剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
朱雨:主人公。現在堕姫の夢の中に潜入中。堕姫を追い込んでしまったことを悔いている。
堕姫:朱雨が相手してくれないので、鬼にスカウトした魘夢の血鬼術を利用して夢の中に逃げる。幸せな夢を見てる。
魘夢:本来は苦痛な夢を見せるのが好きなクズ鬼。けど堕姫は自身を鬼にスカウトしてくれた恩人である為、好きな夢を見せてあげている。ちゃっかり嘘をついて朱雨に堕姫をだいしゅきホールドさせる。修羅場大好き。
妓夫太郎:お仕事中で家にいない。魘夢に堕姫を託しており、何かと魘夢のことは信用している模様。
累、零余子:玄関先で待機
「……えっと、夢の中に入れたのか?」
辺りを見渡せばそこは夜の店が建ち並ぶハイカラ風の街。多少現実とは異なる箇所が幾つか見受けられるものの、ここは間違いなく堕姫が普段身を置く夢の中での遊郭そのもの。
「1つの店除いたら何処も営業してないようだけどな」
道中建ち並ぶ店は提灯で多少の明かりがある以外は殆ど閉店中の看板がズラり。そんな中で1つだけやたらと異彩を放つ店が1軒。もはや不自然なほどに浮いていた。
「……なにこれ」
浮世離れしすぎてるというか、まるでその建物だけ時代の先を行き過ぎてるような感じがする。明らかに木造建築ではなく、建物の放つ光はまるで昼間のよう、そして敷地が周囲の建築物の4倍ぐらい、終いには何階建てかも検討つかない、それでも城かと言われれば城とはまた少し異なる異質な見た目。
「……なんか、この建物の雰囲気………何処かで見たことがあるような………」
そう口にした刹那___
「な………頭が……割れ………」
突如として頭の中に陽光が駆け巡るような凄まじい痛みが走る。
「…アァ、う"ぅ"……」
俺はただその場で膝を着き、痛みに悶えるしか出来なかった。
「はぁ……収まれ………収まれ………」
それでも何とか立ち上がり、壁に手をついてあやふやな方向感覚のまま歩き始める。
「ぐあっ!」
すると突如、目の前の空間が裂けるかのように破れ、俺は体重をかけていた事もあってその空間の裂け目に吸い込まれるかのように倒れ込んだ。
「……いてて、なんだよこれ」
いくら夢の中とはいえ、不可思議なことが起きすぎる。頭痛にせよ物理無視の事象にせよ先を往き過ぎた建造物にせよ、もはや理解が追いつかない。
「…ってあれ?」
先程まで脳内を蝕んでいた痛みが突如として消えた。それに加え、辺りは先程まで俺のいた街の光景とは打って変わって、地平線の先まで広がる桃色の靄とそれ以外は何も存在しない無の空間へと移り変わっていた。
「おい、そこの者」
ゆっくりと立ち上がるや否や、背後より何処かで聞いた事あるような何者かの声。
「誰だ」
そうして声の主の方へと振り返ると、そこに立っていた人物に俺はただ目を疑った。
「よう、もう1人の俺」
そこにいたのは、俺と瓜二つの存在。というか、背丈も見た目もまんま俺と同じ、言うなれば俺そのものであった。
「…お前は、誰だ?」
「さっき言っただろう?もう1人のお前さ」
「なんでここに?というかここはそもそも何処だ?」
「そうだな、色々と言いたいことはあるが、まずここが何処なのか説明しようか」
そうしてもう1人の俺は、踵を返してこの場について淡々と語り始めた。
「まずここは、堕姫の夢の中。その端に位置する無意識の領域と呼ばれる場所」
「無意識の領域……なるほど、そこに俺がいるということは……」
「察しがいいな。俺は堕姫の強い意識が作り出した仮想の朱雨」
概ね状況は飲み込めた。無意識は基本的にその人物の本質が潜むもの。そこに俺が佇んでいるということは、堕姫にとって俺はかなり強い影響を与えているということ。
「……と、
「…?」
