剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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この小説終わるのか?
終わらせられるのか?

あと10話ぐらいで原作いけるとは思うんだけどなぁ………


12/15 日刊ランキング72位確認しました!ありがとうございます。
12/16 日刊ランキング76位確認しました!連日ありがとうございます。
12/17 日刊ランキング83位、また入ってて驚愕…。


43話 その名は累

___街は僅か数十年で驚くほど変わった。和風建築しか無かった江戸もとい東京の街並は、西洋風の建物が立ち並び夜も電気で明るく照らされている。

 

無惨様に下された蝦夷への左遷もようやく解けて、無事関東への帰還を許された。まあ本当はとある無惨様から新しい指令(・・)を受けるために戻ってこいと言われただけなのだけども、ようやく俺たちは数十年振りに慣れ親しんだ関東の地に舞い戻ってきたのである。

 

関東に戻ってくる時には、蝦夷という名称が一昔前の遺産と化して函館県になっていたりという時代の流れを感じる出来事なんかもあったけど、まあそれはそれだ。

 

「これが牛鍋…あつっ!」

「そのまんま口放り込んだら熱いし汁が濃いからそこの卵につけるんだよ」

 

今は家族みんなで、文明開化による賜物であるご馳走、牛鍋を食べに来ている。江戸時代は肉食が禁じられていたために人間以外の生物を食する機会がなかったが、中々に美味だ。

勿論普段は人間が利用する店なので家族全員鬼の力で人に擬態している。

 

「うぉいふぃい(美味しい)」

「口に詰め込みすぎだよ」

 

零余子は相変わらずの大食らいで毎度リスみたいに口に物を頬張る節ある。食べることが何より至福の時なんだそうで、そこは鬼になってから何年も経てど終始一貫して変わらない。

 

そうそう、大事なことを言い忘れていた。

ここにいる家族(・・)というのは零余子だけでは無い。つまりどういうことかと言うと。

 

 

 

 

新しく家族が増えました

 

 

「累も美味しいか?」

 

名を累。蜘蛛糸のような紋様の袴を身にまとっていて真っ白い肌と髪の少年のような容姿をした鬼だ。元病弱で、故に人間時代は常に床に伏せるしかなかったという。それに深い哀れみを覚えた無惨様が鬼にすることで救済してあげたとのこと。

 

「…うん、…美味しい」

「それは良かった」

 

けど、鬼になって病弱を克服したことを家族には全く喜んでもらえず、それどころか鬼に恐怖を抱いた父親の手によって危うく殺されそうになったとのこと。それ以降親の寵愛を欲しており、偽物の絆では無い本物の絆による家族という存在を羨望していたという。

 

そこで白羽の矢が立ったのが俺たちだった。俺たちの家族関係は無惨様公認のものであったし、別で鬼の家族を新たに作るぐらいなら既に存在している枠組みに組み込んだ方が都合が良かったのだろう。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「朱雨、蝦夷での任務ご苦労だった。青い彼岸花が存在しなかったのは残念だが幾つもの鬼を勧誘したことに賛辞を送る」

「ははっ!誠に光栄でございます」

「良き返事だ。お前のその忠実さに免じて頼みたいことがある」

「なんで御座いましょうか。何なりとお申し付け下さいませ」

 

「この私の隣に佇む鬼、名を累という。この者をお前の家族に迎え入れてやって欲しい」

「………はい?…………はい、畏まりました。無惨様の御依頼とあらばその者を我々の家族に」

「では、頼んだぞ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

そんなこんなの経緯があって、累がうちの家族に加わることになった。

 

「……………」

 

表情豊かな零余子と違って累はあまり感情が顔に出ず多くを語らない為に無愛想に写るかもしれない。けど、俺には分かる。輝いた目で美味しそうに牛鍋食べているのを見逃す筈がない。

 

「まだ食べる?零余子、累」

「うん!」

「…うん」

「すいませーん!肉3人前追加でー!」

 

こうして新しい家族を迎え入れた俺たちは牛鍋というご馳走を囲みながら夜を更かしていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとそれ私の肉!」

