剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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高評価くださる皆様ありがとうございます。
モチベになるので頑張れます!多忙だけど!


32話 未知との遭遇

 

(…遂に、ねぇ)

 

私は()の意識の中に潜む者。その経緯に関しては今はまだ語らないでおくけど、まあ色々とあったの。1つ言えば、私は生き霊に近い何かね。

 

(…簡単にやられる訳にはいかないね。あの子は……………でもあるし〜)

 

彼が今対峙している鬼殺隊の子は、本来(・・)の物語では存在しえないイレギュラー。彼と同じ(・・・・)、ここには居てはならない子なの。ようは2人とも、逸脱した存在ってこと。

 

(…そうね、物語や歴史はいつも元に戻ろうとする力で溢れている。そのために、私は彼に半ば答えを言ってしまったけど、これが吉と出るか凶と出るか……)

 

私が未だここにいる意味はなくなろうとしている。彼を答えまで導いた。そして彼女の元まで辿り着かせた。大正時代、原作(・・)まであと70年しか時は残されてなかったけど、もう流れには乗れた。

 

(……あとは鬼人族のお仲間(・・・)さんに委ねましょうか)

 

先程から彼に潜む鬼人族の彷徨える魂たちが何か話したそうにしている。折角だから、私は最後の役目として、1つ仕掛けを残していくことにした。

 

 

 

(……貴方が、帰ってくるのを待ってるから)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、生まれた時から天涯孤独だった。親兄弟どころか、同じ種族(・・)の仲間すらいない。

 

「100!!101!!」

 

そして私は今日も一心不乱に刀を振るう。それもこれも、物心ついた時から私の生活には常に刀が付き纏っていたんだ。

 

「アイツ…本当に4歳か?」

「分からねえ…見た目はまんま言葉が話せるギリギリの歳だが……」

 

周囲の声に気を取られることなく脇目も振らず刀を振るった。

 

「1000…1001……」

 

生まれ持った強靭な肉体を生かし、4の歳の頃からただ精進あるのみと私は自らを鍛えていた。

 

それもこれも、

____私が鬼人族の唯一の生き残りであるからだ。

 

 

私は赤ん坊の時、鬼殺隊という幕府非公認の組織に拾われた。なんでも巷には人を喰う鬼という化け物がおり、その鬼をこの世から駆逐するために鬼殺隊は今日も存在しているのだという。その頭領をされているのが産屋敷という男の方で、みんな御館様ってお呼びしている。

御館様にかつて私の過去に何があったのか伺えば、私の同族である鬼人族は数百年前にかつて人と鬼が禁断の混血をしたために生まれた種族であるという語り出しから、私がここに来るまでの経緯を伺うことになった。

鬼人族、私は鬼人族唯一の生き残りだと聞いた。昔はそれなりに栄えていた、隠された集落に住む人と鬼の両方の特徴を持つ種族だったらしい。ただ、人と鬼どちらの血も継いでいることから、鬼殺隊や鬼陣営とはこれまで一切関わりを持たず中立の立場を貫いていたそう。

しかし、どういう訳か数十年前から鬼人族一同は鬼殺隊に加担。鬼の血を引くことから鬼殺隊にとっても強力な味方だったそうだけど、世の中物事は上手くいかなかった。

 

(…上弦ノ…弐ッ!!)

 

鬼人族が鬼殺隊に属したことが鬼側の逆鱗に触れた。終いには十二鬼月という精鋭鬼集団が動き、鬼人族の郷及び鬼人族の鬼殺隊士は私を残して皆滅ぼされてしまった。当時の上弦ノ弐と下弦ノ壱の鬼によって……。

 

その話を聞き、私は誓った。現在では鬼殺隊唯一となってしまった鬼人族として、1体残らず鬼を滅殺すると。同族の仇を取らねばと。

 

