剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
またエタったらごめんね( ˇωˇ )
1話 転生しました
気づいたら俺は、生まれ変わっていた。
普段は漫画読んだり、真面目に講義を受けてその帰りにバイトをして帰るような普通の大学生だった筈なのに。
多分、そのはずの順風満帆…な人生だったと思う。あやふやだから確証はない。というか、そう考える以外の
「遂に…生まれたわね…」
「ようやくだな…」
話を戻して、気づいたら俺は赤ん坊になっていた。まあ、これはその、アレだ。
___俗に言う、転生ってやつ。
「男の子で良かったねぇ」
「うむ、強い子に育って欲しいものだ」
しかも何だか転生したはしたでいいんだけど、時代は俺の生きていた平成から令和にかけての時代とは全てがかけ離れていた。母さんも父さんも、服装が明らかに現代風の洋服ではなく、江戸時代以前によく見られた和服、加えて父親らしき人は髷を結っていて、令和の世ではまず見かけない、というかいたら確実に浮きまくって職質まっしぐらな様相をしていた。
「これで、
「えぇ、この子ならきっと私たちの剣術を上手いこと継げる筈よ」
しかも、何だか後継ぎと口にしている辺り普通の家じゃなさそう。時代を鑑みるに江戸時代なのだろうけど、両親とも百姓の出で立ちではない。明らかに大きな何かを背負わされるポジション。多分、武士だと思うけど…。
とにかく、既にこの時点で嫌な予感はプンプンしてた。
(これ、平穏に暮らせるかなぁ……)
この後継ぎうんたらかんたらが、俺の2度目の人生に大きな影響を与えることになるとは、金輪際思いも寄らなかった。
____あれから10年もの月日が経った。
まず、俺には朱雨と書いてしゅうと読む名前が与えられた。父さんは剛という何ともまた強そうな名前であることも分かった。
次に、生まれてからこの10年間で今の時代背景やら色々と分かったことを話そう。
時代は予想していた通りやはり江戸時代。1600年代後半の、元禄文化が花咲く時代に、俺は剣術道場の跡継ぎとして生を受けた。
剣術道場ときくと、武道としての剣術を学ぶのだろう。元禄という江戸時代の中でもまだ平和な時期だし、そんなキツくはないと舐めてかかっていたが、そんな甘っちょろい理想は簡単に打ち砕かれた。
「あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁぁっ゙」
俺は音を上げていた。
なんでかというと、それは目の前の出来事にあった。
「どうした!そんなんではうちの家督は継がせぬぞ!」
そう、5歳になってからというものの、毎日毎日朝から夕方まで盆と正月以外剣術道場で親父にボコボコに打ちのめされる日々。
血反吐を吐くまで木刀で素振りをさせられ、からの打ち合いで子ども相手に容赦なく斬撃を浴びられ、それが気絶するまで延々と繰り返される。
「死ぬ……」
俺はヘトヘトだった。前世は
「もう10歳だろう!いい加減私に1本入れたらどうだ!」
そして実はまだ、俺は親父に1本も斬撃を入れられてない。親父の木刀は速すぎてもはや目で追えないしそれに追いつく体がまだ10歳じゃ出来あがってない。
令和の世ならまだ小学生やってる歳で思春期突入するか否かの時期。もはやこの幼さでやることでは無い。
「ありゃりゃ…また息子さんぶちのめされてるよ…」
「剛さん相変わらずだなぁ…」
「あの人だけ生きてる世界違うもんなぁ…」
道場仲間からは同情の声が聞こえる。
俺としては親父とばかりではなく、道場に通う他の人と剣の打ち合いをしてみたいという意欲も湧く。
が、親父はそれを許さない。曰く、俺の相手は親父1人で充分だとのこと。それは建前で本当は後継ぎ息子だから厳しくしてるんじゃないかと訊ねたら全身痣だらけにされた。解せぬ。
「があ゙あ゙!!!」
にしても親父は強すぎた。
本来、剣を扱う人間であればそれなりに剣筋というものはある。分かりやすく言うと、流派のような人には人の剣術があって癖みたいなものがあるわけだ。
しかし親父は違った。幾つもの剣技を身につけていて、それをその場その場の適材適所で都度切り替えているような対応力があり、まるでいつも違う人間が俺の前に立ちはだかっているような感覚に陥った。
「朱雨、まだだ」
「もう勘弁して!!」
そして今日も打ち合いは終わらない。俺に逃げるという選択肢はなく、後継ぎという次代の道場主という責務だけが今世の俺を動かしていた。
ところで話は変わるが、親父は剣を持つ度に変な呼吸をしているような感覚がするのは気のせいかな。というか耳を澄ますと分かるが、親父は寝る時も食事をとる時も四六時中ずっと変な呼吸をしている気がする。そしてそれが親父の化け物さを形作る原動力であるような、そんな感じがする。
「…まだ……やれる!」
「そうだ、その意気だ」
俺は再び木刀を握り直した。だって俺にはそれしかないから。
…それに、不思議とこの刀を握る感覚が5年間も毎日修行してるのにいつも懐かしくてどこか悲しくて、何故か怒っていて、そんな気がしてならないから。
時が経つのは早い。あっという間に2年の月日が流れた。2年も経つと、俺の体にも徐々に変化が訪れる。
「…見える」
「何!」
親父の切先は見てからでは躱すことは出来ない。ならば動きを読んで動けばいい。そう意識すること2年、12歳になる頃には心身両方の成長によって自分の思った通りに体が動かせるようになった。
「やるな朱雨」
俺は2年の月日を経て、親父の剣を捌けるようになった。あくまで捌けるだけで、反撃に出るまでは至れないのだが、道場内の人たちの反応と一方的にボコボコにされる日々を考えれば確実に大きな進歩。
「ならば朱雨…もっと行くぞ!」
「なっ!」
この日、親父は今までで1番素早く力の篭もった斬撃を繰り出してきた。まさかの今まで全部手を抜いてたのかよと思いつつ、俺は改めて木刀を握る力を強める。
(!)