「違う、これは僕が入れたヤツ」

「こらこら、まだ肉も具もあるし好きなだけ食べていいから喧嘩しない」

 

2人の仲があんまりよろしくないのは後々どうにかしないといけないな…。

 

 

________________

 

 

私は零余子。お父さん、名を朱雨っていう鬼の娘。お父さんは無惨様より十二鬼月とはまた別の、満月ノ鬼っていう位を授けられた凄い鬼なんだ。

私はそんなお父さんを心から愛してるし家族という関係を何よりも大事にしている。

 

ある日だったか、蝦夷での任務を終了を無惨様に言い渡され、先に私はお父さん宅へと戻っていたのだけど、後から帰還してきたお父さんがとある鬼を連れてきた。

 

お父さん曰く新しい家族だとのことで、突如として私に弟が出来た(・・・・・)

 

名を、"累"。私と同じくらいの背丈で白い肌をした、無感情というか無口というか、全てにおいてどちらかというと感受性豊かな私とは対称的な性格をした子ども鬼。

 

蝦夷もとい函館県で数十年近く過ごし、それなりに同族である鬼も増えてきて、それに伴ってやってくる鬼狩りの数も増えて勢力を増やすという任務には成功を納めたけど、家族まで増えるとは聞いてない。

 

元侍なのに銃火器ばっか使う戦闘方法をとってる犬…じゃなかった佩狼とか、今は亡きデカいだけの手むくじゃらの発狂デブとか、遊郭にいた梅毒兄妹弟子とか、分裂する盲目霊人形おじさんとか、お父さんの勢力下にいるような奴はいたけど家族という特別な枠組みは私だけの特権だと思ってた。

 

(なんで? 家族ってそんな軽々しいものなの?)

 

私はただ自由の身になるという簡単な事柄に付け加えて一生のお願いとして家族になりたいと望んだのに。

でも、無惨様からの頼みらしくて、どうにもこうにも受け入れるしかないのが現実だった。

 

それで累という鬼について。

___正直、私は彼のことを認めていない。

無口で相容れない性格。それはお父さんに対しても同じで、返事も素っ気なさを感じる。

お父さんから聞いた話によれば、元々家族を望んでいたのは彼自身で無惨様はそれに乗っかっただけ。家族に加わるのを望んでいたのは他でもない彼自身。でも本当にそうならもっと嬉しそうにしてもいいのに、彼は喜ぶ素振りも見せない。

 

お父さんのことはとても尊敬してるし、血は繋がってないとはいえ本当の家族だと思っている。

でも、こればかりは理解できなかった。お父さんにとっての1番は私じゃなかったのか。家族になり得る鬼は私以外でもいいと言うのか、あんなふてぶてしい奴が家族でもいいのか、そんなことばかりが頭の中を過ってしまう。

お父さんとの関係が揺らいでしまいそうなことを考える度に、私の胸が張り裂けそうになる。

 

そのせいか、私は累とはあまり仲が良くない。お父さんにとっての1番は私で、彼なんかがお父さんが愛されてる理由が分かりやしない。

 

 

(お父さん、いったい何故累なんかを…?)

 

ずっと、私の頭の中でその疑問だけが蠢いていた。

 

 

________________

 

 

 

1歩、また1歩と足を進める。思い通りに動かないひ弱な足に鞭を打ってでも僕は前に進んだ。

 

「このー!」

「待てー!」

 

僕の視線の先には元気に雪遊びをする同年代くらいの男子の姿。雪玉を投げあって遊ぶ集団を見て、僕はただ混ざりたいその一心で歩を進めていた。

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

 

けど彼らの所に辿り着く前に僕はその場で発作を起こして倒れ伏してしまった。『僕と遊ぼう』と言うことすらままならず、咳だけが冷たい雪の上で幾度となく繰り返される。

 

「累!ダメよ外に出ちゃ!」

 

そして僕は、後を追いかけてきていたらしい母さんに抱きかかえられて家に連れ戻された。

 

 

 

「はぁ……」

 

延々と降り続く雪を前に、僕は溜息を零した。降り続く夜中の雪なんか見てても全然楽しくないし、折角なら雪の中で子どもらしく遊びたかった。

 

