剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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投稿遅れまして申し訳ございません。
その理由をあとがきにて説明致します。


52話 その名は轆轤

『お前の作品は魂が乗ってないんだよ。これでは師匠である私の顔に泥が着くわ』

 

目の前に転がるのは粉々に砕け散った私の作品だった残骸。長い時間をかけて精巧に編み出した私の力作にも関わらず、師匠の目には滑稽に写ったらしい。故にか、師匠に力作を見せた次の瞬間、その作品は地面に叩きつけられてしまったのだ。

 

『掃除しておけ!』

『ま、待ってください!私はまだ……』

『…口は慎め』

 

そう言い残すと、師匠はバタンと大きな扉音を立てて自室へ篭ってしまった。

 

『………何故……何故なんだ』

 

陶芸の道を志し、世に数々の名作を送り出す著名な陶芸家である今の師匠に弟子入りして早くも5年が経つ。だが一向に、師匠には私の作品を認めてもらえなかった。作品を持っていけば、毎度粉々にされる。諦めず何度も持っていった。が、その度同じ結果に終わる。

 

『はぁ……』

 

此度もまた溜息をつきながら重い体に鞭を打って残骸を片付けようと立ち上がる。

 

『……何が足りないのだろうか』

 

そんな独り言を呟きながら箒を手に欠片を掃き始める。師匠の家は人里離れた山の奥にあり、そこでは回り続ける轆轤の音がただひたすら虚しく響くだけ。環境音に混じるその音は、まるで私を皮肉ってるようにも聞こえた。

 

 

 

___だから、必然だったのだろう。

 

 

『ヒョッヒョッヒョッ、哀れなものよ。師に利用されてると気づかない愚か者がいたとは』

 

全身が鱗に覆われた異形の何者、後の恩師となる彼との邂逅は。

 

 

 

 

 

『…これは』

『…た……助け………てくれ…………』

 

突如師匠が声にもならぬ悲鳴をあげたため、私は初めて師匠から絶対に立ち入るなと念を押されていた部屋に入ってしまった。

そこで目にしたのは、辛うじて意識だけは保っている全身を鮮血で真っ赤に染まらせた瀕死の師匠と、その隣に佇む異形の何者(・・・・・)かの姿。

 

『……お前、私を………助け……ろ………』

 

息絶え絶えにそう訴えかけてくる師匠だが、当の私は何が起きているのか理解が追いつかず、ただその場で立ち竦むしか出来なかった。

 

『ヒョヒョヒョ、とんだ阿呆よ。残念だが弟子は動かず、助ける意志など皆無。それもその筈よ。此奴は弟子の作風を盗む常習犯。そんな芸術を舐め腐った輩に差し伸べてやる手などない』

『……は?』

 

異形の者を前にして私が初めて口を開いたのは、突如として聞き捨てならないことを口にした奴への呆気だった。

 

『ヒョヒョヒョ、この部屋に入るのは初めてか? ならよく見てみろ。あちこちに並んでる芸術の数々、お前の目にも見覚えがあるのではないか?』

『……………………』

 

いきなり現れて一方的に事実無根の話を陳列してくるような奴の言うことなど信じられない。

とは思うものの、ついつい部屋中に目を配ってしまう。

 

(……そんな、あれって…………)

 

そう、ここは今まで一切入ることを許されなかった師匠の作業部屋。故に内装から師の芸術作品まで何もかもが初見。

そして、そこには自らの目を疑わざるを得ない作品が置かれていた。

 

『これは…俺が前に作り上げた作品…?』

 

そう、そこにあったのは、かつて私が作り上げては全て師匠の手で破壊されてしまった芸術の数々。けど、そこにあったのは粉々に砕け散り亡骸と化した芸術品の姿ではなく、しっかり私が作り上げ完成した状態のものが存在している。

 

『気づいたか?そうだ、ここの作品は全てお前の作品。正確にはお前が作り上げた作品を元にこの馬鹿が真似して作り上げた騙りの贋作だ。弟子が作った真作を破壊し、弟子の作風を見様見真似で移せば、名義を自身に出来る。何とも滑稽な奴だ………』

 

今日初めて顔を合わせた相手。対局に位置するは私の師匠。通常であればどちらの言葉を信じるかは一目瞭然、師匠だろう。が、百聞は一見にしかずと言ったところ、この秘匿部屋が全て真実を語っている。

 

『お前はずっと着想を搾取されていた。残念ながら恩師だと思っていた奴は芸術家として失格の愚か者よ』

『ち……違う……私は………』

 

瀕死の師匠が何か話そうとしているが、すぐに言葉に詰まった様子を見せた。

 

(何か言ってください………師匠………)

 

もしこれが巧妙に仕組まれた偽り芝居なら、異形の者に対して何か反論の余地はある筈。かつて私が見惚れた貴方の芸術は、偽りなどなき真と証明して欲しい。ただ、そう心から切望した。

 

『……………………』

 

ただ期待とは裏腹に師匠は何も言わなかった。瀕死とはいえ、何か言葉を発することぐらい出来ないことはない。それでも尚、黙秘を貫くが如く師匠は何も語らない。

 

『お前の素晴らしい芸術の数々、中々良きであった。どうだ?私の下でその力を養わないか?それともこの愚か者をまだ信じるか?どうだ?お前はどちらを信ずる?』

 

___その瞬間、俺は過去最大に心が昂っていくのを感じた。俺は、きっとこの時を長らく待ち侘びていたのだと、自然と答えは出ていた。

 

 

 

 

 

そうして私は今ここにいる。新たな師匠の元、私は人を捨て鬼として生まれ変わった。

自身の信じる芸術を認めてくれた恩師と、更にその恩師を含めた全ての鬼を統べし、鬼舞辻無惨という御方のご期待に応えられるようにと、固く心に誓って。

 