しかも不幸中の幸いか、私はどうも鬼人族の中でも稀少な戦闘力に恵まれた異端の存在らしい。

自由に(・・・)発動できる額の痣、加えて鬼人族のなかでも限りなく鬼の体に近いそうで、100を余裕で超える長い寿命に強靭な肉体。鬼に復讐するのに、私の体はかつてないほど適していた。

 

そして私は待ち続けた。同族を滅ぼした鬼が私の前に現れる機会を。

上弦の鬼の目撃情報は基本かなり少ない。復讐を誓って探し回れど結局見つけられないまま引退した隊士も多い。故に私は少しでも奴らとの遭遇率を上げるため、鬼人族特有の人並外れた体力を用いて、日本のあちこちを練り歩いた。

 

そうして私は下弦以下その他の雑魚鬼を狩りながら過ごし、気づけば60年もの月日が経過していた。御館様も3代ほど入れ替わった。御館様は鬼の始祖である無惨という男の存在により一族総出で呪いを受けているらしく、30まで生きられないらしい。

 

御館様が入れ替わる間、同期も後輩も同じように皆寿命か戦いで死んでいった。唯一の半世紀以上に渡って鬼殺隊に在籍する隊士、ようは1番の古株隊士になったわけ。仲良くなった隊士も次の日には訃報が出ていたり辛いことも沢山あったが、奴を討つまでは死ねない。

 

当然だが、私の階級も鬼殺隊最高位の柱。独自で開花させた呼吸、【天の呼吸】を扱う天柱として、私は鬼殺隊最強戦力としてその座に居座り続けた。全ては同族の仇、そして散っていった仲間たちの為に、

 

 

……見つけた。たまたま見回りをしていた時に感じた強者の風格、その正体を求めて建物の中を覗けば奴の姿。目に刻まれてる数字は上弦ノ弐ではなくなっていたが、幼い見た目に常に刀を差していること、先人たちから聞いていた特徴と完全一致。奴で間違いない。私は60年間、この時をずっと待ち望んでいた。長らく行方が分からなくなっていたと思えば、何故かこんな所(吉原)にいた。が、私がずっと追い求めていた好機。

 

【天の呼吸】

 

一撃で仕留めるべく、私は刀に手をかけた。狙うは水女ノ郷、北向きの部屋にて座する元上弦ノ弐、ついでに感じるもう1体の上弦の鬼の気配諸共、__斬る。

 

 

 

________________

 

 

大衆がこちらに目も暮れず混乱し逃げ惑う中、戦いは始まっていた。

 

 

【天の呼吸 弐ノ型 夏陽炎】

 

奴が刀を振るったその瞬間、暑い夏の炎天下で歪む陽炎のような、歪む斬撃の錯覚が俺を襲う。本来なぞる斬撃とは僅かに異なる一閃が俺の横をかける。そしてその次の瞬間、本当の斬撃が時空間を錯覚させて襲ってくる。

 

(…速い!)

 

体を捻り、何とか奴の攻撃箇所を上手く鬼の急所からズラす。久々に左腕が斬られたが、すぐに持ち前の再生力で再生するし本命の頸は守れた。

 

(…コイツ)

 

騙しの斬撃、錯覚を伴わせる呼吸というのはここ数百年で何人も見てきた。特に独学で呼吸を身につける輩にはほぼ確実に相手を錯乱させる刀にがあるし、俺の扱う星の呼吸にも【肆ノ型 彗星の尾】がある。強い剣士は、ほぼ確実といっていいほど我流の呼吸を編み出し、尚且つ撹乱の型を所持している。

 

(…にしてもコイツ、今までの鬼狩り相手とは比較にならないぞ)

 

ただ、それら我流の型云々を抜きにしても、今回の相手は有り得ないほど強敵すぎた。

見た目は20にも見たぬまだ夫の存在もなき女。が、剣技でいえば恐らく俺が出会った中で1番の実力者。

そして額には、無惨様(・・・)の血の記憶の奥底に潜む、日の呼吸(・・・・)の使い手とやらを彷彿とさせる痣。

 

(…ならば!)

