剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
もうストック切れます…。
「勝敗の基準は、相手に敗北を認めさせる。あるいは殺すか頭部を吹き飛ばすだ。良いな?」
「「はい!」」
「では始めろ」
そうして、入れ替わりの血戦、記念すべき第1戦が幕を開けた。
まずは、相手のお手並み拝見と行こう。
【血鬼術 両腕銃】
相手は両手を火縄銃に変形させた。
「くらいやがれ!」
両手から一斉に俺を目掛けて一直線の銃撃が放たれる。
「この程度…」
躱せない攻撃ではないと、俺は跳躍で真上に飛び上がる。
「操作!」
「何!?」
銃弾は曲線を描いて俺を追尾してくる。
「チィ」
俺はその銃弾をモロにくらってしまう。とはいえ、鬼である以上すぐに損傷部分は元に戻る。
「どうだ!俺の追尾弾は!!」
「この程度で喜べるとはおめでたい奴だな」
とはいえその威力は中々。戦国の世の火縄銃を模したものとはいえ、その威力は十二鬼月でない雑魚鬼であれば、当たり所によっちゃ体を粉々に砕かれていた可能性もある。
「続けていくぜ!」
相手は自身の頭部を大砲に変化させ、更には両手を本来の腕に戻した後に、その手には長さが人体の4倍ほどある尾張足軽風の超長槍を顕現した。
【血鬼術 頭砲両手槍】
奴は頭から砲弾を連続で撃ち出し、両手の長槍をこちらに向かって連続で投げてくる。
「オラオラァ!どうした上弦の伍ォ!?」
「コイツは…」
大砲と投槍を必死に躱し続ける。もはや大砲に至っては連射性能から威力までが
「上弦の伍なんてのはその程度かぁ!?」
「先に血鬼術ひけらかしといてデカい口叩いてんじゃねえ…」
相手は次々と砲弾を撃ち、槍を忙しなく投げてくる。それを躱そうとするも、やはりこちらも火縄銃と同じように追尾機能がついているらしく、躱しても躱しても消えることなく俺を延々と追ってくる。
「まだまだァ!」
その中で、砲弾と槍は尽きることなく奴の元から撃ち出されてくる。俺を追う砲と槍の弾幕は一向に増していくばかりで消える気配がない。
(なるほど、弾や武器の投擲系の在庫はほぼ無限か)
デカい口叩くだけあって無駄に骨の折れる相手だな。
乱射に加えて操作が可能とは厄介この上ない血鬼術。ここまで執拗に弾幕を張られると、念派が弾や槍に跳ね返りまくるために念力の血鬼術も碌に行えない。瞬間移動もしたところで、移動先の安全が確保されてるかの確証が持てない。特に、瞬間移動の血鬼術は飛ぶ度に1秒のタイムラグを要する。たったの1秒、そう思われがちだが、ここは日常生活とは異なる戦闘の最中。1秒だって充分長い。
(…となれば)
俺は刀を抜き、呼吸を整える。
恐らくなのだが、俺の予想ではこの攻撃を防ぐ手段はこれしかないと思う。
【星の呼吸 弐ノ型 超新星】
力を込めた横薙ぎの斬撃を追尾してきた砲弾と槍に打ち当てる。
「オラァ!!」
その瞬間、星の最期の瞬間かのように眩い光が辺りを覆い、斬られた槍と弾が大爆発を起こし、上弦の陸を吹き飛ばした。
(脱出!)
