剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
【血鬼術 種の呼吸 壱ノ型 発芽薙ぎ】
【血鬼術 刻死輪転】
【天の呼吸 漆ノ型 夜桜】
私目掛けて飛来してくる血の薙刀での突きを躱したと思えば周囲を覆う無数の糸。私はその攻撃を漆ノ型による無数の畝り伸びる斬撃で無効化していく。
【血鬼術 種の呼吸 弐ノ型 庭漆】
しかし無効化されることを前提とした攻撃だったのか、あるいは想定内としていたのか、間髪入れず小さい女鬼が扱う薙刀の連続斬りが私目掛けて幾数にも繰り出される。
「大喧嘩しといて良かったね!」
「あぁ、既視の術だから即興の連携が出来る」
既に街は戦いで瓦礫と化しており、自分の生まれ育った郷の最期を彷彿とさせるが、いつもと異なり今回はそんな感傷に浸り冷静さを欠く余裕はない。
(この餓鬼共…思ったより強い……)
鬼がこうも綺麗な連携をするとは思わなかった。こちら側が他の隊士と連携して1体の鬼を相手とることは幾度かあれど、その逆はこの100年
(クソッ……厄介な連携だな……)
距離を置いて戦えば小さい男鬼が繰り出す糸に翻弄され、距離を狭めれば小さい女鬼の振り回す薙刀と糸の連携に振り回される。つまり、遠距離近距離両方を補える隙の無さに加えて、どちらか一方に集中して各個撃破を狙えば即座にもう一方の糸か薙刀が飛んでくる。
【血鬼術 種の呼吸 陸ノ型 豪華絢爛 -華吹雪-】
更には続けざまに、辺り一面に女鬼の斬撃が繰り出されて私の動きを封じる。
(ふん、このくらい)
この斬撃の密度、薄すぎて余裕で躱せる。というか局所局所人1人通れるぐらいの隙間が出来ている。思わず、この型は未完成なのかと疑ってしまう。自身の血を用いて作り出した薙刀による攻撃も稚拙なものだし、自身の体から出来たものとはいえ、そもそも薙刀という武器を扱うようになってからまだ日が浅いのではないか。
【血鬼術 綾女籠】
と思ったのも束の間、女鬼の斬撃を次々回避して辿り着いた先が突如糸で覆われた。
「まんまと誘い込まれたね…」
「…なるほど、そういうことか」
どうやら先程の薄い薙刀攻撃は私を特定の位置に誘い込む為の罠。その証拠に、男鬼の出す糸密度は女鬼の斬撃密度とは比較にならない程高い。
【天の呼吸 壱ノ型 虹道】
だがその糸を断ち切ってさえしまえば問題はない。折角追い詰めたつもりなのだろうが、私はそんなことでやられるほどヤワな存在じゃない。
今の私は、かつて鬼殺隊最高戦力
(とはいえ、連携は早いところどうにかしないとな…)
即興で連携技を編み出されることの連続。正直1人で相対するには少々武が悪い。早いところ対応しておくことに戦局的な異存は微塵もない。
(ならば…)
このような技の使い方をするのは初めてだが、厄介な連携を引き剥がすには試してみるしかない。
【天の呼吸 陸ノ型 夕時雨】
本来の使い方とは異なるが、私は天の呼吸の中で最も広範囲を攻撃可能な技を放った。
「なっ!」
「くっ!」
幾数にも降り注ぐ梅雨時の豪雨に見立てた斬撃は、私の目論見通り両鬼を防御に釘付けさせ、即座に連携出来ない状況を作り出した。
「ぐっ……斬撃が多い……」
小さい男鬼の方が糸束を大量に放出して数多の斬撃に撃ち落とす。しかしそれで手一杯のようで、そこにあるのは先程とは打って変わって他者のことなど構ってられない防戦一方となった哀れな餓鬼の暴れ技。
「怯まないで累!よく相手を見て!この型を使用してるアイツ、ずっと突っ立ってる!恐らくこの型を使用すると暫く動けなくなるのよ!きっと私たちの連携を阻止するために引き剥がしに来たみたい!」
と思いきや女鬼の方、もうこの型の弱点と私の作戦を見破ってきた。あの女鬼の言う通り、この型の使用中は広範囲攻撃と引き換えにこちら側の動きに柔軟性が無くなる他、その場で静止して扱うことが前提の型ということもあって斬撃を放っている最中は無防備になる。
「ってことはこの斬撃さえ掻い潜れば…」
「そう、あとは分かるわね?」
なるほどと、私は口角が吊り上がるのを感じた。この期に及んで餓鬼共にしてはよく考えたものではある。
【血鬼術 種の呼吸 弐ノ型 庭漆】
【血鬼術
女鬼は薙刀を振り回して降り注ぐ斬撃を逸らさせ、男鬼は逸らされた私の斬撃の間を縫うように竜の形をした糸の塊を飛ばしてきた。