「……どうして、僕はこんなひ弱なのだろう………」

 

僕は生まれつき病弱だった。外に出ようと少し歩けば急に呼吸が苦しくなって立っていることすら出来なくなる。僕はそんな自身の体が情けなくて情けなくて、自身の運命を呪うしか出来なかった。

 

 

「可哀想に、私が救ってあげよう」

 

 

無惨様が、僕の前に現れるまでは。

 

 

 

 

 

 

僕は人間をやめた。

無惨様の血を頂いたことで、僕は病弱な体どころかあらゆる疫病、怪我を恐れる必要のない生物、鬼となった。

 

「…凄い!」

 

布団の上で大人しくしている必要もない。僕は夜空の下を初めて縦横無尽に駆け回った。疲れもしない、発作も起きない、僕は人智を超えた存在になれたんだと、強く自覚し憂いに思った。

 

定期的に人を喰らわねばならないし日光を浴びることは出来ないが、それは人間が食事や水、空気が無ければ生きていけないのと同じで、今までの床に伏せるだけの生活と比較すれば圧倒的に自由度が高い。

 

「…累、なんてことをしたんだ!」

 

でも、両親はそんな僕の元気な姿を喜ばなかった。人を喰らうために殺人をした僕を見るやいなや恐怖に恐慄くような素振りを見せ、まるで化け物を前にしているような目をしていた。

 

(なんで、喜んでくれない?)

 

僕の元気な姿はそんな醜かったのか。 僕は床で伏せていれば良かったのか。分からない、理解できなかったけど、そうと言わんばかりに鬼と化した僕を、父親は声を震わせながら包丁で刺し殺そうとしてきた。母親もそれを見て涙を流すだけで助けてくれようとはしない。

 

(家族の絆は……偽物だったのか………)

 

気づけば僕は人離れした力をもって、父親から奪った包丁を手に、2人を殺害していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全てはお前を受け入れぬ両親が悪いのだ。お前の強さを誇れ」

 

無惨様はそう励ましてくれた。

部屋には息絶えた両親の姿。鬼になって健康になった僕を化け物と恐れて殺そうとした、2人の末路だった。

 

「…………」

 

母がなんか言っていた気がするけど、思い出せない。どうせ恨み辛みだとか『この化け物』だとか最後まで往生際の悪い人間の戯言だろう。

 

 

そうして晴れて丈夫な体を得た僕は、人を喰らいながら平穏な日々を過ごしていた。たまに現れる鬼狩りを潰し、自由で丈夫な自分を光栄に思いながら鬼として邁進する。

でも、そんな中どうしても1つ心残りがあった。

 

(僕を守ってくれる、真の親として接してくれるような、家族の絆をこの身で感じ取れるような………そんな存在はないのだろうか………)

 

気づけばそんな切な願いだけが僕の中で渦巻くようになっていた。

唯一これだけは人だった頃に残してしまった未練であり、自由と引き換えに求めようと得られない失ってしまったもの。

 

が、その願いが無惨様に届いたのだろうか。ある日のこと、僕は無惨様に無限城の大広間まで呼び出された。

 

「無惨様、これはいったい?」

「…累、確かお前は家族を欲していたな?…実はうってつけの鬼がいるぞ」

 

そうして遅れること目の前に1人の鬼がやってきた、10代後半のような若い見た目を持ちながら内に潜む覇気は数十や数百では得られない古参の雰囲気を醸し出す鬼。その目には満月と刻まれており、それがその鬼を只者ではないと示す刻印であると気づくのにそう時間は掛からなかった。

 

「この私の隣に佇む鬼、名を累という。この者をお前の家族に迎え入れてやって欲しい」

 

これが僕の新しい家族であり父親となる、朱雨さんとの初めての邂逅だった。

 




ー明治コソコソ噂話ー

無惨様が朱雨を無限城に呼んだのは腕鬼の死亡とか伝えるだけのはずだったらしいよ。蝦夷送りはたまたま。
ちなみに左遷が解けた理由はご察しの通り累くんを家族に迎え入れるからです。原作よりはマシだけど基本無惨様はブラック上司だから仕方ないね。
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