剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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今回は明治コソコソ噂話をお休みします。あとがきの方にて理由を説明致します。


50話 決着と再会

 

 

(ククク…馬鹿なヤツ……)

 

私の目の前には空に向かって只管刀を振り続ける鬼狩り最高戦力を名乗る間抜けな奴。

確か名前は蓮華とか言っていたか。ソイツが今何を見てるか(・・・・・・)は把握出来ないけど、私たちに都合のいい幻覚が見えているのは確か。

 

「…退屈だね」

「まあ待ってて。きっとこれだけ暴れた以上、お父さんは確実に私たちがここにいると認識した筈」

「そう…だね。下手に動いてすれ違うよりかはいいか」

「うん、それに___」

 

私は片手にあるソイツの姿を累の方へ向けた。騒がれないようにと喉を潰してやってるにも関わらず、奴は私に向けて鋭い眼光を放っている。その様は宛ら鬼に対する怨恨か、奴の言う元弟子に対する裏切りの怒りか、醜く老婆と化した現在の姿からは想像もつかない若き頃を彷彿と眼差しだった。

伊達に花の呼吸の元育手で、人だった頃に私の師だったというだけはある。

 

「…そうか、口封じはしておかないとダメか」

「えぇ、それに折角だからコイツの所存もお父さんに委ねようと思って」

「それは名案。これだけの戦果、さぞ喜んでくれるだろうね」

 

腰を地に落ち着けながら私たちはのびのびと談話に花を咲かせる。目の前では鬼狩りが刀を振り回し続けていて片手には手負いの老婆がいるこの状況が状況なだけに、異常が過ぎる光景。

 

「…ほんと、こんな形で結託することになるとは思わなかった」

「全くだよ、父さんが居なかったらきっとこんな仲間意識なんて持たなかっただろうし」

 

隣合って座っている光景から想像もつかないけど、ほんの1ヶ月前に私たちはマジの殺し合いをしている。

今思うと、あの大喧嘩の大元はずっと心の奥底で煮えたぎっていた累への対抗心であり、更にその大元の最深部まで辿れば、お父さんという家族愛を誰よりも欲していたことにあるんだと思う。

 

「ねえ、累はお父さんのこと、どう思ってるの?」

「フッ、そんなの姉さんと同じに決まってる。本物の家族愛や絆に満ちた、僕たちの帰る場所。だろう?」

 

そしてそれは累と全く同じ思い。私も累も、1番にお父さんから愛されたかったことにあった。

結局は譲れない思いのぶつかり合いでしかなくて、それが結果として帰る場所を粉々にして、1ヶ月も家族を散り散りにしてう最悪の事態を招いてしまった。

 

「やっぱり、同じなんだね」

「うん」

 

そうして会話を終えた矢先、先程まで幾度も空を裂いていた鬼狩りの動きに変化が起きた。先程まで終始脇目も振らずに刀を振り回し続けていたというのに、今や何か周囲を警戒するようにキョロキョロ見回している。

 

「…ありゃ、そろそろ気づかれちゃった?」

「みたいだね」

 

もう時間の問題みたいだ。まあ種の呼吸における脳への認識干渉は鬼狩り最高峰の存在ですら初見なら幾許か騙せることは分かったし上出来ね。後は人質殺して終わりとしよう。

___それに加えてもう1つ。

 

役者も揃ったみたいだからね。待ってたよ、お父さん(・・・・)

「あぁ、久しぶり。零余子、累」

 

コツコツと足音を立てて私の後ろにお父さんがやってきた。こうして奴との決着を前に、私たち一家3人は合流を果たした。

 

 

________________

 

 

団子で腹を満たした俺は、弥栄さんのいる館までの帰路についていたのだが、そこで事は起こった。

 

「逃げろ!逃げるんだ!」

「みんな避難しろ!」

「向こうで刀持った奴と訳わかんねえ化け物が暴れてる!早く遠くへ逃げるんだー!!!」

 

阿鼻叫喚としながら目の前からこちらに向かって全力疾走して来るその数幾十にもなる群衆。口を揃えて「逃げろ」と叫んでるその様子からは只事では無いことが起こってることが容易に想像できた。

 

「おい、何が起きてる」

 

俺は逃げ惑う集団のうち1人を掴まえて事情を聞き出した。

 

「向こうで3人連中が暴れてるらしくてな。建物が倒壊したり呪いの術なのかデカい蜘蛛みたいなものを見た奴もいるらしい。お前も早く逃げるんだ」

 

そうして足早に退散する男。夜間とは思えぬ人の波に、俺はふと2人の子ども達のことが頭に過った。

 

(3人…まさか2人が鬼狩りと相対してる?そしてこれ程までの衝撃。まさか……!)

