剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
あっ、明日からしばしスプラ2のフェスがあるので少々投稿休みます。でも今モチベぶち上げマジ卍なので次話すぐ書いてやんよー!ブゥンブゥン
私は今、本人に気づかれないように、建物の影から目的の人物を視線で追っていたのだが、そこでとんでもない光景を目撃してしまった。
「どうしよう…」
私は零余子。訳あって帰る場所が無くなってしまったが故に放浪することとなり、当然ながら拠点が消えた為に家族離散して行方が分からなくなっていたお父さんを探し続けること1ヶ月、確かお父さんは猗窩座さんと仲良かったからと猗窩座さんのいる横浜の地を見張っていたところ、ようやくその姿を捉えることに成功した。
(けど、お父さんなんであんな悪臭のする屋敷に窓から入っていったの!!?)
恐らくお香の類の臭いだとは思うんだけど、いくらなんでも臭いキツすぎるし、まるで何か隠したい臭いがあるとしか思えない。
憶測でしかないのだけど、ここってもしかすると訳アリ案件だったりするんじゃないかな。
「だとすれば…」
そうなれば、屋敷の奥に消えていったお父さんをこっそり追っていった方がいいかもしれない。というかそんな行く行かないで迷う義理もない。
ただし今と同じ状況下になろうと対象が累の場合は以下省略。元はと言えばアイツが私の稀血勝手に食ったから拠点が消し飛んだんだ。
「ふん、あんな奴…」
本当の本当にお父さんから愛されてるのは私だけなんだから。早いところ、累よりも先に早いところお父さんと合流しておかないと。
(…いや、あまりアイツのことを考えるのはよそう。まずはこの訳ありそうな物件を漁った方がいいかも…。何か嫌な予感がするしね………)
そうして私はお父さんが屋敷の奥に消えて行って見えなくなったのを見計らって、遅れてお父さんが潜入した窓とは別の窓を開けて屋敷内に突入した。
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僕は今、とある建物の角から目標の人物を目で追っていたのだが、そこで思いがけぬものを見てしまった。
(…父さん? なんであんな所へ?)
僕は累。零余子と大喧嘩して拠点が壊れちゃった上にその闘争によって拠点のあった場所に人集りが出来てしまった為に鬼狩りの目につくかもしれない事態を想定して川越を離れることになったのだが、それでお父さんとははぐれてしまった。
それから1ヶ月、僕は微かな記憶を探り、確か父さんは猗窩座さんと仲良かったことを思い出し、猗窩座さんのいる横浜の地でしばらく張っていたのだけど、見事その予感は的中を見せた。
(しかし父さんはなんであんな香くっさい場所へ入っていったんだ…?)
近所一体に充満しすぎててイライラすることこの上ないぐらいだと言うのに、何故父さんはあんな所に首を突っ込もうとしているのだろうか。
(…もしかして、ね)
この臭い、確実に何かを誤魔化そうとしている臭いだ。そこに父さんが入っていった。嫌な予感しかしない。
「なら……」
当然後を追う一択に限る。父さんは大事な大事な家族だし、その身に何かあってからでは遅い。合流したいのも踏まえて、僕も父さんが入っていった屋敷に潜入するとしよう。
ちなみに余談だけど、先述の家族の枠組みの中に例の零余子とやらは入ってない。あんな大食い単細胞、誰が家族と認めてやるものか。
「…クソ」
元はと言えばアイツが稀血を食っただの言いがかりをつけてくるからだ。本当に大事なものなら袋詰めにでもして名前でも書いておけばいいのに、そんなの零余子の落ち度じゃないのか。
「ふん…」
まあその件に関しては今は置いておこう。此度の最優先事項は父さんと合流することだ。零余子に父さんとの合流において先越されるのは腹が立つことこの上ないし。
(さて、父さんの後を追おう)
とその時、僕はあるものを目にした。
(…えっ、零余子。………アイツ、まさか……)
僕が目にしたもの、それは父さんの後を追うように別の窓から屋敷に潜入していく零余子の姿だった。
「遅れをとってたまるか」
僕も零余子に続いて、2人とは更に異なる位置の窓から屋敷へ突入した。
「……アレは、コソ泥か?でも、気配的には人ではないような……?とりあえず御館様に報告してみようか……」
鬼狩りという更なる新手が僕が屋敷内に潜入する瞬間を視界に捉えていたとは、この時の僕は全く気付けなかった。
…これが、まさかあんな波乱を生むことになるなんてね。
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「そうか…そんなことが……」
「えぇ、私はとても哀れな母。分かるでしょう?」