 

堕姫も妓夫太郎も隣にいる。早いところコイツは始末しなくてはならない。下弦を数百人冥土に送る犠牲よりはきっと優しい筈だ。

 

「堕姫、妓夫太郎、少し下がっててくれ」

「…朱雨さん?」

「…分かった」

 

2人を後方に下げ、俺は血鬼術と呼吸を整えた。

 

【血鬼術 念力】

 

奴が建物を半壊させてくれたおかげで、念波が真っ直ぐ奴に対して通る。浮かせた状態にして動きを拘束されたとなれば、どんな強い鬼狩りといえど対抗は不可能だろう。

 

【星の呼吸 壱ノ型 光年】

 

そしてすかさず呼吸を発動。神速の速さで放った一閃は、一瞬のうちに奴の胴体を大量の血を炸裂させる共に上下に分断した。亡骸と化した奴の体はその場に大きな血池を作って倒れ伏した。

 

「…やったか?」

 

確かに手に残る人を斬った感覚。そして辺り一面に広がる血溜まり。どう捉えても奴は死んだ。

 

「…朱雨さん、終わった?」

「っぽいなあ…」

 

堕姫と妓夫太郎も戦闘に終止符がついたとして安堵の息を零している。

 

__が、どういうわけか俺の予感が戦闘の終わりを告げさせてはくれない。

 

 

(…? …確かに今奴は死んだ筈。何かおかしい……?)

 

胴体を真っ二つにしたのだ。これで死なない鬼狩りがいて溜まるものか。

 

 

「………今ので終わりだと思った?」

「!?」

 

その声は、死んだ筈の奴の方から聞こえた。

 

「…こんなあっさり……呆気なさすぎるとは思わないの?」

 

奴は、喋っていた。

___大量の血をぶちまけ、胴体が2つに絶たれて横たわっている状態にも関わらずだ。

 

(…やはりコイツ!)

 

ただの人間じゃない。普通の人間が即死する状況下で、何食わぬ生者の顔でのうのうと話してられるものか。

 

「…よいしょ」

 

すると奴は、ぶちまけられた血を接着剤として扱うかのように、そして2つに分かれた体同士をまるで引き合う磁石のようにして、人の形に再生を始めた。

 

「…まだ生きてたのかあ"!」

「ただの足手まといじゃないわよ私たち!」

 

その瞬間、妓夫太郎と堕姫が再生中の奴に攻撃を仕掛けた。

 

【血鬼術 飛び血鎌】

【血鬼術 乱立帯】

 

元に戻ろうとする胴体目掛けて2人の血鬼術が飛んでいく。

 

「ダメだ!戻れ2人とも!」

 

そう引き止めるが時すでに遅し。体を全て再生させて元通りの人の形に戻った奴は、一瞬のうちに刀を抜いて呼吸を発動させた。

 

 

【天の呼吸 陸ノ型 夕時雨】

 

 

雨のように降り注ぐ無差別かつ広範囲の斬撃が、先程2人が放った血鬼術2つを地にたたき落とすと共に、半球状に斬撃の雨を降らせてジワジワと俺たちの方まで迫ってきた。

 

「…クソッ!」

 

よくよく周囲の様子を窺うと、民間人共の気配が一切ない。この水女ノ郷の建物が崩壊した際、そして俺たちの戦いで周囲の建物が吹き飛んだ際に皆慌てて逃げ出してしまい、今この場には、巻き込まれた死体を残してその他の民衆共は皆遠くへ逃げてしまったらしい。

が、逆に人がいなくなったのを利用し、奴は広範囲に作動する型を使用してきたのだ。

 

「なっ、アイツ…」

「あの女ァ"あ"あ"あ"あ"!!」

「堕姫!妓夫太郎!」

 