 

 

 

 

「すいません邪魔しまーす」

「へっ?」

 

それは突然の事であった。屋外に繋がる作業場の襖が、何の前触れもなく聞き慣れぬ者の声に合わせて盛大に開いたのだ。

 

「ああああああああぁぁぁ!!!髪がああああァァァ!!!」

 

呆気取られるも束の間、驚きのあまり視線を前に向けた結果、回転させていた陶芸の台に自分の髪の毛が巻き込まれて顔ごと大回転。そして作りかけの作品に落ちる自らの顔面。

 

「……お父さん、せめて扉叩いた方が良かったんじゃ………」

「うん、すれば良かったかも」

「ってかこの惨状どうする?アイツこの場で食って処理する?」

 

男2人に女1人の、何だか食って処理するだのおっかない話が聞こえるも、髪の毛が絡まって顔が上げられぬ。食うと言ってるから恐らく鬼で同族なのは察しがつくがそれだけしか分からぬ。

 

(早く師匠帰ってきてくれ…)

 

________________

 

 

「玉壺、お前こんな所住んでたのか」

「ヒョヒョヒョ、海も近く山奥という最高の立地だからの」

 

なんやかんやで絡まりから解放された翌夜、師匠の帰宅と共に衝撃の新事実が発覚。

 

__師匠と客人が顔見知りであった。

師匠が上弦ノ伍という幹部級の精鋭であることは把握していたのだが、客人は更にその上を行く位を務める者であった。両目にそれぞれ満と月と刻まれており、どうも十二鬼月とはまた別枠の精鋭鬼らしい。

 

「しかし玉壺とはあまり縁がなかったとは思ってなかったのだがなぁ」

「ヒョッ、同じく私もあまり関わりを持つとは思っていなかった。何しろお主は色々とやるべきことが多いと聞いておるのでな」

 

満月ノ鬼、鬼の勧誘から育成、遠隔地への長期任務を担当する事もある、所謂特殊部隊的な側面に重きを置いた鬼であった。子分2人(本人曰く家族)と共に活動し、関係が悪くなっている大陸方面への派遣任務も既に確定しており、時が来たらこの日本を離れ海外へ向かうらしい。目的についてはあまり詳しく教えて貰えなかったが、きっと無惨様直々であるとのことから重要な任務となるに違いない。

そして、そんな特殊な位を授かっている以上、とてつもない実力者かつ恐ろしい存在であると私は身構えていた。

___その筈、だったのだが。

 

 

「上弦の間で勧誘が流行ってるときいたがまさか玉壺にまで波及してるとはな。血鬼術は習得済みか? 名前はなんというんだ?」

 

満月ノ鬼、気さくすぎる。

私のような新米鬼に対してもこんな軽々しく接してくるものなのか。精鋭と謳われてるものだからてっきり物凄い序列や規則に厳しい、戦いに飢えた凶暴かつ残忍な強者だと思っていた。

 

「私は…轆轤。師匠から新しい名前を頂いた。血鬼術に関してはまだない……」

「ほうほう、それはそれは。これはまた面白そうな輩が同族となったものだなぁ」

 

そう興味深そうに頷く客人もとい満月ノ鬼。なんというか、人間臭いというか、手の内を探られているような感じもしない、至って普通の人間としか考えられない。

 

「……おとうしゃあん……zzz」

「……zzz」

 

そして何よりも客人を人間臭くしているのはそこの2人の存在。彼の両腕にそれぞれ自身の頭を預けて眠る()2人の存在が、何とも客人を人以上に人たらしめていた。

鬼が複数体で行動することは一部例外を除けば基本ありえないと、無惨様や師匠には予めそうお伺いしてたのだが、もはやこのお互いがお互いを信頼し合ってる感じ、まさに一部例外の中の一部例外かつその代表格なのだろう。

 

「そういえばお主、最近上弦ノ陸と連絡は取り合っているか?」

「あぁ……とりあっては、ないな。向こうから一方的に届くけど、恐ろしくて返事は出来てない」

 

客人の嫌そうな顔が目に映る。上弦ノ陸に関して私が知り得るような事は何も無いが、師匠によれば2人で1つの鬼だと言う。この客人は上弦ノ陸に何か良くない記憶でも抱えているのだろうか。

 

「…お主、何も知らないのか?」

「……?」

「妹の方だ。兄の方は立派に上弦ノ陸としての職務を遂行してるそうだが、妹の方に異変が起きてるそうだ。お主、兄の方からの文にも目を通してないのか?」

「……………まさか、いつものことじゃないのか?」

「……それだけのことで、済めば(・・・)良いのだがな」

 

師匠がそうボソリと呟くように言うと、客人は何か思い立ったかのように、眠っていた家族2人を両脇に抱えるやすぐに踵を返しこの家を勢いよく飛び出して行った。

 




ここまで読了ありがとうございます。
遅れた理由についてですが、2月中頃に友人の手によって流行りのクラブハウスに誘われました。そこで私はどうも声真似の才があったようで、現在鬼滅の刃の声真似部屋のメンバーになってしまいました。
その為そっちの活動がメインとなり、この小説の続編をすっぽかす事態に……。誠にすいませんでした。
もうすぐ原作時間軸に入れると思います。しばしお待ちを。

by 作者代理のアカウント担当



〜明治コソコソ噂話〜

元師匠の死体は、鬼になったばかりの轆轤によって美味しく頂かれました。

今後、展開を2つ考えてるのですが、話の内容は原作の流れを汲んだ方がいいですか?

  • 原作の流れを汲む
  • 原作崩壊レベル
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