瞬時に瞬間移動の血鬼術を使って、爆心地から爆発の届かない箇所まで移動し、自身は爆発に巻き込まれることなく相手だけを巻き込む型だ。
「てめぇ!!よくもォ!!」
やはり、俺の予想は的中した。飛来していた追尾する弾や槍は、攻撃など何かしらの衝撃を受けると跡形もなく消滅する。さっき俺の体をぶち抜いた銃弾が体内に残らず消滅していたからまさかとは思ったが、やはり突破口はあった。
ただ、俺が奴の銃弾くらって未だ動けるのと同じように、この型で鬼が簡単に死ぬとは思ってない。奴は爆発を喰らって尚、俺に向かって大声で叫べるほどピンピンしていた。あくまでこれは致死技ではなく、敵を消耗させたり遠隔攻撃を防いだりすることに焦点を当てた虚仮威しの型でしかないんだ。
とにかく、奴の頸を落とすか負けを認めさせるまでこの入れ替わりの血戦に終わりはない。
【星の呼吸 伍ノ型 流星斬り】
大気圏突入後の炎を纏った流星のような斬撃を振り下ろす。越後国で出会った炎柱の使う炎の呼吸に近い型だ。
とはいえ、これは普通にヒラリと身を捻ることで奴に掠りもせず躱されてしまった。仮にも上弦の陸だし、鬼狩りとも沢山相対してるだろう。そりゃ呼吸や刀は見慣れてるか。
「いつも遅刻してくる癖に!無駄に反撃してくるんじゃねえ!」
「うるせえ!こっちはいつも鳴女さんが中々見つけてくれなくて困ってるんだよ!」
どうやら、この血鬼術がどれだけ日常において便利かコイツはよく分かってない。日陰から日陰に点々と移動することで、どれだけ昼間の活動が可能になって無惨様に貢献出来るかなぞ、お前には分からないだろうな。
…確かに、そのせいで鳴女さんが毎度俺を探すのに苦労してるのは否めないけど。
「テメェの影が薄いだけだろ!」
「お前ほど日常生活に使えないヘボい脳筋血鬼術じゃなくて悪かったな!」
「おま…言わせておけばァ!」
奴は両手両足及び頭部から肩まで全身を火縄銃に変化させる。
【血鬼術 全身武装乱れ打ち】
「さっさと負けを認めてしまえ!!」
無数の追尾する銃弾がこちら目掛けて飛来してくる。
(こんな小物…!!)
俺としてはこんな雑魚い奴、本来であれば敵でもないほどの小物でしかない。しかし、連発に加えて追尾が可能という奴の性質上、とにかく無駄に俺の血鬼術と相性が悪かった。
そしてその相性の悪さは、
【星の呼吸 陸ノ型 星の律動】
跳躍の後、太陽の周囲を廻る惑星及びその周囲を廻る衛星の公転軌道に見立てた斬撃が360度球体状に広がり、迫る銃弾を次々と誘爆させていく。
「小癪なァ!!」
最初の銃撃以外が中々決まらず、上弦の陸はイライラし始めていた。
「位が俺より1つ下なだけでこの程度か?上弦の鬼ならもっと俺を楽しませてみろ!!」
「…な………」
指をクイクイとし、完全に挑発ムードに入る。奴はイライラが絶頂に達したのか、その場で固まった。
「…貴様なんぞにィ!!!」
完全に怒り心頭の上弦の陸は、全身の火縄銃からの連射頻度を増やしていく。その配分、火縄銃の10分の1という超絶的連射力。擬音語で表すならダダダダダダダダという音速に迫る速度。
【星の呼吸 漆ノ型 天ノ川】
奴の元から放たれた銃弾全てを星の斬撃に吸い寄せ、そのまま水の呼吸のごとく自由自在に流れる星屑を相手に向けて跳ね返す。
「こんなもの!対策してないとでも思ったか!」
奴は全身を火縄銃から鬼の等身大の歩盾に変化させ、斬撃と銃弾を全て受け止めた。
【血鬼術 全身凝固盾】
