剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
(どこだ…どこにある……?)
視界を飛ばすこと早2日、陸奥国方面を粗方探索し終えて今現在は西の都"京都"付近を捜索していた。
(…用意周到に隠しているが、産屋敷ほどでは無い。すぐ見つかる筈だ…)
そう心に2日も捜索にあたっているが、中々見つけ出すことが出来ない。産屋敷は、まるで異世界にあるかの如く全く発見出来なかったのだが、それ以外で俺が見つけ出せなかったものはなかった。今回もきっと、粘り強く捜索すれば見えてくる筈。
(…比叡山、か……)
俺の視界は、遂に京都を超えて比叡山にまで達した。この辺りは山が入り組んだ構造となっているものの、上空から見渡せば地上の物が全て目に映る以上、信濃周辺の山岳地帯よりはまだ良心的な地形をしていると言えた。
(…あれは?)
比叡山の麓の一角に、人里離れた集落があった。周囲は山と森に囲まれており、近辺に他の集落の姿はなかった。既に廃村となってるかと思ったが、その割に建物には誰かの手入れが込んでいるのが遠目でも分かり、孤立した集落ではあるものの無人となった訳ではなさそうだ。
(近くに行ってみよう)
そうして視覚を集落に近づけていくにつれ、段々とその郷の光景が鮮明になっていく。
(…これは?)
人の背の高さぐらいまで視界を落とすと、その町の全貌が明らかとなった。
何故か集落内に配置されている鬼狩りに、妙に人間にしては良すぎる体格を持つ有象無象。そして人間とも鬼ともとれる風貌に、俺の勘が何か予感的に告げていた。
(…当たりだ)
俺は大急ぎで横浜村にある自分の体へと視界を帰還させる。
すぐに、作戦会議及び必要品の手配だ。
________________
それから、俺たちの準備は早かった。
「…ここが、鬼人族の郷か」
「あぁ、比叡山の麓にある孤立した集落。ここで間違いねえ」
俺たちは比叡山の中腹から、麓の郷を見下ろしていた。
「思ったより随分のんびりしてるな」
「あぁ、これから襲撃を受けるとも知らずになぁ」
視界を横浜村の自身の体へ戻すや否や猗窩座と作戦会議。
鬼人族という種族とは初めて相対する故、もしかすると結構骨の折れる仕事となるかもしれないと、ある程度そう見積った上での作戦会議だ。
それにいざ鬼人族の郷に潜入して、もし鬼人族かつ鬼狩りをやってる輩と偶然に対峙することになったらこちらとしても今後の仕事が警戒される分やりづらくなる。
ならばと、より確実に無惨様のお望み通りに鬼人族共を葬り去る方法をとり、加えて一気にやれることはやってしまった方が良い。
「…にしても、本当に見た目はそんな人間と変わりないんだな」
鬼人族ときくから、相当鬼らしくも人らしくもない容姿をしてるのかと思えば、外見は少し体格のいい人間といった感じで、人混みに紛れてしまえば人間と区別つかなくなるくらいの見た目をしていた。
…けど、無惨様によれば、普通の人間よりも強い力を持ち、尚且つ人より遥かに寿命も長く、更には日の下でもある程度活動可能と、半端者にしては無駄にいいとこ取りな油断ならぬ存在だと、無惨様より伺っている。
…早いところ、根絶やしにしなくては。
「…まずは第1作戦に移る。猗窩座は3日ほどこの場にて待機。俺は京都まで行ってくる。俺が3日経って戻って来なくてもそのまま作戦に移ってくれ」
「了解した」
そうして俺は計画を実行に移すべく、瞬間移動で猗窩座の元を後にした。
・
・
・
「無惨様より頂いた
俺の懐にある手の平ほどの箱の中には、無惨様より頂いた血が入っている。この度の作戦では、この血を有難く使わせて頂く。
「…作戦始動だ」
そうして日没と同時に京都の町へ降り立った俺は、早速作戦実行に移るのだった。
(…誰にしようか)
俺は無惨様の血を取り出すと、暗く人気のない街中を歩き始めた。
________________
あれから、2日が経過した。
(…朱雨、まだか?)
深い森の中であるために陽の光が降り注いでくることはないのだが、だからといってこういう大自然の中、あまり1人長居はしたくない。妙に退屈で落ち着かないのだ。
(…ほんとこの作戦上手くいくのか?)
そして暇すぎた故か、朱雨の立てた作戦内容に、俺は今更ながら若干の不安を感じて首を傾げていた。
『まずは第1段階。俺は比叡山近くの大都市、京都を襲撃する』
『待て待て!何故にそんな自ら首を絞めるようなことを?鬼がいるとなれば鬼狩りを呼び寄せてしまうぞ』
『いや、これでいいんだ』
『…どういうことだ?』
朱雨との作戦会議をふと思い出した。
だいぶ強引な策だと思ったが、朱雨が
とはいえ、やはり本当に作戦通りに事は運ぶのだろうかという不安は残る。
(…朱雨は俺にしか、その恐れていることは話してないらしいけど、確かにこればかりはなぁ……)
朱雨が俺だけに伝えてくれた、自身の唯一かもしれない
もちろん他により確実な方法がないか聞いてはみた。朱雨の扱える血鬼術はある程度きいているし、例えば未来予知なんかだ。
『未来予知の血鬼術は使わないのか?』
『あぁ、あれはね…』
そう率直にきいてみたところ、『未来予知の精度が悪すぎて…狛治には悪いことしたから……』だそうで、何か
………ところで狛治って、誰なんだろうな。
どこか、忘れてはいけないようでそうではないような、不思議な響きだ。
________________
「助けてくれ!」
「鬼だ!鬼が出たぞー!」
「こっち来ないで!」
京都の街は混乱の渦中にあった。
道端に落ちている死体と血。それを見て更に混乱を加速させる町人たち。
「…ハハッ」
そんな中で、その惨状を前に笑い狂う1人の悪鬼。
「…そのまま襲え、奪え、食べろ。そして俺の役に立て……」
その目に上弦の弐の数字を刻んだ鬼は、街中に転がる死体を貪り食いながら目の前にいる5人の有象無象に指示を出す。
「お前たち5人は
「「「「「オォォォォォォッッ!!!!!」」」」」
高まる鬼たち。逃げ惑う人々を次々と襲い、そして圧倒的な力で殺した後に食べる。それを繰り返し、ただ繰り返しただけでこの街はこの惨状となったのだ。
そこには、かつて日本の都が置かれていた京の町の面影はなかった。
今やそこは、メラメラと燃え上がる炎と、阿鼻叫喚の絶望一色の人々の群れという、地獄絵図を描いてしかいなかったのだから。
…そしてその元凶はたった1人。朱雨。
「さあさあ、さあ!鬼狩りさんよォ!? 京都を救いに来てくださいよォ!じゃないと沢山殺しちゃうよぉ?」
積み上げられた大量の死体の上に立ち、そう叫ぶ鬼。こんな目立った行動をとれば、速攻で鬼狩りが駆けつけてしまいそうだが、それが彼の狙い通りなのだ。
「…さあ、地獄の始まりだ」
ー江戸コソコソ噂話ー
実は比叡山には行ったことないです。