剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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ちなみに主人公のいる地域は東京じゃないです。
後々のお話で明かしていこうと思います。


2話 やっぱりここは鬼滅の世界でした

俺だ。朱雨だ。

あの最強チート親父を多分?超えてから早くも半年が経った。

 

相変わらず親父は俺をずっと見張っているため、俺は気を抜かずに毎日門下たちを相手に剣を振るう。それだけしか出来なかった。

 

ところがどっこい、俺は急に親父に呼び出された。いったい何かと気になって赴いてみれば、それは12年間で初となる事だった。

 

「明日、休みをとるといい」

 

まさかのことに、俺は心の中で狂喜乱舞した。

 

(イヤッホォ!久々の休みじゃーい!)

 

当然ながら声にも行動にも出さず、1人自分の中で喜ぶ。

 

(何しよう。折角だし出掛けよう!)

 

あっという間に明日のプランは決まり、俺はウキウキ気分で寝床につく。

 

(…ところでなんで唐突に休みくれたんだろう?)

 

まさか親父からクビのお知らせか?

いやいやないない。でも、12年で初めてだよこんなん。なんか不吉な予感。明日俺は地獄でも見るんじゃないかとしか思えん。隕石でも降ってくるのでは?

 

 

____そして、その嫌な予感は不幸にも当たってしまう。

 

 

________________

 

 

そして翌日、俺はある程度のお金を持たされて外に出た。

 

(シャバの空気うめーい!)

 

そう心に、俺は江戸の町を闊歩する。

 

 

 

ずっと道場にこもりっきりだったから、目に映る全てのものが新鮮であった。

 

(へぇ、ウチの隣にもウチとは別の道場があるのか〜)

 

初めて知ったけど、どうやら隣にも道場があるらしい。けど、何か刀なり格闘技なりの武術をやってるような音は聞こえないし、婆さんが道場の前で竹箒持って掃除してるだけ。

 

(…後継者がいないのかな?)

 

俺はそうとは思ったが、特に気に止めることもなく、江戸時代グルメを求めてふらっと別の場所へ向かった。

 

___後に、この道場の存在が波紋を呼ぶことになるのだが、今の俺に知る由もない。

 

 

 

 

「団子1つくださーい」

「はいよー毎度あり」

 

12年間ロクに外出とかしてこなかったし、転生した以上はこの世界を知らなくてはならない。ということもあって、観光も兼ねて、俺は街を探索することとした。

あっ、ちなみに真剣持ってます。うちの家系、平和なので普段は道場やってるけどいざ戦闘となれば親父も刀持って出る武士の端くれらしいね。

俺はまだ12歳だけど、10歳超えたら刀持ち歩いた方がいいとか何とかで親父に刀ぐらい持っておけと打刀を持たされた。

 

「うまうま」

 

団子片手に、俺は椅子へと腰掛ける。

 

(にしても…)

 

江戸の町、教科書なんかでは図でしか見たことがなかったから新鮮そのものだ。元禄文化の真っ最中ということもあって、日本は平和の真っ只中。安心して外を出歩ける治安の良さというのも、風情を感じる上で重要なことだな。

 

(平和だ…)

 

いつも剣の事しか考えられなかったからなぁ。たまにはこんな休みがあってもいいかなと思う。

 

(こんな平和が続けばいいのに…)

 

ふとフラグ的な思考を抱く。これはいけない。平和が壊れる前兆やぞ。

 

____と思った矢先、早速聞き捨てならないことを耳にしてしまう。

 

「…きいたか?」

「あぁ」

「この辺、最近鬼が出るんだってな」

「夜になったら出るとか?」

「そうらしいぞ…」

 

鬼が出る、確かにそう言ってる。

 

(鬼出るの!?)

 

薄々と勘づいてはいたが、やはりこの江戸時代、普通の江戸時代ではない。やっぱりあの鬼狩り作品が絡んでいる。

 

(まあ、俺は大丈夫でしょ)

 

ピンポイントで俺が巻き込まれるなんて事は無いはず。そうだ、俺は道場があるしきっと今後は道場主の後継ぎとして江戸時代を謳歌するんだ。

 

 

 

 

 

 

 

なーんて甘い考えを持った俺が馬鹿だった。

 

 

「ここどこー!!?」

 

数時間後、慣れない江戸の町を歩いていて完全に迷いました。

 

「家どこだっけ…」

 

殆ど外は誰も出歩いちゃいない。完全に俺だけしかいないし、何だか建物も少ない町の外れの方に来てしまった模様。

 

(夜と昼じゃ全然町の様子も違うしなぁ…)

 

俺は夜の町を只管に歩く。不思議と若さ故か、全然疲れが来ないので、俺は多少早歩きで江戸の町を闊歩する。日が沈んでしまう前に自宅に辿りつかなくては。

 

 

 

 

 

(何処ここ!?)

