剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
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場所は羅生門河岸の民家の建ち並ぶ一角。そこでは寝時に水を差された多くの一般市民らが眠気も忘れて逃げ惑っていた。
そして、その中心では刀を持った2人が互いに火花を散らせていた。
【雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃六連】
【星の呼吸 壱ノ型 光年】
朱雨と鳴神、両者の斬撃が鍔迫り合う。雷鳴轟く六連続の斬撃に対し、光の如き駆け抜ける一閃の斬撃が完全に互角の戦いを繰り広げる。
(この鬼、やはり強い…)
(この柱、なかなか強い…)
迸る稲妻の如き六連続の斬撃が鬼の一太刀に斬り伏せられたことに鳴神は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。一方で、光の斬撃が稲妻と同等にしかならなかったという事実に、朱雨の方も確かな焦りを見せていた。
(眠っていてこれか…。いや、眠っているからこそか?どの道眠っているからか動きに無駄がない。今まで会った雷の柱の中では1番の強さだろうな)
蓮華という例外を除けば久方ぶりの強者が相手であることに朱雨は自然と昂りを感じていた。
「ならばこれはどうかな?」
「……!?」
【血鬼術 念力 + 星の呼吸 参ノ型 流星群】
朱雨はここに来て久方ぶりとなる血鬼術と呼吸の同時使用に踏み切った。
「さあ!お前はどうこの技を攻略する!?」
念力で地面から浮かせる事で柱の動きを制限し、そこに上空から無数の重い斬撃を浴びせる組み合わせ技が炸裂。
「……雷の呼吸」
しかし鳴神は至って冷静だった。眠りに落ちたが故か、全身に無駄な力が入っておらず、宙に浮かされて大きく不利となったこの場においてもパニックになることなく雷の呼吸の構えをとった。
【陸ノ型 電轟雷轟】
周囲に広がる雷の斬撃が流星の如き降り注ぐ斬撃を次々と伏せていく。
「…っ!」
「はははっ!流石に辛いか!」
だが宙に浮かされていることが災いしたのか、幾らかの斬撃が鳴神の体を掠める。雷の呼吸の特性である踏み込みを生かせない事が影響し、威力もかなり出せないでいた。
「辛うじて直撃は避けたか。致命傷にならぬよう、斬撃を幾つか受け流したその太刀筋もよし。お前は今まで会った柱と比較しても格段に良い腕をしてる」
鳴神は肩やもも、脇腹から血を吹き出していた。それでもこのような損傷で済んでいるのは、鳴神という実力派の柱だからこその為せる技であった。
「さてさて……俺は純粋にお前の実力が気になった。久しぶりだよただの人間に興味を持つことは。じゃあ、次はこうしてみよう」
朱雨は刀を鞘に収めた。そして刀を持っていた右腕と先程まで血鬼術を発動する際にも用いていた左腕の両方を鳴神に向けて翳した。
【血鬼術 念力乱舞】
「………っ!?」
「ハハッ!どうだ?こうも振り回されては刀もマトモに握れない!」
基本的に朱雨が血鬼術を発動する際に腕が必要かと言われればそこまででもない。片腕でも何も持たずにフリーにしておけば念波を飛ばせる上、視線によってもある程度念波は飛ばせるからだ。
「…さて、空中のお前を振り回した挙句、地面に叩きつけたらどうなる?」
だがもし、両腕ともフリーになったらどうなるか。答えは簡単で、短時間で飛ばせる念波が増える上に、まず飛ばせる念波の量そのものが増す。
「じゃあな。お前が鬼狩りじゃなかったら是非とも鬼になって欲しかったけど、残念だ」
そうして朱雨が腕を振り上げると、威力と速度が共に増した念力乱舞によって鳴神の体は四方八方吉原の空を舞った。
「そらよ」
そして最終的に鳴神は眠りながら遥か上空から真下の地面に叩きつけられようとしていた。
「そして永遠に眠るといいさ」
やがて鳴神の体は上空300m程から地面に物凄い勢いで落下して行った。歴代鳴柱の中でも随一と朱雨に評された鳴神の人生は幕を閉じる。
____その筈だった。
彼はこの僅かな時間の間に、走馬灯を見た。
________________
「よくやった。これで儂の後継も安泰じゃな」
「はい師匠、私がここまで至れたのも一重に貴方の存在があったからでございます」
鳴神成、16歳。今から1年前のことであった。鬼殺隊加入後、幾つもの鬼を狩り続けた彼は新たな鳴柱への就任を師である桑島慈悟郎に祝われていた。
