剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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投稿遅れてすいません。次回は月末までには間に合わせます。
尚、今回は短めです。


36話 最終選別経過

 

 

最終選別に潜入して2日目の昼。空は深い雲に覆われており、鬼が昼活動するには中々良い天候だ。

 

「で、どうよ?」

「どうよと言われてもなぁ…」

 

俺と猗窩座は他の鬼や選別の参加者の目に付かぬよう、高い木の枝に昇り、初日の最終選別潜入から今に至るまでの情報交換に勤しんでいた。

 

「そんな大した情報はなさそうだったな。ここにいる連中は長くて20年くらい閉じ込められてるだとか、せっかく食料提供した割には見合った情報なんて持ってないみたいだな」

「そうか……」

 

どうやら、今回の潜入は期待外れの線が強そうだ。こんな敵地の勢力圏内に足を踏み入れる危険を冒して得られるものがゼロの可能性が出てきた。

とはいえ1日しか経過していない以上、まだ帰るにはいかないな。もしかしたらとんでもない大物がまだ眠ってるかもしれないし。どの道ここにいる鬼狩りの卵共は最終日に纏めて殺す予定ではあるし。

 

「少しやり方を変えよう。鬼によってはここに閉じ込めた柱とか鬼狩りのことを覚えてる可能性がある。まずはそれを聞こう」

「それを聞いてどうすんだ?」

「……鉄砲玉に育てるに相応しいか見極めるんだ。奴らへのな………」

「……そうか、奴らか」

 

猗窩座はどうやら俺の意図をしっかり読み取ったらしい。なるほどと言わんばかりに口角がつり上がっている。

 

蓮華(・・)鱗滝(・・)の名前が出たら次会った時に報告な。持ち帰って色々と試したいことがあるしな」

「分かった。以後はその方針で行く。ちなみに聞くが、朱雨は今後どうする予定だ?」

「適当に鬼に食われそうなやつを順次助けて回る。理性のない鬼には興味無いし、ある程度参加者共の信頼は得ておかないとな」

「ほーう…最後に纏めて殺す割に用意周到だな」

「まあ、その方が最後殺す時に絶望する鬼狩り共の顔が見られるだろう?」

「…流石、興味のない人間には容赦ないな」

 

ずっと仲間でしかも護ってくれる存在だと思ってた人が、実は敵でしたなんてなれば誰彼も絶望するに決まっている。猗窩座もとい狛治や、剣術道場の同門以外の無関係な人間にかける情けはない。至高の領域を目指す人間や、人間に酷い目に遭わされた人間だけが、俺の唯一の興味対象だ。

 

 

________________

 

 

私は産屋敷とき。現産屋敷頭領の産屋敷典哉(のりや)の娘。僅か11歳にして父や兄弟姉妹と共に一族総出で鬼の殲滅という使命を背負わされた身。そしてその使命の一環として、私は藤の花が咲き乱れる山の麓に、多くの者たちを目の前にして佇んでいた。

 

「本日は最終選別へようこそおいでくださいました」

 

今年もこの時がやってきた。父曰く子供たち、即ち鬼殺隊隊士もとい正式な鬼殺隊隊士になるために立ちはだかる試練、最終選別へ彼らを送り出す時が。

 

「ここにはまだ鬼がいませんが、ここより先の藤の花を超えた山中では鬼が大量に蔓延っております」

 

山中には柱含め多くの鬼殺隊隊士が生け捕りにした鬼が跋扈している。基本的に数える程しか人を食ってない弱い鬼しかいないが、最終選別中の受験者が喰われた数は考慮してない故の誤差はあるかもしれない。けど、毎年多くの鬼が最終選別中に斬られていることは最終選別通過者を通して確認しているから、鬼殺隊の卵たちに課す試練としては形を保っている事だろう。

 

「正式な鬼殺隊隊士となるためには、この鬼の蔓延る山で1週間過ごすという試練を超えなくてはなりません」

 

この山は藤の花によって周囲を覆い尽くされていて、結果鬼にとっては藤の檻に閉じ込められる形となっているのだが、鬼たちはマトモに人を喰えていないので飢餓状態。そして私はそんな危険な所に彼らを放り込もうとしている。毎年ではあるが、そんな死地に彼らを送り込むのは心が痛んでしまう。

 

「それでは、行ってらっしゃいませ」

 

だがここは心を鬼にしなくてはならない。鬼殺隊となって任務を遂行する上では、私の心なんかに勝る本物の鬼が相手となるのだから。

 

(………今年は何人の通過者が出るのでしょうか)

 

次々と山中へ入っていく未来の隊士たちを眺めながら、私はそう心の奥底で呟いた。

毎年50人近くの人がこの最終選別を受けるも、だいたい8割以上は鬼殺隊隊士になるどころかここで鬼に喰われて人生を終えてしまう。5人残ればいいというほどの狭き門を果たして今年は何人潜り抜けてくるのか。

 

「どうか、彼らに良き未来を……」

 

