剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
朱雨はチート。でもそれを上手く使いこなせない。
ついに7日目、空は今にも雨が降り出しそうな曇天。
送り出した鬼殺隊の卵達が帰ってくる日。やはり毎度彼らを死地に送るこの7日間は私自身かなりの罪悪感に押し潰されそうになる。けど、彼らが今日しっかり元気に帰還してくる光景を見れば、私も彼らを送り出した甲斐というものがある。
「今年は何人来るか…」
とは言ったものの、毎年数十人近く挑んではそのほとんどが返ってこない、あるいは全員が犠牲になるという狭き門。鎹も山中に入ることはなく、選別中の経過を知る由もない。いったい今年は何人生き残っているのか、想像もつかない上に確認のしようもなかった。
「さて、もうすぐその時間ですね」
後ろばかり見ていられない。もう間もなく最終選別開始から丸1週間が経過となる。生きて帰ってきた彼らを迎えることとしよう。
(………良かった。いますね)
山中よりこちらに引き返してくる集団を確認し、全滅は免れたと私はホっと胸を撫で下ろす。
全員の顔と名前こそ全て把握していないものの、今年の参加者は50人近くであることは記憶している。そして今現在、目視でこちらに向かってるのが確認出来るのは両手で数えられるほど。つまり、およそ2割ぐらいの人は選別を乗り越えて生き残れたということ。
(…いや、数人ではない?)
その数、もはや数人
(……40は軽くいる?)
気づけば歴代最高ともいえる全参加者中8割近い生存者たちがここに集結していた。8割といえば普通最終選別中に殉職する犠牲者の割合であったりするのだが、思いもよらぬ圧倒的な生存者数に、恐らく送り出した当の私が1番驚愕している。
「…生還出来たぞー!」
「あぁ!生還した!それもアイツがいたからだ!」
「あの人のおかげで助かったよ!」
「奴が居なきゃ喰われてたぜ」
「俺もあの人に救われた!感謝してもしきれない!」
加えて集結している者の多くが大した怪我もなく生き生きとしており、口々に何者かに救われた者である旨を話している。例年であれば例え1週間を耐え抜いても腕を失ったり何かしらの傷を負って帰ってくる者が大半だというのに、どうやら彼らの話によれば誰か大勢の危機を救った存在があるらしい。
「…そうか、皆生きて出たか」
そしてそんな40近くの集団の中心に遅れて姿を現したのは、あまり多くを語らなそうな、ボソリと皆の生還を尊ぶような声を漏らす小柄な少年。ただ1つ、妙な疑問を残して。
(なんで彼、そっちの方から来たんでしょう?)
他の参加者が山の方面から直でこちらに向かってくる中、何故か彼だけは山とは正反対方面にある草の茂みから姿を現した。わざわざ迂回する理由があったというのか。
(…まあ良いでしょう。人には見せられない事情があるのかもしれません)
何はともあれ、彼はその小柄な見た目とは裏腹に多数の者の危機に駆けつけた英雄であることが伺える。
(…これは、大型新人の予感。もしかすると、柱になれる器かもしれない……)
彼がどういった呼吸を扱うのか、そしてどのような育手を介したのかはこの後知るとして、まずは想定外の生存者が来てしまった故にやることが沢山出来てしまった。
(玉鋼と鎹鴉が足りない…)
けどそれは嬉しい悲鳴と言ったところ。想定よりも圧倒的に多い生存者数で用意していた玉鋼と鎹が不足することぐらい、なんてことないものですから。
(仕方ない…)
本来新人隊士に新しくつける予定だった鎹を1匹私の所に呼び寄せる。
「…本部に伝言を。今年は生存者多数につき追加で玉鋼と鎹を要請してきて。その数40」
「カァー!タシカニ!確カニ伝言ウケトッタ!」
そう叫ぶように言った鴉は一足本部へと向かった。やがて鴉の姿が遠く見えなくなるのを確認し、私は一転今度は後ろで待つ40人の選抜通過者に意識を向けた。
「はい、皆さんこちらに注目してください!」
そうして40人の意識をこちらに向けさせる。
予想外の生存者がいたのだ。例年は鎹鴉や玉鋼の選考をこの場で行っていたのも、少々予定を変更しなくてはならない。
(ん?あれ?)