 

結論、早歩きしようが結果は変わらず。

寧ろ周りに建物は一切なく、完全に山の中の方まで歩いて来てしまった。

 

(どんだけ方向音痴なんだ俺…)

 

12年間、殆ど外出していなかったツケだろう。木刀振り回してばっかで土地勘なんて身につける余裕もなかったから、こうして今迷いに迷って山の中まで入ってくるという方向音痴さを露呈してしまったのだ。

 

(どうしよう…)

 

仕方なく道無き山中をトボトボと歩いてゆく。

 

(…あれ?)

 

ふと歩いていると、目の前に人影らしきものが見える。周囲が暗くてよく見えないが、そこに誰かいるのは確かだ。

 

「おーい!」

 

俺は声を出してその人の下へと向かった。

 

 

そして、俺のこの時の判断が完璧な誤りであることを心の底から思い知ることになる。

 

 

 

「…ん?人間か?」

 

俺が声をかけた、その人が振り返る。

 

「えっ?」

 

俺はこの時驚きのあまり、その場で立ち尽くしてしまう。

 

 

 

(黒死牟!!?アイェェェェ!!?鬼ィ!!?鬼滅ゥ!?ナンデェェェェェエ!!?)

 

この前からずっと薄々勘づいていた、この世界が普通の世界なんかではなく、鬼滅の刃というフィクションの世界であると決定づける出来事だった。

 

 

「…こんな時間に子どもか?」

 

どうすればいいのか。相手が相手なだけに素直に帰してくれるとは思えない。

六つの目を持ち、鬼でありながら月の呼吸という呼吸法を扱う戦国時代より存在する始まりの呼吸の剣士の1人。で、弟への嫉妬のあまり鬼堕ちした元鬼殺隊の柱。

相手は原作開始時点で、鬼舞辻無惨の次に強い、十二鬼月最高戦力である"上弦の壱"の鬼。いってしまえば、ラスボスの1個前にあたる副大将ポジションの強者。

 

「…すいません、道に迷ってしまって…」

 

何とかこれで誤魔化せないかな…。そんじょそこらの雑魚鬼と違って、この黒死牟という鬼は、鬼の中でも結構理性が働いているタイプの鬼。

もしかしたら上手いこといけるかもしれない。

 

 

 

「お前は…私を鬼と知ってその姿勢か…」

「えっ、いやー鬼なんている訳がないですよねー。まさかぁアハハ」

 

どうにかしてこの場しのぎでもいいから何とかして町まで行ければいい。親には怒られるかもしれないけど死ぬよりはマシだ。俺はそこそこの鬼の情報持ち帰ってさっさと下山するぜ。俺は楽に帰還したいんだよ。

 

「…残念だが、私の姿を見た以上は無事に帰すことは出来ない」

 

これは完全に詰み…ですね。

黒死牟からは殺気しか感じないし、既に刀に手をかけている。それに、足の踏み込み的に俺を殺る気満々だ。

 

「安心しろ、一瞬で楽にしてやる」

 

そうして奴は俺に斬りかかってきた。

 

「クッソォ!」

 

戦うしかない。そう判断した俺は、腰に差していた刀を抜いた。

 

「…ほう、私の一撃を耐えたか」

「アハハ…」

 

もはや渇いた笑いしか出ない。親父との打ち合いで相手の斬撃を受け流す技を習得していたのだが、まさかそれがここで活きるとは思わなかった。

 

「…次は確実に息の根を止める」

 

黒死牟の殺気を前に意識が飛びそうだが、俺は何とか自我を保つ。

 

(死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないぃ!)

 

次は殺すだなんて言っているし、今度こそ俺は死ぬかもしれない。

 

(絶対生き延びてやる!)

