剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
シリアス「まあアイツドロップアウトさせないとなぁ」
作者「お前怖ーよ」
4/10 日刊ランキング83位に載ってました。いや、まだ序盤中の序盤で盛り上がりポイントはまだなんですけど…。
嘘です本当にありがとうございます。最終話まで突っ走れるよう頑張ります(・∀・)
ランキング入りを記念し、今回は金曜日にも投稿させて頂きます。もちろん、明日も火木土日の予定通り通常投稿させていただきます!
それとですが、神無月緋色さん、高評価9ありがとうございます。
高評価及びコメントは励みになりますのでよろしくお願いいたします。
「ふんっ」
人の寝静まった丑三つ時、任務帰りだったであろう単独行動中の鬼狩りを暗殺して刀を奪うと、俺は盲目の輩が多くいる江戸の惣禄屋敷に潜入した。物音を立てずに刀で次々と寝室にて寝静まった盲人共を殺して行った。
人間というものは脆く儚い。脳天や心臓を突けば、その命は有無を言わさず尽きる。鬼のように再生することもない。
ましてや、目の見えない哀れな者達が相手となれば、仲間が近くで殺されようとも、その惨状にすぐには気づきはしない。死臭やら血の感触など、その他の感覚器官をもって仲間の死に気付こうにも、その時既に俺はもうそこにはいないか、ソイツも仲間と同じ屍に成り果てている。
「さて…」
室内でぐっすり眠りについていた盲人は殺し尽くした。様子がおかしいと目覚めた輩に関しては漏れなく優先順位をつけて瞬殺。
「ハッハッハ、脆い!脆すぎるぞ人間!」
目が見えない中で頑張って必死に生きてきたのに、寝てただけで永遠の眠りにつかされるなんて可哀想だね。まあ、鬼である俺からしたらそんな気持ち分からんし、心の底からは思ってはないけど。
(若いのはいるかなぁ)
早速、美味で栄養豊富な若人の死体を探す。とりあえず勢いで部屋にいる奴全員殺したけど、どんな奴が死んだかなんてもはや覚えてないし認識してない。ある程度若いか若くないかで選別して、老人は不味いので放置しとく。
「ヒェッ…」
「ん?」
部屋の隅っこで、血1滴流すことなく震える老人の姿があった。どうやら、俺ともあろうものがうっかり1人殺し損ねてしまったようだ。
「…こ、殺される」
返り血塗れの俺を見るなり、その場で自分の目を覆ってガクガクと震え出す老人。というかコイツ、もしかして。
「…ここは盲人だけしか居ない部屋だと思っていたが」
「ひっ、ヒェェェ…」
俺がしゃがんでソイツの目の高さに顔を合わせると、奴は再度俺と目を合わせた後に頭を抱えて震え出した。
「お前、目が見えてるな?」
「ちっ、違う!見えてない!」
嘘だ。コイツは物音立てずに潜入してきた俺のことを、今も無意識に目で追っている。人を殺すにも殆ど音を立てていない。目が見えていなければ、どう足掻いても俺の存在には気づけない筈だ。
本当は目が見えているにも関わらず、幕府にもある程度認められているという当道座の社会的地位の高さにあやかり、自らを盲目であると偽った嘘つきに違いない。
とはいえ、判断を下すのはまだ早い。1つ、問い質してみようか。
「…仮にお前が本当に盲目だったとしよう。だとしたら何故、お前は俺の姿を認知できたんだ?」
「そ、それは………た、頼む!命だけは………」
奴は説明が出来なかった。それどころか、自らの保身のために命乞いに走った。そうか、コイツはダメだ。
__嘘つき確定だ。
「…どうやらお前は生きる価値もないクズみたいだな」
「ヒィィィ!」
まあどっちにしろ、俺の姿を認識した以上は目が見えようが見えなかろうが最終的に殺す算段ではあったんだがな。
「折角だから最後に言い残す事があればきいてやる」
それぐらいの情けは掛けてやってもいい。さて、コイツは最期に何を喚き叫ぶのかな。
「お前は……儂を……」
「ん?」
ふと、奴の感情が昂ってくるのを感じた。
「可哀想だとは思わんのか!!!」
そして、ハッキリとした口調で、奴はそう言いのけた。
「…それがお前の、最後の言葉か?」
驚いた。まさか、先程まで怯えるだけだった人間風情が、この期に及んで俺に楯突いてくるとは思っていなかった。が、それが精々の足掻きだろう。
「儂のような社会的弱者を甚振って、お前は何とも思わないのか!」
「うるせえ」
そうして俺は奴の心臓目掛けて刀を突き刺した。最後に奴は血を吐き、断末魔をあげることなく息絶えた。
「ふんっ…」
俺は奴の胸から刀を抜いた。既に動かなくなった奴の胸からは延々と血が流れ続ける。
「…目が見えるお前は少なくとも弱者なんかじゃねえよ」
俺は最後に周囲の様子を確認し、刀を鞘にしまった。
(…しかしコイツの最後の言葉。加えて盲目を偽るクズっぷり。もし俺と同じ鬼だったら将来どうなっていた事か。意地はありそうだから100年もしたら上弦の鬼に意地でくい込んでくるかもしれない…)
奴が死んだ今となっては叶う事こそ無いものの、そういう未来もあったのかもしれないと、俺は密かに想像に耽った。
___ただ素体は使えそうだな。将来、もしかしたらコイツの屍が上手いこと役立つかもしれない。後世まで奴の存在は覚えておくとしよう。
「さてと、若いのだけ食って早々にずらかるか」
そうして盲人共の亡骸に手をつけようとした瞬間のことだった。
【雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃】
部屋の入口にあった障子を突き破る音と同時に、閃光の如く眩く速い一筋の剣が、死体に手をつけようとしていた俺の右腕を切断していった。
「耳をたててみれば、やはり殺戮に及んでいたか悪鬼め」
「…テメェ」
斬られた腕はすぐに再生した。が、予想外の唐突な邪魔者の登場は俺を苛立たせた。
その得体の知れない実力的にも、纏っている稲妻のような羽織的にも、奴の階級は柱、雷の呼吸を扱う鳴柱だと確信した。
【雷の呼吸陸ノ型 電轟雷轟】
続けざまに、奴は辺りに雷撃を落とすが如く、俺に向けて雷状の斬撃を飛ばしてきた。
「チィ」
俺は鳴柱から放たれる全斬撃を躱し、念力の血鬼術で奴の動きを封じようと試みる。
が、奴の体はピクリとも俺の思った通りに動く気配がない。
(…クソ、屋内だからやはり血鬼術は通りにくいか)
俺の念力は、念波を飛ばすことで相手を意のままに操るものだが、壁が多く存在する建物内や障害物に囲まれてる場所では、辺りに念波が反射するため殆ど作用しない。とはいえ、単純に俺の鬼としての練度不足の可能性も否めなかったりするのだが。
(…というか、コイツはなんで俺の存在に気づいたんだ?)