40人全員の意識がこちらに向いてると思った矢先、1人こちらの40人集団から遠く離れた外れの方で、先程までいたであろう藤襲山の方をじっと見据えている少年がいた。よく見たら皆から英雄扱いを受けていたあの子で、いつの間にか中心からあんな外れの所まで移動していた。
「…聞こえてますか!?」
私は遠くにいるその子に対して、普段は滅多にあげることの無い大きな声を使うも、どういうわけか彼は振り向かない。
「………もしかして難聴?」
確かに彼、先程周りがどれだけ感謝の言葉を述べても個人個人には返事していませんでした。1つその可能性の線が見えた私はつい柄にもなく彼の元へ走ってしまった。
「…すいません、1度集合するのであちらまでお願いします……」
1人山の方をじっと見据える彼の肩に背後から触れる。が、その時不思議なことが起こった。
(…な、何これ)
手を置いた瞬間、まるでこの小柄な少年の内に潜むドロドロとした悪意に満ちた塊が一気に流れ込んでくるような感覚に襲われた。もはや到底人間が発するものではない、そんな得体の知れない身の毛もよだつ物がここにはあった。
(…ど、どういうこと?)
私はなにか、決して触れてはいけないものに触ってしまったことに気づいた。
「…猗窩座、そっちはどうだ?ほう?回収は完了したのか? こっちか?こっちはあとは纏めて潰すだけだよ」
当の少年は誰かしらと会話。内容的に明らかに普通じゃない。というよりも、明らかに会話している素振りからしても難聴の線は消えた。そもそも彼は多くの人の窮地に駆けつけている英雄であり、そんな人が難聴っていうのはまずおかしい。
でも、だとしたら彼は一体何なのだろうか。
「んじゃあな、こっちもしばらくしたら始める」
…そういえば、この最終選別の参加者は総じて50人くらいいたはず。けど、私はその全員を把握している訳では無いし、その前にまず
「……もしかして!」
それから導かれる結論は決して少なくない。けど、最悪の結末に気づいた時にはもう遅かった。
「皆さん急いでここから逃げて!!」
ここにいる40人の生存者たちに向けて声が枯れる勢いで叫ぶと同時に、彼の手元からはカチャと刀を引き抜く金属の音が鳴る。
【
その瞬間、音が一瞬この世から消えたかと錯覚するほどの静けさに見舞われ、その直後彼を中心に巨大な火の球と光が周囲を覆い尽くした。
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「…出口どこ」
蕾です。最終選別7日目なのでさっさとこんな鬼の巣食う山など早く出ようと思ったら、迷ってしまったとです。
蕾です。蕾です。蕾です…。
なんて巫山戯たことを言ってる場合ではない。結構深刻だったりする。恐らく他の人たちはみんなとっくに山を降りているし、昼間のうちにここを出ておかないと今日の夜もまたこの山で過ごすことになる。しかも、他の人たちがいないということ即ち、鬼に襲われても誰も救いの手を差し伸べてくれないということだ。
「…誰かあ…山の外まで誘導してぇ…」
そんなことを言っても出口は向こうから来てくれない。親に売られて生贄として死にかけて何故か7日この山で生き延びてと今に至るまで妙な悪運の強さを発揮してきたのはいいけど、まさかここに来て出口が分からず外に出れないとは誰が想像出来よう。
「それにしても……」
少し空が暗い。昼間だというのに曇天の空が日光の兆しを見せない。加えてこの辺りは高い木に覆われていて、例え晴れてもあんまり日光は差し込まなそう。これでは昼でも鬼が活発に動けてしまうし、いつでも走って逃げる体勢は整えておいた方がいいかも。
「鱗滝ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいい!!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」
早速嫌な予感が的中した。目の前からイッちゃってる目をしながら発狂する4本腕の鬼が全速力で迫ってきた。逃走本能が人一倍俊敏に働いた私は速攻で踵を返して駆け出す。