相当固いのか、奴の体にはこちらの刀が一切入っていかない。こちらが仕掛けているにも関わらず、逆に押し返されそうな勢いに
「…でもずっと防御してるだけじゃ勝負にならないぞ?」
「馬鹿野郎!そんなことは分かってんだよ!!」
【血鬼術 片腕銃】
奴が全身を盾にして身を守る中、片腕だけを小さな火縄銃へと変化させ、至近ゼロ距離から俺に向けて弾を発射してくる。
「…この至近攻撃を食らったやつは皆鬼だろうと、あまりの痛みに悲鳴をあげて白旗降って来たぜ!お前もさっさと砕けちまいなァ!!」
そうか、そんな痛みを伴う攻撃技なんだ。
でも、それって
「喰らいやがれ!」
そうして奴の放った銃弾が、俺の体を完全に、
「は?」
奴が一瞬キョトンとしてしまうのも無理はない。超至近距離で発射して、明らかに命中以外有り得ない筈の弾が、
____そこに姿がある筈の、俺の体をすり抜けたのだから。
「え?」
奴は盾化を解除して通常の姿に戻ると、何処に行ったんだと言わんばかりに目をゴシゴシと擦った。残念だが、そこにはもう俺はいない。
「…はぁ、疲れた」
上弦の陸の頸が、地面にポトンと音を立てて落ちた。
【星の呼吸 肆ノ型 彗星の尾】
【血鬼術
奴が目に捉えていた俺の姿は、この40年で俺が新たに開花させた血鬼術で見せた幻のもの。既に俺が漆ノ型で攻撃を仕掛けた時には、奴はとっくに幻の渦中にいた。
そして肆ノ型である彗星の尾は、太陽によって分裂崩壊して尾を引くようになった彗星の如く、幻だが目にすることが出来る斬撃と、目に見えぬ実際の刀が通過した斬撃の2つに途中で分かれる。躱したつもりでも、防いだつもりでも、時には全く意味の無いことだってある。
「…な、何故だァ…!!」
俺が持ってるのは、隊士から奪った日輪刀だから、斬られた鬼は当然消滅する。上弦の陸は悔しさで音を上げるが、向こうから挑んできた以上自業自得みたいなものだ。
「…こんな…ことで……」
こんなもの視覚情報を偽るだけだから、感覚神経が人間より圧倒的に敏感な鬼という種族であれば、本来余裕で躱せる。それなのに奴がこうして頸を斬られている理由、そんなもの1つしかない。
「…安い挑発に乗ったお前の負けだ」
既に、お前は俺の挑発に乗った時点で敗北していた。こんな容易いことにも気づけないほど我を忘れていたのか愚か者め。
「……バカ……な…」
俺は奴が完全に消滅する最後の瞬間を見届けると、刀を鞘に仕舞い込んだ。
(そういえば、勢い余って上弦の陸ぶっ潰しちゃったけどどうしようか)
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入れ替わりの血戦。即ち、『十二鬼月に数えられたからといって終わりではない』と仰られた無惨様のお言葉を体現するかのような、実力主義を念頭に置いた新たな試み。
私が人として生きていた戦国の世でいう、力ある者が上に行く下克上制度を、無惨様は十二鬼月に導入なさった。
「勝敗の基準は、相手に敗北を認めさせる。あるいは殺すか頭部を吹き飛ばすだ。良いな?」
「「はい!」」
「では始めろ」
その初の体験者となった一方が、45年ほど前に、私が強き鬼の器として推薦した、現在は上弦の伍の称号を持つ朱雨だ。
半球状の透明な囲いに覆われた広い空間の中で、入れ替わりの血戦は行われる。血戦に参加しない他の十二鬼月の者達は、その外部より戦いの行く末を静かに見守るよう無惨様より伺っている。無惨様自身も、2人の動きをじっくりとご覧になっている。
(…2人は何を喋っているのだ?)
