剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
朱雨:主人公。何やら前世の記憶が蘇ってしまった模様。しかし特に変化はない様子???
妓夫太郎:シスコン、状況を飲み込むのが早く、修羅場の第1の要因。
零余子:ちょっと誰よその女
累:父親の浮気現場を見てしまった感覚
堕姫: お は よ う
『
累、零余子、堕姫、妓夫太郎、多くの鬼を巻き込んだ吉原痴騒動から早1日、俺は誰もいない夜の吉原の街で1人そう呟いた。
あの劇的な修羅場を各々への詫びで宥めた後、『本当にすまない。少し大事なことが起きたからしばらく1人にしてくれないか?』と零して、俺は堕姫の家を出たのだった。
あんだけの修羅場作っておいて、1人にしてくれだのだいぶ白状な対応だと自分でも常々思う。
____でも、今はこうでもしないと自分を保てる気がしないんだ。
『……
俺が元々この世界の住人でないこと。そして、明治時代は明治時代でも、前世で俺がいた世界とはまた異なる
ずっと思い出さないようにと押さえ込んできた記憶に限界が来たのと同時に、堕姫の夢に入り込んだことで俺の中で眠る無意識が刺激された末路。
過去の記憶を想起させては非常事態が起こりかねないと、常に危険信号を出して必死に押さえ込んできた。例えその行いが度重なる頭痛に拍車をかけると勘づいていても。
___だが、記憶は開放された。
幸い、大した問題も起こらず、俺が俺でなくなるような事態は防げた、……と思う。昨夜の出来事もほんの茶番に終わり、加えて累や零余子と過ごしてきた日々の記憶も失せていない。
そして、何故ずっと人間が嫌いで復讐に走っていたのか、ようやく全て理由が分かった。
俺が刀を握る訳も、累や零余子を子供のように可愛がる訳も、答えは見つかった。
「でも…これで尚更俺の目標は定まった……」
そうして、1人これまでの事を自分の中で整理し終えた俺は、一路羅生門河岸の弟子たちの家に引き返した。
___しかし、俺は1つ大きな勘違いをしていたことに、この時は気づかなかった。
思い出すべき前世の記憶は、これで
「………雷の呼吸」
加えて、1人心を落ち着かせていた故の慢心か、とある鬼狩りの追手が迫ってることなど、俺には知る由もなかった。
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「ただいま、今戻ったよ」
「「(お)父さん!」」
「2人ともごめんな、いきなり席外しちゃって」
「ホントなんでいきなり居なくなっちゃうの!」
「…その分、このままで居させて」
戻ってくるのが分かるや否や胸に飛び込んでくる可愛い我が子たち。絶対甘えたらちゃんとその分しっかり相手してくれると理解してるから、本当にパパは2人が親離れ出来るか心配です。
まあ、親離れしてもらう必要なんてないんだけども。むしろこのまんま永遠の時を零余子と累、そして俺の3人で過ごせれば良いとすら思ってる。
「……ほら、頭撫でてよ」
「はいはい…」
累はここ最近、自分のして欲しいことをストレートに言葉にするようになった気がする。
「ツーン……………」
「分かってる分かってる。零余子も撫でて欲しいんでしょ?」
「ちょっ…!もう……!知らないッ!」
一方で零余子は累をも超える勢いで愛に餓えている。ただ、累がここ最近ストレートに言葉にするようになったのと反比例して、反抗期なのかちょっと言葉を濁すようになった。
「零余子も素直に頭撫でてって言えばいいんだよ?」
「そんな…ッ!別に…累が羨ましいとかそんなんじゃ…ッ!」
「誰も累のことは言ってないよ?」
「ぐぅ…………ッ!」
と言いつつも撫でられるのに一切抵抗を示さず、それどころか若干口角が吊り上がってるのがバレバレだ。
零余子はツンツンしててヤキモチ妬き屋さん属性が付与された。
(ほんと、落ち着くなぁ……)
前世の一件があった以上、
___俺だって、かつては家族愛と自分を素直に認めてくれる存在にずっと飢えていたのだから。
「グルルルルルルルルル…」
「堕姫、犬みたいに威嚇するな。ステイ」