「10年前、道端に
「ははっ、あの時は本当にお世話になりました」
鳴神成は秩父の農民の元に生まれた。病で母を早くに亡くし、父親の元で貧農の跡取り息子として育っていた。生活こそ裕福でなく寧ろ貧しかったが、それでも鳴神少年は健やかに成長を見せていた。
「
「父にも先立たれた時は齢6にして自害を考えたものでありました。師匠無しでは私は野垂れ死にするだけだったでしょう」
10年前、貧農たちが起こした反乱の中で彼は父を亡くしていた。貧しさに抗う為にと周囲の農民たちが起こした戦いに、彼の父も巻き込まれたのだった。両親を失った彼は、空腹と喪失感の中で少しでも命を長らえようと、雨風が吹き荒れる道端で横になって眠り続けていたという。
「…今は鬼殺隊黎明の時、柱も引退や殉職、廃刀といった時代の波に呑まれようとしている。お前には儂の1番弟子として、鬼殺隊の未来を明るく照らして欲しい」
「はい!」
そんな、死の瀬戸際を彷徨うだけの孤独でしかなかった彼が今こうして雷の呼吸を極めて柱の地位まで登り詰められたのは、誰の目から見ても師匠の存在が大きかったと言えよう。
(ありがとうございます師匠。私、生きるのを諦めなくて良かったです。この御恩、応えさせて頂くべくこの身を塵と変えても精一杯努めます)
絶望の淵に沈もうと、常に彼はかつて自らに救いの手を差し伸べてくれた恩師への誓いを胸に、鳴柱として精一杯務めてきた。
___例えそれが、意識の混濁した
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(そうだ、私は立ち上がらねば……)
眠りに落ちても尚戦い続けるのは、彼の為せる偶然の技なのか。それとも眠ることで真の力に目覚めるのか。当の本人には知る由もない。
ただそこにあるのは、鬼への怨恨でも怒りでもない、ただ師匠に報いるべく鬼斬りの刀を握る、1人の戦士の姿であった。
【雷の呼吸
そうして彼の手元より放たれたのは、空より迸る稲妻の如く真下へと踏み込んだ彼独自の型。鬼の思うままに上空遥か高くまで投げ出されたその身は、地面に叩きつけられて砕け散ることなく型の威力によって衝撃が相殺され、事なきを得た。
「初めて見る技だ。今まで殺してきた雷の柱はそんな技使わなかった」
自らの血鬼術を破られた鬼は一瞬キョトンとした後にその場で薄気味悪い笑みを浮かべた。
「良い、鬼への恨み辛みの感情もなく、ただ純粋に鍛え抜かれ洗練された技量」
そんな彼を見て、鬼は尚一際不気味に嗤う。
「お前の過去も知りたい。人間が憎いか?何か過去に辛い事でもあったか?お前は鬼狩りだが特別だ。是非とも鬼にしたい。どうだ?鬼にならないか?」
捲し立てるように熱冷めやらぬ鬼は口走り続けた。
その時、先程まで固く閉ざされていた筈の鳴神の目が大きく開かれた。
「……ならない。私には返すべき恩がある。その為にも、私は人のままその責務を果たすまで」
「ふぅん、そう?俺の誘いには頷いてはくれないようだね」
すると鬼は再び刀を抜いて鳴神をじっと見据えた。
「けど俺はお前が気に入った。鬼に成り下がるだの外道の道に落ちるだの下らない罵倒を織り交ぜてくる鬼狩りは多かったが、お前には何一つそれがない」
鬼がクククと不気味な笑い声を零すと同時に、その額に流星模様の痣が浮かび上がる。
「鳴神、久方ぶりの強者としてその名前覚えておく。そして俺もその敬意の表しとして、ある程度の力を解放しよう」
すると、鬼の構える刀に突如としてゴロゴロと雷のようなものが宿る。あまりにも強い呼吸の練度によって、まるでそこには本物の雷が宿っているようであった。
【星の呼吸 拾壱ノ型 磁気嵐】
雷を纏ったかのような横凪ぎの斬撃が、瞬きほどの一瞬で扇状前方へ拡散していく。その威力は、周囲の小屋や木々を粉々に吹き飛ばして尚その威力を維持したまま、鳴神の元へ迫ろうとしていた。
「…雷の呼吸」
そんな状況下でも彼は慌てず騒がず呼吸を乱すことなく落ち着いた様子で刀を握り直した。これは焦りの誘発だと、鳴神は心を落ち着かせながら。
【参ノ型 聚蚊成雷】
彼が全身全霊で辺りを切り刻む斬撃を放つや、鬼の周囲へと打ち出されていた磁場の斬撃が全て叩き落とされ空中で1つ残らず消滅した。
「なっ…?」
そして自らの磁場が雷に落とされたという事実に、鬼は先程の笑みとは一転、ただただ驚愕の表情を浮かべていた。
「…ふぅ」
その傍ら、冷や汗を額に垂らしながら一息つく鳴柱。
