剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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前回後書きで高評価コメントヨロシクゥ!と書いたところ、『零余子チャン可愛いヤッター!』や『鬼滅は普段読まないけど友人の誘いで見ました』などなど嬉しいコメントや評価が届きました。一方で『オリジナル設定多すぎつまらん』といった評価もあって賛否両論といったところ、非常に参考になります。


閑話 堕姫狂イ前日譚

上弦ノ陸、堕姫と妓夫太郎。十二鬼月という無惨直属の配下で無惨と朱雨を除けば上から6番目の強さを持つ鬼。

 

かつて2人は朱雨の教えを受けておりその実力は折り紙付き。そして師である朱雨の実力も、かつて上弦ノ弐を務めており尚且つ現在満月ノ鬼という特別な位にあるという実績からも分かる通り相当高いものである。

 

だがしかし、そんな2人を持ってしても唯一適わず窮地に追い込まれた事があった。

それは蓮華という名の鬼人族の隊士を相手にした時である。その隊士は、鬼特有の弱点である日光も効かず斬られても斬られても多少十二鬼月の鬼より再生速度は劣るものの腕が無くなるような事があろうと無数の傷を負おうとも生存可能という、もはや限りなく不老不死に近い存在であり、ある意味では鬼の始祖である無惨をも超越した存在であった。

 

最終的には何とか撃退にこそ成功するも、朱雨はこの時鬼となって以降初めて死にかけたのである。

 

 

一方そんな化け物(蓮華)との戦いの中、上弦ノ陸は弟子の生存を第一と考えた朱雨により、血鬼術で遥か宛もなく遠くの地へと転移させられた。転移先を意識する余裕もなく『とにかく』の一考で遠地へと飛ばされた上弦ノ陸2人だが、そこで何があったかのストーリーはよく分かっていない。

 

加えて、次に朱雨が上弦ノ陸と再会した際には、何故だか上弦ノ陸の先鋒である堕姫は完璧なまでに豹変していたのである。もはや妓夫太郎が匙を投げるレベルまで俗にいう変態と化しており、どうしてここまで狂ってしまったのか、その経緯はさっぱり不明であった。

 

実は堕姫は元より朱雨に対して敬愛の感情を持ち合わせており、好意にも似たモノを向けてすらいた。

だが、ここまで感情を隠さなくなったのにはとある事情があったのである。以下はその堕姫が狂うまでのお話。

 

 

 

 

「おい起きろ!起きろ!」

「うーん?お兄ちゃん?ここは?」

「鬼がスヤスヤ寝てんじゃねえよなぁあ。早く体を起こせぇ」

 

妓夫太郎に体を揺さぶられて目覚める堕姫。朱雨に強制転移させられた衝撃で堕姫は爆睡を決め込んでいたのだ。

 

「俺がずっと見てたからまだしもなあ。朝が来てたら死んでたぞ」

「うーん…ごめんってお兄ちゃん。ってか普通にお兄ちゃん外出てるけど大丈夫なの?」

 

体を起こした堕姫が見たのは、普段は体力のなさから本来堕姫の背中に埋もれてる筈である妓夫太郎の元気な姿。

 

「分からねえが転移させられてから異様に元気だ。これからは外で生活してても問題無さそうなぐらいにはなああ」

 

何故か妓夫太郎の体には異変が訪れていた。朱雨が苦肉の策として、堕姫の背中に埋もれて過ごすという策に出ざるを得なかった、上弦ノ鬼として致命的すぎる欠点が唐突に無くなっていたのであった。

 

「なんで?」

「さあ?俺にもわからねえなああ。急に今までの体力不足が嘘かのように動けるようになった」

 

その詳しい要因は定かでは無いものの、転移が関わってるとか関わってないとか。真相は作者のみぞ知る。

 

「あっ!そうだ!朱雨さんのところ戻らなきゃ!」

「おい待て」

「なんで?どうしてよ!」

 

思い出したかのように走り出した堕姫の目の前に立ち塞がって引き止める妓夫太郎。

 

「相変わらずお前は頭が悪いなぁあ。そもそもここが何処なのか分かってんのかあ?」

「そういえばここって…」

 

そうして堕姫は辺りを見渡す。上空には綺麗な星空が広がり今が真夜中であるということは分かるが、肝心の居場所は何処か城下町の路地裏であるということぐらいしか分からない。

 

「…だとしても、朱雨さんのところに早く向かわないと……」

「お前の気持ちは分かるがなあ、じゃあそもそも俺たちはなんで今こんな所にいるってことになる」

「えっ?」

 

