剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
アンケート御協力ありがとうございます。
宇髄天元のお話は別の機会に回します。そういえば音の呼吸ってまだ全部判明してないんですよね。
一部キャラクターが柱になるまでを書いていこうと思います。
「皆揃ってるみたいだね。今回も誰1人欠けることなく半年に1度の支柱合会議を迎えられたこと、憂いに思うよ」
「御館様に置かれましても御創建で何よりです」
古株の蓮華が周囲に先んじる形で産屋敷耀哉の言葉に答えを返す。この社交辞令的やり取りも毎度恒例であり大体は蓮華は先陣を切って口を開く。
場所は勿論、一部の者しか知り得ぬ秘境の地、鬼殺隊総本部こと代々産屋敷家が過ごしてきた生家の裏庭。
「
「こちらこそ、御館様が裏で我々を支えてくれているからこそ、鬼殺隊一同全力でその身を削って戦いに身を投じることが出来るのだ。感謝せねば……」
そう両手の数珠をジャリジャリ鳴らしながら感謝の言葉を述べる巨漢の男は悲鳴嶼行冥。数年前、岩の血鬼術を扱う下弦ノ弐討伐の功績によってめでたく岩柱に就任した。生まれながらの盲目ではあるものの、その巨漢を活かして鬼の頸を砕き続け、数々の鬼を屠ってきた猛者である。彼の傍に置いてある棘鉄球と手斧、そしてその2つを繋いだ鎖で出来た特殊な日輪刀が特徴的であった。
「それはもう、俺が派手に十二鬼月を筆頭に数多の鬼を地獄へ追いやったからな。御館様に認められた以上、その御恩に報いるだけ。そりゃもう派手に、だ」
一方、悲鳴嶼行冥に隣席するこれまた恵まれた体格をした派手が口癖のその男の名は宇随天元。
先日、下弦ノ参討伐の功績によって新たに柱に就任した忍出身の男。扱う呼吸は音の呼吸という彼自身が独自に編み出した特徴的な呼吸で、2本のククリ刀のような日輪刀と同時に放つ爆薬によって鬼を屠る。
「うん、2人ともありがとう。行冥も鬼との戦いで死ぬことなく柱としての責務を全うしてくれている。そして新たに天元も柱に加わってくれた。かつて数年前は蓮華1人しか名を連ねていなかった支柱も、だいぶ賑やかになったね」
かつての鳴柱が殉職して以降、酒に溺れて職務放棄中の炎柱を除けば、数十年近く誰1人として次代の柱となる者は現れなかったが、今こうして産屋敷耀哉の眼には3人もの支柱が写っている。
(……その間、蓮華には苦労をかけたね)
先代産屋敷の自死を目前にただ項垂れる蓮華の姿を、幼き体躯で目にしていた耀哉にとって今日この光景には胸が熱くなった。
天支、岩柱、音柱、今後はこの3人を軸に鬼殺隊を支えていかねばと、耀哉も蓮華も自然に肩の荷が降りたようだった。
「そうだ、今回の支柱合会議ではもう1つ取り扱うべき朗報があったんだ」
一方、宇随天元が新たな柱に就任した吉報に続くものがあった。それこそ、今のところ耀哉しか知り得ぬが、すぐにでも支柱間で共有したいと思わせる情報であった。
「つい先日、天元の柱就任のすぐ後くらいだったか、鬼殺隊の新たな隊士を募るべく藤襲山で最終選別が行われた」
最終選別とは、早い話が鬼殺隊入隊希望者に課せられる試練。藤襲山という麓を藤の花に囲まれた牢獄の中で7日間生き延びるという一見聞楽そうに聞こえる内容だが、実際はそうではない。
その牢獄には、碌に人間を食えずに飢えた凶暴な鬼がうじゃうじゃいる。とは言ってもまだ人を2,3人しか喰らってない雑魚鬼たちばかりだが、逆に言えばこの雑魚鬼たちがいる牢獄で7日間生き延びる力が無ければ鬼殺隊士の端くれにもなれないという事である。
「…最終選別、鬼殺の道を歩む者なら誰もが通る登竜門。朗報と仰っておりましたが前者との因果は如何なものでしょうか?」
蓮華が産屋敷耀哉に尋ねる。すると耀哉は蓮華に微笑みながら言った。
「…朗報だ。それも40年前の雪辱を晴らす…ね…」
「……あぁ、あの忌々しい悪夢の……ですか……」
そう告げられた蓮華は唇を強く噛み締める。産屋敷耀哉及び蓮華しか知り得ぬ、それも耀哉は先代より口伝えでしか聞いていない、実質その身で体験した者は蓮華のみの、40年前の鬼殺隊史上最悪の悪夢が蓮華の頭に過る。
最終選別、40年前の悪夢とは。
まだ幕府が弱体ながらも形を保っていた頃、当時別の場所にあった藤襲山に満月ノ鬼の侵入を許し、1人を除く最終選別参加者全員と当時の産屋敷家子女が殺害された事件。
そして生き残った1人も行方を眩ませたと思いきや、数年後に鬼へと変貌していたことが発覚。既に当時の蓮華が大敗を喫する程の実力を既に兼ね備えていた。
