剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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今回より新章です!少し短め!


原作前章
60話 炎柱 煉獄槇寿郎


 

 

「…ギヒヒ、ここまでご苦労なこったなぁ……鬼狩りさんよォ……」

「…………」

 

下卑た笑い声を響かせるのは、人とはだいぶかけ離れた青白い肌に体のあちこちが変形している化け物。

通称"鬼"と呼ばれし人間を主食とする異端の存在であった。

 

「お前のような女が来たところでもう手遅れ。この村の人間はもうみんな食っちまったさ」

 

そんな化け物と対峙しているのは、明治の世にも関わらず時代遅れの刀を構える1人の女性の姿。武人風の気質を纏い、その瞳には激しい憎悪が見え隠れしていた。

 

「…そうか、間に合わなかったか」

 

彼女が見据えた先、そこには倒壊した数々の家屋と複数の血溜まり、そして化け物の手によって食い散らかされた原型を留めぬ死体の山、その上で人間の腕を噛みちぎりながら鎮座する化け物の姿。

 

「…さて、見られたからには致し方なし。腹ごなしにお前もコイツら(死体)の一派に加えてやろう。喜べ、十二鬼月(・・・・)である俺に殺されることをな……」

 

片目に刻まれていた下参の数字を見せつけた矢先、その鬼は死体の山から飛び降りるや紫色に燃ゆる火の玉を両手に錬成した。

 

【血鬼術 鬼火】

 

その錬成した火の玉を人の等身大ほどの大きさに巨大化させると、まずはお手並み拝見と言わんばかりに彼女に向けて連続で投擲した。

 

「この鬼火はただの鬼火じゃねえ!お前に当たるまで一生追尾し続ける!さあお前はこれをどう攻略する!?」

 

鬼がそう余裕の表情で叫ぶ中、彼女は何事も起きてないかのように至って冷静な様子で刀を構える。まるで、遠回しにこんな生温い火起こし技程度で窮地に陥るなど有り得ないと鬼へ伝えるばかりに。

 

 

【天の呼吸 壱ノ型 虹道】

 

 

彼女が技名を口にし、刀を薙ぎ払った時だった。

 

「へっ…………?」

 

一瞬にして鬼火は消え去り、鬼の頸は胴体から離れて宙に浮いていた。

 

「…うっ、嘘だ!こんな……!?こんなことがあっていいわけが…!クソっ!殺してやる!何がなんでもお前も道連れにィィィィィィ!!」

 

「煩い」

 

道連れの血鬼術を放つべく、首から上が無くなった鬼が最後の力を振り絞って繰り出した両腕は、次の瞬間には彼女の刀によって木端微塵に斬り刻まれていた。

 

「…クソがァ!………俺は……まだ…………」

 

怨恨の言葉を最後まで叫ぶことすら出来ぬまま、鬼は灰と化して夜の闇へ散っていった。

 

 

 

「…さて、終わった。早いところ向かわなくては

 

刀を鞘に収めた彼女は、隠と呼ばれる事後処理部隊が到着したのを確認し、夜明けと共に踵を返してある場所(・・・・)目指して歩を進める。

 

 

「___煉獄家に」

 

________________

 

 

「おっ、蓮華さん!お久しぶりです!」

「久しぶり杏寿郎、早速で悪いんだがお父さんはいるかい?」

 

任務終わりの足で向かった煉獄家。家の前で箒を手に掃除をしていた6歳の杏寿郎が私を出迎えてくれた。見る度に背が大きくなってていつの日か私より大きくなるのだろうと思うとその時が楽しみでならない。

けど今回用があるのは杏寿郎ではなくて、その父親の方だ。現炎柱(・・・)煉獄槇寿郎に用がある。

 

「父上でしたら…恐らく母上の所におられると思います」

「そうかありがとう、それじゃお邪魔させて貰うよ」

「はい!ごゆっくり!」

 

そうして杏寿郎の横を抜けて煉獄宅内へと上がる。槇寿郎は嫁さんと一緒にいるとの事だから私は迷うことなく寝室へと向かう。歴代炎柱との縁で幾度とこの家には足を運んでいるので部屋の間取りは把握している。

 

「槇寿郎、いるか!」

「おぉ、これはこれは……」

 