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場所は移り変わって、布団の傍らに身を寄せる夢を操る主の視点。
(…おやおや?夢の中がぼんやりして鮮明に覗けなくなってきたぞ?つまりは……始まったんだね………)
たった今堕姫と朱雨の夢の中では、夢を操る主だけがその詳細を事細かに知り得る、稀有な異常事態が巻き起こっていた。
「ふふふ……」
それを知って尚、彼は不気味な笑みを零す。
(……隠れし闇を抱えた者が夢の中に入り込んだ際に起こる、双方の無意識の融合が)
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「……どういうことだ、もう1人の俺」
「なに、言葉通りの意味さ。君の無意識は今、
「…記憶………?」
そう俺が口にした途端、まるで頭の中で固く閉ざされていた引き出しの鍵がカチャリと音を立てて外れるような感覚がした。
「これは………」
「くくく……堕姫の頭から俺の事がずっと離れないように、君の頭にも距離を置こうにも離れられない忌々しい闇が寄り添っているのさ……」
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___今日の夢は、妙に不思議。時代を錯誤したような街並みに身を置いていて、尚且つそれでも自身のしたいことだけは明確に定まっている。それでも望んだ幸せに限りなく近い。私は今、とても満たされていた。
「朱雨さん、約束通り来たわよ」
「お、来てくれたんだね。とても嬉しいよ堕姫ちゃん」
___彼の方から来てくれないなら、私の方から通うまで。何故こんな簡単な事に気づかなかったのでしょう。
「今日は誰を指名する?」
「そんなの決まってるわ。いつも通りご指名は貴方よ」
そしていつも通り、朱雨さんを指名する。私の傍にいて欲しいのは貴方。私が愛しているのは貴方だけなんだから。
「左様ですか。でしたら俺の隣にどうぞ」
「ありがとう。それじゃあ、早速ドンペリから入れて行きましょうか」
そうして朱雨さんの隣に座るや否や、私は手始めにと10万円もする上質のシャンパンを注文する。
それなりに値は張るけど、愛する朱雨さんに貢いでいるのだと考えればこんなの大した出費ではない。
「オーケィ!堕姫お嬢からシャンパン頂きましたァ!」
「「イェーイ!!」」
そうして朱雨さんが店内に声を響かせると周りの連中も揃って一斉に騒ぎ出す。毎度のこと、注文が入ればこうして今日の姫である私を立ててくれる。
「シャンパン!」
「ヘイ!」
「シャンパン!」
「ヘイ!」
「今宵は貴方がプリンセス!」
「わっしょい飲んでけーー!!」
「「「ヘイヘイヘイ!」」」
「ライ縦ライ横ライ斜め!」
「「「「ヘーーイ!」」」」
けど、今日はこんな所じゃ終わらない。朱雨さんをこの街1番の男にするにはまだまだこんな所じゃ終われない。
そうして追加のボトルを入れようとしたその時だった。
「へぇ、何故アンタみたいな貧乏人が朱雨さんの隣にいるんだ?」
「はあ?」
ふと顔を上げると、そこにはジャラジャラと派手めな装飾品に身を包んだ厚化粧の女が立っていた。普通ならこんな小物、不細工すぎて記憶の隅にも残らないのだけど、コイツだけはやたらと頭にこびりついて離れない。
「また邪魔しに来たのね、
「邪魔とは失礼な。私は客として指名されに来ただけだ」
私と朱雨さんの時間を奪ったという事実があった以上、コイツのことは例え私が目覚めて日に焼かれようとも忘れることは無い。
「貧乏人は貧乏人らしく吉原にでも引きこもって水商売していな。ここでは金が全てだ。高給取りの私であれば朱雨さんの愛に応えられる」
「何を言ってるの?アンタのような血なまぐさい仕事してる奴が愛とか語るんじゃないわよ」