「……それで、その悪夢を吹き飛ばす程の朗報とは何でしょうか?」
蓮華を筆頭とした支柱皆々が詳細を欲する中、耀哉は淡々と答えを告げた。
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東に浮かぶ下弦の月が照らす海辺の砂浜。そんな心の中で愚痴を漏らすのは、宍色の髪に傷のある額、そして腰にぶら下がる狐の面が特徴的な、名を錆兎と言う、つい先日最終選別を突破したばかりの癸の鬼殺隊士。
「…特徴的な髪ねぇ。海外の出身か何かかしら? 随分と虫唾が走る髪色してるわね?」
そんな錆兎が対峙しているのは、彼がここに来るまでこの鬼と相対していたであろう鬼殺隊士たちの屍上に佇む、全身ビショ濡れの女鬼。
「生憎だが俺は純粋な日本人だ。なんだ?俺の髪色が気に食わないのか?」
「…そう、珍しいわね。でも癪に障る髪色には違いない。それはもう残忍に惨たらしく殺さなきゃねぇ!十二鬼月である…………私の手で!!」
女鬼が長髪をたくし上げて見せつけた右目、そこに刻まれた数字は下参。即ち彼女が十二鬼月であることを示していた。
「折角だから覚えておきなさい。私の名は
「ならば俺も名乗っておこう。俺は錆兎。今からお前の頸を斬る男だ」
「…威勢だけはいいわね。でも残念。ここの骸共はこの技で皆死んだ。お前も同じようにしてやるわ!」
【血鬼術
濡女の全身から、この世の物では無い亡霊を象ったような人の体ほどの大きさの水塊が幾つも錬成され、導かれるように一斉に錆兎の方へ向かっていく。
「さぁ溺れ死ね!!」
「チィ……!」
その場から後ろに跳んで血鬼術を避ける錆兎。水束は数秒前まで錆兎のいた場所へと着弾して砂煙を巻き上げる。しかし、回避されるのはお見通しであると言わんばかりに、先程砂浜に着弾した筈の水束がその威力と形を保ったまま回避行動を取ったばかりの錆兎の元へ誘導してくる。
「なっ……」
錆兎はまたもや後退して水束を避けていく。しかし複数の水束がそのまま地面に当たって霧散し消える事は無く、ただ延々と錆兎を捕えんと追い回す。
「この水はただの水じゃないの。私の意思で自由自在に操ることが出来る亡霊を象った水よ。亡霊の呪いの如く執拗く追い回す水流がいつまでもお前を追い掛ける。果たしていつまで逃げ逢瀬るでしょうねぇ?」
余裕の笑みで回避行動を取り続ける錆兎を見下ろす濡女。
「ほらほら、逃げてるだけじゃ私は殺せないわよ?」
「……言うじゃねえか」
ずっと避け続けるだけでは埒が明かないと鬼に言われた錆兎は、この回避を攻撃に転用しようと一計を案じ、刀を抜いて呼吸を整えた。
【水の呼吸 拾ノ型 生々流転】
生々流転、錆兎が最も得意としている技で、走り続けながら回転して刃を振り続けることで段々と攻撃力を上げつつ走り回ることで回避行動も出来るようになるというもの。その分水の呼吸特有の柔軟な対応力が無くなるが、今の状況下ではこの型が最も適していると踏んだ錆兎。
____ところが。
「…っ!?」
「馬鹿ねえ。液体なんだからそもそも刀で斬れる訳ないじゃない」
水束に向けて振り下ろされた刀が一時水を2つに別つも、数秒経つと再度初期同様の形を取り戻して錆兎に襲いかかる。
「さよなら。お前もこれまでみたいね」
そうして勝ちを確信した濡女はトドメと言わんばかりに錬成した水束全てを錆兎の元へ着弾させた。やがて着弾した水束が飛沫となって散ると同時に砂浜の砂が巻き上げられる。
「呆気なかったわね…。まあいいわ、この水がその身に触れたが最後、口の中から体内に侵入して呼吸器を圧迫させる。そして苦しみながら溺れ死ぬ。血に塗れることなく綺麗なままで死になさい」
そうして、錆兎の苦しむ姿を目に焼き付けんと鬼殺隊士の屍山から降り立った濡女は、視界不明瞭な砂埃の中へゆっくり歩いていく。
「うざったい砂埃ねぇ。これじゃあ奴の苦しむ姿を拝めないじゃないの。それに思ったより砂浜が凸凹に荒れてしまったわ。無駄に手間を取らされたわ本当に。せっかく西洋人風の男が無様に死んでいく様を意気揚々と眺められると思ったのにねぇ……」
そうして凸凹となった砂浜を歩いていた濡女は妙な点に気づき足を止める。
「……そういえば溺れてる筈の割に苦しみ喘ぐような声が聞こえないわね。それに奴の姿が見当たらない……」
砂埃という視界も相俟って錆兎の姿を完全に見失う濡女。何処だ何処だと探している間に段々と視界が晴れ、ようやくその姿を拝めると思った矢先、濡女の表情はみるみるうちに絶望へ変わる。