「…なんだこれ?」
急に、親父の筋肉の動きが見えた。体内が透けたというか、一瞬世界が全て透明に見えたのだ。ほんの一瞬だけだったけど、世界に取り残されたような無我の境地に至る感覚が俺を襲った。
「…ぐっ!」
「…見事だ」
今日この日、俺は初めて一太刀も食らわずに親父の剣を全て躱した。それを見ていた道場の他の人たちは、初めての偉業に皆俺に拍手を送っている。
が、俺にはそれも聞こえないぐらいに気になった点がある。
(気のせい…?)
いやまさかとは思った。透き通る世界とか完全にあの鬼狩りの作品だけど、転生先が江戸時代というのは原作から掛け離れてるし、もしも転生の神様がいたのなら大正時代に転生させるべきだろう。こんな時代に転生して某鬼狩り組織所属とか、原作キャラが不在だし、お前何のために転生したんやってなる。
「…続けて私に打ち込んでみろ」
親父が再び木刀を強く握る。
「よし」
俺も木刀を構えて、心を落ち着かせるために深く深呼吸をした。
___その瞬間、俺にかつてない力が漲った。
「…よくやった」
「…………」
どういうわけか、俺はあっという間に親父から1本を奪った。今までの数年は何だったのかと思わせるほどの呆気なさだった。
(思えばあの深呼吸をしたあと…)
今、かつてないほどに体が軽い。今なら風よりも速く動けるのではないかというぐらいだ。
あの深呼吸の時、全身に血液を巡らせるイメージをうかべたら、その瞬間に今までの苦労が嘘かのように、親父の動きに追いついてしまった。目だけでしか追えなかった、あの親父の動きにだ。
この感覚は、前世においては決して味わうことのなかった、人として絶対に習得の出来なかったもの。
「…まさかね」
俺はボソッと呟いた。
まさかとは思うが、特徴を鑑みると某あの作品におけるものと一致する。前世において誰かから勧められて読んだあの作品だ。
「朱雨、よくやった…」
満足そうな表情を浮かべている親父に気づかないほどその思考がずっと脳内で渦巻き、もはや周囲の歓声や親父のことなど眼中になかった。
(まさかね………)
透き通る世界と全集中の呼吸、今思えばこれらの要素だけで、この世界がフィクションの世界であることに、もっと早く確信を抱くべきだった。
________________
親父に1本をとったあの日から、ようやく俺は道場の他の門下生たちとも打ち合いする許可が降りるようになった。
____そして親父を下して以降、晴れて様々な人と手合わせをするようになったわけだが、どういうわけか阿鼻叫喚の図が目の前には広がっていた。
「もう…勘弁してください…」
「剛さんですら化け物だったのにそれを越えられちゃあなぁ…」
親父の剣に追いつこうと必死に毎日努めていたのだが、その結果がこれだよ。
まさかの門下生100人抜き。親父が圧倒的にチート過ぎたのか、モブ的な他の人たちがめちゃくちゃ弱く感じちゃう。
(本音を言うと親父相手はキツいから他の人が良かったんだけどね…)
親父が強すぎることは前々から分かってた。だから、他の人とやって手を抜こうかなーなんてやってたら、みんなあっという間にやられちゃう。多分、半分の力さえこの人たち相手には必要ないんじゃないかな。
ぶっちゃけ、親父1人を相手するより100人抜きやった方が楽なレベル。
(みんな、すまん)
どうやら、俺もいつの間にか親父と同じ、チートの仲間入りを果たしてしまったようだ。
ところで、前世でただの大学生として日々を送ってたであろう俺がこんな過酷な毎日に耐えられるのか疑問に思う人もいるだろう。それが確かに大変でこそあったけど充実はしていたような気はするし必然と慣れてきてしまったんだ。
(まあ、ゲームとかの娯楽もないし、これしかやることが無いだけなんだよね)
もちろんネットもなく、家には剣術関係のものしか置いてない。そうなると必然的に剣しかやるものが無いわけで、娯楽とは無縁の生活にも数年で段々と慣れてきてしまう。
え?たまには息抜きしたりサボってもいいだろって?