この入れ替わりの血戦場の外部と内部はそれぞれ独立した空間らしく、内部で2人が激しく火花を散らしていようと、激しい罵り合いをしていようと、こちらには全く音が届かない。中の様子は眺められようとも、会話や戦闘による音は一切耳にすることが出来ない。
(刀の扱いが上達しているな)
ただ、この目で見ただけで分かるのは、朱雨の武士としての目覚しい成長だった。上弦の鬼の名に恥じぬ、40年の時を経て洗練された剣技。
ただ朱雨の相手は、半永久的に武器と銃弾を放ち、加えてその放った銃弾や武具が追尾してくるといった、もはや剣士の天敵技の嵐。これに朱雨がどう対応していくのか、同じ呼吸使いの鬼剣士として、大変目を見張るものがある。
すると、早速朱雨が行動に出た。
刀を抜いた朱雨は、彼独特の呼吸を纏って上弦の陸が放った槍と銃弾に横薙ぎの斬撃を当てる。その瞬間、その場にいる全員が目を覆う程の巨大な光と共に爆発が発生。朱雨を追尾していた全ての武器が消え去ると共に、上弦の陸にも大きな損害を与える。一方で朱雨は瞬間移動で安全地帯まで移動したらしく、損傷はなし。
これには十二鬼月一同が皆驚き、上弦の弐から下弦の陸までがザワつき始める。
その後も朱雨独特の呼吸が上弦の陸に放たれたり、まあこれは躱されていたが。
次いで、上弦の陸は全身を銃器に変化して、朱雨に向けて数多の追尾弾を放つ。
先程よりも弾数が圧倒的に多いが、朱雨は慌てることなく呼吸を整え、即座に跳躍の後斬撃で、周囲を飛来する銃弾を誘爆させてゆく。
やがて朱雨は勢いづき、遂に上弦の陸を挑発し始めた。何をしているんだと思えば、血戦場の外部からでも分かる、急に朱雨が纏う気配に違和感を感じ始めた。
やがて上弦の陸は、挑発によって朱雨相手に放つ弾数が増し、朱雨の目の前は銃弾だらけとなった。
この状況下で、朱雨はどう動くのかと思った矢先、やはり朱雨の纏っている雰囲気に大きな違和感があるような気がした。
目にする限り変化などない。彼は水の呼吸のような型で銃弾を上弦の陸に跳ね返す。
すると、その反撃を狙っていたかのように上弦の陸は形態を変え、人間程の大きさの歩兵盾を模した物に姿形を変える。
(…やはり、違和感を感じる)
何かがおかしい。盾に姿を変えた上弦の陸と全力でぶつかっているように見えて、私が今目にしている朱雨には生気や覇気が感じられない。透き通る世界で見ても、彼はまるで空洞なのでは無いかと思ってしまった。
そしてそのすぐ後、私が感じた違和感はやはり間違っていなかったのだと思い知らされる。
(…透けた?)
上弦の陸が片腕を変形させ至近距離で朱雨に向けて放った弾が、そこに何も無かったかのようにすり抜けた。
やがて、1度瞬きをした次の瞬間に、上弦の陸の頸から上は地面に落ちていた。
「…!」
再び周囲がザワつく。私たちは何か幻でも見ていたのではないかと、この血戦場の外部からではそうとしか判断がつかなかった。
ただ、上弦の陸が何かを叫びながら消滅していったので、朱雨が勝利したのは誰の目にも明白だった。
「…決まったな。朱雨を上弦の伍として存続。上弦の陸は……まあ上弦に相応しくない雑魚を弾けたから良しとしよう。新たに下弦の壱を上弦の陸に昇格させ、それ以下の数字を1つ上げて下弦の陸に新しい者を補充する」
無惨様の一声をもって、入れ替わりの血戦は決着となった。
私の隣で先程まで呑気に座っていた上弦の弐,参,肆の有象無象たちが、朱雨の戦闘を見て、今はかなり震え上がっている。今まで十二鬼月は先にその座に着いて以降は鬼狩りに狩られる以外では数字の変動なしの年功序列式だったのだが、一気に実力主義型にその傾向を変えたことに気づき、彼らも自らの立場が危うくなると察したのだろう。
もしかすると、朱雨程の実力者なら上弦の弐…いや、最悪私を超えて上弦の壱の座についてくる可能性もある。
(…これは、すぐにでも朱雨の実力を量る必要が出てきたな)
私は無惨様に即無限城での鍛錬を打診し、明日以降であれば3日ほど使用可能であることを確認。
(…すぐにでも、朱雨の実力を確かめたい)
会う度に私に驚きを齎す朱雨。明日以降、その実力を拝見するとしようではないか。
ー江戸コソコソ噂話ー
十二鬼月の数字は、この他に無惨様の采配次第で割と変わるようになりましたとさ。早くも十二鬼月からは年功序列式が取り除かれた模様。
コイツの方が実力上だと判断されたら、速攻で数字入れ替えが起こる模様。結果次第ではちゃんと評価してくれる優しい無惨様。