そう、そもそも彼らは蓮華という鬼殺隊の柱と交戦していた。丁度鬼殺隊の柱相手に攻撃を仕掛けようとしていたところを最後に記憶が途切れている。そして知らずのうちによく分からない場所へと転移させられていた。それから導き出される結論は1つだった。

 

「…俺たちは転移させられたんだよなぁ?ってことはあのままだったら危険だったからこそ師匠が逃がしてくれたってことなんだよなぁあ?」

「そんな……朱雨さんが……?」

 

酷く落胆する堕姫。自分が朱雨の足手まといになっていたこともそうだが、何よりも朱雨の力になれず自分が転移されて安全な所にいるというのが彼女のプライドを突き刺したのだ。

 

「…師匠が転移させたということは、あの鬼狩りは今まで殺してきた柱とは訳が違うということだなああ……」

「…朱雨さんは1人残ってそんなことを………」

「だなぁ。俺たちが今できるのは師匠の元に駆けつけることじゃない。無事を祈ることだなあああ…」

「…そんな……朱雨さぁん………」

 

妓夫太郎の判断は尤もであった。仮に堕姫と妓夫太郎が再度朱雨のところへ駆けつけていた場合、彼女たちは普通に狩られてた可能性が高かった。妓夫太郎は賢明な判断をしたと言えよう。

 

「朱雨さんはどうなっちゃうの!?」

「…分からねえ。とにかく待つしかない。師匠が負けるはずないんだからなあ…」

 

内心では妓夫太郎も焦っていた。なにせ2人とも上弦ノ陸になって以降は人間相手に負けるどころか苦戦することもなかった。鬼殺隊の柱ですら何人も殺してきており、下弦ノ鬼のようにただ狩られる側ではなく寧ろ狩る側なのだから、ここに来て初の柱に苦戦及び戦力外通告だなんて受け入れられる筈がなかったのだ。

というよりもそんな戦力外通告される程の強敵を相手にしてるとは気づかなかったのである。これは完璧なる2人の慢心であったが、それは十二鬼月としてのプライドが許せなかったのである。

 

「しかしどうにか師匠の無事を知る方法はないかあ…」

 

__そんな時であった。

 

「………無惨様?」

「えっ?無惨様から?」

 

朱雨の安否が気になるさなか、入ってきた脳内への無惨からの血を介した通信。2人はそれに食いついた。

 

 

『満月ノ鬼は無事だ。案ずることは無い。ただ、一時苦戦を強いられていた上にソイツには逃げられた。これからはこの鬼狩りの殺害もお前たち上弦の責務とする。死力を尽くしてかかれ』

 

内容は朱雨の勝報ではなかったものの死んではないという報せであり、届いた一報に2人はただ安堵の息をついた。

 

「…良かった、朱雨さん生きてた……」

 

2人が安堵の息をつくと同時に、肝心の朱雨はというと痣を出して真なる力に目覚め、猗窩座と共に蓮華の体をバラバラに斬り刻むことで辛うじて勝利を収めていた。

 

「…とはいったものの、朝が来てしまったかあぁ」

 

妓夫太郎が空を見上げる。路地裏であるが故にこの場所を日光が直接照らすのはまだまだ先になりそうではあるものの、もう既に表を自由に歩くのは出来なくなっていた。

 

「…危なくなったら琵琶女に無限城通して貰うしかねえなぁあ」

 

妓夫太郎はボソリと呟いた。もう既に表が自由に歩けない以上、いざとなったら鳴女を通して安全地帯に避難するしか無かった。

 

「…お兄ちゃん、これからどうするの?」

「そうだなあ。とりあえず師匠の方が片付いたら俺たちも琵琶女に頼んで日陰に送って貰うしかねえなあ」

 

そうして鳴女による回収を待つことにした2人。

____そんな2人の後ろから突如近づく謎の影。

 

 

 

「…君たち面白い夢を見ていたみたいだねえ?」

「誰だ!!」

 

上弦の察知能力を持ってしても感じ取れなかった背後から忍び寄る存在に、2人は自然と警戒体勢に入った。

 

「…やだなあそんな殺気を向けてこられたら」

 

謎の存在は上弦2人の殺気に臆するどころか寧ろ殺気を向けてきて尚ヘラヘラと笑っていた。

 

「…隊服も刀もない。鬼狩りではなさそうね」

「うん?よく分からないけど、僕はただの人さ」

「なんだコイツはあ"ぁ…」

 

柱でもなければ鬼殺隊でも無い。にも関わらず上弦の察知能力をものともせずに近づいてきたその存在に、もはや2人は気味の悪さすら感じていた。それもそのはず。コイツは本来の世界線で『他の鬼の断末魔を聞けて幸せだった』などと抜かしている筋金入りのサイコパスである。

