剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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水曜日に投稿し忘れてしまいました。
次回投稿は日曜日予定です。

それと、アンケートありがとうございます。
結果の方なのですが、週一で文字数多め希望の方が若干優勢でしたので、週一投稿に切り替えるかもしれません。その場合は日曜日投稿とさせていただきます。


24話 新たなる任務

 

「鬼人族の郷…ですか?」

「そうだ」

 

あれから60年の月日が流れ、順調に鬼としての力を蓄えていたところ、無惨様より直々に招集を受けた。

 

上弦の弐(・・・・)の数字を持つお前であれば集落1つ潰すぐらい問題ないだろう?」

「はい、暴れてみせましょう」

「…良い返事だ」

 

鬼人族の郷、この度の任務はそこの壊滅だ。無惨様直々の任務はかなり久々の事だ。期待に応えなくては。

 

「折角だ。下弦の壱も連れていくといい」

「…か、下弦の壱ですか」

「あぁ、お前にとっても親しい仲だろう?」

 

下弦の壱、名前を猗窩座という。

何を隠そう、60年前のあの日、共に鬼として至高の領域を目指そうと誓った友、狛治のことだ。

だが、彼は俺と違って鬼になったことで人の頃の記憶が全て抜け落ちてしまったらしく、狛治という自身の名前すら覚えていなかった。そこで無惨様が狛治に新しく名付けた名前が、猗窩座なのだ。

 

記憶もなくなって狛治ではなく猗窩座となった彼だが、頭の奥底には俺と友人だったあの頃の残滓があるのか、猗窩座となった後も友好的な関係は続いている。同じ任務に着くことも多い。

 

「では、頼んだぞ…」

「はい、お任せを」

 

そうして無惨様は無限城の外へと出ていった。

 

 

 

「俺もついて行っていいか?」

 

そうして無惨様がいなくなった隙を突くかのように現れたのは、頭から血を被ったような金髪の大柄な鬼。何故コイツが無限城にいるのかはさておき、俺はコイツが不思議と気に食わない。

 

「…童磨」

「やぁやぁ朱雨さん」

 

奴の名は童磨。目に刻まれている数字は上弦の陸。だが、この数字に上がっていくまでの過程と速度が、コイツに至ってはおかしいとしか言いようがないのだ。

 

まず鬼になって1年で十二鬼月に加入。これだけでも充分なぐらいイカれてるが、これに加えて数年で上弦の鬼入りするという歴代最速であろう出世速度。

その原因は、コイツの食生活にある。まずコイツ、鬼にしては珍しく人間社会に溶け込んでいて、表の顔は万世極楽教という宗教の教祖をしている。

んで、コイツは基本的に信者の人間を食ってるんだが、どういう訳か絶対に女しか食べない。女は子ども育てる栄養があるから鬼にとっては強くなるための近道であることは確かなのだが、だからといって1年足らずで十二鬼月に名を連ねることが出来るのか。

 

…と思ったら俺も1年半で下弦の陸になってた。上弦にこそ数年では入れなかったが。

 

「んで、俺も行っていいか?」

「…お前、無惨様に行けと頼まれたのかよ?」

「いや言われてない。だが、それぐらい良いでは無いか?」

 

このままだと埒が明かないな。宗教の教祖やってるって時点でコイツはとにかく隣にいて欲しくないんだ。

 

___記憶の奥底に…何か宗教に対する嫌悪がある気がするから…。

 

「なあなあ? いいだろう?」

「ダメだと言っているだろう!」

 

いい加減ムカついて来たので、俺は刀を抜いて奴の両腕を斬り落とした。

 

「うぉ、何するんだい?」

「…無惨様はお前には頼んでいない。それだけだ」

「あははは、付き合い悪いなぁ…」

「…あーもう煩い。お前は俺より数字下なんだから、嫌なら入れ替わりの血戦挑むなりしてから俺と一緒してくれよ」

「まあ、それもそうだね〜」

 

そう言うと奴は俺からようやく離れた。本当にコイツの相容れなさといい、宗教やってる事といい、俺の神経を逆撫でる迷惑な奴が上弦の陸に来てしまったもんだよ。

今までの奴らは絡みが無かっただけまだ可愛い方だったのかもな。

 