それがそうにもいかないんだよなぁ。
「…流石は私の息子だ」
1本を取れたとはいえ、打ち合う時は常に気を張ってなきゃいけないチート級の人が、ここで俺をずっと見ているんだ。
(逃げられねぇ…)
加えて段々と武道家として剣術で強くなりたいという欲が俺の中で疼き始める。職人が常に自らの分野で至高の作品を残すことを考えているように、俺も剣で高みを目指そうって、そう思うようになった。
それに、不思議と剣が俺の体に馴染んでるような、そんな気がするから。
「もう無理…」
「段々と剛さんに似てきた…」
「この親子強すぎるだろ」
「1人剛さんが増えた感じだよ…」
一方、道場に通う門下生たちは数年前の俺みたいに音を上げていた。
「…さて」
そんなことは知ったこっちゃないと俺は木刀を構える。
親父に見張られている以上、俺もここで終了とか手を抜くような発言はできないし、みんなにはここで犠牲になってもらう他ない。
「…まだいける、朱雨」
何せ親父がそんなことをボソッと呟いて小声の威圧をかけてくるんだよ。
言葉数こそ足りないけど、ようは「まさかここで終わりだなんて言わないよな?徹底的にやっちまえ」的な圧力を掛けられているんだ。
「…やるぞ」
そんな中でも、皆はしっかりと剣を握って立ち向かってくる。その強さを追い求める心意気、しっかりとしていて俺は嫌いじゃない。
2度目の人生、剣を片手にこの道場の門下生たちと共に歩んでいこうじゃないか。
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俺はとある剣術道場に通う極普通の武士。幕府の統括によって戦乱は消え、下級武士でしかない俺はたまに護衛の仕事を貰うぐらいしかやることがない。よって結構暇な時間が多く、その暇な時間は道場に赴いて師範や同じ門下の仲間たちと自分の剣技を磨くこととしている。
もう、通って何年になるか…。
恐らく10年近くは通っている。
俺の通う道場は、百姓から武士まで幅広い身分の人達がおり、道場主である剛さんという人が運営している100人近くの大所帯道場だ。
…まあ、その道場はちょっとアレでな。
本当、見た目や中身はマジで普通の道場だ。自身の剣技を磨くために数多くの人が通っている、極普通の道場なんだ。
…1人。いや、2人を除いて。
「まだいけるぞ、朱雨」
「勘弁してくれ…」
この道場の主である剛さん。と、その一人息子の朱雨って子。
ハッキリ言って、この親子は化け物である。
まず道場主の剛さんなんだが、この人がヤバい。
「ほらどうした立て」
「あ゙あ゙あ゙!!!!」
5歳になったばかりの息子に容赦なく剣を叩き込む鬼畜さっぷりである。しかも一切の疲れを見せないから、息子が気絶してる合間に引き続き俺たちをぶちのめしてきたりする。
…多分、この人には束になってかかってもかなわないんじゃないかと思う。剣が速すぎるんだよ。
一方、息子の方。名を朱雨。
俺的には、こっちの方が将来性を秘めてる分、剛さんより化け物の可能性があるんじゃないかと思う。
「ふんっ!」
「いいぞ!その調子だ!私にどんどん打ち込んでこい!」
そしてその予想は大当たりし、案の定12歳になる頃には、剛さんの剣を見切って避けるようになり、ほぼ互角に立ち回るようになった。
まだ12歳だぞ?12歳だなんてまだ金の卵。体格やら体力やら武士としての最盛期なんてまだ当然ながら訪れちゃいない。なのに、この時点で恐らく俺らより圧倒的に強い。
(多分、既に朱雨は道場で最強なんじゃないか)
その予想通り、朱雨は剛さん相手に1本取って以降は俺たちの相手をするようになり、その実力も身をもって知ることになった。
「もう…勘弁してください…」
剛さんが1人増えた。
いや、剛さんを超える化け物が1人新しく追加されたんだ。
「…やるぞ」
剛さんと違って朱雨は言葉数も少ないため、何を考えてるのか分からなく、それもまた俺たちの恐怖心を煽るのであった。
「…続きだ」
いやほんと、勘弁してください。朱雨くん、君まだ12歳でしょ。俺らの自信を打ち砕きに来ないで。