「匂いが残ってた?これは失礼。そうか、ろくに飯も食え無かったから空腹のあまり嗅覚で腹を満たそうと踏んだか?」
「それは昔の話。別に鼻も過敏じゃなくて貴女がくっさいだけでしょ?それに、朱雨さんは私が指名している最中だから、アンタには出る幕なんてないのよ。そうよね朱雨さん?」
「…えぇ、申し訳ありませんが蓮華様、先客がおりますので後々にお伺い致します」
「なに?」
それ見なさいと私は勝ち誇った顔を浮かべる。ついでに、ここでトドメとばかりにこんな殺し屋じゃ手を出せない境地というのを見せつけてやる。
「ベルフェクション、頂こうかしら?」
そう口にした瞬間、まるで世界が突如無に帰したかのようにキョトンと静まり返る。
「堕姫お嬢、まさか本当に
「えぇ、朱雨さんをこの街1番の男にしないとね。それなら3000万円も大した出費にはならないわ」
ベルフェクション、それはこの界隈でも幻の一品と名高いブランデーボトル。相場は3000万円で、この品を注文された男は間違いなくその日その店だけでなく街全体で生ける伝説となる。
「だ、堕姫お嬢からベルフェクション頂きましたァァ!!」
流石にここまでしたら蓮華の阿呆も指を咥えて悔しそうにするしかないようだ。水商売と散々煽ってきたけど、私だってその界隈で名を馳せた遊女。故に昔と違って金銭面に困窮などしていない。
「堕姫お嬢、本当にありがとう」
「これくらい朱雨さんの為にだったら容易い事よ」
「……もし良ければなんだけどさ」
満面の笑みから一転。朱雨さんはしどろもどろになりながら私の顔を見つめる。
「な、なに…?」
「こ、この後……なんだけどさ………お詫びにと言ってはなんだけど………」
冷静に答えているつもりだけど、既に噛んでるし心臓が朱雨さんにも聞こえるくらいバクバク音を立てているのが自分でも分かる。
(もしかして…!これって熱烈な接物!?あるいは2人だけで過ごす時間!?待って!?私気持ちが追いついてないよ!?もしくは…?)
もうこの後の妄想という妄想がひたすら膨らむ。空気と化している蓮華には悪いけどざまあみろと一言言ってやりたいような、もう私の口角は吊り上がりに吊り上がる。
____その時だった。
【血鬼術
「…へ?」
『待たせたね、堕姫』
店中がお祭り騒ぎとなる中、突如私の頭に響き渡る何者かの囁き。そしてその声は、私もよく知るあの人のもの。
『楽しい夢だったし、覚めたくないよね。でも、ずっとここにいてはいけない』
「…そんな?」
出来ることならずっとこんな幸せな夢の中にいたい。ここでなら望むままの幸福を好きなだけ味わえる。第一、私がここに堕ちたのは朱雨さんが私の事をちっとも気にかけてくれないからだというのに。
『ごめんね、長い間待たしちゃって。俺も今までの態度を改めるからさ。ずっと辛い思いをさせてしまった分、現実の堕姫と真摯に向き合うから。だから、元の世界に戻ろう?』
「…………………そう、そうなのよね」
そう言われると弱かった。よくよく考えれば、ここはたかが夢の世界。どう足掻いてもこれは現実には勝ることの無い仮想現実でしかないんだ。
(…ごめん、この世界の朱雨さん。貴方の言葉は最後まで聞けないみたい)
すると目の前が段々と黒に染まっていき、私の意識は闇深く落ちていった。
________________
「…………堕姫」
夢の中で、ずっと思い出すことのなかった真実に触れた俺は、血鬼術で堕姫に起きるよう促して一足先に目を覚ましていた。勿論、夢の中に入る時と同じように堕姫にまとわりついたまま。
(後は…堕姫がそれに応えてくれれば……)
そう、俺はあくまで堕姫にテレパスで夢から覚めるよう
「ぅん……」
「堕姫?目覚めたのか?」
堕姫は目覚めるという選択肢を選んだみたいで、瞼を重そうにゆっくり開いてパチクリと数回瞬きを繰り返した。
「良かった!堕姫!」
そうして堕姫を全力で抱擁した。
