきた。まぁ、命が惜しいのは分かるけどさぁ、もう少し迷おう?ま、言う通りにしたんだからカイホウしなきゃね、
「ハァイ、では約束どおり早くカイホウして差し上げましょう」
そう言いながら俺は声のした方に向き、
アイテムストレージから≪実つき≫の≪リトルネペント≫のドロップアイテムである≪実≫を数個取り出し足元に向けて放った。当然、実は爆ぜてコペルの足元から大量の瘴気が溢れ出る様に出現した。
「は?」
茂みの向こうから呆気にとられた様な声が聞こえる。隣からは絶句した様な目線を感じる。ん?なにをそんなに驚いてんだ?この二人。
「お・・お前、メフィスト」
「ハァイ、なんでしょう?」
「何してんだ!!」
はあ?なに言ってんだ?この主人公?約束を守ってるだけじゃないか。
「なにって?単純ですよ。早くカイホウしてやったのです。
恐怖
から」
おいおい、主人公なんつー間抜けな面してんだこいつは。
「は、話が違う!」
「ハイィ?」
「助けてくれるんじゃあ・・・」
はぁ、話聞いてたのか?こいつ。
「ワタクシはカイホウしてやると言いましたが、助けるなどとは言った覚えがありませんなぁ」
それにさぁ、
「義理人情に厚い人間が仲間を裏切る様な相手を許すはずありませんもねぇ」
そう言うと怒ったのか顔を真っ赤にしながらこちらに向かって来る。しかし、周りのモンスターの数が三十以上もいる為近づけずどんどんとHPが減っていく。それに合わせて相手の顔も青ざめていくのだから嗤いが止まらない。あぁ、なんとも面白く、美しいことか。
「ふふ、ふふ、ふっふふ、ふ!安心して下さい。死は終わりではない。死は消滅ではないのですから」
そう言い切ると同時に主人公が助ける為に駆け出す。やらせねぇよ。
すぐさま取り押さえる。ん、意外と力強いな主人公。
「離せ!メフィスト!このままじゃあ・・」
「ええ、確実に彼は死にますねぇ。しかし、彼が死んでも忘れさえしなければワタクシ達の心の中で生き続けます。ネェ、アナタもそう思いませんか?ラウ・・・いや、クル・・・いや違うなぁ。うーん?
いやぁ、すいません。アナタァ、誰でしたっけ?」
嗤いながらそう言うと殺されかけてる「誰か」は絶望に染まった様な顔をした。瞬間、モンスターの波に呑まれてアバターが爆散した。
主人公は只々その光景を絶句したように見続けて、俺は、
「ヒャーハハハハハハハ!!!イーヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!」
ただひたすらその結末を祝福する様に主人公を押さえるのも忘れて腹を抱えて嗤い続けた。ケタケタとケタケタとケタケタケタケタケタケタ。
読んでくれてありがとうございました。
いやぁ、メフィストらしく狂った様にかけたでしょうか?
一応言っときますが。主人公です。