「鳴女さん、猗窩座のいるところまで飛ばしてくれ」

「…はい」

 

そうして俺は琵琶の音と共に出来た障子扉を潜って猗窩座の元まで向かった。

 

「猗窩座、久々の共同任務だ」

 

________________

 

 

「…なるほど、鬼人族の郷ねぇ」

 

猗窩座の拠点。川越。ではなく、武蔵国横浜村の海から離れた内地に存在する。実はしょっちゅう通ってる。

 

「幸いにもある程度情報は無惨様より頂いている。探索と撃滅なら鬼狩り共を全て壊滅させるより容易いことだろうと、無惨様よりお達しがあった」

 

鬼人族の郷。その歴史は意外にも古いという。無惨様曰く、その郷の創設は200年以上昔の戦国時代。無惨様の支配を逃れた1人の男鬼が始まりという。

 

まず、本来鬼というのは生殖機能を持たないのだが、どういう訳かこの鬼は、鬼でありながら生殖機能を保持していたのだ。その鬼はあろうことか人間の女と恋に落ち、子孫を残した。その子孫たちの集落が鬼人族の郷だという。

 

無惨様にとっても、忌々しい人間と血を分けた半端な鬼など、あってはならない目の上のたんこぶ的存在だった。しかし、鬼人族は鬼狩りにも鬼側にも味方しない云わば中立的存在であり、尚且つ所在も不明という面倒さ故に、しばしその存在を敢えて見逃していたとのこと。

 

ところが先日、下弦の肆がある鬼狩りと遭遇。戦闘となったのだが、その健闘虚しく下弦の肆はその鬼狩り相手に敗れ散った。

俄には信じ難いが、その鬼狩りは戦闘の途中で下弦の肆に腕を飛ばされるも、まるで鬼のように再生したという。

本来人間であれば怪我はすぐ治らないし、切れた手足は再生しない。

鬼であれば無惨様が全て把握している筈。なのにソイツは無惨様の支配の範疇にいなかった。

 

そう、それはつまり、今まで中立を保っていた筈の鬼人族が、鬼狩り側に靡き始めたことを意味していた。

 

かつて鬼人族は、先祖が人であり鬼だったことから同族殺しを嫌悪し、今まで両陣営に加担してなかったと思われたのだが、時が経ち段々人との混血が進む中でその均衡は遂に破られた。

しかも、鬼の血が混ざったその強靭な肉体を生かし、既に柱まで登り詰めた者もいるらしい。

 

____今回俺に与えられた任務。それは、これ以上鬼狩りに加担する鬼人族を生み出さぬよう、鬼人族の郷を見つけ出して襲撃し、一族諸共滅ぼすことだ。

 

「…なんだ、郷を1つ見つけるぐらい、朱雨の血鬼術(・・・)なら簡単なことじゃないのか?」

「まあ、確かにそうだが…」

 

場所も分からない郷を探索するのがどれほどの労力か分かってるのか猗窩座は。

まあ、出来ないことでは無いんだけども。ただ、この血鬼術には大きな問題点があるため、あちこちで頻繁に使用する訳にはいかなかったりする。

ただ、今なら大丈夫か…。

 

「…俺が周り見とく。だから安心して使うといい」

「分かった、ありがとう」

 

そうして俺は、ある血鬼術を用いる。

 

 

【血鬼術 遠隔透視(クレヤボヤンス)

 

 

遠隔透視。意識を研ぎ澄ますことで、この場にいながら遠くの地形を偵察することが出来る。ただ、一瞬で遠くに視界を送れる訳ではなく、視界を念力で操っているようなものなので、遠くへ視界を送るにはそれ相応の時間が必要だったりする。

 

また、この血鬼術の使用中は、全意識を体外に飛ばす、所謂幽体離脱と同じようなものなので、未来予知の血鬼術と同じく安全な場所でないと使用するのは危険。それ故に俺がこの血鬼術を使用するのは、絶対的な信頼を置いている人物が護衛に付いている時のみとなる。

 

 

「…それじゃ、暫く周囲を頼む」

「任された」

 

そうして猗窩座に護衛を頼み、俺は意識を体外へと飛び立たせる。

 