戸を開けたら案の定槇寿郎はいた。病のため床に伏せるしかない彼の嫁さんこと瑠火の傍らで看病に勤しんでいたようだ。

 

「…毎度夫婦水入らずの空間に部外者が立ち入るようですまないが、例の件(・・・)について催促に来た」

「はぁ……やはり(・・・)そうなるか………」

「そうだとも。現に下弦ノ参がいたのは元々お前(槇寿郎)の担当区域だった場所だ」

 

炎柱こと槇寿郎は現在、最愛の妻である瑠火の看病に専念する為柱としての任務を休止中だった。

 

「息子2人がいるだろう?まだ幼いが見る限り瑠火を支えるだけの力はある」

「そうは言われても、瑠火の現状を鑑みれば一時もこの場を離れる訳にはいかない……」

 

槇寿郎は床に伏せる瑠火に目を向ける。微かに聞こえる寝息に混じる

コヒューという音は、肺に何らかの異常を疾患を抱えている証拠。

恐らくは癆痎(結核)だろう。不治の病らしい故に、槇寿郎も心配で傍を離れられないようだ。

 

「それでもだ、私だけでは限界がある。鬼の出没報告は後を絶たず、今も被害者が出続けている。どうか息子らに留守を預け、現職復帰を考えてはくれまいか」

「しかし……」

 

定員9人の柱に現在名を連ねるのはたった彼一人だけ。最高戦力の定員割れは当然鬼殺隊全体に影響が及ぶ。その戦力の穴を埋めるべく常に私は動きっぱなし。近頃は八丈島といった離島にも鬼がいるという噂が挙がっている。そんな遠い所、本土を空にして私が向かえば間違いなく府内の鬼が活発化してしまう。

だからこそ槇寿郎には現職復帰を望んでいる。しかし当人にその気は無い。病の妻を残して戦場には出れないのだ。

 

「……行って…おいで」

「瑠火…!」

 

すると、いつの間にか目を覚ましていた瑠火が、弱々しくもその手で槇寿郎の裾をそっと掴んでいた。

 

「…息子たちは……立派に育ちました。心配しなくても……大丈夫です。……貴方は、成すべきことをなさってくださいな………」

「………瑠火」

 

槇寿郎は瑠火の手を握り返す。すると、彼女は安堵したかのように再び寝息を立てて眠り始めた。言いたいことを言い終えたであろう彼女の表情は、先程よりもほんのり血色が良くなった気がする。

 

「……分かった、私も自身の責務を果たそう。炎柱としての使命、全うしてみせよう」

「…本当か!」

「あぁ、二言はない」

 

遂に槇寿郎が重い腰を上げた。私もそんな炎柱の現職復帰への前向きな姿勢に自然と笑みが零れた。

 

「頼むぞ。槇寿郎」

「あぁ、任せてくれ」

 

こうして炎柱は再度刀を手に立ち上がった。これが後に吉と出るか凶と出るか、今の私には分からない。

それでも、鬼殺隊にとって、更には瑠火にとっても、この槇寿郎の判断が良い方向に働いたのは間違いなかった。

 

「…父上、行かれるのですか?」

 

ふと部屋の前を横切った杏寿郎くんが、出発準備を整える槇寿郎を見てそう訊ねてきた。

 

「あぁ、瑠火に行けと言われれば行くしかあるまい」

「母上が……!?」

「そうだ、そしてその間お前にはあることを任せたい。分かるな?」

 

杏寿郎くんは一瞬頭を傾げるとすぐに槇寿郎を見据えて声高々に言った。

 

「分かりました!長男として、俺が母上とこの家を護ります!」

「うむ、その通り。良い返事だ。では、頼んだぞ杏寿郎よ」

「はい!」

 

こうして炎柱としての任務に復帰した槇寿郎。

この時の私といったらそれはもう、肩の荷が降りたような、純粋に鬼共の滅殺が捗りそうといったような、そんな楽観的な思考の渦中に身を置いていた。

 

 






ー明治コソコソ噂話ー

今回の下弦ノ参といい前回の累の血鬼術の絞蟲糸技、某狩りゲーを参照しました。マガマガ、ZL+X、分かる人には分かる。
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