 

嫌な予感がする。もしアイツ(・・・)と遭遇していた場合、2人の身に何かあってもおかしくない。

そう考えた俺は人の波を飛び越えて屋根伝いに現場へと急いで向かったのだが、到着した先で俺が目にしたのは異様な光景であった。

 

 

「えぇ、何これ…」

 

そこには確かに身に覚えのある鬼狩り最強の女、蓮華の姿があったのだが、もっと異様なことに蓮華が型を出すために刀を振り回し続けている中で、1ヶ月ぶりにその姿を目にする2人が隣同士で腰を落ち着けていたのだ。宛らそれは2人仲良く歌舞伎座を見に来てるような姉弟関係のように見えなくもないが、あれほどまで犬猿だった2人が仲睦まじく隣合ってたり鬼狩り最強の蓮華が空を斬り続けている様子、更には何故か零余子の片手に見える弱々しい老婆の姿。

 

(…情報が多すぎないか)

 

まず零余子が片手に持ってる老婆。これは持ち方の雑さから人質の可能性が高い。そして2人が隣合って座してる点。これは俺の知らない内に仲直りする切欠があったのだと予測。

詳細は後程聞くとして最後の蓮華による舞いの披露宴と化した状況。蓮華はかつて俺に対して強力な殺意を向けていたことから鬼である2人に対しても容赦なんてものはない筈。

 

(…そうか。そういうことか)

 

すぐに答えは導き出せた。なにせ長らく過ごしてきた家族のこと。家族の技から性格において俺が知らないことなんてないからな。

 

(…種の呼吸、恐らく参ノ型で脳に種を植え付けることで幻覚を見せているのだろう。いくら鬼狩り最強とはいえ、初見で脳に手を出されてしまえばその術を破るのは容易ではない筈。よくここまで強くなったな……)

 

娘が鬼狩りの()ですら翻弄出来るほどに成長していたことに思わず感心してしまった。

そして___

 

 

「待ってたよ。お父さん」

「あぁ、久しぶり。零余子、累」

 

___俺と家族は正式に再会を果たした。

 

「…種の呼吸で幻覚を見せたのか?」

「うん、その通り。奴は今までずっと幻の私たちと戦闘してたの。凄いでしょ?」

「そうか、奴を相手にここまで戦えるなんて凄いな」

「でしょ?累が上手く隙を作ってくれたから出来たんだ」

「そうかそうか、累もよく頑張ったぞ」

 

2人の頭を撫でてあげると、零余子の方は「えへへ♪」と嬉しそうに笑みを浮かべながら老婆をその辺に投げ捨てつつ俺の方に体を寄せ、累の方は無表情かつ無言ではあるもののこちらも体を寄せて嬉しさを表現する。

 

そして一方、向こう(・・・)も若干ではあるが自身が幻覚幻聴の沼に陥ってることに気づきつつある模様。

 

「さて、続きは後だ。アイツ(蓮華)はほぼ不死身の体。故に殺すことは出来ない。だから時間を稼いでここから逃げるしか方法はない。零余子、そこにいる死にかけの人質にトドメを刺し、奴の脳天吹き飛ばして逃げるぞ」

「うん分かった、よし」

 

零余子は俺の元から一旦離れると、手の平を空に向けて翳した。

 

「吹き飛べ!」

 

零余子が拳を握ったその瞬間、その拳に連動して奴の全身が幾百もの肉と化して四方に爆散する。そしてその肉片と血は、充分に距離を取ってる筈の俺たちの方まで飛来してきた。

 

「さ、コイツも殺して逃げるぞ」

「うん」

 

零余子はぶっ倒れてる瀕死の老婆の元へ向かうと一言、「さよなら」と嘲笑しながら言い放って自身の血肉で作り出した薙刀で腹部を突き刺した。

そういえば零余子が前まで持ってた刀が無いなと思ったら、いつの間にか自身の血肉で武器を作るようになった挙句、主武器を刀から薙刀に変えていたらしい。

 

「さて、とっとと離れるぞ」

 

そうして俺は2人の肩に手を置き、そのまま血鬼術の瞬間移動を用いてその場から姿を消した。

 

 

________________

 

 

それから数分ほど経った頃、周囲に散らばった肉片がようやく人の形を取り戻し始めていた。

 

(クソっ……してやられた……)

 

自身の身の異変に感づくも時すでに遅し。蓮華は十二鬼月ですらない鬼に幻術を掛けられて敗れるという鬼殺隊最強の名が廃れかねない大いなる屈辱の底に沈んでいた。

 

(何故、もっと早いうちに気づかなかったんだ……)

 

鬼というものは基本自らの生物的優位さから鬼殺隊であっても見下し舐めてかかる傾向がある。故に自らの血鬼術を明かしたり自身について多くを語りすぎて結果的に術を破られたりして頸を落とされる。

しかし此度蓮華が相手した零余子と累はその鬼の特徴からあらゆる面でかけ離れた異端的存在であった。種の呼吸の本筋についても語らず、累も糸の血鬼術における全てを明かしていない。

種の呼吸における真価を一切匂わせることなく術中に落とされたが故に、その術を見破ることが出来ず敗北したのだ。

 

(はっ、そうだ!)