(さて、探すか)

 

日本中を探すとなると、随分骨の折れる仕事になりそうだ。果たして何日かかるかな。

 

 

________________

 

 

 

俺は猗窩座。下弦の壱の鬼。50年ほど前に鬼となり、40年前ほどに十二鬼月の下弦の陸を拝命。また30年をかけて下弦の壱まで登り詰めた。

上弦の鬼となるべく日々鍛錬を積んでいるが、俺の後に十二鬼月に入ってきた童磨とかいうやつが、女しか食べないとかいう下らない方法で急激に力をつけ、そいつが上弦の陸に居座っているせいで、中々階級を上げることができない。アイツの血鬼術とは相性が悪く、入れ替わりの血戦を申し込んだところで勝てないのは自分でも分かっているんだ。今は自らを鍛え、その時が来るまで只管待つしかない。

 

さて、俺は今何をしているのかというと、横浜村の自分の拠点に上弦の弐を招いた上で、その上弦の弐の護衛をするべく周囲の警戒にあたっている。

 

上弦の弐の名前は朱雨。生まれは100年ほど前ときいており、無惨様配下の鬼の中で2番目に強い数字を持つ、所謂上司にあたる鬼だ。

けど、俺と朱雨は位の差なんて関係ないほど仲がいい。朱雨とは、俺がまだ十二鬼月になってない頃からの長い付き合いで、食材を提供してもらったり稽古付けてくれたりと、度々世話になっている。

 

そして気になるであろう、俺が何故朱雨の護衛をしているのかということだが、それは此度の無惨様より朱雨が頂いた任務にある。

その内容とは、鬼人族の郷の探索及び一族の殲滅。

 

朱雨は剣術も器用にこなせる中、血鬼術もかなり強力な部類に入るため、こうした無惨様直々の任務を度々受けている。

そんな朱雨の血鬼術というのが、念動力というもの。超能力の類は色々使えるらしく、念力や瞬間移動、更にはある程度の未来予知、果てには遠隔透視まで出来るというのだから驚きだ。

 

そして今朱雨は、遠隔透視の血鬼術を使用中。この血鬼術は、その場で無防備な瞑想状態に入ることで視界を遠くに飛ばすというもの。ただ、その実態は幽体離脱に近いものらしく、血鬼術使用中は隙を晒していることになる。

そのため、この血鬼術を使用するのは、無惨様含め朱雨から信頼を寄せられている限られた者の前だけとなっている。

かくいう俺も、朱雨が目の前で血鬼術を用いている以上分かるかもしれないが、信頼を寄せられている者の1人である。

 

「…今回はどれくらい掛かるか………」

 

今頃朱雨がどの辺を捜索しているのかは定かではないが、基本この血鬼術を使用すると丸2日ぐらいは戻ってこない。その間、俺が責任を持って彼の護衛をしなくてはならない。

 

 

…実は毎度感じてたりするのだが、時には自分の足で探し回った方が目的物を発見しやすいのではと思うこともある。

とはいえ、所在が分からないから捜索してるのであって、これも任務のうち。過酷ではあるけど、俺も朱雨に信頼を置かれている以上、責務は果たさなくてはな。

 





ー江戸コソコソ噂話ー

おおよその時系列は、
1680年前後 朱雨誕生
1690年前後 朱雨鬼化
1730年前後 猗窩座鬼化
1780年後半←今ココ

十二鬼月の上弦のメンバーは、原作が大正時代であることや無惨様の発言により、大体1805年頃から変化がないとのことなのでそれらを考慮した上でこの年代を設定しております。
猗窩座は、入墨刑が1720年に始まったことからだいたいそのぐらいに鬼になったと予想した上で、1730年前後とさせていただきました。


実は当初の予定では、1707年の宝永噴火や宝永地震など、災害の歴史も追っていって、鬼たちが災害で死んだ人間を食って全体的に鬼の戦力が高まったり、災害で死にたくないがために鬼になる者が増えたりするという展開も用意していました。が、そうしますと暫くの間、原作キャラがほぼ出てこなくなるという珍事が起きるため没にしました。

なので、一応裏話でそういうのがありました程度に収めて下されば幸いです。
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