目の前で仲間になりたそうに唸ってる堕姫の存在がやっぱり目に入ってしまう。悪いなこの腕2人用なんだと、妓夫太郎に窘められているが、さっき堕姫に対して態度を改めると言った矢先にこんなこと出来ない。
「あぁ、そうだ。堕姫、おいで」
「え?」
何も両手が塞がっているからと突っぱねることは無いんだ。なにせ、撫でるだけが単にスキンシップじゃないんだから。
「手は塞がってるけどさ、まだ俺には空いてるところがあるぞ」
「ああ、そうね」
そうだ、両手が子どもたち2人の頭を塞いでいようと、俺の背中は空いている。
「レロレロレロレロレロレロ…」
「えっっ!ちょっ…やめっ……くすぐっ……ひっはっはははは!なにして………んっふふ!の!!?っほほほははははは」
「わうぃっへあひわあいへるからあえへうあへお(何って足が空いてるからなめてるだけよ)」
「その発想……おかし…あははははははははははは!!!!」
ガンッ
ゲシッ
「あっ」
あまりの擽ったさに撫でる手を引っ込めたどころか両膝が累と零余子の頭にクリーンヒット。
「「……………………」」
「ごめっ!累…むかっ…ごっはははははっはっはっ!待ってっへっへっへ!」
それでも堕姫の舌は止まってくれない。足の裏を的確にベロベロと舐めまくる。そして遂にそれは累の零余子の堪忍袋の緒をぶった切ってしまう。
「オオオォイイイ!!刃牙だか堕姫だか知らないけど私らの至福の時を邪魔しやがってえ!!」
「顔面に膝当たったよ!父さんの膝が!この女!絶対に許さない!!」
【血鬼術 鉄虫糸】
【血鬼術 種の呼吸 壱ノ型 発芽突き】
「ちょっ!こんな狭いところでやったら……!」
屋内での血鬼術使用は御法度。前にそれで俺たちの住む屋敷破壊したばっかりでしょうに。
「馬鹿!おい!やめろ2人とも!」
「堕姫!さっさと謝れ!このままだと俺らの家崩れる!」
俺も妓夫太郎も慌てて場を宥めようと試みる。拠点無くなったら俺たち陽光に対して無防備になってしまう。
「はあ?アンタらが朱雨さんの子どもっていうなら私は朱雨さんの嫁でありアンタらは私の子どもってことになるでしょ?お母さんに歯向かうなんていい度胸してるわね!」
「堕姫は場をややこしくするな!俺は娶った覚えなんぞないわ!」
【血鬼術 黒帯】
俺の制止行動も虚しく、遂に堕姫の方も対抗して戦端が開かれようとしていた。
(あぁ、これダメだわ)
「お〜ね〜む〜りぃ〜〜?」
「「「!!!!!!」」」
ずっと黙っていた魘夢が行動に出た。一触即発だった3人の前へ飛び出し、すかさず手を翳して血鬼術らしき術を発動。すると3人は一瞬でその場に崩れ落ち、そのまま地べたに伏せてさっきまでの血気盛んさは何処へやら、ぐっすりと眠り始めた。
「まあ、
そうして事を終えるや即座に手を引っこめる魘夢。
(カッコイイかよ…)
かつて零余子と累の大喧嘩を鎮めるのにこっちは家1つ失ってるのに魘夢ときたら一瞬で場を制圧してしまった。
(にしても催眠術ねぇ)
かつて俺にも同様の血鬼術があったらあんな拠点爆散事態とか防げたんだろうなと思う。念動の血鬼術、応用すれば催眠も行けるだろうか。
【雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃】
その刹那、壁を突破って現れる1つの人影。
「なあ"あ"あ"!?結局家壊されんのかあ"あ"あ"!?」
「あーあぁ……」
戦いを未然に防いだにも関わらず、ぶち破られ壊される妓夫太郎宅の壁。これには俺も同情せざるを得ない。
「誰だあ"?入り込んで来た輩はあ"?」
土煙が晴れ、やがて見えてきたのは、雷模様の羽織を身につけた黒髪の青年。十中八九雷の呼吸使いだろうが、纏う雰囲気が並のものでは無い。
「なるほど、鬼狩りの
「ご名答、鳴柱
ご丁寧に名乗りまでしてくれた。だが、その丁寧さとは裏腹に登場は派手なものだ。ぽっかり空いた穴から入り込んでくる梅雨明けの蒸した風が鬱陶しい。
「お〜ね〜む〜り〜」
だがこちらには究極の初見殺し血鬼術を持つ鬼がいる。3人ですら一気に眠りに落ちたのだ。柱といえどたかが人間。鳴柱、ここに眠ると行こうじゃないか。
「………………」
案の定、奴は魘夢の術を真正面からくらってその場で膝を着いた。
「………やったか」
その時、不思議なことが起こった。
「……雷の呼吸」
「は?」