俺は物音を立てずにこの建物に侵入した。暗殺も極力音を出さずにやった。それなのに、何故だ。
(…そういえば)
『耳をたててみれば』
奴は確かそう言っていた。いやでも、いくら耳が良いにしてもそれは流石にない。盲人共は目が見えない分、生存本能として他の感覚器官が優れていて耳が良かったりする奴が多数いるのだが、奴らは1人として殺意を込めた俺に気づいてなかった。目の見える鬼狩り風情がここまで聴覚に敏感なわけが無い。
と思ったが、1つだけ心当たりがある。
(あのジジイ…)
あのさっき殺し損ねた盲目を偽ってたジジイだ。アイツは最後に思いっきり叫んでいた。
『お前は……儂を……可哀想だとは思わんのか!!!』
夜中という静寂の空間で、あのジジイが死ぬ間際に発した魂の叫びが、
(クソが…!)
老人も盲人も無駄な社会的地位の高さも、この期に及んで邪魔をしたアイツの持つ要素の何もかもが、俺をつくづくイライラさせる。
「…俺の狩りを、邪魔するんじゃねえ!」
そして、目の前の鳴柱もだ。俺が鬼としての本能に従ってる中で、貴様は何故邪魔をする。俺は人を食って強くなりたいだけなんだ。
「狩り?ふざけたことを抜かすな。お前がやってるのは意味の無いこと。俺に退治されて死を持ってしても償いきれないことをしている」
(うるさい、黙れ黙れ黙れ黙れ)
俺の存在を、否定するな。俺の行いを、否定するな。
【雷の呼吸 弐ノ型 稲魂】
続けて容赦ない5連続の切り込みが俺を襲う。それをまたさっきの陸ノ型同様に体を捻って回避する。
「…十二鬼月だなんて下らない冠位に縋っている馬鹿鬼が。しかもお前は見たところ先日水柱が斬った下弦の伍より格下の下弦の陸じゃないか」
「うるせえ黙れ死ね」
無惨様より頂いたこの下弦の陸の座は、俺が黒死牟さんの推薦があって、無惨様に強い鬼として選ばれた事の証明。下弦の伍が変に十二鬼月だとか名乗ったことで鬼狩りに名前が知られたのは実に面倒だが、十二鬼月も無惨様も、お前のような醜い人間ごときが馬鹿にしていいものでは無い。
(俺は、鬼だ)
俺は鬼だ。鬼であり武士であり剣士だ。十二鬼月だ。人間が嫌いだ。醜い人間が嫌いだ。邪魔をする鬼狩りが嫌いだ。人間は醜いものだ。鬼狩りは醜いものだ。鬼は上に立つ者だ。
鬼は、俺の誇りだ。
そして、俺含め鬼を卑下する鳴柱のお前は、ゴミ以下だ。
だから____
__コロス
【
俺の鬼の始まりは、最初の越後国への旅路の中で自分の居場所を示してくれた、
雷のようなチンケな光を超える星だ。
ー江戸コソコソ噂話ー
朱雨についてはモデルが存在。
矜羯羅童子を元としています。白肌に髪の長さや鬼としての見た目年齢が幼いことなどは矜羯羅童子が元ネタですが、大元は東方靈異伝のKONGARAを参照。刀使いだったり、彼?彼女?のテーマ曲が星幽天使であることから星の呼吸になったりと、影響はそっちの方が強いかもしれない。
ちなみにネタバレの関係であまり深くは触れられませんが、候補の中には星幽天使からとって天の呼吸もありました。ただ、この呼吸の位置付け的におきまして、初期の頃から考えていた独自設定があり、それを考慮すると天の呼吸より星の呼吸の方が色々と辻褄が合ってくるので星の呼吸を名称として採用。
ヒントは、星の呼吸の型が黒死牟さん曰く日の呼吸と近いと言われていながらも、呼吸の特徴の傾向的にも技的にも全く別物のような呼吸になっている事です。