________________
私は剛。先代より継いだこの道場を万全のものとするために、道場主として毎日剣技に明け暮れる日々を送っている。
そんな私には、朱雨という一人息子がいる。5歳の頃から剣を教え、今日に至るまで毎日徹底的に剣を叩き込んでいる。
「どうした!そんなんではうちの家督は継がせぬぞ!」
仕方の無い事なのだが、私は親父として、そして未来の道場主の師範として、息子の朱雨には厳しく剣を教えている。
「があ゙あ゙!!」
当然ながら、5歳という小さく幼い体では、私に着いてくることは不可能。
加えて、私は呼吸法というものを扱っている。常に多くの酸素を取り込む意識をし、肺を大きくすることを念頭に剣と向き合う。こうして私は常に全身に力を漲らせていた。
もちろん、こんなことを5歳の子どもにするのは過酷なことこの上ない。
だが、良心を痛めながらも厳しい師範として毎日息子を木刀で痛めつける。
__私には、あまり先がないからな。
「…まだいける、朱雨」
そうして厳しい師範として息子を10年間も鍛えた。息子は、10年間私の打ち込みに耐え続け、毎日文句を言うことなく木刀を握った。
____間違いない。このような強靭な精神を子どもながらに持ち合わせる朱雨であれば、きっとこの先安泰だ。
やがて、息子は私に成長を見せ始める。
「…見える」
息子はどうも昔から私の剣先が見えていた模様。それで10歳のある時から、私の木刀を意識して躱すようになった。
(全集中の呼吸…まさか身につけられたとは…)
これには私も驚愕した。何も情報を与えずして、息子は自ら全集中の呼吸を習得したのだ。
____そして、その日はやってきた。
「1本!」
息子は私に追いついた。
2年の月日で、12という若い金の卵の歳で、私を超えた。
(…これなら大丈夫だな)
私は息子を自分とだけ相対させるのをやめた。これから、お前は未来の道場主として、道場に通う者達を導く立場となろう。
そうして、朱雨を早速道場の者たちに集団で相手させてみた。
「もう…勘弁してください…」
「剛さんですら化け物だったのにそれを越えられちゃあなぁ…」
息子は立派に育っていた。門下生たちを薙ぎ倒すその様は私の後継とするには充分な素養。
文句なしに、私は息子の剣技と成長に見惚れていた。
(全集中の呼吸も、
加えて常中まで発動しているときた。これには将来が楽しみで今から仕方ない。
息子は口数少なく、あまり多くを語らないが、その頭の中では様々な思考を巡らせているのだろう。
____今後のことや、戦闘のことなど、いつも剣のことを考えているに違いない。
実際、家に帰っても剣のことしか考えてないようでそれ以外に何も朱雨は求めてこない。
(何か、息抜きにすることは無いのか…?)
そう思って、常に朱雨から目を離さずに、何か息子に欲しいものやしたいことがないかと、目で訴えてみたことがある。
しかし、朱雨は木刀しか握らない。私が視線を向ければ、朱雨は常に剣のことを考えているのだ。
「…流石は私の息子だ」
息子は教える立場としてもその位置を確立しつつある。
「もう無理…」
「段々と剛さんに似てきた…」
「この親子強すぎるだろ」
「1人剛さんが増えた感じだよ…」
…昔の朱雨も似たようなことを言っていた。が、今は言わせる立場。
朱雨は私に追いついたのだ。そして段々と私に似てきた。これには喜びしかない。
「…さて、続きだ」
あぁ、剣を振るうその姿は、まだ最盛期を迎えてないことから考えても若さに溢れていて素晴らしい。
もう、容赦のなさでいっても、お前は立派な私の後継ぎだ。
「…まだいける、朱雨」
自然と、私はそう呟いた。
「…やるぞ」
それに反応するかのように、朱雨は再度木刀を構え直す。
「…続きだ」
息子は容赦なく門下たち相手に木刀を振るう。
(もう、私がお前に教えることは無い)
私は今ならそう自信を持って言えた。もう、朱雨の成長から目を離せなくなっていた。
(とはいえ…)
5歳から今日に至るまでずっと毎日木刀を握らせてきた。
明後日辺りに休みを入れよう。きっと、朱雨ならその休みを有効活用出来るはずだ。
鬼側のストーリーって無いよなぁって思って書きました。
将来的には朱雨も悪鬼サイド堕ちの予定。