深い眠りに落ちた筈の鳴柱が、何事も無かったかのように立ち上がった。
「魘夢、妓夫太郎、寝てる3人を1人ずつ抱えて離れろ!」
【雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷】
熱く迸るような雷の斬撃が広がる。
「チッ」
「おっと?」
魘夢が累を、妓夫太郎が堕姫を、俺が零余子を抱えて奴の近くから離れる。
「おい!魘夢どういうことだ!」
「そんなこと俺に聞かれても…!」
魘夢の術が掛かっていないというのか。でも俺は確かにこの目で奴が1度は膝を着くところを見ている。
「…………zzz」
それを裏付けるように、鳴柱からは微かに寝息のようなものが聞こえる。間違いなく奴は眠りには落ちている。
(…となると、奴は眠りながら戦っているということか)
どうやら此度の柱はそういった特異体質の模様。雷の呼吸がそういった特質を持つのか、あるいはコイツだけが持つ特徴なのか。夢遊の中で動けるとは、随分と腕の立つ鬼狩りだ。猗窩座が気に入りそうな強者の片鱗が漂っている。
【雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃】
続け様に奴は俺目掛けて呼吸を纏って猛進の構えを見せる。
「その技はもう見たぞ」
すかさず俺も呼吸を使って迎え撃つ姿勢をとる。
【星の呼吸 壱ノ型 光年】
こちらも雷の呼吸と並ぶ速度を持つ型で対抗。雷光をも上回る光の斬撃が、奴の体を日輪刀諸共真っ二つに切り刻む。
___その筈だった。
「六連!」
「へ?」
その瞬間、奴は目の前の床を力強く踏み込んで天井へ向かって突如方向転換。そして今度は天井を蹴って壁に移り、今度は横から、次は天井、次は向かいの反対側の壁と、縦横無尽に動き回る。
「チィッ!」
気づけば霹靂一閃を数回に渡って用いた連続攻撃は、俺の背後にいた妓夫太郎と魘夢の頸にも忍び寄ろうとしていた。
【星の呼吸 捌ノ型 星雲】
傍らに堕姫と累を抱えていた事もあって上弦である妓夫太郎ですらも反応が遅れてしまった。俺も同じハンデを背負ってはいるものの、そこは200年以上生きる鬼として失態を犯す訳にはいかない。
そうして放った俺の周囲を覆い尽くす歪む捌ノ型の斬撃が妓夫太郎たちに向けられた一太刀を弾き返す。
「もはや鳴支でも良さそうな腕立ちのようだな……」
不意打ちでここに飛び込んできた時の霹靂一閃の方がまだ柔い斬撃だった。眠りに落ちた時の方が起床時以上に真価を発揮するタチなのかもしれない。まさかこんな相性の悪い相手と鉢合わせる偶然に見舞われるとは心にも思わなかった。
「……ったくしょうがねえ。妓夫太郎、魘夢、零余子も預けるから3人担いで何処か遠くへ離れろ。コイツは俺が引き受ける」
そうして俺の肩に担いでいた零余子を妓夫太郎の肩に転移させると、俺は2人を背に刀を構えて鳴柱の方を見据えた。
「…分かった。俺の血鬼術じゃ奴相手に適いそうもないしね」
「…すまねえ、後は頼んだ」
やがて俺を除いた全員は足早にこの場から退散していく。鳴柱はそれを追うこともなく、じっとこちらの方に意識を向けていた。どうやら、あの5人の後を追うよりも、俺に警戒を向けた方が良いと判断したのだろう。
尤も、それは俺にとっても同じ。互いに一対一になった方がより好都合だったということだ。
「さぁ、続きをしようか鳴柱」
こうして俺と鳴柱の戦いの二回戦が幕を開けた。
ー明治コソコソ噂話ー
前世の記憶が蘇ったため、朱雨の言葉にカタカナの横文字が解禁されました。また、朱雨は若干目の前の鳴柱が気に入りつつあります。理由としては今までの柱とは異なる特異体質持ちの強者であることや、単純に鬼に罵詈雑言をぶつけるタイプではないこと。加えて名乗りといった武士道を感じさせる相手であったことが諸々の要因です。
今後、展開を2つ考えてるのですが、話の内容は原作の流れを汲んだ方がいいですか?
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原作の流れを汲む
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原作崩壊レベル