 

そうして、俺は再び刀を構えた。

 

 

 

 

「ぬぅ…!」

「…やるな」

 

俺は黒死牟の斬撃を読み、全力で受け止める。全身に力を漲らせ、このまま朝まで耐える。それしか活路は見出せない。

 

今は1690年。原作設定によれば、黒死牟は戦国時代に鬼となっている。そして一般的には戦国時代は1600年で終わってることから黒死牟は鬼となって100年くらいしか経っていない。

 

(ようはそこだけが救い…)

 

鬼としてのキャリアがまだ原作よりは浅い。とはいえ、100年は経ってる以上、既に縁壱さんの最後の時は見届けているであろう。故に黒死牟が辿る江戸から大正までの原作の空白期間にはとっくに突入している。

この間に黒死牟がどれくらい強くなってるかだなんて予想がつかない。

 

「…その歳にしてはなかなかやるな」

 

将来上弦の壱のポストを約束されているその実力は伊達ではなく、結構手を抜かれてる感覚がするのだが、そのおかげで何とか生き延びている。

 

「…終わりだ」

 

すると、目の前から黒死牟の姿が消えた。

 

 

___そして、気づいた時には俺の腹に奴の刀が刺さっていた。

 

 

「…ちくしょう………」

 

俺は、そのまま意識を手放した。

 

 

________________

 

 

中々に手強い少年だった。

 

「おーい!」

 

不意に背後から話しかけられ、振り向けば15にも満たぬであろう少年の姿。

 

(気配が…しなかった?)

 

その声をきくまで、私は少年が近づいてくるのを認識できなかった。

 

「すいません、道に迷ってしまって…」

 

加えて私という鬼を前にしても、怖気ないその強靭な精神。

本来、私が食らってきた人間共は、私と出逢って良くて逃走、悪いとその場で失神する者しかいなかった。

 

(私を鬼だとわかってない?)

 

そう思い、少し私が鬼であることを仄めかしてみれば、

 

「えっ、いやー鬼なんている訳がないですよねー。まさかぁアハハ」

 

私を前にして、奴は笑っていたのだ。なんたることか、奴はあの幼き容姿で私に微塵にも恐れを感じぬ強者であった。

 

(これは…少々手を焼くかもしれぬ…)

 

そう思い、私は奴に斬りかかるべくして刀に手をかけた。

 

「安心しろ、一瞬で楽にしてやる」

 

そうして、戦闘に移った。

だが、ここでまたしても奴は強者であった。

 

「クッソォ!」

 

奴は、私の一撃を受け流したのだ。加えて、その身には全集中の呼吸をまとっている事が確認できる。

…この歳で、それらをここまで使いこなせるのか。

 

「…ほう、私の一撃を耐えたか」

「アハハ…」

 

口ではこんなことを言ったが実際に私は焦っている。なんだこの少年は。笑っている。この期に及んでまだ笑っているというのか。

 

「…次は確実に息の根を止める」

 

ただの少年相手に、ここまで本気を出すことになるとは思っていなかった。

 

 

「…終わりだ」

 

そうして本気で挑み、ようやく奴の腹に一撃を入れることが出来た。

 

「…ちくしょう………」

 

最後に奴が一言零して気を失い、戦闘は終結した。

 

 

 

(危ないところだった…)

 

こんな若い少年相手に、この私が本気で向かうほど苦戦するとは思ってもいなかった。

私の弟、今は亡き縁壱にこそ遠く及ばないが、幼くしてなかなかの強者であったといえよう。

 

(実に良い戦いであった)

 

そうして私は奴の腹から刀を抜いた。

___だが、ここでまたしても奴は私の予想を超えてくる。

 

「…なんと、こやつは」

 

気絶したこの少年、なんと気を失った今も全集中の呼吸を使用していた。無意識か否か、奴は呼吸で止血までも行っていた。

 

(だがこのまま治療もせねば、この少年は死ぬ。しかし、捨てるには勿体ない逸材…)

 

先程の戦いを振り返った私は、ある決断をした。

 

「…あの御方(・・)の下に連れていこう…」

 

私は軽く奴、いや、

____もう奴とは呼ばない。

 

この強き者(・・・・・)を、無惨様への下へと連れていくとしよう。

 

「きっと、気に入ってくださる筈だ」

 

そうして、私は彼に軽い止血の治療をし、肩に担ぎあげてあの御方の下へと向かった。

 




次話投稿予定日は3/25の午前7時です。
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