「馬鹿か!それで勝ったつもりか!?」
一体いつ、私が陸ノ型である夕時雨を発動したら暫く動けなくなると言った。もっと単純な話、途中で型を
【天の呼吸 捌ノ型 曇天】
厚く重い雲に覆われたような斬撃に重さを乗せる型で、極太い横薙ぎの一閃が周囲の空間を広く抉り裂いた後、それぞれの主武器である糸と薙刀はその一閃の元にバラバラになって砕け散った。
__そして更に、この型は別の型に繋ぐことも可能。これだけでは決着は着かない。
【天の呼吸 玖ノ型 薄明光線】
分厚い曇天の空から差す一筋の陽光は、まさに昼間活動する鬼にとって不意を突く天の一撃。その神速にも匹敵する不意打ちの斬撃が、主だった武器を全て砕かれて無防備と化した両鬼の頸を、一瞬のうちに跳ね飛ばした。
「…敵ながら褒めてやる。餓鬼ながら私を少しでも翻弄したこと。そこらの下弦よりは手こずったからな」
地面にボトリと落ちて一言も言葉を発さなくなった頸を前に、私はそう言葉を漏らした。
(しかし…このような鬼が存在するとはな……)
先程までの戦闘力や連携といい、更には人間を舐め腐って慢心しない他の鬼とは異なる、まるで
この餓鬼共に戦いを教えた輩がいるのだろう。そして奴らが発していた父親らしき者の存在。十中八九、そうなのだろう。かつて数十年前に、上弦ノ参と連携を見せた上でバラバラに斬り刻まれた雪辱、例え記憶から消えようとこの体がその悔恨を忘れることはない。
(まあいい…この場には居ないようだし……)
所詮は奴も卑劣外道な鬼。不老故に暇すぎて家族ごっこでもしていたのだろうが、どうもお暇して餓鬼共の最後の瞬間には立ち会わなかった模様。父なら餓鬼の面倒くらい見てやったらどうなんだがな。
「まあいい、さて、終わったぞ」
私は背後で戦いの行く末を見届けてもらっていたかつての元花柱である彼女に声をかける。
「……あれ?」
背後を振り返れど戦闘前まで確かにいた筈である彼女の姿がない。戦闘に巻き込まれることを危惧して別の場所へと移ったのかと辺りを見渡してみれど何処にも彼女の気配がしない。
(…それに、何か妙だぞ)
どういう訳か周囲に誰1人として人の姿がない。戦闘前、此方より大勢避難しているのは確かにこの目で確認したが、それでもここが横浜という都会である以上、誰か1人くらいは逃げ遅れや野次馬たちがいる。それに幾らなんでも遠くに避難しすぎである。恐らくこの横浜という街から全ての人間が消えたのではないかというぐらい静かすぎる。
まるで、この空間に私1人だけが取り残されたようだ。
(…それに、何故だ?周囲の建物が綺麗すぎないか?)
あれほどの激しい戦闘が起こったにも関わらず、周囲の建物は区画整理が済んだ後の新築がズラりと建ち並んでおり、まさにあらゆる面において不自然としか言いようがなかった。
「そうだ!あの餓鬼共の死体は!」
先程頸を斬った餓鬼共の亡骸に目をやる。しかしそこにあるのは頸を斬られて言葉すら発しなくなっている双鬼の最後の姿。
けど、明らかにそれすらもおかしい。頸を斬ったという事実はあったし、実際そこに鬼共は転がってるんだ。
(いや待て…本当にそれだけか…?)
前述した、実際そこに鬼は転がってる件だが、そこについても異変が起きていた。
「何故だ、確かに頸を斬られたら鬼共は塵となって消えゆく筈!なのに何故!体の崩壊が始まらないのだ!」
頸を斬られた鬼が消滅するのはこの世の条理。だというのに、そこの鬼は頭を転がしたまま身動き何1つ取らない。
(まさか…)
第三者の介入か、私はまるで、あの瞬間に別世界へと迷い込んでしまったのでは無いだろうか。
(なら、早く抜け出さないと………ってかどうすれば)
気づいたのはいいがこの術から脱する術が分からない。
「やっと気づいたのね。馬鹿なヤツ」
ー明治コソコソ噂話ー
今回でてきたオリジナル設定の支ですが解説しますと、9人の柱よりも上に立つもはや生きる伝説みたいな隊士で構成されており、メンバーは蓮華が固定、その他は後輩の甲隊士に現柱と同呼吸を扱う者がいて柱になる条件を満たしていた者がいた場合、現柱が繰り上がる形で柱から支のメンバーになるというパターン。
あるいは十二鬼月を5体以上討伐する。もしくは御館様がその実力に匹敵と判断した場合。
定員は蓮華を含めて4人。