香の匂いで満たされた屋敷の中、俺は1人この匂い騒動の張本人である者から事情を聞いていた。
「…娘が生まれてから本性を表すなんて悪どさの極だな」
「でしょう? 最終的には賭博場の女と駆け落ちしようとしたし、あんなの自業自得よ」
なんとも彼女こと弥栄は不幸な人生を送ってきたのだなとしか言えない。夫は賭博や酒にこの家の資産を次々と投じてそれを咎めれば暴力を振るう外道者。鬼である俺の方がよっぽど家族を大事にしているだろう。
夫の死後は目の前で床に伏せる謎の病に侵された娘の看病に時間を奪われる毎日。かつて大量にいた使用人は暴力夫を恐れて皆逃げ出し、近所の者も夫が怖くて手を差し伸べることが出来ずに噂するだけして見て見ぬふり。
まったく、神様なんてのはこの世にいないのだとつくづく思う。このような不条理が日常に蔓延ってるのだからな。
「…はぁ」
屑夫に主人を捨てた使用人、終いには日和見主義な住民共。これだから人間は嫌いなのだ。
(この者も鬼にしてやらねばな……)
人間に苦しめられた者は多い。鬼は同族同士で食である人間を巡って憎しみあい争うと言うが、同族同士で争うのは人間も同じだろう。そしてそんな同族に苦しめられた彼らを鬼にして救済することがやはり俺の宿命なのだ。
「弥栄と言ったか。素晴らしい提案がある」
「…なんでしょう?」
俺は懐から、無惨様より頂いた血を取り出して彼女の手の平に置いた。ちなみにあの後、頂いた血は幾つかの試験管に分けており、彼女に渡したのはその分けたうちの1つである。
「お前も鬼にならないか?その血を飲めば陽光には当たれなくなるが、病も怪我も知らない強靭な肉体となれる。その力を持って人間共に復讐する。どうだ?名案じゃないか?」
彼女は渡された試験管をじっと見据える。あれから実に数ヶ月も経っているが、その有り難き血は、相変わらず頂いた時と同じように後光の如く光沢を放っている。
「わ、私は……」
「そうだ、何なら娘と一緒に鬼になるか? 娘と共にクソったれた人間共を殺しつつ永遠を生きてみるか?」
そうして彼女を鬼にすべく促す。
しかし、彼女からの答えは俺の予想に反するものであった。
「私は…まだ鬼にはなりません」
「何?」
彼女は受け取った試験管を俺に手渡すと、キッパリそう言い切った。
「何故だ?陽光と鬼狩りを除けば娘共々何も恐れることはなくなるのだぞ?」
鬼となれば娘の病も治る。彼女はこの世の不条理に対して復讐できる。粋な人間に粛清を下す事だって可能になる。彼女にとっては魅力しかない事項であるというのに。
「…まだ、やらなくてはならないことがあるので……。期を見てその提案を受けいれさせて頂きます」
「ふむ……」
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その言葉の意味は、
「……そうか、分かった。気が変わったらまた言うといい。それまでしばらくここに滞在させてもらう」
「はい、かつての使用人が使ってた汚れた部屋ばかりですが良ければ……」
…ついでにどさくさ紛れに陽光凌げそうな臨時拠点確保。まさかテキトーに理由つけて暫く滞在させてくれと頼んだらこうもすんなり上手くいくとは、まさに棚から牡丹餅ってところか。
「それでは席を外させてもらう。何か手伝えることがあれば呼んでくれ」
「はい」
こうして俺は彼女の元を後にし、今後の予定を考えるため使用人がかつて使ってたと思わしき部屋へと入る。
(しかし、彼女の言ってたまだやらなくてはいけないことって何だろうか)
深堀りこそしなかったけど、きっと病床に伏せていて鬼になるか否かの意思すら問えない娘本人の現状を鑑みて時間をくれと言ったのだろう。
不幸の底にあっても、なんて彼女は素晴らしい人間なのだろうか。
(…言ってみるもんだな)
加えて拠点提供の恩もある。だからこそというのもあるが、そもそも俺は同族に酷い目に遭わされた人間や武闘派の努力家人間に対して、元より深い理解を示している。鬼狩りはそれに該当しようが問答無用で斬り殺すがな。
「さて、軽く
俺は1人薄暗い部屋の中でそう呟いた。
「…私の生きる道は決まった。朱雨さんだったっけ? あの御方が示してくれた幸路に早いところ乗りましょう。…それに際するならこの娘は……邪魔ね」
ー明治コソコソ噂話ー
朱雨はまだ弥栄がクズ中のクズであることに気づいてません。
また、弥栄が簡単に朱雨を滞在させるのを許可したのは、自分の過去を悔やんでくれた上に自身が幸せになれるであろう道を示してくれたことによる感謝+時が来たらすぐ鬼になれるように近くに置いときたいというもの。ようは利害の一致ことwin-winの関係である。
1/23 追記
多忙になってしまってまだ半分しか書けておりません。明日ようやく休みが取れるので投稿は月曜日までにできると思われます。