 

蓮華は辺りを見渡す。閑散とした空気が無くなり、元の認識状態に戻ったことを感じた蓮華はかつての同志の姿を確認しようと目を配らせたのだ。

 

(あっ………そんな………)

 

ようやく見つけた探し人の姿。しかし蓮華が見たものは血の池に沈んだ変わり果てた瀕死状態の彼女の姿。

 

「目を覚ませ!大丈夫か!おい!?」

 

急いで彼女の元へと駆け寄り、その瀕死の体を前に膝をついて声をかける蓮華。目を覚まして欲しいばかりか、蓮華は思わず体を揺さぶろうと手を出すも、それが彼女の息の根を止めてしまうかもしれないと刹那伸ばした手を引っ込める。

 

「…まだ微かに息があるが、これでは………」

 

その瞬間、空からポツリと降り出した水滴が彼女の額を直撃し、それによって彼女はふと目を開けた。

 

「あ………蓮華…………」

「…!」

 

弱々しい声で蓮華の名を呼ぶ。しかし、当の蓮華はそれで彼女の命は風前の灯であることを察した。

 

「……もう、私は………先は長くない。…………聞けるうちに………聞い…て………くれ……」

「待って!そんなこと言わないでくれ!」

 

蓮華の望みとは裏腹に、彼女の生命力が段々と弱まっていく。それに反比例するかの如く、雨足の方は益々強まっていった。

 

「…女の鬼は……かつて私の……教え子だった………。花の呼吸から………鬼を出した………。……故に………これも天命………なのだろう………」

「…!」

 

その事実は、先程まで彼女に声をかけ続けていた蓮華を黙らせた。

せめて彼女の最期の言葉を聞き届けようと、決意を固めたのだった。

 

「……頼む。……私の死体は…………初代の……植えた……桜………必勝(・・)という……名がついてる………木の下に………埋めてくれ…………」

 

いよいよ土砂降りの雨になろうとした時、彼女は蓮華の腕を瀕死状態とは思えぬほど左手で力強く掴んだ。

 

「………そして………花の呼吸の……教え子たちを………」

 

蓮華はその手を抵抗することなく、彼女の生きた証であるとして受け入れ、あまりの力で血が出ているにも関わらずそれを拭こうともしなかった。

 

「……鬼殺隊の……未来を………託す………………頼んだ…………」

「……うむ、承知した」

「……………ありが……とう………」

 

それを最後に、彼女の腕は力を失って地に落ち、その目が2度と開くことは無かった。

 

 

 

「…………みんな、私より先に…逝ってしまう………な…………」

 

特異体質持ちの鬼人族という自身が半ば不老不死の存在であるが故に、彼女はいつもそうであった。寿命にせよ怪我にせよ病にせよ、蓮華の周囲は常に世代交代の繰り返しだった。

 

 

「……私は、孤独なの……か」

 

その後、蓮華は額や服についた雨を拭うこともなく、かといって雨避けの為に軒下に行くことも無く、ただ膝をつきそのままの状態でずぶ濡れとなりながらも、事後処理にやってきた隠たちに連れられるその時まで彼女の亡骸に寄り添っていたという。

 

 

 

 





祝50話です。そしてですが、皆様に謝らなくてはならない事があります。

先日、鬼滅ファンブック2弾の方が出まして、私もそちらの方を原作ファンの1人として読みました。
すると色々とこの作品における原作との矛盾があまりにも多いことが判明してしまいました。

まず、鬼は人の食事が取れず、食うと吐き戻してしまうとのこと。
主人公一行は鬼であるにも関わらず、牛鍋に団子にめちゃくちゃ食べてるし零余子に至っては人の食事をドカ食いしております。
次に無惨以外の鬼は擬態が下手くそということ。これは童磨が教祖として、堕姫が遊女として振る舞ってることから、鬼は皆擬態出来るのかと思えば、実はそうじゃなかったということが判明してしまいました。
そして堕姫狂イ外伝にて、魘夢は堕姫に勧誘された話をしましたが、原作では魘夢は無惨に食われた所で無惨を褒めそやした結果、気まぐれで鬼にされたという設定があることが判明。
終いには、累は原作の時点で鬼になってから20年ほどということも分かり、原作が1915年からして単純計算で1895年。累が朱雨の家族に加わったのは1885年前後であることからして矛盾しています。


なので、この小説ではそういう設定だとしてお読みください……。二次創作だしいいよね? 本当、すいません。


話変わって次回以降の予定ですが、まだ1890年代前半という大正までまだまだではあるものの、早送りであとほんの数話程で原作前哨戦編に突入します。
また、その際視点が鬼狩りsideに移る関係上、しばらく朱雨が出てこなくなりますがご了承ください。

それではまた次回にお会い致しましょう。
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