「復讐!鱗滝に復讐ぅぅぅぅうう!!」
復讐とか何か結構えげつないことを大声で口にしながら爆走している。鬼もかなりの速度で向かってきてるけど、何故か追いつかれずに上手いこと一定の距離を保てている。普段から色々と考えることを放棄して逃げてばっかりだからかね、逃げ足だけは速いんだ。
「いやぁぁぁぁ!誰かお助けぇええええええええ!!!」
本当、毎度お馴染みの他力本願だが、もう他の選別参加者はとっくに山を降りてるので誰も来るはずない。このまま走っていたら運良く山の外に出れたりしないかと淡い希望を抱くも近辺から藤の花独特の香りはしない。
…ようは詰みですね。
「あっ」
全力で駆け抜けていたその時、数糎ほどの小さな段差が私の爪先をガッシリ捉えた。その拍子に私の体は前のめりに投げ出された。
(なんでこんな所でやらかしちゃうんだろ…)
このまま顔を地面に擦り付けて摩擦で顔をボロボロにした挙句最終的にあの鬼に踏んづけられて見るも無惨に死ぬ3秒先の未来が見えた。
(あぁ…)
死ぬ直前は流れる時間がゆっくりに感じるってのは本当だった。私は目を瞑り迫り来る死を覚悟し受け入れた。
「おいコラ!朱雨と連絡してる間に勝手にどっか行くんじゃねえ!」
ところが、私はまたもや死ぬ運命にはなかった。
「うぐぐぐぐぐぐぐぐ!!?」
「朱雨が戻ったら即出発するから大人しくしていろ」
気づけば私は誰かの脇に抱えられていた。ふと瞑った目を開けると、そこには4本腕鬼の顔面に私を抱えてる人の右拳が突き刺さっているという異様な光景があった。
やがて暴れていた腕鬼も顔面に拳直撃は効いたのか項垂れるようにその場で静かになった後に地面に倒れ伏した。
「…怪我はないか?」
「あぁ、ありがとう…ございます…」
地面に降ろされた私は、そこで自分を助けてくれた存在が何であったかを知った。
(え?鬼?)
あの4本腕鬼を鎮めて私の窮地を救ったのは、なんと人ではなく鬼だった。腕から顔に至るまで全身が刺青に覆われた男の鬼。あの暴走をたったひと拳で鎮めたところ、この山にいるような理性のない鬼とは格別に強さも生きた年も違うような、少なくとも私の敵ではないような、そんな感じがした。例えるなら、私が宗教儀式の生贄として命を散らそうとしていた所をぶち壊したあの鬼と非常に近い匂いがする。
ようは、ある程度理性を兼ね備えた私の憧れ的存在の鬼。
「…あっ、そうだ!私、早く山の外に出なきゃ……」
とはいえ、普通に考えたら相手が鬼であるという事実には変わりない。悔しいことに人間は鬼にとって捕食対象でしかないんだ。とりあえず事を荒立てる事無くこの場から去ろうと思う。
「待て」
「えっ、ちょっ…!」
逃げようとした矢先、私はその鬼に左腕を掴まれた。もしかしてさっき助けられたのって、私を怪我なく傷のない綺麗な状態で喰いたいからなの、と半分狂ったかのような発想が浮かぶも、どういうわけか目の前の鬼は、私の発想とは裏腹にじっとその場で私の腕を優しく握りながら佇んでいる。
「まあ待て、俺は女は喰わんし殺さん。それは鬼の名に誓って約束しよう」
「でっ、では何故?く、喰わないなら何故?」
「……直に分かる」
「へ?」
私が間抜けな声を漏らしたその直後、山の外から耳を劈くような大きな爆発音が響き渡った。何か常識では考えられない異端が起きたのは火を見るより明らかだった。
「…終わったな。今の爆発を便りに外に出るといい」
そうして私の腕を握っていた鬼の手が離れた。言葉通り、どうやら本当に私を食べようとはしないみたいだった。
「な、なんで? なんで私を食べない…?」
山の中で会った鬼はみんな私を食おうとしか考えていなかったし、儀式荒らした私の命の恩人ならぬ恩鬼もその場で殺した教祖と信者の肉食っていた筈。
「…まあ、何となくだ」
そうとだけ答えると、目の前の刺青鬼は気絶した4本腕の鬼を肩上に抱えて草木の茂みに消えていった。
「そうだ、この山から出なきゃ」