「……いっ、いない!?奴はどこへ……!?何処へ行ったというの!!?」
砂埃が晴れたその時、錆兎の姿は何処にも無かった。そこには抉られて大きく空けられた穴があるだけで、錆兎の影は何処にも存在しなかった。
「まさか…っ!」
「やっと気づいたか」
「えっ?」
気づいた時にはもう、濡女の頸は胴体より分かれ砂浜にただコロコロと転がるだけであった。
「……なんで…………?なんでお前は生きてるの…?」
「……ふん、やはり気づいてなかったか。お前が最初に抉った穴の存在を」
最後の濡女が放った攻撃をギリギリで躱したと同時に丁度砂埃で視界が不明瞭になったためその隙に幾つか空いていた砂浜の穴に逃げ込んで隠れたのだと、錆兎は続けて語る。
それを聞いた濡女は、ハッと1つの事実に辿り着く。
「……ようは、勝敗を分けたのは私の慢心ってこと?」
「その通りだ。まさか最終選別で幾つも鬼を斬ってきた経験がこんな形で役立つとはな」
錆兎は最終選別の7日間、助けを求める声があれば即座に駆け付けて鬼の頸を獲るという事を繰り返しており、結果的に多くの鬼と対峙した。
その際に、『鬼は自らの力を過信して人間相手に慢心する』という教訓を錆兎は得た。鬼にとって人間は食料で下等生物であると、確実に手を抜いて向かって来ると錆兎の経験が語っていたのだ。
「…貴方、強かったのね」
「……まあな。今年の最終選別は俺が鬼を潰しすぎたせいで死者ゼロだったらしいし。とはいえ俺もまだ未熟者よ。選別の途中で刀折ったしな」
此度の最終選別での朗報、それは史上初の選別における全員合格という偉業であった。そしてその裏にはこの錆兎という男の存在があったのだという。
途中、鬼を斬りすぎて斬れ味ボロボロになった刀を折ってしまったそうだが。
「………そうね、西洋被れの髪色した奴に斬られた事だけは気に食わないけどね。まあ、勝ちは譲ってあげる……………」
その言葉を最後に、濡女の体は全て灰と化し海辺に散っていった。
こうして、錆兎は癸という1番下の位でありながら、十二鬼月討伐という初任務を、無事やり遂げたのであった。
(…これは、私の記憶?)
一方その頃、濡女は地獄への道を歩みながら人間時代の記憶を思い出していた。
『助けて……溺れる…っ!誰か……!』
周囲には人間時代の濡女含め海上で助けを求める人々が大勢いた。乗っていた船が転覆事故を起こし、乗員乗客が冷たい海へと投げ出されたのだ。
『助けて………』
こういう非常時の為に救命用の臨時船があったと、濡女は知っていた。そして濡女の予想通り、英吉利人の船長が救助を始めていた。
『良かった……』
しかし安堵したのも束の間、英吉利人船長は濡女ら日本人には目も暮れず、欧米人といった白色人種にだけ救いの手を伸ばし、そしてそのまま走り去っていった。
『何故……』
走り去っていく船長たちの船を尻目に、それを目にして気力を無くした数人が力尽きて海中へ沈んでいく。
『…西洋人!覚えたわ…その髪色!!絶対に許さない!!』
それから彼女に記憶は無かった。
運が良かったのか、上手く潮の流れに乗って海岸に流れ着き、そこで瀕死だった所を偶然とある鬼に発見されて鬼になったのだと、後に彼女を鬼にした鬼に聞かされたとのこと。
『その原動力を糧に、人を喰らい強くなれ。人間に、復讐を誓おうじゃないか』
恩鬼である彼の言葉を胸に、変わった髪色への憎悪と溺死しかけた事実を糧にして、彼女は下弦ノ参まで登り詰めた。
(……彼は今どうしているのかしら)
地獄への道を歩む彼女が、その事を知る由もない。
ー明治コソコソ噂話ー
濡女のモデルは船幽霊、いなだ貸せと濡女、及び亡霊ヤッサです。
最後の方、濡女が西洋人を恨む要因となった事件は教科書でもやるブリカス事件の1つ。
錆兎は手鬼がとっくに死んだので生き残れました。
今回みたいに将来柱や支となる者が下弦と戦闘するお話はオリ設定多めになるけど書いてよいですか? それともさっさと原作入った方が良い?
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次は宇髄天元だろ?書け。
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原作はよはよ!
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錆兎とか原作での死亡者の話は見てみたい