 

「ねえそこの可愛い子、君想い人がいるみたいだね」

「…!? さ、さあ?なんの事かしら?」

「おい妹、こんな怪しいヤツの言葉に耳を貸すな」

「そしてその想い人の役に立てなかったことを悔いている」

「…だ、だから何よ!?」

「おい!」

 

妓夫太郎は制するも、堕姫はその怪しい存在の言葉を無視できずにいた。人心掌握術において、心の隙間に入り込むようなことをされた場合、大抵の人は耳を貸さずには居られなくなる。それも、伊達に無惨から『頭悪い子供』と評される堕姫の事である。心を取り込まれるのは時間の問題であった。

堕姫の場合、恩師である朱雨に戦力外通告されたことが心の隙間となり、そこに奴は入り込んできた。

 

「…君は想い人の役に立てずここで呆然としていた。違うかい?」

「…えぇ、そうよ。私は朱雨さんの足手まといでしかなかった。それが悔しくて堪らない。恩師を窮地に追い込んだかもしれないという事実がどうしようもなく辛い」

「やっぱりね…きっと君は自分の実力を高く評してた。そしてどうしようもない壁にぶつかり、自惚れていた自分が情けないと…?違うかな?」

「そう、そうよ!なんで…分かるのよ……」

 

それも一を聞いて十を知るような相手だったことが災いした。加えて堕姫は自らの悩みを謎の存在に打ち明けている。にも関わらず相手がいかにも自分の心情を当ててきたかのようなリアクションである。

これも詐欺師がよく用いる人心掌握の1つだったりする。

 

「…おい堕姫」

 

そしてストッパーとしての役割を完全に放棄した妓夫太郎。もはやここまで来た堕姫は止められない。頭弱い妹にただ呆れるしか出来なかった。

 

「俺には分かるんだよ。その悩みから逃れられる夢みたいな方法も含めてね」

「そんな方法が!?あるの!?教えて……!あるなら私に教えて!」

「…なに、簡単なことさ」

 

そうして謎の存在からその手法を聞き出した堕姫。既に心に付け込まれている堕姫にとってその方法は果てしなく魅力的に受け取られた。

 

「…積極的に?」

「そう、もう想い人に対して執拗いぐらいに感情も欲も包み隠さずにぶつけるんだ。そうしたらきっとその心の靄は晴れるよ」

「そ、そうなのね…よし!」

 

冷静に考えたらもはやヤンデレともストーカーとも変わらない限りなく犯罪の臭う危ない行動でしかない。でも、堕姫は信じてしまった。それが正解なのだと、完全に判断を相手に委ねてしまったのだ。

 

(愚かだなぁ…君に想い人がいるのは先程からずっと朱雨さん朱雨さんって同じ人の名前口にしてるし悩んでることぐらいお兄さんとの会話から簡単に読めるよ)

 

現に謎の存在の方もこうして何も予言を的中させた訳でも何でもなかった。誰にでも出来る手法で的確に心の隙を突いただけなのである。

 

(まあいいか…)

 

妓夫太郎も別に自分に危害が及ぶわけでもないのでこの件に関しては首を突っ込むことをやめた。

 

 

 

 

 

 

「…そうだ、そういえば貴方。いい事聞かせて貰ったお礼としては何だけど、鬼にならないかしら?」

「へ?」

 

ただ、謎の存在もこればかりは予想していなかったらしく、間の抜けた声を出していた。

こうして謎の存在もとい、将来の下弦ノ壱(・・・・)は鬼となる道を選んだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばお兄ちゃんの体の痣。なんか黒く濃くなってない?」

「……言われてみればそうだなあ」

「体力不足が解消されたことと関係があったりしてね」

「…まさかなあぁ」

 

 

こうして話は無限城パニックに続いていく。

 

 

 




将来の下弦ノ壱こと謎の存在さんが使用してる人心掌握術は割とマインドコントロールにも使われる手法です。皆様も間違っても怪しいおじさんから100万円の怪しい壺を買ったりしないようにお気をつけください。

ちなみに、ホストとキャバ嬢って互いに通ったりしている人達もいるそうですね。キモい男客の愚痴をしたくてホストクラブにやってくるキャバ嬢もいるとか…。そういえば堕姫さん、昔朱雨に客のこと愚痴ってましたね。
そしてホスト狂いしたキャバ嬢がストーカーになってしまった事件が平成の世でも……?あとはご察し。
夜の街の心理は掘れば掘るほど闇が深い。

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