「…これも凌ぐとは……お前は本当に凄い。鳴支も夢じゃないな」
久方ぶりの強者。鬼の心はそれだけで躍りに躍っていた。
そしてそれが、数百年振りに鬼の闘志に火を宿してしまった。
【星の呼吸 拾伍ノ型 中性子転】
鬼は遂にかつてない威力の型でもって攻撃を仕掛けた。宇宙の遥か幾光年先にある某天体の如く、物凄い回転によって生まれる重力エネルギーを模した刃が鳴神に迫った。
「……ッ!なんて……威力ッ!」
大回転の斬撃は、周囲の人工物全てを巻き込んで鳴神に迫った。一瞬、流石の鳴神も怯んだ素振りを見せるも、それでも尚彼の冷静沈着な判断力に変わりは無かった。
【雷の呼吸 弐ノ型 稲魂】
高速五連撃による半円を描いた斬撃が迫り来る鬼の攻撃を弾いていく。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
かつてない程の声をあげる鳴神。
弐ノ型による高速五連撃を何度も繰り返すことで、僅か1秒間に数百以上も放たれる鬼の斬撃をいなしていく。
「………ぐあああああああああぁぁぁアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァアアアアアア……………!」
それでも痣を出して本気となった満月ノ鬼相手では武が悪すぎた。人間と鬼の底力の違いが、戦いの行方を左右したのだ。
「……はぁ…はぁ…」
「……流石に、人間には酷だったか?手加減無しでは流石の柱でも無理が過ぎたか………」
辛うじて致命傷は避けたものの、もう既に鳴神は呼吸をまともに維持できない程に全身に傷を負っていた。
(……駄目……なの…か……?私では……この鬼に…は…敵わない……のか……?)
鬼殺隊の隊服はボロボロ、体のあちこちより吹き出す大量の血、左腕は骨が木端微塵に砕けてダラりと垂れ下がり、額には幾つもの擦傷、胸には十字形の切り傷、もはや生きてるのが不思議なほどの損傷であった。
「…随分と手こずった。眠りに落ち、更に意識を覚醒させた事で、まさか本当に真の
虫の息の鳴神を見据えた鬼は嗤う。但しそれは嘲りでも唾を吐き捨てるようなものでもない、純粋な興味と尊敬。
(…とはいえ仕方ないな。この手の鬼への抵抗感がある奴は例え強引に鬼にしたとしても、人間時代の残滓が陽光の下に導いてしまうからな………)
そして、鬼への勧誘に頷かないが故の落胆から来る失望の顕れでもあった。
「随分と楽しませてもらった。が、夜明けが近い。もう終わりだ」
「…………ッ……!」
もう鳴神に喋る気力は残ってなかった。それどころか体は言うことをきかず、ガクンと膝をつき、彼はその場に倒れ伏せる。
(……師匠………こん…な……最後で……………先に逝く……こと…を……お許し……ください………)
彼が最後に見たのは、
(…………今まで……ありがとう…………ござい……まし………………)
師匠に向けた、届く筈もない感謝の念を想い終える事も叶わず、彼は力尽き目を閉じた。
「……………………………………」
___そうして彼は、静かに息を引き取った。
「………………また、助けられなかった。……また、間に合わなかった…………」
それから暫く、鬼殺隊後処理部隊"隠"より一足先にその場へ現れた1人の隊士の姿があった。
彼女は鳴神の亡骸に寄り添い、膝をつき酷く落胆した。
「……………また、
ー明治コソコソ噂話ー
鳴神以外の柱はこのお話の時点で全員殉職しています。上弦が全員殺したようです。これより鬼殺隊は黎明期に入りますが、とあるキャラが鍵となってある程度復活した後に原作に突入となります。
ちなみに朱雨の戦闘力が話によってマチマチな印象を受けるかもしれませんが、今回は屋外かつ周囲に堕姫やら零余子がいなかった事で思う存分実力を発揮出来たからというのがあります。
朱雨は集団で戦闘に臨むのが苦手で、尚且つ屋内だと念波の乱反射の影響で血鬼術が上手く使えないので本気を出せません。
但し得意なフィールドでの戦闘になると少々舐めプに走ります。
PS. 現状伏線貼りすぎて全部回収出来るか不安なところ笑
今後、展開を2つ考えてるのですが、話の内容は原作の流れを汲んだ方がいいですか?
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原作の流れを汲む
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原作崩壊レベル