俺の前に出ていた堕姫と妓夫太郎の2人の目の前を、例の型が覆い尽くす。俺は2人の肩に手を伸ばした。

 

 

 

(……彼らと共にこの場から脱出出来るか)

 

そう考えて2人に手を伸ばしたが、よく良く考えてみればこれは間に合う間に合わない以前の話。俺が1度に瞬間移動させられるのは俺を含め生物1人。つまり、俺込みで2体までだ。

でも、堕姫と妓夫太郎は2人同時に頸を斬られなければ死なない。だからどちらか最悪置いて行ってもどうにかなる?とはいえ、いくら何でも1人置いていくのは酷。あの鬼狩りがその間に何をするのかマジで読めない。

 

(…ならば、1つ俺が犠牲になるしかない)

 

堕姫たちを戦闘に巻き込んでしまった以上、そのツケは俺が片付ける。コイツの対処は出来るかもしれない。俺は力を振り絞り、2人を同時に(・・・)逃がす算段へと入った。

 

「すまん!2人とも!」

「…なっ?」

「朱雨さん!?」

 

そうして俺は、両手で2人の肩に触れた。

 

 

【血鬼術 瞬間移動 ー超ー 】

 

 

その瞬間に瞬間移動先の座標点を日本の何処かしらに適当に当てて強制的に移動。奴の斬撃がこちらに届く前に、この場から退散させる事に成功した。

 

「弟子の窮地は、師匠が救ってやらねえとなぁ!」

 

初の試みに息絶えだえになりながらも、俺は何とか2人を何処か遠くの地へ飛ばせた。

 

「あとは、師匠に任せろ…」

 

こいつは俺1人で対処してやらなくてはならない。堕姫たち2人を巻き込んだ俺ができる、尻拭いというやつだ。

 

「…逃がした? まあ、本命は元々お前だったからな。邪魔が減って何よりだ」

 

何より、コイツ自身も狙いは俺みたいだからな。お互い心置き無く戦えるようになったみたいで満足だ。

 

「…そうか」

 

ただ、もう何も喋る気力も刀を振る気力すらも無くなってしまった。どうやら初の試みで、力を使いすぎてしまったらしい。

 

(…クソ、力が入らねえ)

 

こんなこと、力を使う前にわかりきっていたというのに。堕姫と妓夫太郎2人を安全に逃がすこと最優先に動きすぎたか。それとも弟子にいい所見せようとしすぎたか。柄にもなく情けない最後になってしまいそうだ。

 

(…頸が……斬られる)

 

随分と呆気ない最後を覚悟したその一瞬の間に、俺は精神の中に意識を潜めた。

 

……奴らと、共に。

 

________________

 

 

(ここは……)

 

辺り一面時が止まった真っ暗な世界。「無」という1文字が相応しい、音も光も時の概念さえもない虚無な世界だった。

 

『よう、鬼の兄ちゃん』

「あ?」

 

何もかも無い世界と思いきや、急に誰かおじさんのような声が響いてきた。

 

『無様だなぁ。同族を殺しておいて、またその同族に殺されようしているとは…』

「……はぁ、いきなりなんだお前は。いきなり訳分からんことを一方的に話すな。話しかけるならまず名乗るのが定石だろう?」

『ふっ、それもそうか……』

 

随分と意味不明ことをほざく腹立つ喋り口調の男の声だ。同族だの、俺は何も知らないしまずは説明する所から始めて欲しいものなのだが。

 

 

 

 

『私はお前に殺された鬼人族の魂の集合体…。いわばお前が3年もやってきた魂への尋問の、終着点に値する存在だ』

 




ー江戸コソコソ噂話ー みたいな何か。

多忙につき来週から毎週日曜日投稿が守れなくなるかもしれません。皆様のコメントや高評価次第ではモチベ上がってやることをちゃちゃっと終わらせてこちらに早く戻ってこれるようになるかもしれないのでどうかよろしくお願いいたします。
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