先程の爆発で出口は分かった。それを便りしろってさっきの鬼も言っていたし、こんな危なっかしい山、早いとこ出るに限る。
・
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「…なにこれ」
そうして他の人達に遅れて山を抜けた先、そこで私が目にしたのは目を疑う光景だった。
「…あの爆発って」
薙ぎ倒された多くの木々と焼け焦げて黒ずんだ人骨の山。これには私が刺青鬼に腕を掴まれたのも納得の状態だった。
「…凄い」
でも不思議と私の口から漏れたのは、この凄惨な光景を憐れむ言葉ではなかった。この異様な光景を作り出せる程の力を持っているということに対する関心、あの日私の運命を変えた鬼という種族に対する興味がより深まっただけの話であった。
(でも本当悪運の強さだけはどうにかならないものかな)
私は何度死を覚悟すれば気が済むのだろう。生命運だけ異様に高い気がしてならなかった。
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最終選別が終わって再び静けさを取り戻した山中にて、40人近くの参加者と1人の産屋敷んところの餓鬼を灰と骨に変えた後、俺は山の中で1人アイツらの合流を待っていた。
「待たせた。すまない」
「よう、遅かったな」
約束の時間より少し遅れて猗窩座が合流した。その傍らには気絶させたであろう鱗滝発狂腕鬼がいる。
「悪い、ちょっとな……」
「ちょっと?その割には随分と何か含み気のある顔してるぞ?」
「…流石に100年以上親友やってる朱雨にはバレるか……まあ、帰りにでも話す」
「そうか、じゃあ移動するから掴まってな」
そうして俺たちは一同藤の檻を超えて拠点への帰路についた。最初にこちらに来た行きとは違って帰りは鉄砲玉候補の4本腕の鬼も一緒だ。
「んで、猗窩座はなんで遅れたんだ?」
「あぁ、ちょっと山の中でとある女剣士と遭遇してな」
「待て。猗窩座が女に甘々なのはまあ仕方ないとしてソイツ鬼狩り候補者だろ」
「そうだな。けど7日目の昼迎えて未だ山中いたし暴走した腕鬼に追いかけられてたから放っておけなくてな」
「おい今聞き捨てならないこと聞いたぞ。7日目迎えて山中ってことは選別終わってんじゃねえか」
つまり消し炭にしたあの40人近い鬼狩りの卵集団の中にはそいつはいなかったということになる。
「まあ朱雨の起こした爆発便りに外出ろって言っといたからな。今期の選別通過者はあの女だけということになる」
「やっぱ仕留め損ねかぁ…」
俺にとっては仕留め損ねだけど、その女にとっては怪我の功名だな。
「とは言っても悪いことじゃない。その女、俺を目の前にして刀を抜こうとはせず見なかったことにする感覚で俺の近く離れようとしてたからな」
「それってただ猗窩座に臆して逃げようとしてたんじゃないのか?」
「いや、確かに体は震えてたし逃げ癖があるみたいだったがそれだけじゃなさそうではあったな」
「ほう?ちなみに何故そう思った?」
猗窩座がそう思うならそうなんだろう。もう猗窩座が言うってだけで絶対的信頼が置けるな。何せその上に童磨とかいう十二鬼月の生きてるだけでマジ災害枠がいるせいでやたらと猗窩座の信用度が際立つわ。
ところで霊人形の半天狗さん、最近また懲りずに当道座に潜ってるらしいけど本当にぶっ殺すぞマジで。
「透き通る世界でアイツを見た。殆どの鬼狩りは、例えなりたての卵であっても刀を持つ腕の筋肉が反応するんだよ。でもアイツは刀を握ろうともしてなかったし一切の殺意を感じなかった」
「…つまり、その女は逃げ腰であると同時にそもそも戦意がない。早いところ鬼という種族に対する敵意が見られないということか」
「察しが早くて助かる。ようは鬼に身内や友達を殺されて鬼狩りになる連中が殆どの中で、あの女は鬼への敵意もなかった」
「なるほど…妙な訳あり感を感じる。鬼殺隊は給与もいいから利用されて鬼狩りになる可能性の線もか……」
「確かにそういった輩は一定数いる上で朱雨も見たことあるだろう。でも、そういった奴らはそもそも選別中に大半が鬼に喰われるような小物だし、例え残ったとしても流石に鬼に対して幾らかの殺意は向けてくる」