私はただこの山の麓で、1人彼らの健闘を祈るだけであった。

 

 

________________

 

 

私は蕾。嫌々参加させられることになった最終選別にて、私なんか早々に喰われてこの世からサヨナラするという憶測がまさかの大ハズレを見せ、こんな鬼の巣食う山でなんと3日も生き残ってしまった。

 

「鱗滝ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!弟子殺す!!!」

 

何か怒りで叫びながら木に向かって拳を振るっている変な鬼もいるが、私は上手いこと隠れたりして鬼と極力出会すことのないようにしている。が、もし見つかってしまった場合はというと…。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!!!」

「待てやぁぁぁあ!! 食わせろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

その時は鬼から逃げる。昼は体を休めるために日がいち早く照らす山の東部で眠り、夜は鬼に喰われないように隠れて逃げ回ることの繰り返しだった。

 

「足りねえぇぇぇえええ!!俺がどんだけここに閉じ込められたと思ってんだあの上弦!! もっと肉を寄越せぇぇぇえええ!!」

 

鬼の発してる言葉の意味は意味不明だけどとにかく凄い窮地に追い込まれていることは確か。私もこのままでは死んでしまう。

 

【雷の呼吸 弐ノ型 稲魂】

 

すると突然、どこからともなく現れた無数の斬撃が正面から私の真横を突き抜けていった。

 

「ギャアアアアァァ………!!」

 

私の横を通り抜けた斬撃は、先程まで私を追っていた鬼の頸を斬り落としていた。

 

「大丈夫か?」

「…あっ、ありがとうございます………」

 

こんな感じで、ずっとこの繰り返し。鬼に襲われては誰かが背後から追っかけて来てる鬼の頸を斬ってくれる。もはやこうしてれば安泰なんじゃないかと思えるほどに、この流れが綺麗に嵌っていた。

 

 

 

___気づけば、私は最終日のその日まで生き残っていた。

 

 

 

________________

 

 

 

山に潜入して迎えた7日目の夜。最終選別終了前の最後の猗窩座との会合。この夜を明かせたここの連中だけが、晴れて鬼狩りの一員となる権利を与えられる。そうして終わりの始まりを迎える前に、俺たちにはまだやるべきことがある。

 

「…どうだ、餌付けは上手くいったか?」

 

月明かりも遮るほどの巨木の太い枝に腰掛け、俺は隣の猗窩座を見据える。

 

「あぁ、上手くいった。日を追うごとに飢餓状態の奴らも見なくなっただろう?」

「…そうだな、昨夜は1人も牙を向けて来なかった。腹を満たせたか、あるいはそんじょそこらの誰かに斬られたか……」

 

確かに初日から数えれば日を追う毎に襲ってくる輩は減り、5日目を最後に昨日で全て消えた。餌付けの効果を示す証拠としては充分なものだった。

 

「…それで、肝心の奴はいたか?」

「あぁ、いたよ(・・・)。鱗滝に生け捕りにされたと言う鬼がな。まったく、そいつの名前を終始叫び通してたぞ」

「ほう……」

 

どうやら蓮華の名前は出なかったようだな。ただ、こっちは出てきたな。鱗滝の名前の方が。

 

「それで、どうするんだ?一応餌付けはしておいたが」

「いや助かる。そいつは夜明けに連れ帰る。堕姫や妓夫太郎のような大事な弟子たちとは扱いも全て何もかもが異なる、対鱗滝専用殺人鬼としてその役目を追って貰おうじゃないか」

「ほう、俺や朱雨の弟子との関係とはまた異なる、無惨様の許可を得ずに育成して使い捨てる駒のようなものか」

「その通り。死後発動型(・・・・・)の霊人形としても使えるし、第1に鱗滝程度の男なんぞ、俺がわざわざ必死に探し求めて抹殺するような対象でもない。ここは下請け人員でも事足りるからな」

 

奴の扱いは鱗滝殺戮用兵器。そこまで焦るほどの価値ではない。たまたま、鱗滝を憎んでいるという器が揃っていたからそこに漬け込んで特攻兵器として動いてもらうだけの話だ。

精々今日の夜明けと共に連れ帰るだけだ。

 

「けどまあ、俺はやり残したことがあるからな」

 

俺が視線を向けたのは、山の中で鬼と必死に取っ組み合ってる隊士見習い共の姿。

この最終日の夜を終えて尚その腕で刀を振るえた時、晴れて奴らは正式な鬼殺隊隊士となるわけだ。

 

「そう易々と敵型の戦力増強を見てられるほど俺は優しくないからねぇ」

 

もう既に、奴らを恐怖のどん底に突き落とす手筈は整えてあるのだから。

 





ー江戸コソコソ噂話ー

最終選別は特に産屋敷家の監視があったりするわけではありません。なので1週間経ったら自分の体内時計を便りに山から出てきてくださいという放任主義的なところがあったりする。
というこの小説オリジナルの設定。
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