「ごめん……ずっと辛い思いをさせた……。ただ謝ることしか出来ないけど……とりあえず堕姫が無事で良かった………」
そうして堕姫の無事を喜んでいると、本格的に堕姫は意識の方も覚醒してきたようでただひたすら俺のことをじっと見つめてきた。
「あら朱雨さん来てくれたのね!」
「ぐえっ!」
俺の姿に気づくや否や堕姫は血鬼術を用いて周囲に帯を敷き詰めた。それはまるで生き物かのように、俺の事と堕姫の周りを取り囲み始めた。
「さあ
「ちょっ、待っ………!」
「私にこんな密着してるだなんて!やっぱり朱雨さんも私の事を好いていてそれをなかなか表に出せなかったのね!?いいわよ今日という日はじっくりと私という私を染み込ませてあげる♪」
「…はっ、話せば分かるからちょっ待っ…!」
「ブ チ 犯 す ♡」
意識が覚醒してから行動の早いこと、それだけは感心。もう周りの目なんか知ったこっちゃないと言わんばかりに目がマジであった。
「ちょっ!魘夢!どうにかしてくれ!流石に初っ端これは……」
俺は1番近くにいた魘夢に救いの手を求める。
…だがしかし。
「えぇー、放ったらかしたのは君なんだからさあ、罰として素直に受け入れればいいのに……」
「おぉい!!?」
すると背後からドスンという足音。そして僅かに視線の端に映る
「妓夫太郎!」
そこにいたのは堕姫の兄、妓夫太郎。天の助けか、流石は空気を読むのが上手い妓夫太郎。
「丁度良かった!一旦堕姫引き剥がして!」
「………」
ところがどっこい、妓夫太郎は顔を一層顰めてこちらを睨みつけるような目で見てくる。
「なあ師匠……」
「うん?」
……出来れば早めに堕姫を引き剥がして欲しいのだけども、宛が外れてしまったのか。
「なんで堕姫とくっついてんだあ"あ"!!?」
「仕方ないんだよ!!」
ダメだこれ。兄の方もいつもの妹盲が発動してるようで使い物にならない空気がする。
「ねぇ………」
「え"」
すると今度は冷血な淡々とした声。普段はあまり耳にすることは無いけど、怒った時に出すから親ながら戦慄してしまったあの恐ろしい声が背後から…。
「オトウサン、ナニヤッテルノ?」
「む、零余子!」
俺が玄関先で待機させていた零余子と累が、仁王立ちでそこに立っていた。2人とも何だか黒い笑みを浮かべていて、もはや呆れとかを通り越した妙に落ち着いた雰囲気を出している。
…これってつまり。
「ズルイ、私ダッテソンナコトシタコトナイノニ」
…零余子は1歩1歩ジリジリとこちらに躙り寄る。まるで捕食者のような目で俺を荒い呼吸で。
「累、行くよ」「うん」
「あっ、ちょっ…!悪かったから!!だから待って!!待っ………」
___その後、真夜中の吉原に特大の断末魔が響き渡り、駆け落ちを画策して捕まった不逞な輩がいたのだろうと、変な噂が独り歩きしたとか。
ー明治コソコソ噂話ー
夢の内容が現代チックになった理由ですが、ご察しの良い方は分かるかもしれません。朱雨は元平成人であり、その彼が堕姫の夢に入り込んだことで無意識の融合が起こりました。その結果、遊郭は歌舞伎町っぽくなり、朱雨はホストになりました。
また、作者の友人に元ホストがいたので、その友人の経験談が少し入ってるとか入ってないとか。指名システム等は店によりけりだそうで、当小説では1対1での指名制を採用しております。
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今後、展開を2つ考えてるのですが、話の内容は原作の流れを汲んだ方がいいですか?
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原作の流れを汲む
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原作崩壊レベル