「なるほど、鬼を倒せば結構な額の小遣い手に入るもんなぁ。だとしたら鬼に対する殺意がないのは訳あり物件ってことか…」
意外と会話が弾む。これから持ち帰る腕鬼の事など忘れてしまいそうな程に会話は弾んでいた。
「んで、朱雨の方はどうなんよ」
「どうなのってのはなんだ?」
「あんな爆発見たことないぞ。最近痣が出てから思いつきで幾つも新技編み出してるとは聞いたけどあーいうのは毎度何処から着想得てんだ?」
「あー、やっぱりそこ触れるか…」
俺の呼吸やら血鬼術は、殆ど元になる何かがある。実際、星の呼吸は今ある呼吸の剣術を参考にしている。本来、複数の呼吸を極める者なんていないし呼吸が他の呼吸の要素を含むなんてない筈。星の呼吸は確かに真似事の呼吸なんだけど、真似で呼吸同士を組み合わせたり派生したり何でも出来てしまうのだから自分でも不思議で仕方ない。星の呼吸ってなんなんだろうな。
「イマイチ思いつきでやってるけど分からないことも多いんだよな…」
「自分のことを完璧に理解してないのに上弦ノ弐やってたって普通に異常じゃないか?」
「だな。実際今回の巨爆も参考にした何かがある筈なんだけど、何を参考にしたかまではよく分からないんだよね」
あんな爆発起こせるものなんて、まず
「とはいえ人を皆殺しにするって理念が生んだとすれば何ら不思議じゃない。猗窩座だって、血鬼術の由来は思い出せないだろう?」
「…それもそうだな。いつも術を発動する時にするあの構え、何処かで誰かから学んだ気はするけど思い出せねえ」
俺は猗窩座の過去を知っている。何せその場に俺も居合わせたんだ。でも、それを話してしまえば猗窩座は猗窩座で無くなってしまうような気がしてならない。
(…まだ、そのときでは無いか)
俺も思えば色々引っかかる記憶がある気がする。それも人間であった時の記憶とは異なる、何処か
(父さん…母さん…なんでそんないもしない神様のことばっかり……)
(…親が偉いってだけで何故こんなにも明確な上下関係が生まれる)
(…何故、○○が死ななきゃならない。お前は障害者の皮を被った異常者だ)
……深く触れるのはやめよう。思い出したところで録な記憶では無いみたいだし。ただ、人間への殺意が膨らむだけで、今とやることは変わらない。
「にしても、今回は人間の絶望する顔を拝めたんだ。鉄砲玉も連れて帰れた。鬼狩り共の恐怖心も煽れた筈だ。この上ない成功だろう?」
「…唐突だな、まあ確かに成功だ」
「分かってくれるよな? 何せ多くの雑魚鬼切り伏せて多くの窮地を救ったことに貢献した英雄だと、みんな口々にしてた。そしてあの型だ。俺が鬼であると知る間もなくみんな一瞬で死んでったよ」
「…相変わらず、興味無い人間には容赦しないな」
「何言ってんだ。猗窩座だって弱味噌野郎は嫌いだろう?」
「それもそうだな。弱く卑劣な手を使う人間は死んで当然だ」
「だろう? 1人産屋敷の女だけは途中で俺が人間でないことを察したみたいだが、手遅れであっさり爆発で死んだよ。あとは、鬼狩りの鴉共が被害報告出して産屋敷が戦慄するまで一緒だ」
そうだ、この襲撃は無駄じゃなかった。鬼狩り共へ残した傷は心身共に大きいだろう。
昔のことなんかどうでもいい。今はただ今回の収穫を素直に喜ぼう。
ーちなみにこの後ー
「…猗窩座、帰ったら堕姫たちも呼んで上弦で祝勝会でも挙げるぞ」
「…ほう、ちなみに
「あんな無感情肥溜め教祖なんて誰も呼ばないよ。あと呼ぶとしたら黒死牟さんと霊人形の半天狗ぐらいかな」
強いて言えば新月ノ鬼やってる鳴女さんも呼びたいけど宴は興味ないだろうし半天狗は当道座出戻り噛ましたそうなので説教。
「…おい玉壺は」
「俺アイツとそもそも交流ないから…」
「えぇ…」
ー江戸コソコソ噂話ー
巨爆はだいぶ威力控えめなので被害は半径1キロ程度。当然ですが技の由来はこの時代にはそもそも存在しないものです。
あと4本腕こと手鬼さんは鱗滝しか喋れない訳じゃないです。ちゃんと会話できます。